51 / 51
51
しおりを挟む教室に行き挨拶をすると、皆さん一斉に振り向いてこちらへ駆け寄ってきた。
アリサ様とカリナ様には泣きながら抱きしめられた。
皆さんに「本当にご無事で良かった」、「もう学園へ来ても大丈夫なんですか?」と言われて、だいぶ心配をかけてしまったようだ。
「皆さん、心配をおかけしました。エドワルド様と私の護衛騎士のお陰でこの通り大丈夫です」
「さすがエドワルド様ですね!」
そんな言葉が聞こえて、そうなのです! エドワルド様はすごいのです。間近で魔物を倒した姿は強くて格好良くて、とにかくすごかったとお伝えすれば、皆さんに若干引かれてしまった。
今度からこんな事件が起きないようにと、各教室には警備の人がつくようになったし、何かしらの魔法具を持っていないか定期的にチェックされるようになったけれど、いつも通りの学園生活に戻っていった。
そうそう、今まで女性はただ守られていればいいという風潮があったけれど、あの事件以降、女生徒に護身術の授業が追加されるようになった。
ちなみにケント・ブルー公爵子息はもちろん学園を退学になった。そして犯罪奴隷として危険な鉱山で労働している。
私が、死罪よりも犯罪奴隷として労働する方が貴族として暮らしていた彼にはつらいと思うから、とお父様に伝えると『ミリーは本当に慈悲深い。人が死ぬのがそんなに嫌なんだね、分かった』と言って、そのように手配したらしい。
正直死んだほうが楽かもしれないくらい、過酷な鉱山だ。簡単に死なせてやるもんですか、エドワルド様を侮辱して私を殺そうとしたこと、私達の婚約を台無しにしようとした罪は重いのよ!
私の憎しみがこもっているというのに、周りからはなんて優しい、慈悲深いと、私の評価はバク上がりしている。なぜ?
そしてブルー公爵家は、多額の慰謝料と賠償金を王家へ払うことになり、エイガ公爵家からはブルー公爵領には一切魔法石は卸さないと宣言されたせいで領民たちから恨まれたらしい。また、爵位を男爵まで降格されたために今まで他の貴族達にいばりちらかしていたのに大人しくしているとのこと。でも、爵位を売るのも時間の問題だと言われているって。
時は過ぎ、今日は私達の卒業式。
あの事件以降、とても平和に過ごせたし、エドワルド様とは定期的にお茶会をしてデートにも行ったわ。
エイガ公爵夫妻に会うと毎回のように、早く結婚式が見たいって言われた。
私も早く結婚したくて、お父様にそれとなく結婚式は後でも良いから学生結婚とかどうでしょうって言ったら、家族みんなにそれはダメだと言われたので諦めた。
学園生活の最後に皆さんとお話しをしていると、今日で卒業だから正直言うとさ、みたいな事を暴露し始めた。あらまぁ、なんて聞いていると「ミリアリア様はなんでエドワルド様が好きなのか今でも不思議です」と誰かに言われた。
私がエドワルド様を好きなことは分かってくれてはいるものの、やっぱり不思議だと皆さんが同意を示す。
「エドワルド様は公爵家の跡取りで頭も良くて剣も魔法もすごいですけど、正直に言うとお顔はその……それでもミリアリア様はエドワルド様を格好良いとおっしゃっていますよね」
そんな失礼な事を言うのは、卒業前に格好良いと評判の伯爵家の三男に振られたご令嬢だった。散々、高価なプレゼントを貢いだのに、他に好きな人がいるんだと振られたって泣いていた。
「うふふ。皆さん分かっておりませんね。人は見た目だけではありませんのよ。実際、あなたはそれをよく身に沁みたのではなくて?」
そして私はここでもあの言葉をいう。
「私は格好良いから好きなのではありません。好きだからエドワルド様のことが格好良くみえるのですよ」
ドヤァっと言って周りを見る。あれ、皆さんぽかんとしてあまり言葉が刺さっていない?
