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第五章 四人きょうだい
24.庚申待の終わり
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やがてしらじらと夜が明けてきて、庚申待の長い夜は終わった。
「こんなに楽しい庚申待は初めてだ。
また次回も、何とかして宮中を抜け出してきますよ」
東宮があたしの手を取って口づけた。
やめろ、そんで次回とか絶対くんな。
あたしは東宮の手を振りほどく。
地位も高くて権力のある東宮に、こんなに失礼なことを何回もしてるのに、どうしてこの人は気づかないふりをするんだろう。
怒るでもなく、かと言ってやめるわけでもない。
何度でも同じことをする。
あたしに見せている通りの人なんだろうか。
そんな疑問が一瞬、頭をかすめる。
本当は何か…企みがあって、こういう単純な人のふりをしているの?
まさかね。
あたし自身に、宮廷で影響を及ぼすような力があるわけじゃない。
右大臣である父親だって失脚して、閑居の身だし。
右近衛大将様もあたしの両手を取って、顔を近づける。
だから近いんだよあんたはいちいち。
近眼なの?
「月子姫は今、お馬の稽古をなさって居られるとか。
ぜひ、一緒に都の外まで遠乗りいたしましょう。
もし宜しければ民部大輔ではなく、私が乗馬をご教授申し上げても良いのですよ」
「ちょっ…」
義光が慌てたように声を上げる。
「ははは。ぜひご一考くださいね、ではまたお会いしましょう」
と笑って東宮の後に続き、外へ出て行く。
驚いたことに、権中納言様もあたしの手を取る。
左手に巻かれた、白い包帯が痛々しい。
「火傷、早く治られますように。
お怪我をさせてしまって、本当に申し訳ありません」
あたしが謝ると、権中納言様は「大丈夫です」と微笑んであたしの手を右手でぎゅっと握った。
「お名残り惜しいです、殿下ではないですが、こんなに楽しい庚申待は今までに経験がありません。
本当にありがとう。
また、来てもよろしいですか」
あたしは、一瞬、答えに窮する。
でも、事情を知らない水無月会のメンバーや元信様の前で、首を縦に振るしかなかった。
権中納言様は本当に嬉しそうににっこりする。
表情豊かなイケメンって無敵だなあ…
つい見惚れちゃうよ。
押しかけ公達が三人やっと帰ると、部屋の空気がはあーっと弛緩した。
「つっかれた~…」と、皆、呟く。
「お疲れ様でした。
きょうだい会の予定だったのに、ごめんなさいね、わたくしのせいね」
あたしが謝ると、伊靖君と義光が慌てたように言う。
「いえ、私たちが、全部しゃべってしまったのがいけなかったのです。
あまりにも矢継ぎ早の質問攻めに、すべてゲロってしまうしかなくて…」
あたしの横で、元信様がプッと噴き出す。
「凄かったですね、陛下と殿下と右近衛大将様が我先に二人を攻撃してましたね。
あれは仕方ないですよ。
中宮も関白殿も驚いて、止めに入っていらっしゃいましたよ」
「水無月会は、また開催しましょうね。
今日はこれで閉会。
おやすみなさい」
やっと朝だよ~
もうこんなのが60日毎にあるとか、ホントやってられないわぁ。
「こんなに楽しい庚申待は初めてだ。
また次回も、何とかして宮中を抜け出してきますよ」
東宮があたしの手を取って口づけた。
やめろ、そんで次回とか絶対くんな。
あたしは東宮の手を振りほどく。
地位も高くて権力のある東宮に、こんなに失礼なことを何回もしてるのに、どうしてこの人は気づかないふりをするんだろう。
怒るでもなく、かと言ってやめるわけでもない。
何度でも同じことをする。
あたしに見せている通りの人なんだろうか。
そんな疑問が一瞬、頭をかすめる。
本当は何か…企みがあって、こういう単純な人のふりをしているの?
まさかね。
あたし自身に、宮廷で影響を及ぼすような力があるわけじゃない。
右大臣である父親だって失脚して、閑居の身だし。
右近衛大将様もあたしの両手を取って、顔を近づける。
だから近いんだよあんたはいちいち。
近眼なの?
「月子姫は今、お馬の稽古をなさって居られるとか。
ぜひ、一緒に都の外まで遠乗りいたしましょう。
もし宜しければ民部大輔ではなく、私が乗馬をご教授申し上げても良いのですよ」
「ちょっ…」
義光が慌てたように声を上げる。
「ははは。ぜひご一考くださいね、ではまたお会いしましょう」
と笑って東宮の後に続き、外へ出て行く。
驚いたことに、権中納言様もあたしの手を取る。
左手に巻かれた、白い包帯が痛々しい。
「火傷、早く治られますように。
お怪我をさせてしまって、本当に申し訳ありません」
あたしが謝ると、権中納言様は「大丈夫です」と微笑んであたしの手を右手でぎゅっと握った。
「お名残り惜しいです、殿下ではないですが、こんなに楽しい庚申待は今までに経験がありません。
本当にありがとう。
また、来てもよろしいですか」
あたしは、一瞬、答えに窮する。
でも、事情を知らない水無月会のメンバーや元信様の前で、首を縦に振るしかなかった。
権中納言様は本当に嬉しそうににっこりする。
表情豊かなイケメンって無敵だなあ…
つい見惚れちゃうよ。
押しかけ公達が三人やっと帰ると、部屋の空気がはあーっと弛緩した。
「つっかれた~…」と、皆、呟く。
「お疲れ様でした。
きょうだい会の予定だったのに、ごめんなさいね、わたくしのせいね」
あたしが謝ると、伊靖君と義光が慌てたように言う。
「いえ、私たちが、全部しゃべってしまったのがいけなかったのです。
あまりにも矢継ぎ早の質問攻めに、すべてゲロってしまうしかなくて…」
あたしの横で、元信様がプッと噴き出す。
「凄かったですね、陛下と殿下と右近衛大将様が我先に二人を攻撃してましたね。
あれは仕方ないですよ。
中宮も関白殿も驚いて、止めに入っていらっしゃいましたよ」
「水無月会は、また開催しましょうね。
今日はこれで閉会。
おやすみなさい」
やっと朝だよ~
もうこんなのが60日毎にあるとか、ホントやってられないわぁ。
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