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第四章 上達部との交流

1.東宮の来訪

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 翌日、あたしはうまや舎人とねりを呼んで、あたしにも乗馬ができないか訊いてみた。
 「とんでもねえ!姫様正気ですかい」
 というのが解答だった。

 乗馬、楽しそうなんだけどなあ…
 別に外に行けなくたって良いんだよ。
 この広大なお屋敷の中で乗れればさ。

 うーん。
 元信様に頼んでみるか。
 
 午後になってもうすぐおやつの時間♪という頃、あたしは女房さん達にせがまれてオセロをしていた。
 大工の棟梁に頼んで、木材でオセロの駒とボードを作ってもらったら、結構いい出来栄えでビックリした。
 棟梁は「こういう細工の得意な奴がいますんで、作らせますわ」と請け負ってくれたんだけど、結構すぐに出来上がり「もっといい材料で作りたいと言っていて、これはとりあえずの試作品だそうで」と笑って持ってきた。

 貝とか黒檀とか使って、高級囲碁ばりのオセロを作ってくれているらしい。
 イヤなんか、たかがオモチャにそんな材料と手間勿体ないなあ…
 
 あたしは年季の差というかやり方を知ってるから、女房さん達には絶対勝っちゃうので、白勝て黒勝てと観戦していた。

 その時、部屋の外が騒がしくなり「伊靖様!」「お待ちください!」という声が聴こえた。
 またなんかやってんのかアイツは…
 とあたしは御簾を上げて、蔀の上から身を乗り出して、外廊下を見た。
 案の定、あまり上手ではない手さばきで、白馬に乗った伊靖君が「姉上!」とやって来る。

 あたしの前で停まり「東宮殿下がお越しあそばします!」大きな声で言う。
 「えっ本人が来るの?」
 あたしが思わず庶民の言葉で訊くと、気づかないのか「そうです!ここへ御馬をおつけになられます。お支度を!」と叫んで向きを変え、また大門の方へ向かって馬を駆っていった。

 たかが蜂蜜と胡麻油なんて、誰かに届けさせりゃいいのに。
 っていうか、それが普通でしょ?
 なんでわざわざ本人が…
 
 とか思っている間に、慌ただしく先触れの声がし、あたしは大慌ての女房さん達に部屋の中へ引っ張り込まれ、床に座らせられる。
 女房さん達は几帳をあたしの周りに立てまわし、下部の蔀を外して御簾を上げる。
 畳を重ねて、東宮の座る場所を作って綺麗に拭き清める。
 
 ったく、ワガママ皇子は…
 急なんだよいつも!

 東宮は外廊下のきざはしに馬を寄せると優雅に降り立つ。
 さすがに貴公子だけあって、立ち居振る舞いにいちいち品があるわ。
 女房さん達もうっとりしているのが判る。

 「伊都子姫、ご機嫌はいかがですか。
 例のもの、お持ちしましたよ」
 と爽やかに笑いながら入ってきて、畳の上に座る。
 あたしは平伏したまま「一昨日に次いでの突然のお越し、妹が大変喜んでおりますことと存じます」と言った。
 
 あんたは妹の婚約者だっ!
 お殿様に軽々しく近づくなと言われてんだよ!
 しかも可愛い妹は、あんたに惚れてんだよ!

 というオーラを全身にみなぎらせる。
 東宮は「あ…はは、それは何より」と頬をかいた。
 空気読んで、二の姫に会ってさっさとお帰り!
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