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しおりを挟むやっと長期休みが明けて、今日から学校生活が始まる。
早くアリサ様とカリナ様に報告したくてウズウズしていたの。
「皆様、ごきげんよう」
久々の教室へ入ると、皆さんさっきまで私の噂話をしていたようで、挨拶が返ってくるのはまちまち。
今回の婚約の件をまるで私が生贄になってしまったかのように思ってる方もいるみたい。エドワルド様と婚約なんて、なんて可哀想なミリアリア様って言ってる声がちょっと聞こえてしまったもの。
正真正銘、お祝いごとなのになんでそんなお通夜みたいなお顔をされるのかしら。
「ミリアリア様、おはようございます。そして、ご婚約おめでとうございます」
そう話しかけてくれたのはアリサ様。まだカリナ様はいらっしゃっていないみたい。
「アリサ様、おはようございます。うふふ、ありがとう。ずっとエドワルド様のことをお慕いしていたから、今回のことは棚からぼた餅って感じで驚いているけど、とても嬉しくて嬉しくて」
ざわつく教室。えっ、そうだったの? って、お声もちらほら。
「ミリアリア様ー! おはようございます。この度はご婚約おめでとうございます!」
カリナ様が元気よく教室に入ってきたかと思えば、直ぐにお祝いの言葉をかけてくれる。
「カリナ様もありがとう。ええ、夢のようだわ」
うふふ、とこの婚約は私にとって嬉しいことなのだと周りにアピールする。
そこまできてようやく、他の方々も婚約おめでとうございますって声をかけてくれた。
よしよし、周知されればされるほどエドワルド様も婚約解消は無理だと思ってくれることでしょう。もっとたくさんの人にこの婚約は喜ばしいことだと知ってもらうよう、私はその日一日とても幸せなんですアピールをし続けた。
お昼休みになり、恒例の三人だけの内緒の話しをする。
「本当に良かったですねぇ」
うんうん、と頷くカリナ様。
「あと半年ほどで、危なくエドワルド様があの尻軽女の旦那様になってしまうところでしたもんね。まぁ、最悪奥の手を使おうと思っておりましたが、そうならなくてほんとうに良かったですわ。ご自分からやらかしてくれましたからねぇ」
そんな不穏なことを笑顔でおっしゃるアリサ様。え、一体どんな奥の手を……でも、怖くて聞けない。
カリナ様はまるでご自分のことのように喜んでくれている。
「そういえば、結婚の詳しい日取り決まったのですか?」
「学校を卒業して、お兄様とアリサ様の結婚式をした翌年になる予定です。私としては、式なんていつでもいいので、卒業してすぐに籍を入れたかったのですが、それはダメだと言われてしまいまして……それに、王族の結婚ともなると大事ですから、同じ年にお兄様と私が結婚するのはみんなに迷惑がかかると言われてしまいましたからね。仕方がありません」
「あら、そうだったのですね」
「ええ、ですから私が結婚するときはアリサ様は私のお義姉様になっているということですね。楽しみですわ」
そんなお祝いムードの私達の話している姿を、ジッと睨みつけていた方がいたなんて私はまったく気づかなかった。
私とエドワルド様の婚約が喜ばしいことだと学園内には周知され始めた数日後。
この日はダンスの授業が行われた。ほとんどの方は、既に手慣れたもので復習のような授業だった。
最初の頃に忠告をしたおかげで、ケント・ブルー公爵子息からは特に絡まれることもなかったのだけど、この日はなぜか私のダンスの相手になってほしいと言われてしまった。
普段ダンスの授業は、どんな方とでも踊れるようにと毎回ダンスの相手は変わっていて、ケント様とはまだ一度も練習相手にはなっていなかった。
クラスの皆さんが最初の頃のケント様の態度を見ていて、私と練習相手にならないように気を使ってくれていたおかげなんだけど。でも、今日に限って皆さんからそれとなく相手を変えるように言われても、まったく引こうとしない。困ったわね。
「ミリアリア様、この度はご婚約おめでとうございます。美しいミリアリア様。私は一目あなたにお会いした瞬間からお慕い申し上げておりました。ですが、この度エドワルド様とのご婚約が決まったとお聞きして、私は貴方への想いを諦めねばなりません。どうか貴方を諦める為に私と最後に踊ってはくれませんか」
うーん、正直言うと嫌だ。でも、踏ん切りをつけたいってことは何となく分かる。
皆様から、何を言っているんだと諌められているけど、諦めてはくれない様子。はぁ、仕方ない。それで綺麗さっぱり私のことを諦めてくれるんなら安いものかと情けをかけてしまった私が悪かった。
さぁ、ダンスの練習をと音楽がかかってケント様の手を取った瞬間、私は見知らぬ場所に転移していた。
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