95 / 307
第四章 上達部との交流
12.二の姫の病状とまたも突然の来訪
しおりを挟む
翌日は、陰陽師の予言通り雨だった。
うーん残念。
淡香花に会いたかったわ。
二の姫の玄米食の効果は出始めているだろうか。
食餌療法に切り替えてから、1週間近く経つけど…
気にはなっているのだけど、なんとなく部屋を訪ねる勇気がでなくて、そのままにしていた。
東宮は、あたしのところに突然来たり、やたらたくさんの贈り物をしたり、ほぼ毎日文を寄越したりしているくせに、二の姫にはさっぱり音沙汰がないらしい。
あたしの望んでいることではないとはいえ、二の姫になんだか申し訳なくて、自分では行けなかったので衛門さんに頼んで、様子を訊いてきてもらった。
衛門さんはしばらくして戻ってきて、さっそく報告してくれる。
「二の姫様におかれましては、ここ2,3日、頓に体調が良くおなり遊ばしているそうでございます。
本日も起き上がって居られて、御息がお苦しそうなご様子もありませんでした」
ああ、良かった。
あたしは胸をなでおろす。
「姫様に直に会ってお礼をおっしゃられたいと、明日辺りから歩く練習をなさるそうでございます。
本当にお元気なご様子で、お声に力があると申しますか、張りがございました」
本音は東宮に会いたいからなんだろうな…
でもあまり無理しないでほしいな。
あたしにお礼なんかいいから。
午後、蔀を上げてしとしとと降り続く雨を眺めていると、元信様にすごく会いたくなった。
今日は来られるかな。
仕事忙しいみたいで、なかなか会えないのが寂しい。
と、元信様の幻影が見えた。
あれ?あたしは目をこする。
幻じゃ…ない?
濡れた身体の水滴を払いながら、外廊下に立って、あたしに笑いかける。
「姫、東宮殿下と、権中納言様がお見えになります。
急ですみませんが、お支度を願います」
はっ?
東宮と…誰だって?
またもや、あたし付きの女房さん達は支度にバタバタと走り回る。
今日は伊靖君付きの少輔さんや、小侍従さんも助っ人で来てくれている。
申し訳ない…
「何でいつもこんなに急なんでしょう…
わたくし、余程の暇人だと思われているのかしら」
立てまわした几帳の中で元信様と並んで座り、つい愚痴る。
元信様は苦笑する。
「東宮殿下のお気に入りになってしまうのも大変ですね。
まあでも、今日は殿下の御用事に従うということで、主上から命じられている仕事を免除していただけて、こんな刻限からお会いできたので良しとしていただけませんか」
元信様は手を伸ばしてあたしの頬に触れ「愛しい姫、会いたかった」と囁く。
そしてゆっくり顔を近づけて唇にキスする。
元信様の仕事だけ免除してくれて、東宮と誰か知らない人は来ないでほしいな。
あたしは心の中でため息をついた。
うーん残念。
淡香花に会いたかったわ。
二の姫の玄米食の効果は出始めているだろうか。
食餌療法に切り替えてから、1週間近く経つけど…
気にはなっているのだけど、なんとなく部屋を訪ねる勇気がでなくて、そのままにしていた。
東宮は、あたしのところに突然来たり、やたらたくさんの贈り物をしたり、ほぼ毎日文を寄越したりしているくせに、二の姫にはさっぱり音沙汰がないらしい。
あたしの望んでいることではないとはいえ、二の姫になんだか申し訳なくて、自分では行けなかったので衛門さんに頼んで、様子を訊いてきてもらった。
衛門さんはしばらくして戻ってきて、さっそく報告してくれる。
「二の姫様におかれましては、ここ2,3日、頓に体調が良くおなり遊ばしているそうでございます。
本日も起き上がって居られて、御息がお苦しそうなご様子もありませんでした」
ああ、良かった。
あたしは胸をなでおろす。
「姫様に直に会ってお礼をおっしゃられたいと、明日辺りから歩く練習をなさるそうでございます。
本当にお元気なご様子で、お声に力があると申しますか、張りがございました」
本音は東宮に会いたいからなんだろうな…
でもあまり無理しないでほしいな。
あたしにお礼なんかいいから。
午後、蔀を上げてしとしとと降り続く雨を眺めていると、元信様にすごく会いたくなった。
今日は来られるかな。
仕事忙しいみたいで、なかなか会えないのが寂しい。
と、元信様の幻影が見えた。
あれ?あたしは目をこする。
幻じゃ…ない?
濡れた身体の水滴を払いながら、外廊下に立って、あたしに笑いかける。
「姫、東宮殿下と、権中納言様がお見えになります。
急ですみませんが、お支度を願います」
はっ?
東宮と…誰だって?
またもや、あたし付きの女房さん達は支度にバタバタと走り回る。
今日は伊靖君付きの少輔さんや、小侍従さんも助っ人で来てくれている。
申し訳ない…
「何でいつもこんなに急なんでしょう…
わたくし、余程の暇人だと思われているのかしら」
立てまわした几帳の中で元信様と並んで座り、つい愚痴る。
元信様は苦笑する。
「東宮殿下のお気に入りになってしまうのも大変ですね。
まあでも、今日は殿下の御用事に従うということで、主上から命じられている仕事を免除していただけて、こんな刻限からお会いできたので良しとしていただけませんか」
元信様は手を伸ばしてあたしの頬に触れ「愛しい姫、会いたかった」と囁く。
そしてゆっくり顔を近づけて唇にキスする。
元信様の仕事だけ免除してくれて、東宮と誰か知らない人は来ないでほしいな。
あたしは心の中でため息をついた。
1
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる