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外伝 変わり者の王子と竜
第9話 変わり者の王子と竜。
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結局あの後の話し合いの後、ガルムさんは僕達の事を気にしてくれたけれど、妊娠中の奥さんの事があるので先に帰って貰う事になった……。僕達が国に戻ったら会いに行く事になっている。
リルリリファウナには僕が帰国する事を告げると大泣きされてしまった。
可愛らしかったけれど、少し困った。
結局、僕がいつか竜に成る事を約束する事で泣きやんだけれど。ドラクルは人化の術を使えるけれど、逆の竜化の術も使えるんだとか。つまり、竜化したとしても僕は人にも戻れる訳で――それならいいやと思ったのだ。
ただし、本能を引きずり出す様なものだから僕の竜因も深くなるらしいし、おそらく竜と寿命が変わらなくなりそうだったけど。まぁ、結婚相手が竜なのだ。その方が良いよね?
アッサリ決めた僕を見たムルクさんに「気軽過ぎません?」と呆れたように言われてしまった。
寂しそうにしているリルリリファウナを抱き上げて、僕はふと竜に成って空を飛ぶ自分を想像してみた。それはとても気持ちが良さそうで――。
『いつか君と一緒に空を飛んでみたいな……』
そう言ってにっこりと笑ったら、リルリリファウナが全身真っ赤になってコクコクと頷いた。
その言葉が竜にとってプロポーズの言葉の一つだと知ったのは、大分後の事――僕が大人になった彼女に恋をして、結婚を申し込んだ時の事――。
「求婚はずっと前にされたのに――変なアレク!」
そう言って笑うリルリリファウナは今、ユクレースの王城で僕の隣に座っていた。
あれからしっかりと勉強をしたリルリリファウナは、動作一つとっても貴族の令嬢と見分けがつかない。ちゃんと竜語も人語も話せるし、何なら友好国の言語も覚えて来たらしい。
「アレクのお嫁さんになるにはこれ位出来て当然だって言われたもの……」そう言って頬を赤らめる様子はとても可愛らしいものだった。
兄はとっくに結婚しているし、何ならリリも一児の母だ。
お前の伴侶は何時来れるんだ?とそろそろ家族が煩かったので、彼女が来てくれたのは本当に嬉しかった。今日は彼女が産まれた日なのだ。そして一人立ちの日でもある。
王城に王子として戻った以上、僕は王子としての仕事を疎かには出来ない。それでもリリの師匠がエルフェルリーネさんだったし、僕は年に何度かリルリリファウナに会う事が出来た。
その度に綺麗になって行く彼女を気が付けば番いとして認識していて……。それでも告白しなかったのは、彼女が竜として成人を迎えていなかったからだ。
今日は一人立ちの儀式をした後、てっきり家族を過ごすと思っていたんだよね。だから明日、迎えに行こうと思っていたのに……まさか当日に僕の所まで来てくれるとは思わなかった。愛おしい気持が胸に満たされる。
「……もう一度、言いたかったんだ」
昔言った言葉はリルリリファウナに求婚したものでは無かったけれど、嬉しそうに話す彼女の事を傷つけたく無くて僕はそう告げた。もし昔、その言葉を言っていなくても今の僕なら同じ事を言うと思ったし。
リルリリファウナは僕の首にゴリゴリと頭を擦りつけている。野生の竜が自分の番いに匂いを付ける行為だ。女性を傍に寄せる事は無いけれど、さっき姪っ子にせがまれてダンスの練習に付き合ったばかりだったので、気になったらしい。
匂いで血縁者だと分かっているはずなのに、少しだけ独占欲の現れたその行動が自分でも驚く位に嬉しかった。だから、思わず無防備に見えているその項にキスをした。
猫が驚いたようにビクリとして顔を上げたリルリリファウナの頤を上げてキスを落す。全身真っ赤になった。
「愛してるよ」
掠れた声で、僕がそう呟けば――真っ赤になったままの彼女が、僕の服の襟元を掴みながら「私も――」と小さな声で囁くようにそう言った。
「うん?聞こえないけど――もう一回、言って?」
「私もって言ったの!」
「うん。それで、私も――何?」
笑顔でそう聞けば、リルリリファウナが涙目で「イジワル!」とそう言った。うん。意地の悪い自覚はあるよ。けど、出来れば聞きたいんだ。君の口から『愛してる』って。
何度もキスをして、おねだりして……リルリリファウナは僕の首元に頭を埋めてようやく微かに聞こえる小さな声で「私も――あ、あい し てる――……」そう言ってくれたのだった。
とても幸福な気持ちになれたので、僕が彼女を抱きしめて長いキスしたのは言うまでも無い。
この国には、初代女王が竜と結ばれたと言う童話がある……。
後の世に、この国の第2王子が竜となり――竜の姫と結ばれ幸福に暮したという童話が出来るのだけれど、僕達はまだそれを知らない――
____________________________________________________
これにて、『変わり者の王子と竜』のお話は終了です。最後までお付き合い頂きありがとうございました!
