前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ

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 すごい。すごいわ。
 子爵家次男の事がダメ押しになったのか、遠巻きに様子見していた人達も、もうお兄様を雑に扱うような人なんていない。
 宝物庫や図書館で調べた甲斐があるわ。

 そうそう。さっき宰相とすれ違ったんだけど、いつもは私に話しかけることが少ないのに、呼び止められたと思ったら飴をくれたの!
 最初は驚いたけど、ご褒美的なものかしら。きっと、宰相も私のことを見直してくれたはず。

 よしよし。まずはお兄様の地位向上作戦、大成功ね!
 次は私だわ。今まで散々、我儘三昧だったから、みんなに見直してもらわないと。特にエドワルド様とか、エドワルド様とか、エドワルド様とかね!

 その日の夕食も家族揃って食べることが出来た。
 今の時期は社交シーズンだから、お父様達はパーティーに出たりして一緒にお食事をするのは難しいのよね。この間の地方での公務はたまたまだったみたい。
 私達は今まであまり会話がなかったから、今までの家族との時間を取り戻すみたいに沢山お話をしたため食事の時間が長引いてしまった。
 そのせいで、私は最後らへん眠すぎて何を話したのか覚えていなかったりする。でも部屋に戻る最中、何度も何度もお兄様にありがとうって言われていたと思う。










 私が魔法を暴走させたあの日から数日後。
 今日はアリサ様とカリナ様をお茶会に招待している。この前危険な目に合わせてしまったことを謝らないと。それに、今までの私の振る舞いについても。

「「本日はお招きいただきありがとうございます」」

 二人がちょこんと、淑女の礼をする。

「こちらこそ、来ていただいて嬉しいわ。さあ、おかけになって」

 二人はこの間の事で私から何か言われるのではないかと、怯えているように見える。美味しいお菓子と紅茶を飲みながら、なごやかーな状態で謝罪をしようと思ったけど、まずは先に謝罪よね。

「二人とも、この間は危険な目に合わせてしまってごめんなさい。それにあなた達に優しくなくてごめんなさい。我儘言ったり、キツイことを言ったり。私最低だったわ。」

 二人は顔を見合わせて「そんなことありません。大丈夫です」って、おどおどしている。

「今までのこと、許してくれる?」

「「もちろんです」」

 若干、王家の圧力かけちゃった気がしなくもないけど、これからはちゃんと優しくするから許して!

「さあ、お座りになって。美味しいチョコレートケーキを焼いてもらったの。いただきましょう」

 三人で席につき、チョコレートケーキを食べる。

「「「おいしーい」」」

「やはり、王家のパティシエの作るデザートは美味しいですね」

「ええ、本当に」

「うふふ、お口にあって良かったわ」

「そういえば、お父様から聞いたのですが、ミリアリア様はアガルト様と仲直りされたとお聞きいたしました」

 アリサ様、宰相から聞いたのね。それにしても仲直りって言葉であってるのかしら?   私が一方的に悪かっただけなんだけど……まぁ、いっか。そういうことにしておこう。

「そうなんです!   今では毎日、家族みんなでご飯を食べるし、お兄様の訓練も見学に行くし、時にはお兄様のお部屋で一緒に遊んだりするわ」

 ドヤって感じで言うと、二人はそれぞれ真逆の反応をする。アリサ様にはいいですね~羨ましい。カリナ様は怖くないんですか?   って言われた。
 ん?   ちょっと待って。二人とも、それってどういうこと?   それに本人たちもあれ?   って顔を見合わせている。

「あの、それってどういう?」

 カリナ様が先に話し始める。

「だって、アガルト様って身長が高いじゃないですか。まだ10歳でいらっしゃるのに、私のお父様とそんなに身長が変わらないんですもの」

 つまり、体が大きくて怖いってこと?   なるほど、前世で言う体格の良い格闘家の人と二人っきりだったら私もちょっと怖いと思うかも。アリサ様はというと。

「アガルト様って、私が初めてもらったぬいぐるみのくまちゃんによく似ているんです。瞳は大きくて空色で、ぬいぐるみ自体もとても大きくて抱きしめると安心するんです」

 えっ、アリサ様ってもしかして、お兄様の外見好きなの?
 超レアキャラじゃん。アリサ様の発言に、マジで!?   って顔するカリナ様。

「カリナ様。お兄様は確かに他の方と比べると、大きいと思います。でも、全然怖くなんてないですよ。とっても優しいです。よく考えてください。私が散々お兄様につらくあたっていたのに、魔法が暴走した時、すぐに私を助けてくださいました」

