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第33話 ヒロイン急襲!
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そう。私達は油断していたのだと思う……。
3日――、ヒロインの謹慎が解けてからずっとベルク先生以外平穏な日々を過ごしていた。ヒロインは相変わらず、校門前をウロチョロしているらしいけれど、朝礼が始まる頃には個室にドナドナされて行くので、私達のクラスにも突撃しようが無い状況。
休憩時間も、付きっきりで見張らなきゃいけない先生方の苦労の方が気にかかる。下校の時も、校門の外まで先生方がヒロインをお見送りしてるらしいので、まぁ、それで油断してたんです。
示し合せた訳じゃ無いけれど、忙しいベルク先生と別校舎のダグ君以外の全員が研究棟の入り口で合流し研究室に向かっていた時だった。
「いないと思ったら、こんな所にいたんですねぇ――?探しちゃったんですよぉ?あ、オウルもいる!!ちょっとどうしてこんな所に出歩いてるの??図書館にいて貰わないと困るじゃない!幽霊騒ぎも無いみたいだし――どうなってるの!」
何で――とか、どうしてここに――とか誰かの呟きが聞こえた。
ピンクの髪でキラキラした目でアルを見つめるヒロインが――駆けよって来たからだ。途中で、ウォルフ先輩に気が付いたらしく、盛大にそちらに文句を言い始めたけれど。
ヒロインはトゥルーエンドを目指してるのだろうか……?
「――君にオウルって呼ばれるの許した覚えないけど――誰?」
口調が笑顔なのに蔑んでる気配が凄いです。黒ウォルフ先輩が降臨されている――。
「例の――」
「あぁ、コレが??確かに頭おかしいねぇ」
アルの言葉に、ウォルフ先輩が納得したようにそう言った。口調が笑顔なのに――以下同文――最早、嘲笑しているのを隠そうともしてません。ウォルフ先輩怒ってますね。
「ちょっと!何ですか初対面の女の子に失礼じゃないですか!!」
何故貴女がそれを言うのか?この場全員の一致した意見だと思う。それってブーメランになってるよ??自分の言動を思い出してみようよ?ウォルフ先輩に言われた事に文句なんて言えなくなるから。
「――失礼なのはアンタだろう?見知らぬ相手を呼び捨てにして――……」
腹に据えかねたらしいエドガー様がそう言っている途中で、ヒロインが黄色い声を上げた。
「やだっ!エドガー?えぇ!攻略対象がルドルフ以外全員揃ってる!え?何これ何ルート??もしかして、隠しルートとかあったのかな?これってハーレムルートより凄いルートなのかしら???」
んあ”あ”?!!ちょっと待って!今ハーレムルートって言ったの?えっ?待って待って??ヒロインそれ目指してるって事??同じ可能性に気が付いたアルの顔からザアっと血の気が引くのが見えた。
そしてさらに不味いのが、今現在のヒロインの言動から『隠しルート』があると思われてしまった事だ。だって私とアルが転生者だって言えない以上、それを否定できない。
そして、彼女は自信満々にそのありもしないルートを信じたようだった。今まで上手く行かなかったのは、知らない間に隠しルートへ入っていて――きっとそれはハーレムルートよりも幸せになれるのだと……。
ベルナドット先輩も、エドガー様もクリス様も――嫌悪感しか顔に浮かべて無いのに。彼女――気が付いて無い?アルに至っては能面のような無表情で喜ぶヒロインを見ている。
「おい――ハーレムルートって何だ?」
「ベルナドット?あはは!子供の頃より断然カッコヨクなってる!!素敵ね――……ハーレムルート?ハーレムルートはねぇ?私がお姫様みたいに幸せになれるルートなの。アルフリードに、ベルナドットにぃ、ルドルフに、エドガーとクリスもでしょ?皆が私を幸せにしてくれるんだよ!!」
ヒロインは、結婚するのはアルフリードが良いなぁ……けど皆、平等に愛してあげるんだぁ――?と正気とは思えない事を言い始めた。
ハーレムはゲームの中にしか無い。
お妾さんがいる人もいない訳では無いけど、この国は一夫一妻制。ましてや、女の人が男の人達を侍らせていたら白い目で見られるどころじゃ無い。何処の家に行っても、お付き合いは遠慮させて頂きますと言われるだろう。
名前の呼び捨てはマナ―違反だとか――廊下でキャーキャー騒ぐのは、はしたないとか――そんな事が私の脳内を滑るようにグルグル回っていた。多分現実を受け止めきれなくて……。
目はまだ正気っぽいけど、言動のおかしさが上がってる気がする?
