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しおりを挟むなんとも気まずい空気が流れている気がする。
エドワルド様に謝罪をして、一応謝罪を受け入れてくれたのかしら?
エドワルド様にじっと見られている。
嫌だ、何か顔についているのかしら。だとしたら恥ずかしい!
またモジモジしていると、お兄様がそろそろ訓練にしよう、と言ってくれた。
良かった。あのまま、見つめられ続けたら、恥ずかしくてまた倒れてしまうところだった。
「お兄様、訓練を見学していてもよろしいですか?」
「訓練を? 別にいいけど、ミリーにはあまり面白いものでは……」
「いいえ、そんな事ありません。お兄様のかっこいい所を見ていたいのです!」
「え、あ、そう? じゃぁ、頑張らないとだ」
うふふふ。かっこいいって、言われたお兄様照れてる。可愛い。ぐふふ、とめちゃくちゃ気持ち悪い顔をしていたかもしれない。
エドワルド様にまたじっと見られてしまった。
もちろん、エドワルド様の訓練姿を見る気満々ですから、あまりこちらに注意を向けないでほしい。
「じゃぁ、危ないから少し離れた所にいてね」
近くにいた騎士に、腰掛けられるものはないかと聞いてくれたら、その騎士は申し訳無さそうな顔をして樽を持ってきた。
これに座らせるのは……と、渋ったお兄様に、私は大丈夫だと言って、ライザが樽の上にハンカチを乗せてくれたのでそこに腰掛ける。ニコニコと笑顔でお兄様頑張ってくださいと言えば、そうかい、それじゃぁと離れていった。
樽を持ってきてくれた騎士にもありがとうと言えば、恐縮された。
カン、カンと模擬剣がぶつかる音がそこかしこから聞こえてくる。
私が見学していることに他の騎士たちは少し注意が散漫になっている人もいる。時々、ゴンと体のどこかに剣がぶつかっている。
「お前ら、何している! たるんでいるぞ!」
この国の人には珍しく、大柄な男の人が現れた。
その途端、ピリッとした空気が流れる。
「おや、珍しい。ミリアリア様ではないですか」
騎士団の責任者かしら。
「初めまして。見学させて頂いてるわ。よろしかったかしら」
「これはこれは。騎士団長のポールと申します。このようなむさ苦しい所によくおいでくださいました。どうぞ、気の済むまで見学されてください。騎士たちも、気合いが入りましょう! ハハハ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて」
ふむ。と、ポール団長は顎に手をおいて私を見ている。
きっと、初めて会う私が噂と違うから驚いているのかも。
カーン、と音がしたと思ったら、お兄様の剣が落とされていた。
相手は、エドワルド様。
お兄様の剣の腕は良いと聞いているのに、それでもエドワルド様に剣を落とされていた。
エドワルド様は、ご自分のお父上から五歳のときから特訓されていたと言うから、流石のお兄様も敵わないみたい。
ハァ、ハァ、と息遣い荒い二人を見て、うっとりと見つめる。
あーん、二人共カッコいい。
私がうっとりと二人しか見ていないことに、ポール団長は首を捻っている。
そうよね、少し前の私ならいわゆるこの世界の基準のイケメン騎士を見たでしょうけど、今の私にはお兄様とエドワルド様しか見えていないんだから。
それからも訓練が終わるまで、ひたすら二人を見ていた。
訓練が終わると、お兄様とエドワルド様が汗を拭いながら近くに来てくれた。
「ミリー、どうだった? カッコいい所を見せようと思ったのに、全然だったね。エドに一本も取れないで終わっちゃった」
「私の家は武門の家です。それに、アガルト様よりも長く剣の訓練をしていますから」
「そんな事ありません! 汗を流しながら剣を振るうお兄様は、とてもカッコよかったです! それに、あの、えっと、エドワルド様も、その、すて、すて、素敵でした!」
二人共キョトンとした顔をしたかと思ったら、顔を見合わせた。
「ミリーにそう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう」
「私も、励みになります。ありがとうございます」
お兄様は笑顔でそう言ってくれたけど、エドワルド様は信じていないみたいで硬い表情で言われた。
勇気を出して言ったのに、信じてもらえてないのは悲しい!
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