233 / 307
第九章 二度目の死と伊都子姫
14.ネバーランド
しおりを挟む
義光はあたしの手を取って自分の額に当てて呟くように言う。
「魂が抜けかけていて、実際、その後に身体から抜けてしまったのですよね…
また戻ってこられて本当に良かった」
顔を上げ、切なく微笑む。
「月子姫が左近衛中将殿のことを如何に愛していらっしゃるかを、初めて目の当たりにして、これ以上ないほど傷ついたのは確かですが、それでもまたこうしてお話しできてこれ以上の幸せはありません」
「弟と言われようと、絶対に諦めないと息巻いていた気持ちが、少し落ち着きました。
いや、諦めてはいないんですけど、何というか…
今までより冷静に自分と月子姫の距離を測って見られるようになったというか」
優しくあたしを抱きしめて囁く。
「これからもずっと、たぶん一生、好きです」
あたしの身体を離して、肩に手を置いたままうつむく。
「だけど、貴女は一生、私を好きになることはない。
それでもいいんです。俺が勝手に好きなだけだから」
「親が決めてきた縁談、受けようと思います。
父が、右大臣殿から『娘は左近衛中将殿に嫁がせる』と言われたと申してました」
「月子姫は、私の手の届かない憧れの人だ、ずっとこれからも。
夜空に輝く月のように」
あたしは、義光の言葉に涙が零れた。
ごめんね。好きになれなくて。
「あたしは、こうやって義光と話してるのが好きなんだよ、本当のあたしのありのままでいられて、すごく安心できる。
乗馬したり、クッキー作ったり、釣殿で話したり、とても楽しかった。
ずっとそうやって過ごしていけたらいいけど、そういうわけにはいかないよね」
あたしたちは、自らが望むと望まざるに関わらず、皆、大人になっていく。
子供でいられる時期は、もう終わりなんだね。
義光は黙ってあたしをまた抱きしめた。
ぎゅっときつく抱いて、身を離す。
「私は結婚しても、月子姫の許へ会いに来ますよ。
殿下もきっと、そうでしょう。主上もね…
右近衛大将殿や権中納言殿も、そうかもしれないな。
私たちは永遠の子供ですよ、月子姫の御前では」
ネバーランドか。
あたしは、ウェンディではなくて、ピーターパンなのね。
ふふっとあたしは笑った。
そうだね、そうやってずっと皆で歳を重ねていけたらいいね。
「魂が抜けかけていて、実際、その後に身体から抜けてしまったのですよね…
また戻ってこられて本当に良かった」
顔を上げ、切なく微笑む。
「月子姫が左近衛中将殿のことを如何に愛していらっしゃるかを、初めて目の当たりにして、これ以上ないほど傷ついたのは確かですが、それでもまたこうしてお話しできてこれ以上の幸せはありません」
「弟と言われようと、絶対に諦めないと息巻いていた気持ちが、少し落ち着きました。
いや、諦めてはいないんですけど、何というか…
今までより冷静に自分と月子姫の距離を測って見られるようになったというか」
優しくあたしを抱きしめて囁く。
「これからもずっと、たぶん一生、好きです」
あたしの身体を離して、肩に手を置いたままうつむく。
「だけど、貴女は一生、私を好きになることはない。
それでもいいんです。俺が勝手に好きなだけだから」
「親が決めてきた縁談、受けようと思います。
父が、右大臣殿から『娘は左近衛中将殿に嫁がせる』と言われたと申してました」
「月子姫は、私の手の届かない憧れの人だ、ずっとこれからも。
夜空に輝く月のように」
あたしは、義光の言葉に涙が零れた。
ごめんね。好きになれなくて。
「あたしは、こうやって義光と話してるのが好きなんだよ、本当のあたしのありのままでいられて、すごく安心できる。
乗馬したり、クッキー作ったり、釣殿で話したり、とても楽しかった。
ずっとそうやって過ごしていけたらいいけど、そういうわけにはいかないよね」
あたしたちは、自らが望むと望まざるに関わらず、皆、大人になっていく。
子供でいられる時期は、もう終わりなんだね。
義光は黙ってあたしをまた抱きしめた。
ぎゅっときつく抱いて、身を離す。
「私は結婚しても、月子姫の許へ会いに来ますよ。
殿下もきっと、そうでしょう。主上もね…
右近衛大将殿や権中納言殿も、そうかもしれないな。
私たちは永遠の子供ですよ、月子姫の御前では」
ネバーランドか。
あたしは、ウェンディではなくて、ピーターパンなのね。
ふふっとあたしは笑った。
そうだね、そうやってずっと皆で歳を重ねていけたらいいね。
1
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる