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第二章 歓迎晩餐会
7.コルセット
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王族の夕刻というのは、一般的に言う夜である。
一般の庶民とは時間の観念が違うのだ。
そうはいっても、起きる時間も遅いので、支度は結構大変だった。
髪は昨夜のルーマデュカの侍女のジョアナにお願いして、クラシカルなドレスに似合う、それでいて最先端の流行のエッセンスも取り入れたスタイルにしてもらった。
「とても、素敵、です」
グレーテルやユリアナも、慣れないルーマデュカ語でたどたどしく褒めてくれる。
ジョアナは嬉しそうだった。
メイクもジョアナとユリアナが、私の通訳を介してやってくれた。
ほんのわずかずつではあるけど、メンデエルとルーマデュカの侍女たちは敵対心を解きつつあるようだ。
私は少し安堵した。
ドレスを着る前に、強敵が待っている。
コルセットだ。
私は壁に手をつき、締め付けに備える。
ルーマデュカの侍女のルイーズが、グレーテルと共にコルセットにかけた紐をぎゅうっと締め上げる。
え、…ちょっときつすぎない?
私は一瞬、息ができなくなって膝が崩れそうになる。
『もう少し緩めましょう』
グレーテルも心配そうに言い、私はその言葉をルイーズに伝えるが、ルイーズは素知らぬ顔だ。
「これくらい締めないと、このドレスは着られません」
そっけなく言って、さっさと鯨の骨でできたパニエを腰回りに着ける。
結構、重いな…
私は不安になった。
ドレスも、豪奢な宝石を縫い付けた飾りがたくさんついていて、重いことこの上ない。
大丈夫かしら。
息苦しさがとれないんだけど。
グレーテルは『姫様、大丈夫ですか?』と気遣ってくれる。
私は『ええ…座っていれば大丈夫よ。どうせ、そんなに長い時間ではないでしょうし』と少し微笑んで見せた。
そうよ、歓迎の晩餐会と銘打ってあったとしても、本当は全然歓迎なんかされていないんだし。
私なんていてもいなくても一緒なんでしょうきっと。
私は自分に言い聞かせるようにして、じっときつさに耐える。
そうこうするうち、侍従が呼びに来た。
昨日のジェルヴェ王弟殿下がエスコートしてくれるそうだ。
私は重いドレスの前を持ち上げてしずしずと部屋を出た。
「こんばんは、リンスター王女殿下。
ご機嫌宜しゅう」
次の間で出迎えてくれたジェルヴェ殿下はにこやかに爽やかに手を差し伸べる。
「こんばんは、ジェルヴェ殿下」
私もせいぜいにこやかに答えて、ジェルヴェ殿下の手に自分の手を載せた。
ジェルヴェ殿下はおや、というように私の顔をちらっと見る。
「お綺麗ですね。
緊張なさっておられるのかな。
大丈夫ですよ。
皆さん、リンスター王女殿下のご到着を今か今かとお待ちかねです」
本当かな…
いや、嘘だろうな。
私は懐疑的に考える。
「緊張は特にしておりませんわ。
皆さまにお会いするのが楽しみ」
私は強気な口調で答える。
胸を張りたかったのだが、コルセットが苦しくて、態勢を変えられない。
だだっ広い城の廊下を、私はジェルヴェ殿下に手を引かれて懸命に歩いて行った。
一般の庶民とは時間の観念が違うのだ。
そうはいっても、起きる時間も遅いので、支度は結構大変だった。
髪は昨夜のルーマデュカの侍女のジョアナにお願いして、クラシカルなドレスに似合う、それでいて最先端の流行のエッセンスも取り入れたスタイルにしてもらった。
「とても、素敵、です」
グレーテルやユリアナも、慣れないルーマデュカ語でたどたどしく褒めてくれる。
ジョアナは嬉しそうだった。
メイクもジョアナとユリアナが、私の通訳を介してやってくれた。
ほんのわずかずつではあるけど、メンデエルとルーマデュカの侍女たちは敵対心を解きつつあるようだ。
私は少し安堵した。
ドレスを着る前に、強敵が待っている。
コルセットだ。
私は壁に手をつき、締め付けに備える。
ルーマデュカの侍女のルイーズが、グレーテルと共にコルセットにかけた紐をぎゅうっと締め上げる。
え、…ちょっときつすぎない?
私は一瞬、息ができなくなって膝が崩れそうになる。
『もう少し緩めましょう』
グレーテルも心配そうに言い、私はその言葉をルイーズに伝えるが、ルイーズは素知らぬ顔だ。
「これくらい締めないと、このドレスは着られません」
そっけなく言って、さっさと鯨の骨でできたパニエを腰回りに着ける。
結構、重いな…
私は不安になった。
ドレスも、豪奢な宝石を縫い付けた飾りがたくさんついていて、重いことこの上ない。
大丈夫かしら。
息苦しさがとれないんだけど。
グレーテルは『姫様、大丈夫ですか?』と気遣ってくれる。
私は『ええ…座っていれば大丈夫よ。どうせ、そんなに長い時間ではないでしょうし』と少し微笑んで見せた。
そうよ、歓迎の晩餐会と銘打ってあったとしても、本当は全然歓迎なんかされていないんだし。
私なんていてもいなくても一緒なんでしょうきっと。
私は自分に言い聞かせるようにして、じっときつさに耐える。
そうこうするうち、侍従が呼びに来た。
昨日のジェルヴェ王弟殿下がエスコートしてくれるそうだ。
私は重いドレスの前を持ち上げてしずしずと部屋を出た。
「こんばんは、リンスター王女殿下。
ご機嫌宜しゅう」
次の間で出迎えてくれたジェルヴェ殿下はにこやかに爽やかに手を差し伸べる。
「こんばんは、ジェルヴェ殿下」
私もせいぜいにこやかに答えて、ジェルヴェ殿下の手に自分の手を載せた。
ジェルヴェ殿下はおや、というように私の顔をちらっと見る。
「お綺麗ですね。
緊張なさっておられるのかな。
大丈夫ですよ。
皆さん、リンスター王女殿下のご到着を今か今かとお待ちかねです」
本当かな…
いや、嘘だろうな。
私は懐疑的に考える。
「緊張は特にしておりませんわ。
皆さまにお会いするのが楽しみ」
私は強気な口調で答える。
胸を張りたかったのだが、コルセットが苦しくて、態勢を変えられない。
だだっ広い城の廊下を、私はジェルヴェ殿下に手を引かれて懸命に歩いて行った。
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