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第十二章 終わらない物語

12.都改造計画

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 翌日から、あたしたちはものすごく忙しくなった。

 とにかく、主上・東宮を始めとする若い公達の行動力が凄い。
 
 主上は大臣たちを説き伏せ(と言っても、関白と太政大臣はこの若公達の活躍で、言うなれば棚ぼた式に大臣になれたわけだから特に反対しなかったらしい)、京中にみことのりを発する。

 東宮と元信様のお兄様は京職の二人と過去の治水工事の資料を集めて、今回決壊した場所を子細に調べて検討する。
 同時に宣旨を下して、工事の人手を集める。
 給料が出るとあって、ものすごい数の人が集まったらしい。

 左右衛門督様達も坊令の坊長達に一斉に命令を出して今現在の戸籍の状況を提出させて、伊靖君や義光や蔵人頭様と一緒に救い小屋建設の細かい場所を選定し、規模を決定する。
 併せて、京中の寺に問い合わせて、病人を運び込める場所を確保する。

 右近衛大将様・権中納言様・兵部卿様・参議様は、唐から来たというお坊様と話をして、長安の都の水道事情をなんとなくではあったけど、聞きだした。
 さすが広大な中国の首都、すっごい設備があったみたい。

 それらの情報が、あたしの元に逐一届けられる。
 あたしは元信様や内侍さんといくつもファイルを作って、誰でも即座に調べられるように資料作りに励んだ。

 京職のお二人や長安のお坊様は、西の対屋にも来てくれて、さまざまな話をした。
 後で聞いたら、皆様、あたしの豊富な知識量とやらに舌を巻いていたそうだけど、令和日本に暮らす大学浪人なら別に普通だよ…

 毎晩、皆で集まって、美味しいものを食べながらその日の成果を話し合い、また意見を出し合って、翌日の行動指針を決める。

 冬が近づいているので、とりあえず救い小屋を一番に作ることにした。
 大工の人たちが判りやすく設計図を作り、治水工事のために集まった働き手の人たちの真面目な仕事によって、ものすごいスピードで出来上がっていく。

 坊令に所属する人たちが手分けして、病人を寺に振り分けて運び込む。
 宮中の典薬頭が自ら記したさまざまな治療法(あたしも及ばずながらアドバイスした)を、市井の医師たちが病人・怪我人に施す。

 太政大臣家の大工の棟梁に頼んで、大きなお炬燵こたを作ってもらった。
 だって、とにかく寒いんだよ!
 
 だだっ広い部屋に火桶がいくつか、ってだけ。
 部屋全体を温めるという発想がない。
 床は板敷だし、蔀を閉じる夜はともかく昼は御簾だけで風が普通に吹き抜ける。

 お炬燵は、大好評だった。
 皆で入って温まりながら、政治の話をする。
 ミスマッチだけど、ほっこりする感じになってとげとげしい雰囲気にはまったくならない。


 庚申待には、予定通り陶芸職人を招いて、皆で自分の食器を作った。
 あたしは、頑張っている主上へのご褒美に、湯のみを作ってあげた。

 主上はすっごく喜んでくれたけど「割った者は死刑」とか言い出して、厨の人や女房さん達が震えあがっていた。
 
 うちの使用人を苛めるのはやめてよね!
 割ったらまた作ればいいじゃん。

 こうして、寒い寒い京都の冬は足早に過ぎて行った。
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