上 下
8 / 10

8

しおりを挟む

 右手を引かれて、部屋の中まで招かれる。そのまま、ベッドに座らされた。
 シュウ兄は、エアコンのスイッチを押すと、冷蔵庫から冷えた麦茶をコップに注ぎ、俺に一つ渡すと目の前の床に座った。

「ハルが見たのは、多分、三好っていうゼミが一緒のやつ。俺のダチの田口と付き合ってる」

「なんで、友達の彼女があんなベタベタくっついて、部屋によんでんの」

「三好は俺だけじゃなくて、他の男女共に距離感が近ぇの。別に部屋にはよびたくてよんだわけじゃねぇよ。あの二人、最近付き合い始めたんだけど、なかなか田口が手出してこないし、イチャつけないって言ってきて、一緒にホラー映画でも見れば怖がるふりしながらくっつけるかな?   とか言ってきてさ。そんで、俺のホラー映画のブルーレイ貸せって。色々、注文多いから俺の部屋来た時、適当に持ってけって言った。マジで、お前が考えてるようなことじゃない。なぁ、俺言っただろ。お前以外無理だって」

「……本当に?   俺だけ?」

「そんな簡単に他のやつ好きになれたら、こんなに苦しんでねぇよ」
 
 辛そうな顔をするシュウ兄は、嘘をついてるようには見えなかった。

「……疑ってごめん」

「ほんとにな。で、疑いも晴れたし、うちに泊まってくだろ?」

「うん」

「先、風呂入れば。汗かいて気持ちわりぃだろ」

「……一緒に入る?」

「あ?   お前っ、なに言って」

「ダメ……?」

「ダメ……つうか、なんかあったらどうすんだよ」

「なんかって何?」

「俺、結構我慢してんだよ。手、出すかもしれないってこと」

「いいよ。手、出しても」

「卒業までは……」

「それってさ、俺がまだ未成年ってこともあるけど、一番は俺が他に好きな人出来るかもしれないって不安なんだろ?」

「……」

「それならさ、ないよ」

「そんなの分かんねぇだろ」

「だって、俺、あの日からおかずはシュウ兄だよ。しかも、シュウ兄に突っ込まれる想像しながら抜いてる。もう、シュウ兄以外で勃たないし」

 それを聞いてシュウ兄はポカーンと、アホっぽい顔をする。
 うける。

「前からさ、AV見てると女側の方に感情移入してたから、多分俺、女とは無理。でも、シュウ兄以外の他の男と色々してる想像してみたけど、気持ち悪かった。ねぇ、シュウ兄。シュウ。俺、シュウが好きだよ。シュウ以外なんていらない。シュウだけ」

 そう言って、思い切ってギュッと抱きつく。

「おまっ。そこまで言われたら、俺無理……後戻り、できなくなんぞ」

「いいよ。後戻りできなくさせてよ。そしたらシュウ、もう俺から離れようとしないでしょ……」

 どちらからともなく、そっと触れるだけのキスをした。と、思ったらベッドに押し倒されていた。

「え、ちょ。風呂は?」

「無理っつったろ」

「いやいやいや、俺汗かいてるし。シャワー……」

「煽ったのはお前。どうせ後で入るし、いいだろ」

 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ずっと、君しか好きじゃない

BL / 完結 24h.ポイント:6,404pt お気に入り:1,079

【BL】身代わり王族は、執着騎士に愛される

BL / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:1,346

垂れ耳兎は蒼狼の腕の中で花開く

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:755

弟を好きになりました

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:376

【完結】1億あげるから俺とキスして

BL / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:1,100

前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:3,001

魔王様の胸のうち

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:104

花を咲かせて【BL】

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

お兄ちゃんは妹の推しキャラに転生しました

BL / 完結 24h.ポイント:205pt お気に入り:1,872

処理中です...