25 / 51
25
しおりを挟むすごい。すごいわ。
子爵家次男の事がダメ押しになったのか、遠巻きに様子見していた人達も、もうお兄様を雑に扱うような人なんていない。
宝物庫や図書館で調べた甲斐があるわ。
そうそう。さっき宰相とすれ違ったんだけど、いつもは私に話しかけることが少ないのに、呼び止められたと思ったら飴をくれたの!
最初は驚いたけど、ご褒美的なものかしら。きっと、宰相も私のことを見直してくれたはず。
よしよし。まずはお兄様の地位向上作戦、大成功ね!
次は私だわ。今まで散々、我儘三昧だったから、みんなに見直してもらわないと。特にエドワルド様とか、エドワルド様とか、エドワルド様とかね!
その日の夕食も家族揃って食べることが出来た。
今の時期は社交シーズンだから、お父様達はパーティーに出たりして一緒にお食事をするのは難しいのよね。この間の地方での公務はたまたまだったみたい。
私達は今まであまり会話がなかったから、今までの家族との時間を取り戻すみたいに沢山お話をしたため食事の時間が長引いてしまった。
そのせいで、私は最後らへん眠すぎて何を話したのか覚えていなかったりする。でも部屋に戻る最中、何度も何度もお兄様にありがとうって言われていたと思う。
私が魔法を暴走させたあの日から数日後。
今日はアリサ様とカリナ様をお茶会に招待している。この前危険な目に合わせてしまったことを謝らないと。それに、今までの私の振る舞いについても。
「「本日はお招きいただきありがとうございます」」
二人がちょこんと、淑女の礼をする。
「こちらこそ、来ていただいて嬉しいわ。さあ、おかけになって」
二人はこの間の事で私から何か言われるのではないかと、怯えているように見える。美味しいお菓子と紅茶を飲みながら、なごやかーな状態で謝罪をしようと思ったけど、まずは先に謝罪よね。
「二人とも、この間は危険な目に合わせてしまってごめんなさい。それにあなた達に優しくなくてごめんなさい。我儘言ったり、キツイことを言ったり。私最低だったわ。」
二人は顔を見合わせて「そんなことありません。大丈夫です」って、おどおどしている。
「今までのこと、許してくれる?」
「「もちろんです」」
若干、王家の圧力かけちゃった気がしなくもないけど、これからはちゃんと優しくするから許して!
「さあ、お座りになって。美味しいチョコレートケーキを焼いてもらったの。いただきましょう」
三人で席につき、チョコレートケーキを食べる。
「「「おいしーい」」」
「やはり、王家のパティシエの作るデザートは美味しいですね」
「ええ、本当に」
「うふふ、お口にあって良かったわ」
「そういえば、お父様から聞いたのですが、ミリアリア様はアガルト様と仲直りされたとお聞きいたしました」
アリサ様、宰相から聞いたのね。それにしても仲直りって言葉であってるのかしら? 私が一方的に悪かっただけなんだけど……まぁ、いっか。そういうことにしておこう。
「そうなんです! 今では毎日、家族みんなでご飯を食べるし、お兄様の訓練も見学に行くし、時にはお兄様のお部屋で一緒に遊んだりするわ」
ドヤって感じで言うと、二人はそれぞれ真逆の反応をする。アリサ様にはいいですね~羨ましい。カリナ様は怖くないんですか? って言われた。
ん? ちょっと待って。二人とも、それってどういうこと? それに本人たちもあれ? って顔を見合わせている。
「あの、それってどういう?」
カリナ様が先に話し始める。
「だって、アガルト様って身長が高いじゃないですか。まだ10歳でいらっしゃるのに、私のお父様とそんなに身長が変わらないんですもの」
つまり、体が大きくて怖いってこと? なるほど、前世で言う体格の良い格闘家の人と二人っきりだったら私もちょっと怖いと思うかも。アリサ様はというと。
「アガルト様って、私が初めてもらったぬいぐるみのくまちゃんによく似ているんです。瞳は大きくて空色で、ぬいぐるみ自体もとても大きくて抱きしめると安心するんです」
えっ、アリサ様ってもしかして、お兄様の外見好きなの?
