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第五章 サロン
3.大使の正体
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ジェルヴェと広い廊下を歩く。
廊下と言っても部屋の一部のようなところが多く、暖炉に火が入っていて蝋燭は明々と灯り、鎧とか絵画とか高価そうなものがたくさん飾ってある。
私は改めて、ルーマデュカという国の豊かさ、絶大な権力に思いを馳せた。
「リンスターに話しておかなければならないことがあります。
リンディア帝国の大使というのは、実は…第3皇子なのです」
「えっ!」
私は驚いてジェルヴェの顔を仰ぎ見た。
ジェルヴェは私の手を引いて、前を見て歩きながら続ける。
「国で不始末を起こしたというか。
無類の賭博好きで、借金を重ね、遂に皇帝家の家宝と呼ばれるものを売り飛ばそうとして、それは未遂に終わったそうですが…
勘当というか、国外追放に近い形でルーマデュカに放り出されたと」
げぇーっ!
とんでもない皇子だなあ…
「それと、今日何故、アンヌ=マリー嬢が欠席かというとですね。
彼女は以前、フィリベールと共にリンディア帝国に赴いた際に、先方にとかくの失礼があったそうで…
リンディア帝国の方から出入り禁止のような感じになったそうです」
…何やってんのよ…
何やったのか知らないけど、アンヌ=マリーってそんな感じなの??
「ほとぼりが冷めるまで、我が国でお預かりするということなんですが。
リンディア帝国の大使という皇子は、我が国にとってはいろいろと頭の痛い存在ですよ。
女性にはほとんど興味を示さないそうですから、まあ普通に応対してくだされば大丈夫と思います」
ため息交じりにジェルヴェが言う。
面倒くさいお荷物を預かっちゃったのね…
私の歓迎晩餐会が催された大広間の前まで来る。
侍従長が礼をして、声を張り上げようとするのを押しとどめて、ジェルヴェは私へ向き直って言った。
「中に入ったら、真っすぐに玉座まで行ってください。
フィリベールがいます。
では、後ほど」
え…私一人で?
不安な瞳を向けると、ジェルヴェは安心させるように私の頬を撫でた。
「私はあなたの後からついて入りますよ。
大丈夫です、落ち着いて」
そして、侍従長の声と共に大きな扉が左右に開き、私は蝋燭の光が昼間のように隅々まで照らし出す大広間の中に入った。
私は周囲に立ち並ぶ人々の視線を浴びながら、言われた通りにまっすぐ進んでいく。
王太子が玉座に座っていた。
王様が被るような王冠ではないけれど、小さな王冠を被り、豪奢なマントを着て錫と持っている姿は、ため息が出るほど美しい。
観賞用としては最高なんだけど、お釣りがくるほど性格が悪い。
王太子は私を見て、ほんの少し口角を上げて目元を優しく緩めて微笑んだ。
えっ、と思う間もなく、笑みは消え、無表情に戻ってしまった。
私が王太子の隣の小さい玉座に到着すると、王太子は無表情に顎で玉座を指し示し座るように促す。
まったく、いちいち、失礼な奴だわ。
私はもう、仏頂面を隠すこともせずにドスンと座る。
王太子が思わずと言ったように下を向いて、小さく噴き出した。
私は初めて見る玉座からの景色に、正直なところ圧倒されていた。
着飾ったたくさんの人、人、人。
皆、私たちの方を向いている。
あ、ジェルヴェがいる。
誰か女性と話している。
やっぱ目立つわ、あの美貌は。
その時、扉の向こうから侍従長の大きな声がした。
「リンディア帝国大使、スレイマン・リンディア殿のお越しでございます」
扉が開いて長身の若い男性が入ってきた。
頭に大きな布のようなものを巻き付け、宝石で飾っている。
白い服も全体にゆるやかで、手首と胴、足首で絞ってあり、大きな剣を腰に挿している。
濃い肌色の、エキゾチックな風貌の男性だった。
廊下と言っても部屋の一部のようなところが多く、暖炉に火が入っていて蝋燭は明々と灯り、鎧とか絵画とか高価そうなものがたくさん飾ってある。
私は改めて、ルーマデュカという国の豊かさ、絶大な権力に思いを馳せた。
「リンスターに話しておかなければならないことがあります。
リンディア帝国の大使というのは、実は…第3皇子なのです」
「えっ!」
私は驚いてジェルヴェの顔を仰ぎ見た。
ジェルヴェは私の手を引いて、前を見て歩きながら続ける。
「国で不始末を起こしたというか。
無類の賭博好きで、借金を重ね、遂に皇帝家の家宝と呼ばれるものを売り飛ばそうとして、それは未遂に終わったそうですが…
勘当というか、国外追放に近い形でルーマデュカに放り出されたと」
げぇーっ!
とんでもない皇子だなあ…
「それと、今日何故、アンヌ=マリー嬢が欠席かというとですね。
彼女は以前、フィリベールと共にリンディア帝国に赴いた際に、先方にとかくの失礼があったそうで…
リンディア帝国の方から出入り禁止のような感じになったそうです」
…何やってんのよ…
何やったのか知らないけど、アンヌ=マリーってそんな感じなの??
「ほとぼりが冷めるまで、我が国でお預かりするということなんですが。
リンディア帝国の大使という皇子は、我が国にとってはいろいろと頭の痛い存在ですよ。
女性にはほとんど興味を示さないそうですから、まあ普通に応対してくだされば大丈夫と思います」
ため息交じりにジェルヴェが言う。
面倒くさいお荷物を預かっちゃったのね…
私の歓迎晩餐会が催された大広間の前まで来る。
侍従長が礼をして、声を張り上げようとするのを押しとどめて、ジェルヴェは私へ向き直って言った。
「中に入ったら、真っすぐに玉座まで行ってください。
フィリベールがいます。
では、後ほど」
え…私一人で?
不安な瞳を向けると、ジェルヴェは安心させるように私の頬を撫でた。
「私はあなたの後からついて入りますよ。
大丈夫です、落ち着いて」
そして、侍従長の声と共に大きな扉が左右に開き、私は蝋燭の光が昼間のように隅々まで照らし出す大広間の中に入った。
私は周囲に立ち並ぶ人々の視線を浴びながら、言われた通りにまっすぐ進んでいく。
王太子が玉座に座っていた。
王様が被るような王冠ではないけれど、小さな王冠を被り、豪奢なマントを着て錫と持っている姿は、ため息が出るほど美しい。
観賞用としては最高なんだけど、お釣りがくるほど性格が悪い。
王太子は私を見て、ほんの少し口角を上げて目元を優しく緩めて微笑んだ。
えっ、と思う間もなく、笑みは消え、無表情に戻ってしまった。
私が王太子の隣の小さい玉座に到着すると、王太子は無表情に顎で玉座を指し示し座るように促す。
まったく、いちいち、失礼な奴だわ。
私はもう、仏頂面を隠すこともせずにドスンと座る。
王太子が思わずと言ったように下を向いて、小さく噴き出した。
私は初めて見る玉座からの景色に、正直なところ圧倒されていた。
着飾ったたくさんの人、人、人。
皆、私たちの方を向いている。
あ、ジェルヴェがいる。
誰か女性と話している。
やっぱ目立つわ、あの美貌は。
その時、扉の向こうから侍従長の大きな声がした。
「リンディア帝国大使、スレイマン・リンディア殿のお越しでございます」
扉が開いて長身の若い男性が入ってきた。
頭に大きな布のようなものを巻き付け、宝石で飾っている。
白い服も全体にゆるやかで、手首と胴、足首で絞ってあり、大きな剣を腰に挿している。
濃い肌色の、エキゾチックな風貌の男性だった。
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