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49【エドワルド視点】
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【エドワルド視点】
あまい雰囲気に包まれていて、なんだか背中がこそばゆくなってきたときにミリアリア様が焦りだした。
あの誘拐犯を拘束したまま置き去りにしてしまったことを心配をしているらしい。
「あれなら一応、公爵家の騎士に回収してくるように言っておきました」
「見つかりましたか? ご無事でしたか?」
「……生きてはいましたよ」
嘘は言っていない。
王家の方々がいらしてバタバタとしたが、すぐにあれを回収しに騎士たちが森に行ったところ、俺が伝えた場所にそのままいたらしく、すぐに見つけたらしい。
魔寄せ液を下半身にかけておいたおかげで、男の象徴が魔物に食われてしまっていて、泣き叫んではいたが生きてはいた。うん。
あれでは女遊びしていたやつには生きてるほうがつらいだろう。
まぁ、それはわざわざ言わなくてもいいだろう。
安心した様子のミリアリア様の表情を見て正直面白くない。あんな犯罪者のことを心配するなんて。
「あれが生きていて良かったですか?」
不機嫌な態度が出てしまって、しまったと思った。今のは拗ねているみたいに聞こえたかもしれない。これでは子どもみたいだ。
「良かったと言われれば、そうですね。私、人殺しになってしまったかと心配になりまして……そのせいで、罪に問われてエドワルド様との婚約がなくなるかもしれないと不安になりました。人命よりも婚約を心配するなんて……幻滅しましたか?」
そんな心配をしていたのか。あっちが100%悪いんだから、正当防衛だし自業自得だ。幻滅なんてするはずがない。
「そんなことはありません。仮にあれが死んでいたとしても、拘束したことは正当防衛ですし、ミリアリア様に魔寄せ液を浴びせたせいで置き去りにされたのなら、あれの自業自得でミリアリア様が罪に問われることはなかったと思いますよ」
「そう……かしら」
むしろ、娘を持つ家はあれに男の象徴が無くなって安心しているかもしれない。
俺は噂には疎いが、父が『あれは色んな女に手を出して、隠し子もいるらしい。自分の娘が餌食にならずにすむから、他の家から感謝されるかもな!』と笑っていた。
ブルー公爵家も誘拐犯本人も、男として大事なものがなくなったなど言いたくないだろうから俺がとやかく言われもしないだろう。周りにバレたくないだろうしな。
「結局重い処罰が下されると思いますよ。ブルー公爵家にも陛下は黙っていないと思います。もちろん、我が家も黙っていません」
父は大分キレていたし、陛下はそれ以上だろう。ブルー公爵家は存続できないかもしれないな。
「ありがとうございます。安心いたしました」
ホッとした様子で、笑顔も見れた。やっぱりミリアリア様は笑顔が似合う。
心地よい風が吹いて、ミリアリア様のドレスが揺れた。
「そうだわ。シシリー夫人にお礼を言わないといけませんわね」
「母にですか?」
なぜ母に? 不思議に思い聞き返すと、今着ているドレスが母のものだと思ったらしい。確かに家には母以外にドレスを着るものはいないからそう考えるか。
母とドレスのサイズが一緒みたいでピッタリだったとニコニコと教えてくれたが、違うんです。それは、使用人たちが張り切りすぎて、ミリアリア様用のドレスを作ってしまったんですなんて言いづらい。
でも普通に考えてミリアリア様と母が同じサイズなワケがない。すぐに分かることだ。万が一、元婚約者のリンダ嬢のものではないかと思われるくらいなら、事実を言うべきだろう。
ミリアリア様用のドレスだとちゃんと伝えると、なぜ自分用のドレスがあるのかと不思議そうに、きょとんとしたお顔で首を傾げている。くっ。きょとん顔も可愛い。
引かれるかもしれないと覚悟しながらも説明する。
「その……使用人たちが『ミリアリア様がいつ嫁いでこられても良いように今から準備をいたします』と言って聞かず、結婚はまだまだ先だというのに、部屋に置く家具の準備やドレスに靴と、既に色々と準備をしておりましたので」
なるほど、といった表情をされたのでそんなに引かれてはいないみたいだ。
「申し訳ありません。使用人たちに悪気はないのですが、怖いですよね……」
「いいえ! そんなことありません。私はこんなに歓迎されているのだと嬉しく思います」
良かった。最初、家令にいかに嫁いでくる女性は不安な気持ちを抱えているかと説明されて準備を始められたときはどうしたものかと思ったが、案外、家令の言う通りだったのか。
自分は男で家を継ぐ立場だから、嫁ぐ側というのはそんなに不安なものなんだと改めて思った。
俺もちゃんと気にかけておこう。
「今日はこのあとどうされますか? アリサ嬢やミリアリア様の侍女にはミリアリア様が無事だと連絡を頼みましたが、すぐに学園の寮に戻られますか? 私としては念の為に今日はこのまま我が家に泊まっていっていただければと思います。もちろん、変な意味ではありません!」
「ふふっ。もちろん、分かってますわ。そう、ですね。思っていた以上にちょっと疲れてしまったみたい。お言葉に甘えて、今日はこちらで休ませてください」
なんてことだ。ミリアリア様に自分の想いを告げて、プロポーズもできて調子に乗っていた。
ミリアリア様が疲れていることに気づかないなんて婚約者失格ではないか。
「それは大変だ! すぐにお部屋の支度をするように言ってきます」
慌てて使用人にミリアリア様用の部屋の支度を頼みに行く。いつ嫁いできてもいいようにと準備していたお陰で、ある程度のものは揃っているはずだ。まさか、こんなに早くあの部屋を使うことになるとは思いもしなかった。
備えあれば憂い無しとはこういうことか?
あまい雰囲気に包まれていて、なんだか背中がこそばゆくなってきたときにミリアリア様が焦りだした。
あの誘拐犯を拘束したまま置き去りにしてしまったことを心配をしているらしい。
「あれなら一応、公爵家の騎士に回収してくるように言っておきました」
「見つかりましたか? ご無事でしたか?」
「……生きてはいましたよ」
嘘は言っていない。
王家の方々がいらしてバタバタとしたが、すぐにあれを回収しに騎士たちが森に行ったところ、俺が伝えた場所にそのままいたらしく、すぐに見つけたらしい。
魔寄せ液を下半身にかけておいたおかげで、男の象徴が魔物に食われてしまっていて、泣き叫んではいたが生きてはいた。うん。
あれでは女遊びしていたやつには生きてるほうがつらいだろう。
まぁ、それはわざわざ言わなくてもいいだろう。
安心した様子のミリアリア様の表情を見て正直面白くない。あんな犯罪者のことを心配するなんて。
「あれが生きていて良かったですか?」
不機嫌な態度が出てしまって、しまったと思った。今のは拗ねているみたいに聞こえたかもしれない。これでは子どもみたいだ。
「良かったと言われれば、そうですね。私、人殺しになってしまったかと心配になりまして……そのせいで、罪に問われてエドワルド様との婚約がなくなるかもしれないと不安になりました。人命よりも婚約を心配するなんて……幻滅しましたか?」
そんな心配をしていたのか。あっちが100%悪いんだから、正当防衛だし自業自得だ。幻滅なんてするはずがない。
「そんなことはありません。仮にあれが死んでいたとしても、拘束したことは正当防衛ですし、ミリアリア様に魔寄せ液を浴びせたせいで置き去りにされたのなら、あれの自業自得でミリアリア様が罪に問われることはなかったと思いますよ」
「そう……かしら」
むしろ、娘を持つ家はあれに男の象徴が無くなって安心しているかもしれない。
俺は噂には疎いが、父が『あれは色んな女に手を出して、隠し子もいるらしい。自分の娘が餌食にならずにすむから、他の家から感謝されるかもな!』と笑っていた。
ブルー公爵家も誘拐犯本人も、男として大事なものがなくなったなど言いたくないだろうから俺がとやかく言われもしないだろう。周りにバレたくないだろうしな。
「結局重い処罰が下されると思いますよ。ブルー公爵家にも陛下は黙っていないと思います。もちろん、我が家も黙っていません」
父は大分キレていたし、陛下はそれ以上だろう。ブルー公爵家は存続できないかもしれないな。
「ありがとうございます。安心いたしました」
ホッとした様子で、笑顔も見れた。やっぱりミリアリア様は笑顔が似合う。
心地よい風が吹いて、ミリアリア様のドレスが揺れた。
「そうだわ。シシリー夫人にお礼を言わないといけませんわね」
「母にですか?」
なぜ母に? 不思議に思い聞き返すと、今着ているドレスが母のものだと思ったらしい。確かに家には母以外にドレスを着るものはいないからそう考えるか。
母とドレスのサイズが一緒みたいでピッタリだったとニコニコと教えてくれたが、違うんです。それは、使用人たちが張り切りすぎて、ミリアリア様用のドレスを作ってしまったんですなんて言いづらい。
でも普通に考えてミリアリア様と母が同じサイズなワケがない。すぐに分かることだ。万が一、元婚約者のリンダ嬢のものではないかと思われるくらいなら、事実を言うべきだろう。
ミリアリア様用のドレスだとちゃんと伝えると、なぜ自分用のドレスがあるのかと不思議そうに、きょとんとしたお顔で首を傾げている。くっ。きょとん顔も可愛い。
引かれるかもしれないと覚悟しながらも説明する。
「その……使用人たちが『ミリアリア様がいつ嫁いでこられても良いように今から準備をいたします』と言って聞かず、結婚はまだまだ先だというのに、部屋に置く家具の準備やドレスに靴と、既に色々と準備をしておりましたので」
なるほど、といった表情をされたのでそんなに引かれてはいないみたいだ。
「申し訳ありません。使用人たちに悪気はないのですが、怖いですよね……」
「いいえ! そんなことありません。私はこんなに歓迎されているのだと嬉しく思います」
良かった。最初、家令にいかに嫁いでくる女性は不安な気持ちを抱えているかと説明されて準備を始められたときはどうしたものかと思ったが、案外、家令の言う通りだったのか。
自分は男で家を継ぐ立場だから、嫁ぐ側というのはそんなに不安なものなんだと改めて思った。
俺もちゃんと気にかけておこう。
「今日はこのあとどうされますか? アリサ嬢やミリアリア様の侍女にはミリアリア様が無事だと連絡を頼みましたが、すぐに学園の寮に戻られますか? 私としては念の為に今日はこのまま我が家に泊まっていっていただければと思います。もちろん、変な意味ではありません!」
「ふふっ。もちろん、分かってますわ。そう、ですね。思っていた以上にちょっと疲れてしまったみたい。お言葉に甘えて、今日はこちらで休ませてください」
なんてことだ。ミリアリア様に自分の想いを告げて、プロポーズもできて調子に乗っていた。
ミリアリア様が疲れていることに気づかないなんて婚約者失格ではないか。
「それは大変だ! すぐにお部屋の支度をするように言ってきます」
慌てて使用人にミリアリア様用の部屋の支度を頼みに行く。いつ嫁いできてもいいようにと準備していたお陰で、ある程度のものは揃っているはずだ。まさか、こんなに早くあの部屋を使うことになるとは思いもしなかった。
備えあれば憂い無しとはこういうことか?
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