悪役令嬢エヴァンジェリンの災難――婚約破棄ですか?――え?違うの……?

夜乃トバリ

文字の大きさ
上 下
2 / 14

エヴァンジェリン・ラナ・ゲッテンシュミット

しおりを挟む
 婚約破棄を突き付けられたのは、お昼の食堂でだったわ。
 厳しい顔をしているセドリック様――覚悟していた筈なのに何故かしら――哀しいわ……。
 けれど、王城とか学園の卒業式の舞踏会じゃなくて良かったと言うべきかしら……。何で悪役令嬢は公衆の面前で婚約を破棄されるのかしらね?
 婚約ってお家も関係してるんだから、どちらかのお家のお邸で話合うので良く無いかしら??それとも悪役令嬢である私は、公衆の面前で恥ずかしい思いをさせて、完膚なきまでに叩き潰す必要があるとまで思われてるの??
 
 ――何もして無いのだけど。

 そうなのよね――世の悪役令嬢達がどうだったかは知らないけれど、私は婚約破棄の理由に述べられているような事を一切してないのよ。変よね?
 何故か分からないのだけど、私がマリ―ロッテを苛めた事になってるみたい。正直言って、ヒロイン顔とトラブルなんて起こしたくないから近寄ったりしていないんだけど……。残念ながらそれを証明できるお友達とかいないのよ。この状況で、私の無実を証明するのって『悪魔の証明』にしかならないのよね。
 ツラツラと述べられている罪状は、教科書を破いたとか――従妹の彼女のお家の家格が低いから馬鹿にしただとか、突き飛ばしたとか色々よ?
 靴に画びょうを入れるとか、先端恐怖症の私には無理なんだけど……鋭く尖って無ければ大丈夫なのよ??だけど画びょうは無理だと思うわ、多分気が遠くなるわね。
 あ!実演してみれば良いかしら?画びょうを目の前で持てば――……ダメね……。演技だと思われる気がするわ。
 最終的に階段から突き落とされたって――良く無事だったわね、マリ―ロッテ。
 
 ――他の方にされたんじゃ無いのかしら?

 実際に破られた教科書が目の前に証拠の一つとして出されているから、誰かがこんな事をしたって事でしょう??
 マリ―ロッテは哀しそうにしているし……。
 一時期は、危ないなぁと心配したのよね……。だってマリ―ロッテ――セドリック様や他の有力貴族の御子息達と親しげだったんですもの……。
 けど、周囲の反応は微笑ましく見守るような雰囲気で……。これがヒロイン顔の威力なのか――と、何とも言えない気持ちになった記憶があるわ。
 その御子息たちも、私からマリ―ロッテを守るように立っている訳だけれど……。
 私じゃ無くて、他の人の可能性があるって教えてあげたいけれど、言っても信じて貰えないんだろうな。
 もうどうでもいいから、婚約破棄するだけじゃダメなのかしら。
 けど、おかしいのよね。誰かがやった事が悪役令嬢の効果で私の所為にされてると思ったんだけど……。マリ―ロッテがね、『私』に突き落とされたって言うのよ。
 私にそっくりな人なんて、この学園にはいないハズなんだけど……。どうしてそんな誤解したりするのかしら??
 良く分からないわ。そう思った時だった――セドリック様が完璧な証拠があるのだと言うのよ。
 小さな黒い箱が出されたわ。あれって確か最近認可された魔道具?だったかしら……。そうそう、確か動く絵が見れるとか何とか??絵が動いてるのが見れた所で、何の証拠になるのかが分からないのだけど……。
 私はセドリック様がその黒い箱を、食堂の白い壁に向けるのを見ていたわ。

 ――いったいどんな証拠なのかしら……動く絵が見られるなんて貴重な状況よね?

 私はそんな事を思いながら、壁を見ていたわ。
 周囲からヒソヒソと「やっぱり」だとか「悪役令嬢だものね――」とか言われていたけれど、正直今はあまり気にもならなかったの。だって、こんなに珍しいもの滅多に見られるものじゃないもの。
 そんな事を思っていた数分後――私はポカンと口を開けて立ちすくんでいたわ――少し前の自分の好奇心を後悔したのは、我に返ってから――。けど、我に返るのは『動く絵』を殆ど見終わった後だったのよ――だって、あんなショックな事――立ったまま意識を飛ばしてしまったって仕方がないと思うわ?!!!
____________________________________________________
 
 ポチポチ修正しながらの更新です。次の話から3人称になりますm(_ _)m
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役令嬢の大きな勘違い

神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。 もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし 封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。 お気に入り、感想お願いします!

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...