次は『外伝 鱗姫と狂犬の騎士』となりますが、少々の設定の変更等や私の方の事情で直ぐにUPは出来ないかと;;申し訳ありませんが、気長にお待ちいただければ幸いですm(_ _)m
リルリリファウナには僕が帰国する事を告げると大泣きされてしまった。
可愛らしかったけれど、少し困った。
結局、僕がいつか竜に成る事を約束する事で泣きやんだけれど。ドラクルは人化の術を使えるけれど、逆の竜化の術も使えるんだとか。つまり、竜化したとしても僕は人にも戻れる訳で――それならいいやと思ったのだ。
ただし、本能を引きずり出す様なものだから僕の竜因も深くなるらしいし、おそらく竜と寿命が変わらなくなりそうだったけど。まぁ、結婚相手が竜なのだ。その方が良いよね?
アッサリ決めた僕を見たムルクさんに「気軽過ぎません?」と呆れたように言われてしまった。
寂しそうにしているリルリリファウナを抱き上げて、僕はふと竜に成って空を飛ぶ自分を想像してみた。それはとても気持ちが良さそうで――。
『いつか君と一緒に空を飛んでみたいな……』
そう言ってにっこりと笑ったら、リルリリファウナが全身真っ赤になってコクコクと頷いた。
その言葉が竜にとってプロポーズの言葉の一つだと知ったのは、大分後の事――僕が大人になった彼女に恋をして、結婚を申し込んだ時の事――。
「求婚はずっと前にされたのに――変なアレク!」
そう言って笑うリルリリファウナは今、ユクレースの王城で僕の隣に座っていた。
あれからしっかりと勉強をしたリルリリファウナは、動作一つとっても貴族の令嬢と見分けがつかない。ちゃんと竜語も人語も話せるし、何なら友好国の言語も覚えて来たらしい。
「アレクのお嫁さんになるにはこれ位出来て当然だって言われたもの……」そう言って頬を赤らめる様子はとても可愛らしいものだった。
兄はとっくに結婚しているし、何ならリリも一児の母だ。
お前の伴侶は何時来れるんだ?とそろそろ家族が煩かったので、彼女が来てくれたのは本当に嬉しかった。今日は彼女が産まれた日なのだ。そして一人立ちの日でもある。
王城に王子として戻った以上、僕は王子としての仕事を疎かには出来ない。それでもリリの師匠がエルフェルリーネさんだったし、僕は年に何度かリルリリファウナに会う事が出来た。
その度に綺麗になって行く彼女を気が付けば番いとして認識していて……。それでも告白しなかったのは、彼女が竜として成人を迎えていなかったからだ。
今日は一人立ちの儀式をした後、てっきり家族を過ごすと思っていたんだよね。だから明日、迎えに行こうと思っていたのに……まさか当日に僕の所まで来てくれるとは思わなかった。愛おしい気持が胸に満たされる。
「……もう一度、言いたかったんだ」
昔言った言葉はリルリリファウナに求婚したものでは無かったけれど、嬉しそうに話す彼女の事を傷つけたく無くて僕はそう告げた。もし昔、その言葉を言っていなくても今の僕なら同じ事を言うと思ったし。
リルリリファウナは僕の首にゴリゴリと頭を擦りつけている。野生の竜が自分の番いに匂いを付ける行為だ。女性を傍に寄せる事は無いけれど、さっき姪っ子にせがまれてダンスの練習に付き合ったばかりだったので、気になったらしい。
匂いで血縁者だと分かっているはずなのに、少しだけ独占欲の現れたその行動が自分でも驚く位に嬉しかった。だから、思わず無防備に見えているその項にキスをした。
猫が驚いたようにビクリとして顔を上げたリルリリファウナの頤を上げてキスを落す。全身真っ赤になった。
「愛してるよ」
掠れた声で、僕がそう呟けば――真っ赤になったままの彼女が、僕の服の襟元を掴みながら「私も――」と小さな声で囁くようにそう言った。
「うん?聞こえないけど――もう一回、言って?」
「私もって言ったの!」
「うん。それで、私も――何?」
笑顔でそう聞けば、リルリリファウナが涙目で「イジワル!」とそう言った。うん。意地の悪い自覚はあるよ。けど、出来れば聞きたいんだ。君の口から『愛してる』って。
何度もキスをして、おねだりして……リルリリファウナは僕の首元に頭を埋めてようやく微かに聞こえる小さな声で「私も――あ、あい し てる――……」そう言ってくれたのだった。
とても幸福な気持ちになれたので、僕が彼女を抱きしめて長いキスしたのは言うまでも無い。
この国には、初代女王が竜と結ばれたと言う童話がある……。
後の世に、この国の第2王子が竜となり――竜の姫と結ばれ幸福に暮したという童話が出来るのだけれど、僕達はまだそれを知らない――
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これにて、『変わり者の王子と竜』のお話は終了です。最後までお付き合い頂きありがとうございました!
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