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しおりを挟むこうして私は地道に我儘王女というレッテルを無くすため、日夜努力に努力を積み重ねた。
その結果、10歳になった今、私を我儘王女だなんて言う者はいない。自他ともに認める、立派な王女なのです!
三年前のあの日、私がお兄様の現状を変えるために頑張ったことを、エドワルド様は認めてくれたみたい。
そのおかげか、いつもは私がいるとトゲトゲした雰囲気だったのに、あれ以来私にも穏やかに接してくれる。
ちなみに、アリサ様とカリナ様とは親友と言えるくらい仲良しになれました!
今日は久しぶりにエドワルド様に会える。そう、やっと社交シーズンの幕開けです!
エドワルド様は、社交シーズンのみ王都のタウンハウスに滞在されて、お兄様と一緒に剣の訓練や魔法を習いに王城へ来るのがもう定番になっている。
今までは、私は淑女教育と勉強、ピアノのレッスンでお兄様達とは全然違う事を学んでいた。せっかくエドワルド様が城に来てくれてもなかなか会う時間がなくて、一度も会えなかった日は枕を濡らした日もたくさんあった。でも! 今日からはなんと、私も10歳になったことで魔法を習えることになったの。
これで、一度も会えないなんて日はないはず!
ふっふっふ。待っていてね、エドワルド様。今まではたまにしか会えなくて、私をアピール出来ていなかったけど、これからはめっちゃアピールして私を好きになってもらうんだから。
今日の午前中は主に外国語の授業だった。最近始まったばかりで、何を言っているのかちんぷんかんぷんだったけど、午後のお楽しみを考えれば不思議と頑張れるというもの。
先生によくできました、と言ってもらって今日のノルマは無事終了。
さぁ、ご褒美タイムだわ。
急いでバラ園のガゼボへ向かう。ここでお兄様とランチをするのは定番になった。雨の日や寒い時期は大人しく食堂で食べるんだけどね。
ガゼボに着くと、お兄様とエドワルド様がすでにいらっしゃった。
はぁー、約一年ぶりのエドワルド様だわ。また身長が伸びたみたい。やっぱり何度見ても、素敵だわ。
「ミリアリア様、お久しぶりです」
私が来たことに気づいて、声をかけられる。
「ええ、お久しぶりです、エドワルド様」
「この度は私も昼食に誘っていただきまして、ありがとうございます」
そう、今年からエドワルド様もここで昼食をご一緒してもらうことになったの。
エドワルド様はお兄様と一緒に魔法の授業を受けるようになってから、午前の剣の訓練が終わると、わざわざ昼食を食べにタウンハウスまで戻っていたんですって。
今までは、お兄様とエドワルド様のお二人だけに教えていた魔法の先生も、今年からは私にも教えないと行けないから時間が足りないかもしれないと言うことで、時間短縮のために今年からエドワルド様の昼食は城で食べてもらうことに。
最初は使用人達の食堂で食べるという予定だったのだけど、私が初めての魔法の授業で緊張するから、お兄様とエドワルド様に色々お聞きしたい、とかなんとか言って、一緒に昼食を食べることに同意してもらったの。
これでもっと一緒にいられる時間ができたわ。
「エドワルド様、最近のご領地の様子はいかがですか」
ランチを食べながら領地について聞いてみる。将来、私もエイガ公爵領に行くことになるかもしれないんだもの、情報収集は大事よね。
「いつも通りですかね。今の時期はどうしても魔物が活発になりますから、領地の者たちは大変です。私も早く、父や領民のために討伐隊に加わりたいのですが、まだまだだと言われてしまいました」
「まあ、そうだったのですね。エドワルド様の剣の腕は素晴らしいのに」
「大型の魔物も多いですからね、まだ私の腕力では足りないらしいです」
うーん、わかっているつもりだったけど、魔物ってそんなに強いんだ。エドワルド様の剣の腕は、訓練場にいる騎士たちよりずっとずっと強いのに。
それでもまだまだだなんて……エイガ公爵領の騎士たちって、通りでデカくて強そうな人たちばかりなわけね。
確か、エドワルド様のお母様も社交シーズン以外で現れる魔物の討伐には出向くって聞いたわ。
私も剣を習ったほうがいいかしら……
午後の魔法の授業では、お兄様達は広い場所で実践的な練習をしている。私は少し離れた場所で椅子に座って青空授業だ。
魔法の授業の最初は、魔法の理論を教わる所から始まった。
へぇー、魔法の原理ってそんな感じなのね、と初めて知ることばかり。
だから、そんなことも習っていなかった三年前の私は魔法を暴走させてしまったのね。
そりゃぁ、危ないはずよ。魔法石に取り敢えず魔力を流して詠唱すればいいなんてものじゃなかったわ。反省。
「取り敢えず、魔法の理論の説明はここまでです。何か質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です。三年前、私がいかに危険なことをしたのかとても分かりました」
「そうですね、でもそれで一番魔法の怖さを知っていますよね。魔法はとても便利なもので私達を助けてくれるものですが、一歩間違えればとても危険なものです。それを胸にとどめて魔法の練習をしましょう」
「はい、先生」
「では、これを」
先生が私の手に乗せてくれたのは、薄い緑色の魔法石。私の瞳の色と一緒。
「陛下からミリアリア様用の魔法石を預かっておりました」
お母様から、お父様がどれが一番ミリーの瞳の色に似ているかなぁって、選ぶのにとても時間がかかっていましたよって教えてもらっていた魔法石がこれ。
私の魔法石。とっても綺麗! ちなみに、魔法石の色によって値段は結構変わるらしい。緑色は中間位の値段。青系統が一番高い。後で知ったことだけど、実はお兄様の魔法石の空色って青系統の中でも一番高いんだって。お父様、奮発したのね。そう考えると、やっぱり家族仲が修復される前からお兄様のことを大切に思っていたんだなって感じたわ。
最初に教わった魔法は、周りを明るくする【光れ】の魔法。あの時以来の魔法だから、少し緊張する。
「【光れ】」
ほわんと、周りが明るくなる。
「いいですよ、そのままそのまま。魔法石を媒介にして、どんどん魔力を吸い上げられてしまいますから、魔力をコントロールして必要な質力だけを出すのです」
うう、魔力のコントロールって難しい。油断するとすぐに明かりが消えちゃそうになるし、消えないようにしようと思うとどんどん魔力を吸い上げられて、びっくりするほど明るくなりすぎてしまう。
じわじわとと、額に汗が伝うのが分かる。
「はい、そこまでです」
「はぁー、はぁー」
「ミリアリア様、上出来です。初めてで、こんなに長く使えるなんて」
いつの間にか側まで来ていたお兄様とエドワルド様にも褒められる。
「ミリアリア様は、魔法の才能がありますね」
エドワルド様にそう言ってもらって、私って魔法の才能があるのかも! って、調子にのってしまう。私はこの国基準で言えば美少女だけど、ほんとにそれだけ。お兄様は勉強も剣も魔法も性格だって完璧なのに、私は本当に見た目だけ。それがちょっとコンプレックスだったりしたけど、これからは魔法を極めて見ようかしら。
そうしたら、剣は使えなくても魔物の討伐に役立つかもしれないし……
お兄様達が、王立学園に入学するまであと三年。それまでに少しずつでもエドワルド様との仲を進展させたいわ。
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