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しおりを挟む「いいから、さっさと私にその魔法石を渡しなさい」
「でもね、ミリー。ミリーが魔法石を使うのはまだ早いと思うんだ」
「お兄様の分際で、私にさからうの!? それに、あなたなんかに愛称で呼ばれたくないわ」
わーお。なんだか、めちゃくちゃヤバい女の子がいるなぁ……
それが私のこの夢を見た一番の感想。
何やら女の子と男の子が言い争ってるこの場は、どこかの中庭みたい。
「ごめんね、ミリー……いや、ミリアリア。でも、僕もやっと魔法石で魔法を使うことを習い始めたばかりだから、ミリアリアにはまだ早いんだよ」
「そんなの知らないわよ。それにその魔法石も私に使ってもらったほうが嬉しいと思うわ。そんなに素敵な魔宝石なんですもの。ねぇ、貴方がたもそう思うでしょ」
我儘な女の子もとい、ミリアリアちゃんが背後に引き連れていた女の子たちに同意を求める。
「そ、そうですわね。きっと、ミリアリア様に使っていただいたら光栄だと思います……」
お、この緑色のドレスの子はイエスマンか……
「あ……でも、アガルト様の仰ることも……」
この黄色のドレスの子は、ダメなことはダメって言える子かな~。
「なによ、私が間違ってるって言いたいの」
「いえ、そういうわけでは……」
あ、黄色のドレスの子折れてしまった……というより、権力に負けた感じ……? この中で一番発言権が強いのって、ミリアリアちゃんなのかな。
「ミリアリア様。恐れながら、魔宝石を使えるのは魔力が安定した10才の誕生日を迎えてからという決まりがあります」
え、なにこの褐色イケメンくん。まだ、幼さは見えるけど将来、絶対みんなが振り返るワイルドイケメンになること間違いなしだよ?!
というか、このお兄様と呼ばれてるアガルトくんも、めっちゃ顔整ってない!? 天から舞い降りた天使様ですか? 褐色イケメンくんとは違った、正統派王子様イケメンになること間違いなしだよ?!
それに比べて……言っちゃ悪いが、ふわふわピンクのドレスを着たミリアリアちゃん。その、なんていうか……どこもかしこも主張しないお顔立ち。可愛いか可愛くないかと言われたら、ぶっちゃけ可愛いとは言えない。
後ろにいる他の女の子達も、ミリアリアちゃんよりはまだマシだけど、あまり主張しないお顔立ちね。
「ふん。お兄様といい、エドワルド様といい。その外見でよく私に意見ができますわね」
あの褐色イケメンくんはエドワルドくんというのね。いや、それは置いといて。おい。そこで何で外見の話しが出てくんのよ。あなた、この中で一番見た目の偏差値が低……ゴニョゴニョ。なのに。
エドワルドくんはぐっと歯を食いしばる表情で黙ってしまったし、アガルトくんは「うん……その、でも決まりは決まりだし……」と、うつむきながら弱気な発言。
なんで? なんで、そこでエドワルドくんとアガルトくんは黙っちゃうの? むしろ、そのご尊顔をドヤるとこだよ?!
アガルトくんがうつむいて、おそらく魔法石と思われる綺麗な空色の石を手でいじっていると、ミリアリアちゃんがさっとその魔法石を取り上げてしまった。
「ミリアリア! 魔法石の扱いを習っていないのに、危険だよ!」
「うるさいわね、こんなの簡単よ。【風】」
ミリアリアちゃんが魔法石を握って、言葉を唱えると凄い勢いで風が吹いた。
「いけません!!」
お、今まで気づかなかったけど、ローブを着た大人が慌て始めた。
勢いよく吹いた風は、スパンスパンと廻りの木や花を切っていく。かまいたちのようだ。しかも、威力強っ。
「ほらね、簡単…… キャーーーーーー」
風は方向転換してミリアリアちゃんに向かっていく。危ないっ。
ちっと舌打ちが聞こえたかと思ったら、エドワルドくんがミリアリアちゃんの腕を引っ張り、アガルトくんと一緒にミリアリアちゃんに覆いかぶさる。
「【消えろ】」
ローブの大人が慌てて手をかざして唱えると、風はぱっと消えてなくなったが、それでもエドワルドくんとアガルトくんの体や衣服は切り傷だらけになって、血も見える。
ちょっとちょっと、ミリアリアちゃーん。ほんとに何がしたかったの? マジ迷惑。二人に怪我を負わせてさー。あのご尊顔に消えない傷でもついたら、どうしてくれるの?この世界の損失だよ? あ、でもエドワルドくんなら傷跡が残っていても、よりワイルドさが増したかもしれない。
周りの人達が大丈夫か、とか、大変だわ、とか、言いながら3人の下へ駆け寄る。幸い二人がかばってくれたおかげで、ミリアリアちゃんに怪我はなく、エドワルドくんとアガルトくんは、血は出ているが大きな怪我ではないみたい。傷は腕や背中だけで、顔にはなかった。そんなミリアリアちゃんは驚いたせいか気を失っている。と、同時に私の意識もそこでプツンと切れてしまった。
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