キャハハハと以前は無かった笑い方をしているし、こちらの言葉が通じるか不安になる雰囲気。声を掛けるべきか逡巡していると、今のヒロインの発言に我慢できなかったベルナドット様が地を這うような低い声を出した。
「いい加減にしろ!俺達がお前を幸せにする事はありえない!」
「――?どしてぇ??」
純粋に聞き返すヒロインの顔はポカンとしていて、幼い少女が純粋な疑問を聞き返しているようにも見えた。
「お前が名前を上げた男には、皆、恋人か婚約者がいるからだよ!大切な相手がいるのに、何でお前みたいな頭がおかしいヤツを幸せにしなきゃいけないんだ!!」
「えぇ?――……悪役令嬢は――他にもいるんだ??あぁ、隠しルートはハードモードなのね??あぁ、だからサポートキャラもヒントとかくれなかったんだぁ……!!そっかぁ――でも、どう攻略すればいいんだろう……」
あぁ――。彼女、聞こえなくなってる。ううん、聞かなくなってるって言うべきかな??隠しルートと認識してしまった時点で、それを信じ切ってしまってるんだ。
だから、都合の悪い事は隠しルートの『試練』だと思ってるらしい。ブツブツと、どうやって好感度を上げれば良いんだろう?順番とか??ううん――特別なイベント起さなきゃダメなのかしら――?
それよりも、悪役令嬢がキーポイントとか――??
グリン――と。
彼女の頭が私の方を向いた――。
3日――、ヒロインの謹慎が解けてからずっとベルク先生以外平穏な日々を過ごしていた。ヒロインは相変わらず、校門前をウロチョロしているらしいけれど、朝礼が始まる頃には個室にドナドナされて行くので、私達のクラスにも突撃しようが無い状況。
休憩時間も、付きっきりで見張らなきゃいけない先生方の苦労の方が気にかかる。下校の時も、校門の外まで先生方がヒロインをお見送りしてるらしいので、まぁ、それで油断してたんです。
示し合せた訳じゃ無いけれど、忙しいベルク先生と別校舎のダグ君以外の全員が研究棟の入り口で合流し研究室に向かっていた時だった。
「いないと思ったら、こんな所にいたんですねぇ――?探しちゃったんですよぉ?あ、オウルもいる!!ちょっとどうしてこんな所に出歩いてるの??図書館にいて貰わないと困るじゃない!幽霊騒ぎも無いみたいだし――どうなってるの!」
何で――とか、どうしてここに――とか誰かの呟きが聞こえた。
ピンクの髪でキラキラした目でアルを見つめるヒロインが――駆けよって来たからだ。途中で、ウォルフ先輩に気が付いたらしく、盛大にそちらに文句を言い始めたけれど。
ヒロインはトゥルーエンドを目指してるのだろうか……?
