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第四章 上達部との交流

12.二の姫の病状とまたも突然の来訪

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 翌日は、陰陽師の予言通り雨だった。
 うーん残念。
 淡香花に会いたかったわ。

 二の姫の玄米食の効果は出始めているだろうか。
 食餌療法に切り替えてから、1週間近く経つけど…
 気にはなっているのだけど、なんとなく部屋を訪ねる勇気がでなくて、そのままにしていた。

 東宮は、あたしのところに突然来たり、やたらたくさんの贈り物をしたり、ほぼ毎日文を寄越したりしているくせに、二の姫にはさっぱり音沙汰がないらしい。
 あたしの望んでいることではないとはいえ、二の姫になんだか申し訳なくて、自分では行けなかったので衛門さんに頼んで、様子を訊いてきてもらった。

 衛門さんはしばらくして戻ってきて、さっそく報告してくれる。
 「二の姫様におかれましては、ここ2,3日、とみに体調が良くおなり遊ばしているそうでございます。
 本日も起き上がって居られて、御息がお苦しそうなご様子もありませんでした」

 ああ、良かった。
 あたしは胸をなでおろす。

 「姫様に直に会ってお礼をおっしゃられたいと、明日辺りから歩く練習をなさるそうでございます。
 本当にお元気なご様子で、お声に力があると申しますか、張りがございました」

 本音は東宮に会いたいからなんだろうな…
 でもあまり無理しないでほしいな。
 あたしにお礼なんかいいから。

 午後、蔀を上げてしとしとと降り続く雨を眺めていると、元信様にすごく会いたくなった。
 今日は来られるかな。
 仕事忙しいみたいで、なかなか会えないのが寂しい。

 と、元信様の幻影が見えた。
 あれ?あたしは目をこする。
 幻じゃ…ない?

 濡れた身体の水滴を払いながら、外廊下に立って、あたしに笑いかける。
 「姫、東宮殿下と、権中納言ごんのちゅうなごん様がお見えになります。
 急ですみませんが、お支度を願います」

 はっ?
 東宮と…誰だって?

 またもや、あたし付きの女房さん達は支度にバタバタと走り回る。
 今日は伊靖君付きの少輔さんや、小侍従さんも助っ人で来てくれている。
 申し訳ない…

 「何でいつもこんなに急なんでしょう…
 わたくし、余程の暇人だと思われているのかしら」
 立てまわした几帳の中で元信様と並んで座り、つい愚痴る。

 元信様は苦笑する。
 「東宮殿下のお気に入りになってしまうのも大変ですね。
 まあでも、今日は殿下の御用事に従うということで、主上から命じられている仕事を免除していただけて、こんな刻限からお会いできたので良しとしていただけませんか」

 元信様は手を伸ばしてあたしの頬に触れ「愛しい姫、会いたかった」と囁く。
 そしてゆっくり顔を近づけて唇にキスする。

 元信様の仕事だけ免除してくれて、東宮と誰か知らない人は来ないでほしいな。
 あたしは心の中でため息をついた。
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