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第44話 理事長をマナー講座に連れて行きたい今日この頃。
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結局、あのチビちゃんは迷子の精霊という名目で寮母さんに許可を取って、私が預かる事になりました。
記憶喪失なのか、産まれたばかりだから記憶が無いのかは分からないけれど、名前も分からないと言うので、『雪』ちゃんと呼んでいます。
最初は綿毛ちゃんとかフワフワちゃんとか呼んでたんだけれど、『おなまえ、どれ?』と聞かれて考えざるおえませんで……。親がいるかもしれないのに勝手に名前をつけるのも躊躇われたのだけど、ウォルフ先輩に相談した所、親がいる場合、後から精霊名つけると思うと言われたので名付ける事に。
白くてフワフワしてるから雪ちゃんです――安直でゴメン。そんな私の事を雪ちゃんは『まぁま』アルの事を『ぱぁぱ』と呼んでくれる。
結婚もまだなんだけど……キラキラした目で言われちゃうとね?拒否とか無理です出来ません。何故そう呼んでくれるのかは不明なんだけど。保護した時と名前をつけた時に二人で一緒にいたからって説が濃厚ですが。
『うーん、精霊っぽいけど精霊っぽくないんだよなぁ……』
相談ついでに雪ちゃんを見て貰った時のウォルフ先輩の言葉がコチラだった。
雪ちゃんは、精霊が肉体がある状況――顕現って状態にあるらしいんだよ。顕現できるのは高位精霊の特権。――けど、雪ちゃんは言動や姿は下位の精霊に見えるらしい。
高位の精霊だと、人型、獣型様々あっても産まれた時からもっと身体が大きいんだって。ちなみに、親がいるのは高位精霊のみ。
下位精霊は世界に人知れず産まれ落ち、寿命も短く世界に還る存在らしい。短い精霊生だからか享楽的で悪戯好き。感情を現わすのも、好きか嫌いかと割と単純。
高位の精霊も悪戯好きの所はあるけど、理性があるから酷い悪戯はしないし、喜怒哀楽の感情も豊かみたい。
つまり精霊っぽい雪ちゃんは、高位精霊の身体に下位精霊の精神が入っているような状態らしく、非常にチグハグな存在なんだって。
まぁ、分からないものは分からないよね――と言うのが出された結論になります。一応、ウォルフ先輩には精霊達に迷子の話を伝えて貰っているので、親がいれば名乗り出て来ると思う。
さて、今日はエルダルトン伯爵家――つまり理事長宅へ向かっています。
馬車は2輛編成。アルと私、エリザベス様とベルナドット様が乗った馬車と――ベルク先生とウォルフ先輩、エドガー様が乗った馬車だ。
王家の家紋や公爵家の家紋の描かれた馬車は、乗って行けば理事長は大喜びだろうけれど、周囲にエルダルトン伯爵家と私達はお付き合いがありますよと喧伝する事になってしまう。
それは避けた方が良いとの事で、2輛とも学園の馬車になってます。学園長からもそうした方が無難だろうと言う事で貸出手続きはとてもスムーズでした。
これなら、エルダルトン伯爵家は学園の理事長をしていると知られているので問題無い。
「今日が、無事に済んで下されば良いのですけど……」
「本当にそうですわね……」
エリザベス様の言葉に、私は同意しながら溜息を吐いた。
今日この日が決まるまでに、理事長から来た手紙は3通。『いつですか?いつきますか??』みたいな内容で、行かなくて済むのなら行きたく無いと思わせる感じだったのだ。
そもそも、学園の生徒であるとはいえ、王太子に対して催促の手紙を出すとか……不敬って言われれば終わりって分かってるのかな……?完全に学園の生徒=子供って思ってるよね??
なので、お宅訪問は嫌な予感しかしなかったりする。
『まぁま、おつかれ?』
「大丈夫ですわ。心配してくれてありがとうね、雪ちゃん」
私の膝の上に乗っていた雪ちゃんに心配そうに聞かれたので、そう返事を返す。
エリザベス様が、珍しくデレッとした顔を一瞬見せた。その後、慌てて咳払いして誤魔化していたけれど――可愛らしい。
私の隣に座るアルが、心配しなくても大丈夫だと言うように雪ちゃんの頭を撫でている。それを見たベルナドット様が何故かニヤニヤしてるけど、どうしたんだろう?
撫でられてご機嫌の雪ちゃんは、驚くほど自然に魔王研究会の皆に馴染んだ……と言うより、ヒロインとのゴタゴタでささくれ立った皆の心を掴んだって言った方が正解かな?――癒し要因としてね!!
本当は、雪ちゃんにはお留守番して欲しかったんだけど……。『や!まぁまとぱぁぱといっしょ!!いく!!』と言って泣かれて、私達が折れました……。
けれど、珍しい精霊を連れていたら理事長にどう絡まれるか分からないので、雪ちゃんには私の髪の中に隠れて貰う事になっていたりする。
正確にはクラウンハーフアップにした髪の流した部分、首の後ろ辺りに隠れて貰う事になりました。髪の毛の量が多くて良かった……。
一番安全なのはドレスのスカートの中なのだけど、流石にねぇ……。雪ちゃんは子供だからって言っても、性別も男の子か女の子か分からないし。アルからも笑顔で反対されたし?
そんなやり取りをしているうちに、どうやら理事長宅に着いたらしい……。馬車のスピードが落ち、ゆっくりと停まったからだ。
「雪ちゃん、暫く我慢して下さいませね?」
『だいじょうぶ。おはなしもしないよ。ちゃんとしーってするね?』
私の言葉に、ぴょんと跳ねた雪ちゃんが楽しそうにそう言った。私が、雪ちゃんを肩に乗せると、ぴょこぴょこと首の後ろの方に移動する。
アルが、私の方を見て雪ちゃんが見えないかどうか確認してくれた。
「うん。大丈夫だね」と言うアルの言葉に嬉しそうな『かくれんぼー!』と言う言葉が重なる。
「雪ちゃん、しーっですわよ??」
『うん、おくち、ちゃっくー』
エリザベス様が苦笑しながら注意すれば、雪ちゃんがそうお返事してた。チャック?アルが言ってたっけかな??
本当にちゃんと黙ってられるのか一抹の不安はあったけれど、雪ちゃんは、しっかりと約束を守る気らしい。連れて来る最大の条件が、理事長のお宅ではお話禁止!だったからね。
雪ちゃんは見た目よりも重さが無いので、ほんわりと温かい首元だけが、雪ちゃんがそこにいると教えてくれるようだった――何とも癒しのある温かさである。
記憶喪失なのか、産まれたばかりだから記憶が無いのかは分からないけれど、名前も分からないと言うので、『雪』ちゃんと呼んでいます。
最初は綿毛ちゃんとかフワフワちゃんとか呼んでたんだけれど、『おなまえ、どれ?』と聞かれて考えざるおえませんで……。親がいるかもしれないのに勝手に名前をつけるのも躊躇われたのだけど、ウォルフ先輩に相談した所、親がいる場合、後から精霊名つけると思うと言われたので名付ける事に。
白くてフワフワしてるから雪ちゃんです――安直でゴメン。そんな私の事を雪ちゃんは『まぁま』アルの事を『ぱぁぱ』と呼んでくれる。
結婚もまだなんだけど……キラキラした目で言われちゃうとね?拒否とか無理です出来ません。何故そう呼んでくれるのかは不明なんだけど。保護した時と名前をつけた時に二人で一緒にいたからって説が濃厚ですが。
『うーん、精霊っぽいけど精霊っぽくないんだよなぁ……』
相談ついでに雪ちゃんを見て貰った時のウォルフ先輩の言葉がコチラだった。
雪ちゃんは、精霊が肉体がある状況――顕現って状態にあるらしいんだよ。顕現できるのは高位精霊の特権。――けど、雪ちゃんは言動や姿は下位の精霊に見えるらしい。
高位の精霊だと、人型、獣型様々あっても産まれた時からもっと身体が大きいんだって。ちなみに、親がいるのは高位精霊のみ。
下位精霊は世界に人知れず産まれ落ち、寿命も短く世界に還る存在らしい。短い精霊生だからか享楽的で悪戯好き。感情を現わすのも、好きか嫌いかと割と単純。
高位の精霊も悪戯好きの所はあるけど、理性があるから酷い悪戯はしないし、喜怒哀楽の感情も豊かみたい。
つまり精霊っぽい雪ちゃんは、高位精霊の身体に下位精霊の精神が入っているような状態らしく、非常にチグハグな存在なんだって。
まぁ、分からないものは分からないよね――と言うのが出された結論になります。一応、ウォルフ先輩には精霊達に迷子の話を伝えて貰っているので、親がいれば名乗り出て来ると思う。