「――君にオウルって呼ばれるの許した覚えないけど――誰?」
口調が笑顔なのに蔑んでる気配が凄いです。黒ウォルフ先輩が降臨されている――。
「例の――」
「あぁ、コレが??確かに頭おかしいねぇ」
アルの言葉に、ウォルフ先輩が納得したようにそう言った。口調が笑顔なのに――以下同文――最早、嘲笑しているのを隠そうともしてません。ウォルフ先輩怒ってますね。
「ちょっと!何ですか初対面の女の子に失礼じゃないですか!!」
何故貴女がそれを言うのか?この場全員の一致した意見だと思う。それってブーメランになってるよ??自分の言動を思い出してみようよ?ウォルフ先輩に言われた事に文句なんて言えなくなるから。
「――失礼なのはアンタだろう?見知らぬ相手を呼び捨てにして――……」
腹に据えかねたらしいエドガー様がそう言っている途中で、ヒロインが黄色い声を上げた。
「やだっ!エドガー?えぇ!攻略対象がルドルフ以外全員揃ってる!え?何これ何ルート??もしかして、隠しルートとかあったのかな?これってハーレムルートより凄いルートなのかしら???」
んあ”あ”?!!ちょっと待って!今ハーレムルートって言ったの?えっ?待って待って??ヒロインそれ目指してるって事??同じ可能性に気が付いたアルの顔からザアっと血の気が引くのが見えた。
そしてさらに不味いのが、今現在のヒロインの言動から『隠しルート』があると思われてしまった事だ。だって私とアルが転生者だって言えない以上、それを否定できない。
そして、彼女は自信満々にそのありもしないルートを信じたようだった。今まで上手く行かなかったのは、知らない間に隠しルートへ入っていて――きっとそれはハーレムルートよりも幸せになれるのだと……。
ベルナドット先輩も、エドガー様もクリス様も――嫌悪感しか顔に浮かべて無いのに。彼女――気が付いて無い?アルに至っては能面のような無表情で喜ぶヒロインを見ている。
「おい――ハーレムルートって何だ?」
「ベルナドット?あはは!子供の頃より断然カッコヨクなってる!!素敵ね――……ハーレムルート?ハーレムルートはねぇ?私がお姫様みたいに幸せになれるルートなの。アルフリードに、ベルナドットにぃ、ルドルフに、エドガーとクリスもでしょ?皆が私を幸せにしてくれるんだよ!!」
ヒロインは、結婚するのはアルフリードが良いなぁ……けど皆、平等に愛してあげるんだぁ――?と正気とは思えない事を言い始めた。
ハーレムはゲームの中にしか無い。
お妾さんがいる人もいない訳では無いけど、この国は一夫一妻制。ましてや、女の人が男の人達を侍らせていたら白い目で見られるどころじゃ無い。何処の家に行っても、お付き合いは遠慮させて頂きますと言われるだろう。
名前の呼び捨てはマナ―違反だとか――廊下でキャーキャー騒ぐのは、はしたないとか――そんな事が私の脳内を滑るようにグルグル回っていた。多分現実を受け止めきれなくて……。
目はまだ正気っぽいけど、言動のおかしさが上がってる気がする?
キャハハハと以前は無かった笑い方をしているし、こちらの言葉が通じるか不安になる雰囲気。声を掛けるべきか逡巡していると、今のヒロインの発言に我慢できなかったベルナドット様が地を這うような低い声を出した。
「いい加減にしろ!俺達がお前を幸せにする事はありえない!」
「――?どしてぇ??」
純粋に聞き返すヒロインの顔はポカンとしていて、幼い少女が純粋な疑問を聞き返しているようにも見えた。
「お前が名前を上げた男には、皆、恋人か婚約者がいるからだよ!大切な相手がいるのに、何でお前みたいな頭がおかしいヤツを幸せにしなきゃいけないんだ!!」
「えぇ?――……悪役令嬢は――他にもいるんだ??あぁ、隠しルートはハードモードなのね??あぁ、だからサポートキャラもヒントとかくれなかったんだぁ……!!そっかぁ――でも、どう攻略すればいいんだろう……」
あぁ――。彼女、聞こえなくなってる。ううん、聞かなくなってるって言うべきかな??隠しルートと認識してしまった時点で、それを信じ切ってしまってるんだ。
だから、都合の悪い事は隠しルートの『試練』だと思ってるらしい。ブツブツと、どうやって好感度を上げれば良いんだろう?順番とか??ううん――特別なイベント起さなきゃダメなのかしら――?
それよりも、悪役令嬢がキーポイントとか――??
グリン――と。
彼女の頭が私の方を向いた――。
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