愛されない王妃は王宮生活を謳歌する

Dry_Socket

文字の大きさ
87 / 161
第八章 崩御と弾劾

3.意見のすり合わせ

しおりを挟む
 私たちは再び居間に移動し、とりあえず食事を摂る。
 ジェルヴェとオーギュスト、クリスティーヌは王太子との会見の結果を知りたそうにしていたが、今は使用人の目も耳もあるし(信頼はしているけれど、話の内容が物騒に過ぎるので)話はできなかった。

 「宮殿内にハラルフードが用意されているようになり、大変感謝しています。
 部下の話では、市中の店にも置いてあるとか。
 有難いことです」
 ソロモンはそう言って両手を合わせる。

 司厨長の配慮かな。
 世界を渡り歩いてきたというあのシェフはやっぱりすごい。
 私の前ではとても優しくて楽しい、お腹の突き出たおじさんだけれど、仕事にはとても厳しくて研究熱心で非常に頼りになる。

 王太子は、ちゃんと食事摂れてるのかな…
 とても疲れているようで最初からあまり顔色の良くなかった王太子を思い出して少し心配になった。
 司厨長に相談してみようかしら。
 王太子の好きな食べ物をアレンジして栄養価高い食事を作ってもらおう。
 好きな食べ物を知らんけど。

 アンヌ=マリーがあんな状態だし、詐欺事件のこともあって心配しているのだろう。
 陛下のお加減も一進一退で、ガレアッツォ翁もこれ以上よくなられることはないだろうと言っていた。
 
 私たちは楽しく食事を済ませ、片付けが終わるとソファの方に移動して人払いし、お茶を飲みながら話を始めた。
 経緯は先ほど話してあるので、王太子との会見の模様と、そしてこれからの善後策を話し合う。

 「そうか…フィリベールも最近元気がないなとは思っていました。
 陛下のお加減についての心配だろうと考えていたのですが、アンヌ=マリー嬢もそんな状態だったのですね。
 宮廷内でも、アンヌ=マリー嬢の言動について、最近特にエキセントリックだという噂はありました。
 まあでも王太子のご愛妾ですしね、あまり悪くは言えないですよね」
 ジェルヴェは私の隣に陣取り、苦い口調で話す。

 「わたくしはネックレス事件の行方も気になりますけれど…
 アンヌ=マリー様は相当打撃を受けていらっしゃるのではないかしら。
 20日には、わたくしもエスコフィエ侯爵夫人のお誕生パーティに招かれておりますの。
 ちゃんといつも通り振るまえるか、不安になってまいりましたわ」
 クリスティーヌが細い両手で頬を抑える。

 「私とご一緒に居ましょう、クリスティーヌ嬢。
 二コラが話してくれた紋章から、どなたがこの作戦に荷担しているかが解りました。
 まだ他に仲間がいると思われますし、20日までさまざまなパーティーにご一緒に参加して探りましょう」
 オーギュストはクリスティーヌに優しく微笑みかけ、クリスティーヌは頬を染めてうなずいた。

 「スレイマン殿下、先ほどのお話ですが…」
 遠慮がちにクラウスが声をかけ、ソロモンは、ん?とクラウスの方へ顔を向ける。
 「体術柔術に長けた兵を貸してくださるというのは本当でしょうか。
 敵を生け捕りにできれば一番であると思ってはおりましたので」

 ソロモンはお茶をひとくち口に含んでにこりと微笑む。
 「本当だよもちろん。
 成功した暁には、いろいろ考えてることもあるから、私も無料貸出しというわけではないしね」
 そう言って、私の顔を見て楽しそうに笑った。
 え、なに、策士の笑み…

 「また皆で集まるときには、場所はここにしよう。
 宮廷に出入りする者たちは皆、王太子妃の存在など歯牙にもかけていない、現在はね。
 ここで私たちが何の話をしていても疑われることはないから一番安心な場だ」

 ま、そうね、その通り。
 私はジェルヴェの言葉にうなずく。

 「しかし、この先はどうなるかな…」
 と小さく呟いた言葉が聞こえていたのは私だけかもしれない。

 メッセージの伝え方を皆で決めて、その日は解散になった。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...