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第66話 まさかの呪い付きの腕輪?
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理事長室は、何とも言えない空気だったけれど、理事長から「私達からの話は以上です。何か聞きたい事などありますか?」と聞かれた。
その中で、短期留学の期間が一カ月であることや、皇太子以外の留学生は両方貴族である事――一人は男爵家で成績の良い女子――、もう一人は侯爵家の男子――こちらは皇太子の腰ぎんちゃくとして有名な人らしい。
腰ぎんちゃくで有名って、或る意味悪いうわさになるかな?男爵令嬢に関しては、才女って噂だけ……。皇太子殿下におもねるタイプでは無いようだ。
それから、護衛の男性――顔に傷があるだとかで仮面を被っているらしいその人も、貴族らしいのだけれど素性がどうもハッキリしない。
いや、伯爵家の次男らしいんだよ?その人は、幼少から存在はしているものの引き籠りみたいな状態だったらしいんだ。だから、どんな人物なのか探れなかったらしい。
引き籠りの理由って顔の傷が原因なのだろうか……けれど、そんな人が護衛?護衛にするのなら、実力者にするのは勿論、名も知られている方が牽制しやすいと思うんだけど……。
だから、実力が分からない護衛の存在はちょっと不気味だ。
「聞きたい事は無いんだけどさ、丁度いいからこれ渡しとこうと思って――」
そう言ってエドガー様が胸ポケットから取り出したのは、V字型のアームバングル。二の腕に着ける腕輪だ。細身のもので、中央に緑色の石が付いている――胸ポケット、絶対改造してるよねエドガー様。ダース位の数、腕輪が出て来たけれど、普通にそんなに入るはずが無いもの……。
その内の一つを手渡されて見てみれば、結構な薄さ……それなのに、硬くて粘りがある――つまり折れにくい感じ?何の金属なんだろう??
その金色の金属の表面には細かい模様――。良く見たら術の回路が刻まれている。言ったらなんだけど、変態さんの所業である。
普通の術具じゃないよコレ。
何故かと言ったら、この膨大な量を細身の金属に刻みつけるのなら、普通はもっと太い幅のものに刻むから。こんな細かい、お米に文章を書くような術式、一本刻むだけで頭が爆発しそう――。
エドガー様は、それを理事長と学園長にも渡しながら上着を脱いでシャツの腕を捲った。
「まずは、宝石に指をあてて『ラムド』と唱える――それから嵌めれば自動で大きさが変わるから。そうすれば、外せなくなるよ――呪いの掛かった呪具を参考にしたんだ」
ニッコリと笑って言うエドガー様。
『ラムド』と言うのは古語で『認識せよ』って意味だ。多分、これで持ち主の設定をするんだろう。
それにしてもこの腕輪、状況を考えれば魅了に対抗する為の術具だと思うんだけど……外せなくなるの?呪いって冗談だよね??
「――……呪いの掛かった呪具を参考にしたってお前なぁ……」
ベルナドット様が呆れ顔でそう言った。
アルは興味深そうに腕輪を見ているし、エリザベス様とダグ君は私と一緒で困惑顔だ。ベルク先生とクリス先輩は得意気な顔をするエドガー様を見て呆れ顔をした後、顔を見合わせて苦笑している。ウォルフ先輩は楽しそうかな。
不思議そうに腕輪を見ている学園長の横では、理事長が目を輝かせてシゲシゲと見てる。
「いえ、これは――当人だけが外せる術具ですね?細かいのに、綺麗な術の回路だ――繊細なのに力強い意志を感じます。素晴らしい」
「――……そ、そう言って貰えるのなら光栄――だけど?」
理事長の嬉しそうな言葉に、得意気な顔から一転、真っ赤になって落ち着かない様子になった。
そう言えばエドガー様、術具関係の研究発表でワルステッドのものとされていた論文を書いた人をとても尊敬している風だった。つまりは憧れの人が目の前にいて自分の作った物を褒めてくれている――そんな状況な訳だ。
年相応の少年らしい顔をして、ニヤケそうな口元を一生懸命押さえてる様子は当人には言えないけれど可愛らしい。
それから照れているのを隠す為かな?少しだけ口早に腕輪の説明をしてくれた。陛下から預かった術具はブローチだったけれど、過去にその術具をしていたにも関わらず、魅了に掛かった人がいたのだと言う。
術具が効かなかった?ううん、もっと単純な問題だ。魅了に掛かった人達に押さえつけられて術具を取られたから。
だからエドガー様は呪具を参考にして持ち主だけが外せるようにしたらしい。ついでに、目立たない所に装着出来た方が良いだろうと考えて腕輪にしたとか。薄いし軽いこの腕輪なら着けても気にならないと思う。
「後は、陛下と宰相閣下の分だよ。取り敢えず、今作れたのはそれだけかな」
「そんな貴重なものを、先に貰ってしまって大丈夫かの?」
エドガー様の言葉に、学園長がそう返す。
術具を私達に渡す為に持って来てたみたいだけれど、理事長と学園長の分は考えられて無かった筈だ。だからこそ、気遣うように学園長はそう聞いたのだと思う。
「学園での協力者なんだから必要じゃない?」
「エドガーの言うとおりだ。学園長と理事長も着けて欲しい。父には――」
エドガー様はアルをチラッとみてそう言った。アルは、それに頷くと笑顔で理事長と学園長にも着けて欲しいと告げている。
「この後、報告もありますし登城する予定です。私の方から献上しましょう――これはどれ位作るご予定で?」
「数は多い方が良いけれど、エドガーは一人だからね……それでも国の中枢を担う人達には行き渡らせたい」
理事長の問いにアルがそう答えた。
ヒロインが行方不明の今、心配のし過ぎでは?と思われるかもしれない。けれど、念には念を入れておきたいと言うのが陛下の考え――転移魔術(仮)とか、既存のものでは無い魔術が行使されたのだ。
魅了魔法も、どこからか出て来る可能性があると危惧しているのだろう。
「……分かりました。材料を手に入れてからになりますが、私も協力しましょう――」
「良いのか――……?しかし――」
理事長の言葉に、エドガー様がキラッキラしてる。ワンコみたいに尻尾があれば、ブンブン振り回してそうな勢いだ。それを見た、ベルナドット様が生温かい目でエドガー様を見ていた。
「多くは出来ませんが……何かを作っている方が気がまぎれるので……」
理事長は、複雑そうな顔をしながらそう言った。
エドガー様が少しだけシュンとした顔をした後、思いきったように顔を上げた。
「それなら!――その材料なら我が家にあります!!アルフリード殿下が仰る分は作れるかと。ですので、材料はお任せ下さい。お届けします!」
「確かに、今から材料を揃えるなら時間が掛かりますね……材料の件はお言葉に甘えさせて貰いますが、持って来て頂くのは……流石に、こちらから取りに行かせてください」
暫く、届に行く、取りに行くと押し問答があったけれど、結局エドガー様のお宅に理事長が材料を取りに行く事に決まったらしい。
材料費に関しては国庫から――というより陛下のポケットマネーから出ているらしく気にしなくても良いのだとか……。
――後日、使われている地金の金属はミスリルとアダマンタイトの合金で上にメッキ加工されてるのがオリハルコンと純金と聞かされて気絶しかかりました。
陛下のポケットマネーじゃ無くて、陛下の手持ちの金属だったよ。ダンジョン産ですね?理解しました。
その中で、短期留学の期間が一カ月であることや、皇太子以外の留学生は両方貴族である事――一人は男爵家で成績の良い女子――、もう一人は侯爵家の男子――こちらは皇太子の腰ぎんちゃくとして有名な人らしい。
腰ぎんちゃくで有名って、或る意味悪いうわさになるかな?男爵令嬢に関しては、才女って噂だけ……。皇太子殿下におもねるタイプでは無いようだ。
それから、護衛の男性――顔に傷があるだとかで仮面を被っているらしいその人も、貴族らしいのだけれど素性がどうもハッキリしない。
いや、伯爵家の次男らしいんだよ?その人は、幼少から存在はしているものの引き籠りみたいな状態だったらしいんだ。だから、どんな人物なのか探れなかったらしい。
引き籠りの理由って顔の傷が原因なのだろうか……けれど、そんな人が護衛?護衛にするのなら、実力者にするのは勿論、名も知られている方が牽制しやすいと思うんだけど……。
だから、実力が分からない護衛の存在はちょっと不気味だ。
「聞きたい事は無いんだけどさ、丁度いいからこれ渡しとこうと思って――」
そう言ってエドガー様が胸ポケットから取り出したのは、V字型のアームバングル。二の腕に着ける腕輪だ。細身のもので、中央に緑色の石が付いている――胸ポケット、絶対改造してるよねエドガー様。ダース位の数、腕輪が出て来たけれど、普通にそんなに入るはずが無いもの……。
その内の一つを手渡されて見てみれば、結構な薄さ……それなのに、硬くて粘りがある――つまり折れにくい感じ?何の金属なんだろう??
その金色の金属の表面には細かい模様――。良く見たら術の回路が刻まれている。言ったらなんだけど、変態さんの所業である。
普通の術具じゃないよコレ。
何故かと言ったら、この膨大な量を細身の金属に刻みつけるのなら、普通はもっと太い幅のものに刻むから。こんな細かい、お米に文章を書くような術式、一本刻むだけで頭が爆発しそう――。
エドガー様は、それを理事長と学園長にも渡しながら上着を脱いでシャツの腕を捲った。
「まずは、宝石に指をあてて『ラムド』と唱える――それから嵌めれば自動で大きさが変わるから。そうすれば、外せなくなるよ――呪いの掛かった呪具を参考にしたんだ」
ニッコリと笑って言うエドガー様。
『ラムド』と言うのは古語で『認識せよ』って意味だ。多分、これで持ち主の設定をするんだろう。
それにしてもこの腕輪、状況を考えれば魅了に対抗する為の術具だと思うんだけど……外せなくなるの?呪いって冗談だよね??
「――……呪いの掛かった呪具を参考にしたってお前なぁ……」
ベルナドット様が呆れ顔でそう言った。
アルは興味深そうに腕輪を見ているし、エリザベス様とダグ君は私と一緒で困惑顔だ。ベルク先生とクリス先輩は得意気な顔をするエドガー様を見て呆れ顔をした後、顔を見合わせて苦笑している。ウォルフ先輩は楽しそうかな。
不思議そうに腕輪を見ている学園長の横では、理事長が目を輝かせてシゲシゲと見てる。
「いえ、これは――当人だけが外せる術具ですね?細かいのに、綺麗な術の回路だ――繊細なのに力強い意志を感じます。素晴らしい」
「――……そ、そう言って貰えるのなら光栄――だけど?」
理事長の嬉しそうな言葉に、得意気な顔から一転、真っ赤になって落ち着かない様子になった。
そう言えばエドガー様、術具関係の研究発表でワルステッドのものとされていた論文を書いた人をとても尊敬している風だった。つまりは憧れの人が目の前にいて自分の作った物を褒めてくれている――そんな状況な訳だ。
年相応の少年らしい顔をして、ニヤケそうな口元を一生懸命押さえてる様子は当人には言えないけれど可愛らしい。
それから照れているのを隠す為かな?少しだけ口早に腕輪の説明をしてくれた。陛下から預かった術具はブローチだったけれど、過去にその術具をしていたにも関わらず、魅了に掛かった人がいたのだと言う。
術具が効かなかった?ううん、もっと単純な問題だ。魅了に掛かった人達に押さえつけられて術具を取られたから。
だからエドガー様は呪具を参考にして持ち主だけが外せるようにしたらしい。ついでに、目立たない所に装着出来た方が良いだろうと考えて腕輪にしたとか。薄いし軽いこの腕輪なら着けても気にならないと思う。
「後は、陛下と宰相閣下の分だよ。取り敢えず、今作れたのはそれだけかな」
「そんな貴重なものを、先に貰ってしまって大丈夫かの?」
エドガー様の言葉に、学園長がそう返す。
術具を私達に渡す為に持って来てたみたいだけれど、理事長と学園長の分は考えられて無かった筈だ。だからこそ、気遣うように学園長はそう聞いたのだと思う。
「学園での協力者なんだから必要じゃない?」
「エドガーの言うとおりだ。学園長と理事長も着けて欲しい。父には――」
エドガー様はアルをチラッとみてそう言った。アルは、それに頷くと笑顔で理事長と学園長にも着けて欲しいと告げている。
「この後、報告もありますし登城する予定です。私の方から献上しましょう――これはどれ位作るご予定で?」
「数は多い方が良いけれど、エドガーは一人だからね……それでも国の中枢を担う人達には行き渡らせたい」
理事長の問いにアルがそう答えた。
ヒロインが行方不明の今、心配のし過ぎでは?と思われるかもしれない。けれど、念には念を入れておきたいと言うのが陛下の考え――転移魔術(仮)とか、既存のものでは無い魔術が行使されたのだ。
魅了魔法も、どこからか出て来る可能性があると危惧しているのだろう。
「……分かりました。材料を手に入れてからになりますが、私も協力しましょう――」
「良いのか――……?しかし――」
理事長の言葉に、エドガー様がキラッキラしてる。ワンコみたいに尻尾があれば、ブンブン振り回してそうな勢いだ。それを見た、ベルナドット様が生温かい目でエドガー様を見ていた。
「多くは出来ませんが……何かを作っている方が気がまぎれるので……」
理事長は、複雑そうな顔をしながらそう言った。
エドガー様が少しだけシュンとした顔をした後、思いきったように顔を上げた。
「それなら!――その材料なら我が家にあります!!アルフリード殿下が仰る分は作れるかと。ですので、材料はお任せ下さい。お届けします!」
「確かに、今から材料を揃えるなら時間が掛かりますね……材料の件はお言葉に甘えさせて貰いますが、持って来て頂くのは……流石に、こちらから取りに行かせてください」
暫く、届に行く、取りに行くと押し問答があったけれど、結局エドガー様のお宅に理事長が材料を取りに行く事に決まったらしい。
材料費に関しては国庫から――というより陛下のポケットマネーから出ているらしく気にしなくても良いのだとか……。
――後日、使われている地金の金属はミスリルとアダマンタイトの合金で上にメッキ加工されてるのがオリハルコンと純金と聞かされて気絶しかかりました。
陛下のポケットマネーじゃ無くて、陛下の手持ちの金属だったよ。ダンジョン産ですね?理解しました。
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