171 / 307
第七章 宮中
7.牡蠣中毒
しおりを挟む
「洗浄と消毒よ!
お風呂と厨で、大量のお湯を沸かして!
あと、綺麗な布をたくさん!」
あたしは大声で言い、女房さん達が、訳が分からないながらも、指示通り動き始める。
「元信様、着替えはある?
今、着ているものは全部脱いで洗わないといけないわ。
更衣様の御召し物で、汚物が付着したものも全部!」
あたしの迫力に、元信様は「あ、はい」と言って、女房さんに手伝ってもらって着替えを始める。
ちょ、あっちでやってっ!
「姉上!」
「月子姫!」
ちょうどいいところに、伊靖君と義光が走ってくる。
「二人で、右大臣家に走って!
消毒用の火ばさみと、金盥をたくさん持ってくるのよ!
厨司長に聞けばわかる!」
「はい!」
と二人は声を揃えて踵を返して、厩舎に向かって走っていった。
そのころには、中宮様や他の女御様のところでも悲鳴が上がり始めていた。
皆、岩牡蠣食べたんだ…
こりゃあ、大変。
「月子姫、どうした!」
東宮と権中納言様、右近衛大将様も急いでこちらへ来る。
「こっち来ちゃダメ!」
と言ってあたしは部屋の方へ移動しながら、あたしは三人に向き直った。
「昨日の夕食の、岩牡蠣による、食中毒だと思うの。
他の女御様のところも同じだと思うわ」
「あ、本当だ。
中宮の女房が走り回ってる」
東宮が呟く。
「ノロウィルスなら、安静にして脱水症状さえ防げば、二、三日で治るわ。
怖いのは感染の拡大よ。これを一番に考えないと。
今、お湯を沸かして煮沸消毒できるものは全部して、綺麗に清拭する」
「あなた方は、中宮様や他の女御様のところへ行って、消毒と洗浄に協力してくれるように頼んで!
吐瀉物と汚物には絶対触らないこと!
あと、あっそうだ!」
あたしは急いで立ち去ろうとした三人を呼び止めた。
三人は「何ですか?」と立ち止まって振り返る。
「CH₂5OH とCH₃COOH!」あたしは思わず化学式を口走る。
「は?」
と三人は言って顔を見合わせる。
「姫、宇宙語ではなく現代語を…」
東宮が苦笑いする。
「エタノールと酢酸よ!
ってああ、えーっと、清酒とお酢!
消毒に使うから!」
「了解です」右近衛大将様が笑って言う。
三人で手分けして、それぞれの方向へ走り出す。
厨の方から下人が、たくさんのお湯と布を持ってきた。
「芥を捨てる、大きな穴のようなものはある?」
とあたしが訊くと
「はい、東の端っこにごぜえます」
と頷く。
「麻の袋をたくさん持ってきてくれる?
拭いた布はそこへ入れて、燃やせると良いんだけど、とりあえずその穴に捨てましょう」
あたしが言うと下人たちは「はい!」と言ってまた麻袋を取りに行った。
「あの…姫様、どのようにしたら宜しいでしょうか」
おずおずと女房さん達が訊いてくる。
「お湯に浸した布を絞って、そこらじゅうを拭くんだけど…
熱くて触れないわよね」
「姫様!とりあえずここにある火ばさみと盥を持って参りました!」
と内侍さんと式部さんが、侍女さん達に火ばさみと盥を持たせて、急いでこちらへ来る。
「ありがとう!
じゃあ、とにかく清掃しましょう。
みんな、吐瀉物と汚物には絶対に触らないように。
できるだけ軽装になって!」
あたしは声を張って指示を出した。
お風呂と厨で、大量のお湯を沸かして!
あと、綺麗な布をたくさん!」
あたしは大声で言い、女房さん達が、訳が分からないながらも、指示通り動き始める。
「元信様、着替えはある?
今、着ているものは全部脱いで洗わないといけないわ。
更衣様の御召し物で、汚物が付着したものも全部!」
あたしの迫力に、元信様は「あ、はい」と言って、女房さんに手伝ってもらって着替えを始める。
ちょ、あっちでやってっ!
「姉上!」
「月子姫!」
ちょうどいいところに、伊靖君と義光が走ってくる。
「二人で、右大臣家に走って!
消毒用の火ばさみと、金盥をたくさん持ってくるのよ!
厨司長に聞けばわかる!」
「はい!」
と二人は声を揃えて踵を返して、厩舎に向かって走っていった。
そのころには、中宮様や他の女御様のところでも悲鳴が上がり始めていた。
皆、岩牡蠣食べたんだ…
こりゃあ、大変。
「月子姫、どうした!」
東宮と権中納言様、右近衛大将様も急いでこちらへ来る。
「こっち来ちゃダメ!」
と言ってあたしは部屋の方へ移動しながら、あたしは三人に向き直った。
「昨日の夕食の、岩牡蠣による、食中毒だと思うの。
他の女御様のところも同じだと思うわ」
「あ、本当だ。
中宮の女房が走り回ってる」
東宮が呟く。
「ノロウィルスなら、安静にして脱水症状さえ防げば、二、三日で治るわ。
怖いのは感染の拡大よ。これを一番に考えないと。
今、お湯を沸かして煮沸消毒できるものは全部して、綺麗に清拭する」
「あなた方は、中宮様や他の女御様のところへ行って、消毒と洗浄に協力してくれるように頼んで!
吐瀉物と汚物には絶対触らないこと!
あと、あっそうだ!」
あたしは急いで立ち去ろうとした三人を呼び止めた。
三人は「何ですか?」と立ち止まって振り返る。
「CH₂5OH とCH₃COOH!」あたしは思わず化学式を口走る。
「は?」
と三人は言って顔を見合わせる。
「姫、宇宙語ではなく現代語を…」
東宮が苦笑いする。
「エタノールと酢酸よ!
ってああ、えーっと、清酒とお酢!
消毒に使うから!」
「了解です」右近衛大将様が笑って言う。
三人で手分けして、それぞれの方向へ走り出す。
厨の方から下人が、たくさんのお湯と布を持ってきた。
「芥を捨てる、大きな穴のようなものはある?」
とあたしが訊くと
「はい、東の端っこにごぜえます」
と頷く。
「麻の袋をたくさん持ってきてくれる?
拭いた布はそこへ入れて、燃やせると良いんだけど、とりあえずその穴に捨てましょう」
あたしが言うと下人たちは「はい!」と言ってまた麻袋を取りに行った。
「あの…姫様、どのようにしたら宜しいでしょうか」
おずおずと女房さん達が訊いてくる。
「お湯に浸した布を絞って、そこらじゅうを拭くんだけど…
熱くて触れないわよね」
「姫様!とりあえずここにある火ばさみと盥を持って参りました!」
と内侍さんと式部さんが、侍女さん達に火ばさみと盥を持たせて、急いでこちらへ来る。
「ありがとう!
じゃあ、とにかく清掃しましょう。
みんな、吐瀉物と汚物には絶対に触らないように。
できるだけ軽装になって!」
あたしは声を張って指示を出した。
1
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる