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第十一章 露顕と三日夜の餅

2.謎だらけ…

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 「では、月子姫のお支度を」
 東宮は、式部さんと内侍さんに言い、二人は低く頭を下げる。

 「お綺麗にお成りになっていらっしゃい。
 また後ほど」
 東宮は笑って、式部さんに手を引かれてどこかへ向かうあたしを見送っている。

 笑っているのに少し、寂しそうな切ない表情…?

 あたしは東宮の様子に心を残しながら、広い廊下をひたすら歩く。
 廊下は冷たくて、素足には寒い…
 膀胱炎になりそう。

 「姫様、もう少しでございます」
 式部さんが気を遣って、言葉をかけてくれる。

 やがて大きな角を曲がって、部屋のひとつに入った。
 「姫様、お疲れ様でございました」
 部屋の中にいた数人の女性が皆、一斉に手をついて頭を下げる。

 あれ…あたし付きの女房さんと侍女さん達?
 皆、何でこんなところにいるわけ??
 
 と、見覚えのあるようなないような女性が…誰だっけ?
 「伊都子姫様…その節は大変申し訳ございませんでした」
 その人は涙ながらに、頭を床に擦り付ける。

 あっ?…ああ!
 「命婦!さんじゃないの…」
 あたしは唐突に思い出し、大きな声で言った。
 
 「はい…」
 頭を床につけたまま、命婦さんは泣き声を上げる。

 「あの、命婦は自分の行為を、たとえ関白様に脅されたことであっても、決してやってはいけなかったと大変反省して居ります。
 病気の弟を抱えて居りまして、犯罪者となった今お仕えできるお屋敷もなく、路頭に迷っておりましたところを、お殿様がご同情なさいまして、伊都子姫様なら上手に使ってくださるだろうと」
 式部さんが必死の面持ちで言う。

 「へえ…あのお父様がそんなことを…」
 あたしが言うと、式部さんは、あっと言って赤くなり、へどもどする。
 「いえ…あの…お殿様とは…治部卿様でございます…」
 
 ん?元信様?
 何で??

 「さ、さあ姫様!
 急いでお召し換えをなさってくださいませ」
 内侍さんと少輔さんが立ちあがり、あたしを御帳台に導く。

 中には、色鮮やかで豪奢な袿が衣紋掛に掛けてあった。
 「縫姫様の渾身の力作でございますよ」
 少輔さんが嬉しそうに言った。

 すごーい…
 縫姫、天才!
 って、どうしてあたしこんなの着るのよ??

 あたしは訳が分からないまま、でも誰も何も説明してくれない状況にやけっぱちになって、もうどうにでもしてくれ!!って感じで、為されるがままに着替えさせられ、髪を整えられ、厚化粧を施された。

 「まあ…お綺麗ですわ…」
 皆でうっとりとため息をつく。
 あたしもなんだか疲れてしまって、内心ため息をつく。

 女房さん達の渾身の力作となったあたしは、少輔さんに手を引かれて、しずしずとまたどこかへ向かう。
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