3 / 51
3
しおりを挟む「私じゃーーーーん」
ガバっと勢いよく布団から起き上がる。
「ミリアリア様! お目覚めになられたのですね」
「え、あ、え」
「只今、お医者様をお呼びいたしますのでお待ち下さい」
そう言って、侍女のライザが部屋を足早に出ていった。
待って待って待って。少し、落ち着こう。
さっきまで、私は日本人の柴田 美亜として男の子や女の子たちが、言い争ってる夢を見ていた気がする。
けど、今の私はミリアリア・フォン・シュツットとして、このミターメ王国の王女としての記憶がある。
もしかして、柴田 美亜は私の前世のようなものかしら。そして、この世界にミリアリアとして転生したってこと……?
これが噂に言う、異世界転生!
改めて、落ち着こうと目を閉じて深呼吸。
徐々に、柴田 美亜として生きていた記憶と、ミリアリアとして生きてきた記憶が鮮明になってくる。
そう、やっぱり私の前世は柴田 美亜だわ。日本で暮らしていた、38歳。独身。家族仲は悪くて、大学入学と同時に上京。奨学金とバイト代でなんとか生活費を賄っていたのよね。
大学卒業後に入った企業がまさかのブラックで朝も夜も必死に働かないと奨学金の返済もできず、ダブルワークもしていたせいで、過労のせいでぽっくり逝ってしまったことを思い出す。
そして、今の私はミターメ王国の第一王女ミリアリア・フォン・シュツット。
正真正銘のお姫様。やったね! 作らなくてもご飯は出てくるし、みんなにチヤホヤしてもらえる! 最高!
と、思ったのもつかの間。美亜としての記憶を思い出したせいで、今まで自分がいかにわがままでヤバい子どもだったかということに気づいてしまった。
しかも、前世の美的感覚で言うと自分はとても可愛いとは言えない。
いや、この世界では絶世の美少女として有名なんだけどね。でも、記憶を取り戻してしまった私には、今までしていた容姿マウントがとてつもなく恥ずかしいっっ。
このミターメ王国や近隣諸国では、美の基準は【存在感がなければないほど美しい】ということになっている。
慎ましい見た目こそ美しい、と。
だから、目が二重でパッチリ大きいと、主張し過ぎで何をそんなに見たいのかしらみたいな偏見があるし、鼻は高いと、そんなに匂いをかぎたいの? 変態! みたいな偏見がある。
他にも口が大きいとなぜか野蛮とみなされるし、身長が高くてゴツい体だと暴力的。耳がでかいと噂好きで、信用におけない人間という偏見がある。
などなど、とにかくそんな感じなものだから、この世界の絶世の美少女の私の外見はとにかく全てが小さい。
身長も、平均より小さいし、顔も小さい(これだけは嬉しい)。目は一重で、開いてるのか開いてないのかわからないぐらいだし、鼻はぺちゃんこ。口もめちゃくちゃ小さくて、御飯食べれるの?
髪の毛も肌も白くて、ぶっちゃけ私って、ほんとにこの世界に存在してるのかなって感じ。
あーあ、どうせ異世界転生するのなら、とびきり可愛い女の子になりたかった。……いや、一応この世界的には絶世の美少女なんだった。うーん、人生ってままならないなぁ。
はっ! そういえば、お兄様とエドワルド様ってどうなったんだろう。ケガは大丈夫だったのかしら。
前世を思い出した私には、あの二人は国宝級イケメンなんだから嫌われたくない。散々、容姿マウントとって嫌な子だったから、もう嫌われてるかもしれないけれど……
89
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
天使は女神を恋願う
紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか!
女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。
R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m
20話完結済み
毎日00:00に更新予定
なんて最悪で最高な異世界!
sorato
恋愛
多々良 初音は、突然怪物だらけの異世界で目覚めた。
状況が理解出来ないまま逃げようとした初音は、とある男に保護されーー…。
※テスト投稿用作品です。タグはネタバレ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります
みゅー
恋愛
私このシーンや会話の内容を知っている。でも何故? と、思い出そうとするが目眩がし気分が悪くなってしまった、そして前世で読んだ小説の世界に転生したと気づく主人公のサファイア。ところが最推しの公爵令息には最愛の女性がいて、自分とは結ばれないと知り……
それでも主人公は健気には推しの幸せを願う。そんな切ない話を書きたくて書きました。
ハッピーエンドです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる