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第三章 婚姻の儀
2.スケジュール
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翌日は朝早くからたたき起こされて、昨日を上回る慌ただしさで準備が進んでいった。
さすがに王太子妃になる王女いうことで、王室からルーマデュカ語とメンデエル語両方のできる侍従や侍女が派遣され、支度は滞りなく進んでいった。
ウェディングドレスは一応、王太子からの贈り物ということになっていた。
まあ恐らく、王太子本人はそんな贈り物がなされたことすら知らないだろうけど。
真っ白なピュアシルクでできたドレスは、宝石がちりばめられものすごく豪奢で手の込んだ刺繍が施してあり、美しいフォルムだった。
こんなほっそいドレス、私に着られるかな…
昨日のルイーズの言葉を思い出して、私は不安になる。
昨日の晩餐会での、私の失態の理由を知っている侍女たちは、起き抜けから少しずつ少しずつコルセットの紐を締めていき、圧迫しすぎないように苦しくないように、ウェストを絞ってドレスを着せてくれた。
「まあ、お綺麗ですわ…」
侍女たちは口を極めて褒めそやしてくれるけど、鏡を見る私の心は晴れない。
あのお美しいお姉様だったら、このドレスをもっと映えるように着こなせるに違いない。
もしくは、昨日の晩餐会で王太子の隣に座っていた、美人の公爵令嬢も華やかに美しく見えるだろう。
私…本当にいいのかな、王太子妃なんかになって。
みすぼらしい妃だって、近隣諸国の噂になって、ルーマデュカのみならずメンデエルのお父様お母様にまでご迷惑をかけるのではないだろうか。
フィリベール王太子も、尊大ではあるけれど気品のある整った顔立ちの人だった。
私では、釣り合わない。
私だって美しく生まれたかったし、誰からも愛されたかった。
そもそもこの結婚はお姉様がするはずだったのに、私は大人の都合で強引に変えさせられただけだ。
お父様がお姉様を手放したくないがために…
そんなことをつらつら考えていると、自分の結婚式だというのに気が滅入ってくる。
いつの間にか黒髪は結い上げられ、王妃様からの贈り物だというティアラを載せられた。
このティアラは、王家に代々伝わるものだそうで、私は少し嬉しいというかホッとした。
王妃様がこれを隠さずに、私に下さったことで、ほんの少し認められたような気がしたのだ。
やがて侍従長が現れ、私は恭しく傅かれながら支度部屋を出た。
「今後の王太子妃様のスケジュールでございますが…
本日は、結婚式に臨んでいただきまして、その後バルコニーに出て国民に手を振ってお目見えをしていただきます。
それから披露宴に出ていただきますが、お食事はなさらず、1曲だけ王太子殿下と踊っていただいてご退出いただきます」
侍従長は妙に甲高い声で淡々と言い、そこでほっと息をついて少し口元を引き締め、一気に言葉を続けた。
「披露宴は、慣例により1週間続きます。
が、王太子妃殿下におかれましては、今日以外はご列席いただかなくて宜しいとのことでございます」
「え?」
私は侍従長の言葉の意味を理解しかねて、思わず訊き返す。
私の疑問に答えることなく、侍従長は唇を引き結んだまま、黙って私を大聖堂まで案内していく。
そうか…
暫く考えて、漸く侍従長の言葉を理解する。
大公爵とその令嬢にとって私は招かれざる王太子妃だ(王様や王太子にとってもそうかもしれない)。
とりあえず結婚式だけは形式通りやって、その後は公爵令嬢が愛妾として公務や儀式に全面的に前に出て行くのだろう。
私は形だけの王太子妃。
私はそう考えて、ホッとすると同時にワクワクしてきた。
良かった~~!!
これで自分の容姿に落ち込むこともなく、面倒な宮中の儀式からも解放されて、めんどくさい人間関係に悩まず、王太子とも関係なく自分の好きに生きられるんだわ!!