「ええ……確かにそうですね」

「そうでしょそうでしょ。お兄様はとても優しくて面倒見が良くて努力家で素敵な方なんです!」

 うんうん、と頷くアリサ様。

「アリサ様は昔から、お兄様を好意的に見てくれていたと言うことですよね?」

「私なんかが恐れ多いですけれども……はい、とても素敵な方だと思っていましたよ」

 アリサ様、私の中で今一番のお兄様の花嫁候補ですよ。お兄様の内面を好意的に思ってくれてる人は少ながらず今までもいたけど、外見も好みだと言ってくれるなんて。
 この国の美の基準が【存在感がなければないほど美しい】の割に、ぬいぐるみとかは結構大きかったりする。まぁ、娯楽品の類は富の象徴でもあるからね。
 ぬいぐるみが大きいのは単純に材料費がかかっているから値段が高い。それに貴族の子どもがもらうぬいぐるみの目なんて、宝石で作られてることが多い。だから、ぬいぐるみの目は大きくても可愛くないなんて言われないのだ。

 そこからは私とアリサ様とのお兄様はいかに素晴らしく、素敵なのかという話題て盛り上がる。
 カリナ様はただただ、へぇーって引いている。分からなくもないけどね。
 前世を思い出していなければ、私も同じような反応だったと思う。
 あれ、ちょっと待って。アリサ様、お兄様の外見が好きなら、エドワルド様の外見のことも好きだったりする……?
 まずいまずい。エドワルド様は外見のせいで女の子から人気がないから、それを利用して結婚まで出来ないかな、なんて腹黒なことを考えていたのに。急に危機感に襲われる。

「あ、あの。アリサ様はエドワルド様のことはどう思っていらっしゃるのですか?」

「エドワルド様ですか?   エドワルド様も素敵だと思いますけど……やっぱり、空色の瞳のアガルト様のほうが私は好きですねぇ。それに、エドワルド様は少し言葉が乱暴なところもあるので私はちょっと……」

 よっしゃ。アリサ様がライバルにならなくて良かった。

「ミリアリア様は、エドワルド様のことも素敵だと思うのですか?」

「ええ、そりゃあもう!」

 私はひたすらエドワルド様のことを褒め称えた。目も素敵、鼻も素敵、口も素敵、あの褐色肌なんてワイルドだわ、とひたすら話す。それを聞いたアリサ様にのほほんと、エドワルド様に恋していらっしゃるのねぇと言われた。
 ボンッ、と自分の顔が赤くなるのが分かる。カリナ様は、えぇー!   って驚いてる。

「え、え、ミリアリア様がですか?   あの、こんな事を言うのも失礼かもしれませんが、ミリアリア様ならもっと素敵な外見の殿方がいらっしゃるのでは……?」

「カリナ様。人は見た目だけではありませんわよ!   私はエドワルド様が内面もとても素敵な方だと知っております!」

 いや、おまいう的な感じだけどね。
 でも、これが一番説得力ある言い分だと思う。
 今までの私は、自分の我儘な性格をあの事件で反省して、お兄様やエドワルド様の素晴らしさに気づいたっていうていにしたい。
 そうすれば私のイメージも上げつつ、エドワルド様と仲良くしていても周りからとやかく言われないかも。
 だって、今の私はぶっちゃけ外見重視でエドワルド様に恋してる。それじゃぁ、結局外見かよって思われるかもしれない。

「カリナ様。カッコイイから恋をするのではありません。恋をするからカッコよく見えるのです」

 カリナ様は、な、なるほど。流石ミリアリア様です!   って、
 何が流石かはわからないけど、目をキラキラさせて私のことを見てくれているからいっか。

 それから三人で、殿方の好みについて話した。
 うーん、七歳女児ませてる。けど、これが女子トークってやつよね。
 良いお友達になれそうで良かった。



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