まぁ、実際は顔から好きになったんだけどそれは内緒。
「皆さんまだまだお子様ですね。考えても見てください。どんなに外見が良くても、中身がクズな人間でしたら最悪ではないですか? まぁ、中には外見さえ良ければなんでも許せるなんて方もいるかもしれませんが、年を経ると美しさは失われていきます。それでも許せますか? 私はお互いに心の底から大事にしたいと思える方と結婚するのが一番だと思いますよ」
そこでようやく皆さん、確かに! と相槌をうってくれた。
うんうん、そうでしょと私も満足していると「そういう事でしたか」と、後ろからエドワルド様の声が聞こえた。
やばい、今の話し聞かれてたとさぁーと青ざめる皆さん。
卒業式のパーティーで、私のパートナーとして今日は参加される予定だったから迎えに来てくれたみたい。
「実をいうと私もそこだけ不思議に思っていました。ミリアリア様の気持ちは疑ってはいませんでしたが、いつも格好良いと言ってくださるのが不思議で……なるほど、好きだから格好良く見える。そう言われてみると私もミリアリア様を好きだと認めてから、ミリアリア様が一段と可愛く綺麗に光り輝いて見えましたね。これで納得ができました」
そう言うと、私の手を取り手の甲にキスを落とす。
「ミリアリア様にいつまでも格好良く見ていただくために、これからも好きでいてもらう努力をしなければ」
はー、今日も格好良い。努力してもらわなくても、毎日会うたびに自然体のエドワルド様に惚れ直す一方だからー! と心のなかで叫ぶ。
「では私もエドワルド様にいつまでも可愛いと思ってもらえる為に、努力しなければいけませんね」
ふふっと私が幸せそうに笑うと、皆さん顔を真っ赤にしている。その様子を見ていた何人かの女生徒から、エドワルド様が素敵に見えた、とボソッと言う子が何人かいたのを私はちゃんと聞きましたよ! 今になって、エドワルド様の良さに気づいても遅いんですよ。
学校を卒業して更に二年が経ち、ようやく、ようやく、私達は結婚できた。結婚するまでの二年間の間、実は色々問題もあった。
なぜかお母様の母国、ユジーノ王国の王子、つまり私の従兄弟が私と結婚したいとわざわざ国にやってきて一悶着あった。
あまりにしつこく言い寄ってくるのと、大国の圧をかけてくるので、エドワルド様と結婚できないなら、死んでやるーと私が騒いだらお母様が大激怒してユジーノ王国の国王はいったいどのような教育をしているんだ、お兄様とは二度とお会いしませんと、シスコンのユジーノ国王に抗議したら、従兄弟殿はいつの間にかいなくなっていた。
後は、家良し、才能良し、性格良し、のエドワルド様の良さを今更知った令嬢の何人かが第二夫人で良いのでとエドワルド様に言い寄ってきたりしたけど、そこはきっぱりミリアリア様しか見えないのでって断ってくれたりと、まぁ、色々あったけど無事に結婚することができた。
私が前に「結婚するなら外見ではなく、中身が大事」的な発言をしたことから今まで外見のせいで結婚できなかった方たちも、結婚できるようになったそう。
エイガ公爵領の騎士たちも結婚できたのは、ミリアリア様のおかげです! って何人にもお礼を言われた。
その後、私は三男二女の子宝に恵まれた。
エド似の子が生まれますようにと何度も願掛けしたのに、全員私似! がっかりする私に対して、エドは毎回私に似た子どもだと分かると安心して喜んでいた。
「どんな容姿の子でもミリーが頑張って生んでくれた子なら可愛くて愛しいよ。でも、俺に似てしまったらつらい思いをしてしまうかもしれないから」
だって。私も、エドとの子だから全員可愛いとは思うんだけど、せめて一人くらいエドに似てほしかったなーなんて思ったり思わなかったり。
あの時、前世の記憶を思い出して本当に良かった。
前世ではこんなに幸せな人生を歩めなかったから、夢のようだわと思いながら、エドや子、孫たちに見守られながら私はベッドで静かに眠りについた。
250
お気に入りに追加
289
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!
エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。
間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される
葵 すみれ
恋愛
人質として嫁がされ、故国が裏切ったことによって処刑された王女ニーナ。
彼女は転生して、今は国王となった、かつての婚約者コーネリアスの娘ロゼッタとなる。
ところが、ロゼッタは側妃の娘で、母は父に相手にされていない。
父の気を引くこともできない役立たずと、ロゼッタは実の母に虐待されている。
あるとき、母から解放されるものの、前世で冷たかったコーネリアスが父なのだ。
この先もずっと自分は愛されないのだと絶望するロゼッタだったが、何故か父も腹違いの兄も溺愛してくる。
さらには正妃からも可愛がられ、やがて前世の真実を知ることになる。
そしてロゼッタは、自分が家族の架け橋となることを決意して──。
愛を求めた少女が愛を得て、やがて愛することを知る物語。
※小説家になろうにも掲載しています
王宮の片隅で、醜い王子と引きこもりライフ始めました(私にとってはイケメン)。
花野はる
恋愛
平凡で地味な暮らしをしている介護福祉士の鈴木美紅(20歳)は休日外出先で西洋風異世界へ転移した。
フィッティングルームから転移してしまったため、裸足だった美紅は、街中で親切そうなおばあさんに助けられる。しかしおばあさんの家でおじいさんに襲われそうになり、おばあさんに騙され王宮に売られてしまった。
王宮では乱暴な感じの宰相とゲスな王様にドン引き。
王妃様も優しそうなことを言っているが信用できない。
そんな中、奴隷同様な扱いで、誰もやりたがらない醜い第1王子の世話係をさせられる羽目に。
そして王宮の離れに連れて来られた。
そこにはコテージのような可愛らしい建物と専用の庭があり、美しい王子様がいた。
私はその専用スペースから出てはいけないと言われたが、元々仕事以外は引きこもりだったので、ゲスな人たちばかりの外よりここが断然良い!
そうして醜い王子と異世界からきた乙女の楽しい引きこもりライフが始まった。
ふたりのタイプが違う引きこもりが、一緒に暮らして傷を癒し、外に出て行く話にするつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
一気読みさせて頂きました<(`・ω・´)
♥♡♥♡*:.。.▶▪◀.。.:*♡♥♡♥
∧ ∧ ∧∞∧
(º*・∀・) (^▽^*º) \
| <∞> @@*@@~
|U..V |⊃⊂ \
@| : |/∞ ∞\
..U..U 〜〜〜〜〜〜
♥♡♥♡*:.。.▶▪◀.。.:*♡♥♡♥
読んでくださりありがとうございます!
また、コメントもありがとうございます(^^)
はじめまして!
ミリーがずっと長年努力してきたのに、ほぼ全ての人に伝わってないのがもう本当に可哀想すぎるのと気付けない周りの人たちに対するもやもやで爆発しそうです(泣)
ずっと信じてもらえない状態の中努力し続けて、言葉でも態度でも示しているのに気付いてもらえない……そんな状況を自分に当てはめて考えたら心が折れそうっ(泣)
自分ならもう旅に出て帰ってこれない気がします(泣)
強く生きて!幸せになって!とミリーにエールを送りつつ続きを楽しみに待ってます🌸
はじめまして。
感想ありがとうございます。
とても嬉しいです!
凄く凄く励みになります。
ミリーのつらさを分かっていただけてありがとうございます。
言葉も態度も気づいてもらえないのは悲しいですよね(泣)
今後、二人の関係がどうなるのか楽しみに待っていてください(^^)
30話めちゃくちゃぐっときました
続きが楽しみです!
感想いただけてとても嬉しいです!
ありがとうございます。
とって励みになります!
ぐっときたって言ってもらえたのも、すごく嬉しいです。
早く完結できるように頑張ります(^^)