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第三章 賀茂祭・露頭の儀
6.料理長の話
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あたしは柚子の皮の方も開けてみた。
あ、良い香り。
薫物に使うとどうなるかな。
すこし柑橘系の香りを足すとあたしの好きな香りになりそうだと思ったから、料理長に頼んでみたのだった。
「いかがでございますか」
料理長は心配そうな声音。
「うん、大丈夫よ。どうもありがとう」
あたしが言うと、「左様でございますか」とほっとした声が聞こえる。
「姫様、厨房の改装が終わりました。
お屋敷内のお散歩の折にでも、ぜひ一度、ご覧になりにおいでください。
とても清潔になりまして、私どもは勿論、出入りの業者やお屋敷の下働きの者共も大変喜んでおります」
「あ、そうなの?結構早かったわね。うん、見に行くわ」
「ゆらも、お姫様にお会いしたいと申しております」
「ゆら?」
「あの時、みづに叱られていた少女にございます。
ゆらは両親を流行り病で亡くした孤児でございまして、お殿様の御篤志によってお屋敷の下働きをさせていただいておる子でございます」
「まあ…」
あの幼い子が。可哀相に。
「お姫様がかばってくださって、その後も気にかけてくださっていると伝えたところ、お姫様の為に仕事を頑張ると申しまして、見違えるようになっております」
いや別に…あたしは何も…
「そう。わたくしも嬉しいわ。
じゃあ、ゆらちゃんにも会いに行きましょう」
あたしがそう言うと、料理長は「ゆらも喜びます」と頭を下げた。
「あ、それから。大事な話を忘れておりました。
荘園の方から胡麻油が、少しですが届きました。
本日、山鳥の唐揚げなるものを作ってみようかと」
「ほんとっ?!」
あたしは料理長の言葉に被せるように訊いた。
わーい!
唐揚げ食べられるっ!
「山鳥に塩をすりこんでしばらく置き、麦の粉をつけて、胡麻油で揚げれば宜しいのですね?」
「そうそう」
「承知いたしました」
と頭を下げて、料理長はあたしから干し椎茸を受け取る。
「では、失礼申し上げます」
と言って厨房へいそいそと戻っていった。
ああ、唐揚げ…
あ、いけない、よだれが…
左近衛中将様は、唐揚げを食べたらなんて言うかしら。
驚いて、それからにっこり笑うかな?
あたしは幸せな妄想から、急に現実に引き戻される。
そうだ、今日来ないんだ。
流鏑馬神事の前日からだから、もう三日。
左近衛中将様と一緒に美味しいもの食べたい。
左近衛中将様に会いたいよぅ…
あ、良い香り。
薫物に使うとどうなるかな。
すこし柑橘系の香りを足すとあたしの好きな香りになりそうだと思ったから、料理長に頼んでみたのだった。
「いかがでございますか」
料理長は心配そうな声音。
「うん、大丈夫よ。どうもありがとう」
あたしが言うと、「左様でございますか」とほっとした声が聞こえる。
「姫様、厨房の改装が終わりました。
お屋敷内のお散歩の折にでも、ぜひ一度、ご覧になりにおいでください。
とても清潔になりまして、私どもは勿論、出入りの業者やお屋敷の下働きの者共も大変喜んでおります」
「あ、そうなの?結構早かったわね。うん、見に行くわ」
「ゆらも、お姫様にお会いしたいと申しております」
「ゆら?」
「あの時、みづに叱られていた少女にございます。
ゆらは両親を流行り病で亡くした孤児でございまして、お殿様の御篤志によってお屋敷の下働きをさせていただいておる子でございます」
「まあ…」
あの幼い子が。可哀相に。
「お姫様がかばってくださって、その後も気にかけてくださっていると伝えたところ、お姫様の為に仕事を頑張ると申しまして、見違えるようになっております」
いや別に…あたしは何も…
「そう。わたくしも嬉しいわ。
じゃあ、ゆらちゃんにも会いに行きましょう」
あたしがそう言うと、料理長は「ゆらも喜びます」と頭を下げた。
「あ、それから。大事な話を忘れておりました。
荘園の方から胡麻油が、少しですが届きました。
本日、山鳥の唐揚げなるものを作ってみようかと」
「ほんとっ?!」
あたしは料理長の言葉に被せるように訊いた。
わーい!
唐揚げ食べられるっ!
「山鳥に塩をすりこんでしばらく置き、麦の粉をつけて、胡麻油で揚げれば宜しいのですね?」
「そうそう」
「承知いたしました」
と頭を下げて、料理長はあたしから干し椎茸を受け取る。
「では、失礼申し上げます」
と言って厨房へいそいそと戻っていった。
ああ、唐揚げ…
あ、いけない、よだれが…
左近衛中将様は、唐揚げを食べたらなんて言うかしら。
驚いて、それからにっこり笑うかな?
あたしは幸せな妄想から、急に現実に引き戻される。
そうだ、今日来ないんだ。
流鏑馬神事の前日からだから、もう三日。
左近衛中将様と一緒に美味しいもの食べたい。
左近衛中将様に会いたいよぅ…
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