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第三章 賀茂祭・露頭の儀

16.蜂蜜と胡麻油の使い道

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 「料理に…?まあ、そもそも食品だから食べること自体に不思議はないが…」
 考え込むように東宮は呟く。
 「ちなみにどんな料理に使うのですか?
 蜂蜜と胡麻油というのは…」

 あたしは、考え考え、口を開く。
 「そうですわね…
 蜂蜜は甘味として、パンケーキやどら焼きなんかも宜しいし。
 ナッツやフルーツのはちみつ漬けも美味しくて汎用性が高いです」

 「胡麻油は、やっぱり炒め物とか揚げ物!
 香りが良いので重宝しますよね。
 煮物や汁物に一滴入れるだけでも、香りが引き立ちますし」
 「あの、姫、姫?」
 東宮が慌てたように、あたしの際限なく続く独り言を遮る。

 「何をおっしゃってるか全然判りません。
 料理に詳しくない私にも解るようにお話しくださいますか?」

 あ、いっけね。つい夢中になっちゃって。
 英語っつうか、現代語を混ぜてしまったわ。
 普段は気をつけてるんだけど…

 あたしは笑ってごまかす。
 「殿方には少々、難しいお話でございましたかしら。
 わたくしの創作料理に使いたいと存じておりますの」

 「あ、そういえば、山鳥の唐揚げとやら申す料理、姫様のご発案だとか。
 とても美味しゅうございましたわ。
 伊靖様も旨い旨いと召し上がって居られて…」

 「本当に?良かったわ」
 あたしは少輔さんの言葉ににっこりする。
 そうでしょ、美味しいでしょ。

 「今日も料理長に頼んで、けんちんうどんと茶碗蒸しを作ってもらってるのよ。
 わたくしも今から楽しみで」
 うふふふ。
 笑いが止まらない。

 東宮はまたきょとんとした顔であたしたちを見ていたが、閉じた扇で自分の掌をパンと叩いた。
 「それはどのような料理なのか、私も相伴させてください。
 宮中の、珍しいだけの美味くもない冷めた料理にはもう飽きた。
 姫の創作料理とやらを、私も食べてみたい」

 えーっ?!
 東宮が、うちでご飯食べるのっ?!
 そ、そんなこと可能なの?
 あたしと少輔さんは思わず顔を見合わせる。
 
 東宮は思い立ったら即行動の人のようで(のちにあたしは大変な目に遭う)、牛車の外を警護しながら馬で付き添っていた従者に何事か囁く。
 従者の人は「それは…、」「そういうわけには…」とかだいぶ抵抗してたけど、根負けしたのか言い負かされたのか、馬のスピードを上げて先へ行った。

 少輔さんも、右大臣家の家来にあれこれと指示を出す。
 緊張した声で「はっ!承知いたしました!」と言うと、駆け出して行く。

 にわかに牛車の周りが騒然とし、あたしは落ち着かない気持ちになる。
 余計なこと言っちゃったかなあ、あたし…
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