このお城という籠に閉じ込められてではあるけれど。
存分に生活を謳歌するわよっ!
さすがに王太子妃になる王女いうことで、王室からルーマデュカ語とメンデエル語両方のできる侍従や侍女が派遣され、支度は滞りなく進んでいった。
ウェディングドレスは一応、王太子からの贈り物ということになっていた。
まあ恐らく、王太子本人はそんな贈り物がなされたことすら知らないだろうけど。
真っ白なピュアシルクでできたドレスは、宝石がちりばめられものすごく豪奢で手の込んだ刺繍が施してあり、美しいフォルムだった。
こんなほっそいドレス、私に着られるかな…
昨日のルイーズの言葉を思い出して、私は不安になる。
昨日の晩餐会での、私の失態の理由を知っている侍女たちは、起き抜けから少しずつ少しずつコルセットの紐を締めていき、圧迫しすぎないように苦しくないように、ウェストを絞ってドレスを着せてくれた。
「まあ、お綺麗ですわ…」
侍女たちは口を極めて褒めそやしてくれるけど、鏡を見る私の心は晴れない。
あのお美しいお姉様だったら、このドレスをもっと映えるように着こなせるに違いない。
もしくは、昨日の晩餐会で王太子の隣に座っていた、美人の公爵令嬢も華やかに美しく見えるだろう。
私…本当にいいのかな、王太子妃なんかになって。
みすぼらしい妃だって、近隣諸国の噂になって、ルーマデュカのみならずメンデエルのお父様お母様にまでご迷惑をかけるのではないだろうか。
フィリベール王太子も、尊大ではあるけれど気品のある整った顔立ちの人だった。
私では、釣り合わない。
私だって美しく生まれたかったし、誰からも愛されたかった。
そもそもこの結婚はお姉様がするはずだったのに、私は大人の都合で強引に変えさせられただけだ。
お父様がお姉様を手放したくないがために…
そんなことをつらつら考えていると、自分の結婚式だというのに気が滅入ってくる。
いつの間にか黒髪は結い上げられ、王妃様からの贈り物だというティアラを載せられた。
このティアラは、王家に代々伝わるものだそうで、私は少し嬉しいというかホッとした。
王妃様がこれを隠さずに、私に下さったことで、ほんの少し認められたような気がしたのだ。
やがて侍従長が現れ、私は恭しく傅かれながら支度部屋を出た。
「今後の王太子妃様のスケジュールでございますが…
本日は、結婚式に臨んでいただきまして、その後バルコニーに出て国民に手を振ってお目見えをしていただきます。
それから披露宴に出ていただきますが、お食事はなさらず、1曲だけ王太子殿下と踊っていただいてご退出いただきます」
侍従長は妙に甲高い声で淡々と言い、そこでほっと息をついて少し口元を引き締め、一気に言葉を続けた。
「披露宴は、慣例により1週間続きます。
が、王太子妃殿下におかれましては、今日以外はご列席いただかなくて宜しいとのことでございます」
「え?」
私は侍従長の言葉の意味を理解しかねて、思わず訊き返す。
私の疑問に答えることなく、侍従長は唇を引き結んだまま、黙って私を大聖堂まで案内していく。
そうか…
暫く考えて、漸く侍従長の言葉を理解する。
大公爵とその令嬢にとって私は招かれざる王太子妃だ(王様や王太子にとってもそうかもしれない)。
とりあえず結婚式だけは形式通りやって、その後は公爵令嬢が愛妾として公務や儀式に全面的に前に出て行くのだろう。
私は形だけの王太子妃。
私はそう考えて、ホッとすると同時にワクワクしてきた。
良かった~~!!
これで自分の容姿に落ち込むこともなく、面倒な宮中の儀式からも解放されて、めんどくさい人間関係に悩まず、王太子とも関係なく自分の好きに生きられるんだわ!!
このお城という籠に閉じ込められてではあるけれど。
存分に生活を謳歌するわよっ!
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