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第二章 賀茂祭・流鏑馬神事

4.お屋敷探索

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 朝食として出された、もち米の粥・山鳥のあつもの・鰯の蒸したもの・茄子と青物を茹でたもの・水菓子(小さな葡萄のような果物)を食べてお腹いっぱいになったあたしは、こりゃ運動しないとヤバいな…と思い始めた。

 着替えるときに見る、伊都子姫の身体は…
 現代人のあたしから見ると、明らかに肥満。
 だけど上流階級の人はだいたいこんなもんなんだって(式部さんに聞いた)。

 左近衛中将様は、この時代の基準から見ると痩せてるなあ…
 流鏑馬神事の射手に選ばれるくらいだから、結構運動とかしてるのかな。
 元々のあたし自身、帰宅部だったし受験だったせいもあって割と太ってた。
 でも伊都子姫ほどじゃなかったよ…

 よし、この広いお屋敷をお散歩しよう。
 外に勝手に出るわけにはいかないだろうし、お屋敷の全体像も知れるかも。
 この重い十二単を着て歩けば、ウェイトトレーニングになりそう。

 あたしは、周りに人がいないのを見計らって、部屋の外に出てみた。
 右手にお風呂とトイレ。
 こっちは行ったことあるから、左手に行ってみよう。

 ながーい廊下が続いていて、しとみが下げてあって薄暗くてよく見えないけど、向こうの端に何かがありそう。
 着物が重いので、しずしずとしか進めないのが歯がゆいなあ。
 誰かに会っちゃったらどうしよう。

 途中休みながら、なんとか端にたどり着く。
 あ、明るい!

 こちらは廊下の蔀が全部上げてあって、長いひさしが庭の方へ伸びている。
 左側の部屋と思われる方の御簾は下げてあった。
 お、誰にも見咎められずに行けるかな?

 廊下から見える景色は…きれーい!
 色とりどりの花が咲き乱れていて、大きな池には優雅に白い鳥が浮かんでいる。
 お屋敷から池に続く、朱塗りの橋が陽に光って輝くようだ。

 廊下の端に寄って、手すりに掴まって眺めていると、視界の端を幼い女の子が何か重そうなものを持って横切っていくのが見えた。
 ん?
 ここで働いてる人のお子さんかな?
 やたら裾の短い着物を着て、粗末な帯を結んでいる。
 足は裸足だ。

 あたしはその子に向かって、大袈裟に手を振り、扇で差し招いた。
 女の子は不思議そうな表情で、よたよたとこちらに近づいてきた。
 「こんにちは。
 何を持っているの?
 お家の人のお手伝い?」
 あたしは不審者に見えないよう、にっこり笑いながら話しかける。

 7~8歳くらいかな?
 痩せて、目が大きく見える。
 全体的に汚れてるなあ。

 「みづさんから言われて、くりやまで運んでる。
 中身は知らない」
 女の子はそう答えるときびすを返して、またよたよたと歩いて行った。

 厨…あ、キッチンか!
 へえ~、あっちの方にあるんだ。
 行ってみたいけど、履き物がないとなあ。

 とりあえず、あたしは女の子が消えていった方へ行ってみることにした。
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