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第三章 賀茂祭・露頭の儀

12.路頭の儀・2

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 あたしたちは割籠わりごを受け取り、お昼ご飯にする。
 ほしいを冷たい水に溶いてふやかして食べる。
 水浸しのご飯は美味しくないけど、何より冷たさが有り難い。
 
 イワシを干したもの、蒸し鮑、などいつも食べているものも、外で食べると何となく美味しく感じるよね。
 水菓子には、無花果!
 イチジク好きなんだよなあ…
 フレッシュもいいけど、ドライも良い。

 あれ…
 あたしは内侍さんの様子を見て、食事の手を止めた。
 「内侍、どうしたの?
 顔色が悪いわ」

 「あ…はい。
 実は今朝から、あまり調子が良くなくて…」
 内侍さんは青い顔で俯く。

 えーっ!
 気づかなかった。

 「大丈夫?横になる?」
 式部さんの空いたスペースに寝かせる。
 うーんでも、あと何時間もこの姿勢は無理だよなあ…
 あたしは外の衛士に声をかけた。

 隊長さんが来て牛車の前でかしこまる。
 あたしは網代車あじろぐるまを急いで用意できるか訊いた。
 隊長さんは、すぐに用意できると答える。

 おお、さすが右大臣家の警備隊長。
 しごできだわ!
 行き届いてる!

 内侍さんは申し訳ながリ、残念がりながらも、網代車に乗って先にお屋敷に帰っていった。
 身体が相当辛かったんだろう。
 我慢させちゃって悪かったなあ。

 その後、あたしと衛門さんと少輔さんは、3人で路頭の儀を楽しんだ。
 騎馬の男性が次々と通り過ぎていく。
 
 華やかに着飾っていて、この時代の男性はお洒落だな~と感心する。
 あたしも見習わなくては。

 「あ、左近衛中将様ですわ!」
 衛門さんが嬉しそうに言った。
 偉そうな人の後ろについて、ゆっくりと馬を進めてくる。
 
 あの黒い馬だ。
 飾り立てられて、漆黒のボディがさらにシャープに見える。

 左近衛中将様!
 あたしは大声を出したい衝動を、辛うじて抑えた。

 深緋の束帯を美しく着こなして、真っすぐに前を見据えて騎乗する姿は、最近会ってないせいもあるのか、一番素敵に見えた。

 あたしの車の前を通り過ぎるとき、ちらっと一瞬、こちらを見た。
 衛門さんと少輔さんが笑いをこらえている。
 あたしはどんな顔をしていいか判らなくて、扇で顔を隠した。

 列が終わりに近づいたころ、行直さんがあたしの車に来て「殿からでございます」と手紙を渡してくれた。
 また来れないとかいうヤツでしょ…もう嫌だよいい加減。
 嫌々開いてみると『貴女の乗る車が輝いて見えました。今日は何としても伺います』と書いてあった。

 あたしは久しぶりに気分が浮上するのを感じだ。
 単純だな~
 でも嬉しい!
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