さて、今日はエルダルトン伯爵家――つまり理事長宅へ向かっています。
馬車は2輛編成。アルと私、エリザベス様とベルナドット様が乗った馬車と――ベルク先生とウォルフ先輩、エドガー様が乗った馬車だ。
王家の家紋や公爵家の家紋の描かれた馬車は、乗って行けば理事長は大喜びだろうけれど、周囲にエルダルトン伯爵家と私達はお付き合いがありますよと喧伝する事になってしまう。
それは避けた方が良いとの事で、2輛とも学園の馬車になってます。学園長からもそうした方が無難だろうと言う事で貸出手続きはとてもスムーズでした。
これなら、エルダルトン伯爵家は学園の理事長をしていると知られているので問題無い。
「今日が、無事に済んで下されば良いのですけど……」
「本当にそうですわね……」
エリザベス様の言葉に、私は同意しながら溜息を吐いた。
今日この日が決まるまでに、理事長から来た手紙は3通。『いつですか?いつきますか??』みたいな内容で、行かなくて済むのなら行きたく無いと思わせる感じだったのだ。
そもそも、学園の生徒であるとはいえ、王太子に対して催促の手紙を出すとか……不敬って言われれば終わりって分かってるのかな……?完全に学園の生徒=子供って思ってるよね??
なので、お宅訪問は嫌な予感しかしなかったりする。
『まぁま、おつかれ?』
「大丈夫ですわ。心配してくれてありがとうね、雪ちゃん」
私の膝の上に乗っていた雪ちゃんに心配そうに聞かれたので、そう返事を返す。
エリザベス様が、珍しくデレッとした顔を一瞬見せた。その後、慌てて咳払いして誤魔化していたけれど――可愛らしい。
私の隣に座るアルが、心配しなくても大丈夫だと言うように雪ちゃんの頭を撫でている。それを見たベルナドット様が何故かニヤニヤしてるけど、どうしたんだろう?
撫でられてご機嫌の雪ちゃんは、驚くほど自然に魔王研究会の皆に馴染んだ……と言うより、ヒロインとのゴタゴタでささくれ立った皆の心を掴んだって言った方が正解かな?――癒し要因としてね!!
本当は、雪ちゃんにはお留守番して欲しかったんだけど……。『や!まぁまとぱぁぱといっしょ!!いく!!』と言って泣かれて、私達が折れました……。
けれど、珍しい精霊を連れていたら理事長にどう絡まれるか分からないので、雪ちゃんには私の髪の中に隠れて貰う事になっていたりする。
正確にはクラウンハーフアップにした髪の流した部分、首の後ろ辺りに隠れて貰う事になりました。髪の毛の量が多くて良かった……。
一番安全なのはドレスのスカートの中なのだけど、流石にねぇ……。雪ちゃんは子供だからって言っても、性別も男の子か女の子か分からないし。アルからも笑顔で反対されたし?
そんなやり取りをしているうちに、どうやら理事長宅に着いたらしい……。馬車のスピードが落ち、ゆっくりと停まったからだ。
「雪ちゃん、暫く我慢して下さいませね?」
『だいじょうぶ。おはなしもしないよ。ちゃんとしーってするね?』
私の言葉に、ぴょんと跳ねた雪ちゃんが楽しそうにそう言った。私が、雪ちゃんを肩に乗せると、ぴょこぴょこと首の後ろの方に移動する。
アルが、私の方を見て雪ちゃんが見えないかどうか確認してくれた。
「うん。大丈夫だね」と言うアルの言葉に嬉しそうな『かくれんぼー!』と言う言葉が重なる。
「雪ちゃん、しーっですわよ??」
『うん、おくち、ちゃっくー』
エリザベス様が苦笑しながら注意すれば、雪ちゃんがそうお返事してた。チャック?アルが言ってたっけかな??
本当にちゃんと黙ってられるのか一抹の不安はあったけれど、雪ちゃんは、しっかりと約束を守る気らしい。連れて来る最大の条件が、理事長のお宅ではお話禁止!だったからね。
雪ちゃんは見た目よりも重さが無いので、ほんわりと温かい首元だけが、雪ちゃんがそこにいると教えてくれるようだった――何とも癒しのある温かさである。
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