超レアキャラじゃん。アリサ様の発言に、マジで!? って顔するカリナ様。
「カリナ様。お兄様は確かに他の方と比べると、大きいと思います。でも、全然怖くなんてないですよ。とっても優しいです。よく考えてください。私が散々お兄様につらくあたっていたのに、魔法が暴走した時、すぐに私を助けてくださいました」
「ええ……確かにそうですね」
「そうでしょそうでしょ。お兄様はとても優しくて面倒見が良くて努力家で素敵な方なんです!」
うんうん、と頷くアリサ様。
「アリサ様は昔から、お兄様を好意的に見てくれていたと言うことですよね?」
「私なんかが恐れ多いですけれども……はい、とても素敵な方だと思っていましたよ」
アリサ様、私の中で今一番のお兄様の花嫁候補ですよ。お兄様の内面を好意的に思ってくれてる人は少ながらず今までもいたけど、外見も好みだと言ってくれるなんて。
この国の美の基準が【存在感がなければないほど美しい】の割に、ぬいぐるみとかは結構大きかったりする。まぁ、娯楽品の類は富の象徴でもあるからね。
ぬいぐるみが大きいのは単純に材料費がかかっているから値段が高い。それに貴族の子どもがもらうぬいぐるみの目なんて、宝石で作られてることが多い。だから、ぬいぐるみの目は大きくても可愛くないなんて言われないのだ。
そこからは私とアリサ様とのお兄様はいかに素晴らしく、素敵なのかという話題て盛り上がる。
カリナ様はただただ、へぇーって引いている。分からなくもないけどね。
前世を思い出していなければ、私も同じような反応だったと思う。
あれ、ちょっと待って。アリサ様、お兄様の外見が好きなら、エドワルド様の外見のことも好きだったりする……?
まずいまずい。エドワルド様は外見のせいで女の子から人気がないから、それを利用して結婚まで出来ないかな、なんて腹黒なことを考えていたのに。急に危機感に襲われる。
「あ、あの。アリサ様はエドワルド様のことはどう思っていらっしゃるのですか?」
「エドワルド様ですか? エドワルド様も素敵だと思いますけど……やっぱり、空色の瞳のアガルト様のほうが私は好きですねぇ。それに、エドワルド様は少し言葉が乱暴なところもあるので私はちょっと……」
よっしゃ。アリサ様がライバルにならなくて良かった。
「ミリアリア様は、エドワルド様のことも素敵だと思うのですか?」
「ええ、そりゃあもう!」
私はひたすらエドワルド様のことを褒め称えた。目も素敵、鼻も素敵、口も素敵、あの褐色肌なんてワイルドだわ、とひたすら話す。それを聞いたアリサ様にのほほんと、エドワルド様に恋していらっしゃるのねぇと言われた。
ボンッ、と自分の顔が赤くなるのが分かる。カリナ様は、えぇー! って驚いてる。
「え、え、ミリアリア様がですか? あの、こんな事を言うのも失礼かもしれませんが、ミリアリア様ならもっと素敵な外見の殿方がいらっしゃるのでは……?」
「カリナ様。人は見た目だけではありませんわよ! 私はエドワルド様が内面もとても素敵な方だと知っております!」
いや、おまいう的な感じだけどね。
でも、これが一番説得力ある言い分だと思う。
今までの私は、自分の我儘な性格をあの事件で反省して、お兄様やエドワルド様の素晴らしさに気づいたっていうていにしたい。
そうすれば私のイメージも上げつつ、エドワルド様と仲良くしていても周りからとやかく言われないかも。
だって、今の私はぶっちゃけ外見重視でエドワルド様に恋してる。それじゃぁ、結局外見かよって思われるかもしれない。
「カリナ様。カッコイイから恋をするのではありません。恋をするからカッコよく見えるのです」
カリナ様は、な、なるほど。流石ミリアリア様です! って、
何が流石かはわからないけど、目をキラキラさせて私のことを見てくれているからいっか。
それから三人で、殿方の好みについて話した。
うーん、七歳女児ませてる。けど、これが女子トークってやつよね。
良いお友達になれそうで良かった。
95
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜
王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。
彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。
自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。
アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──?
どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。
イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。
*HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています!
※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)
話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。
雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。
※完結しました。全41話。
お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります
みゅー
恋愛
私このシーンや会話の内容を知っている。でも何故? と、思い出そうとするが目眩がし気分が悪くなってしまった、そして前世で読んだ小説の世界に転生したと気づく主人公のサファイア。ところが最推しの公爵令息には最愛の女性がいて、自分とは結ばれないと知り……
それでも主人公は健気には推しの幸せを願う。そんな切ない話を書きたくて書きました。
ハッピーエンドです。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる