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第43話 白くて丸くてフワフワです。

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 ――ぴるぴるぴるぴる――

 震えるその子を見た後、私は思わず空を見上げた。まだ明るい空には雲ひとつなく、この子が落ちて来るような何かは無い。
 ここは噴水の近くで、木の枝なども頭上にかかってはいなかった――ならこの子は何処から落ちて来たんだろう……。

 「鳥――かな?」

 私の疑問に答えるようにアルが呟いた。
 この小動物を鷹などの鳥が捕まえて、誤って落したのでは?と言う事らしい。まぁ、確かにそれなら有り得るのかな?その割に落し物を拾いに来ないのは、人間わたしたちがいるからなのだろうか……。
 その子は小さかった。両手ですっぽり抱えられるサイズで、白くて丸くて、毛がフワフワしている。耳が長いから小ウサギかな?と思ったけれど、その割に尻尾が長い。イメージ的には狸の尻尾みたいな感じ。

 「大丈夫?」

 野生動物だから、怖がって逃げちゃうかも――そう思ったけれど、思わずそう声をかけていた。そのピルピルしてる子は私の声を聞いて、こちらをチラリと伺うように見上げた。
 そして、つぶらな淡い緑の目を見開くと、弾丸のように突進して来た。

 「ふぐぅ――」

 令嬢らしからぬ声は聞かなかった事にして頂きたい。だって、鳩尾だったんだよ。
 アルが、笑いを堪えた気配がする。しょうがないと思うの……。突然だったんだし。
 ぴぃぴぃと鳴くその子を責める訳にもいかなくて、そっと背中らしき所を撫でてあげる。手の中に、ほんわりとした温もり――それが何と言うか愛おしい感じ?産まれて少し経った仔猫を撫でてるような気持ちになった。

 「あぁ、怖かったんだね?大丈夫だよ……」
 
 それにしても、滅茶苦茶触り心地の良い毛並み……少しだけ役得だと思ってしまった。チビちゃんには悪いけどね……うん、ごめん。

 『だいじょうぶ?』

 「うん、大丈夫――?!って話した?!!!」

 思わず大きな声を出してしまったせいで、チビちゃんをビクッとさせてしまった……慌てて謝る。
 小さく、響くように伝わる音――ううん、音って言うより思念かな?その子の声は反響するような不思議な音という認識で私の頭に届いていた。

 「――……話したね――君はもしかして精霊、かな?」

 『せーれー?わかんない』

 アルが少し考えてから言った言葉に、涙目のチビちゃんが首(?)を傾げる。丸っこい身体の何処に首があるか分からないのでコロンと転がったようにしか見えないのだけど……可愛い。
 というか、この子の手足は何処にあるんだろう?耳と尻尾が無かったら、ケサランパサランってヤツみたい。でも、鳩尾に手って言うか前足?で押されてる感触はあるから、フワフワの毛の中に隠れてるんだろうと思われた。

 「うーん……お父さんかお母さんはいるかな?」

 精霊にしろ、小動物にせよ、こんなに小さい子だから親離れはまだだろう。だから、アルは親元に帰す為にそう聞いたんだと思う。けれど、このチビちゃんの返事は『……わかんない』だった。
 それが親がいるか知らないって意味の分かんないなのか、親の居場所が分かんないの意味なのか正直判別が付かない。

 「お名前は??何か分かる事はある?」

 優しく撫でながらそう聞けば、チビちゃんが、ふるふると震えて涙を零した。

 『わかんない――……わかんないよぅ……』

 ありゃりゃ、ぎゃん泣きさせちゃった……。
 この感じだと、『何も』分からないって感じに聞こえる。私は、アルと顔を見合わせて困惑した。小さいから良く分からないって事だろうか??まさか記憶喪失って事も無いとは思うのだけど……。
 『お家を聞いても分からない、名前を聞いても分からない――にゃんにゃんにゃにゃーん、にゃんにゃんにゃにゃーん……』ついには犬のお巡りさんの曲が私の脳内に流れはじめました。
 これはどうしたものかな……?
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 次は、アルの閑話入ります。1~2話の予定ですm(_ _)m
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