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第二章 歓迎晩餐会
4.言葉の壁
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厄介な王弟殿下を追っ払って、ついでに偉そうな執事も追い出して、私はほっと息をついた。
『…さ、姫様。
お疲れでいらっしゃるでしょう。
湯浴みをなさいませ』
グレーテルが、自分も疲れているだろうにそう言ってくれる。
『…そうね。そうするわ』
私は促されるままに次の間へ行き、6日ぶりの湯浴みをした。
メンデエル国から連れてきた私付きの侍女が2人いて、私たちは再会を喜んだ。
ルーマデュカ国の侍女たちも手伝ってくれる。
グレーテルにもお湯を使うように言って、私はメンデエル国の侍女たちとおしゃべりをしながら寝室へ行き、着替えをした。
髪を整えようと、鏡の前に座り、たまたま後ろに写りこんでいたルーマデュカの侍女の顔を見て、私ははっとした。
小馬鹿にしているような、それでいて悔しそうな、悲しそうな、何とも言えないマイナーな感情が綯い交ぜになっているような表情だった。
そうだ、私は、これからルーマデュカで暮らしていくのだ。
この人たちともうまくやって行かなければ。
私はメンデエルの侍女に『いいわ、ありがとう』と言って遠ざけ、代わりにつまらなそうに後ろに控えているルーマデュカの侍女にルーマデュカ語で話しかけた。
「わたくしの髪を整えてくださるかしら。
ルーマデュカ風の洗練された、流行りのヘアスタイルを教えて欲しいの」
ルーマデュカの侍女たちは驚いたように顔を見合わせ、片足を後ろに引いて小さくお辞儀をして「はい、王女様」と言って一人が私の後ろへ立って、長い漆黒の髪を梳った。
「あなたの名前は?」
「ジョアナと申します」
言いながら手早く髪を結い上げる。
メンデエル風とは全然違う、黒い私の髪でも軽やかに洗練されて見えるようなスタイルに仕上げてくれた。
メンデエルの侍女たちも驚いている。
私はジョアナが櫛を置いたのを見て「すごいわ、上手なのね」と褒め、首を回してあちこちの角度から眺める。
「明日、わたくしの歓迎晩餐会があるそうなの。
ジョアナにぜひ、明日もお願いしたいわ」
「はい、畏まりました。
喜んで承りますわ」
ジョアナは嬉しそうに少し微笑んで、またお辞儀をした。
今度はメンデエルの侍女たちがむくれているのが判った。
言葉の壁があるな…
私は唇を噛む。
なんとかしないと。
こんなことで侍女間に軋轢が生まれたりして、そればかりに神経を尖らせるような生活はバカバカしい。
『姫様、向こうにお食事の用意ができております』
メンデエルの侍女のユリアナが言って、私を立たせ、居室に連れていく。
『ねえ、ユリアナやグレーテルは、ルーマデュカ語を教わったわよね?』
私はユリアナに問う。
ユリアナは少し逡巡してから頷いた。
『…はい。ですが、1か月やそこらでは、しかも日々の仕事をしながらではなかなか…』
『そうか、それもそうよね』
通常通りの婚約から婚姻までの時間があれば、覚えられたろうに。
この突貫工事みたいな結婚では、そんなのも無理よね。
改めて、ルーマデュカの王様や王太子に腹が立つ。
お父様にも、だ。
そんな無茶ブリ、撥ねつけてくれればよかったのに。
婚約だって、何が何だかわからないうちに終わっていた。
大使が最初に来た時に、強引に結納の品を置いてったらしい。
ホント、頭に来ることばっかりだわ!
『…さ、姫様。
お疲れでいらっしゃるでしょう。
湯浴みをなさいませ』
グレーテルが、自分も疲れているだろうにそう言ってくれる。
『…そうね。そうするわ』
私は促されるままに次の間へ行き、6日ぶりの湯浴みをした。
メンデエル国から連れてきた私付きの侍女が2人いて、私たちは再会を喜んだ。
ルーマデュカ国の侍女たちも手伝ってくれる。
グレーテルにもお湯を使うように言って、私はメンデエル国の侍女たちとおしゃべりをしながら寝室へ行き、着替えをした。
髪を整えようと、鏡の前に座り、たまたま後ろに写りこんでいたルーマデュカの侍女の顔を見て、私ははっとした。
小馬鹿にしているような、それでいて悔しそうな、悲しそうな、何とも言えないマイナーな感情が綯い交ぜになっているような表情だった。
そうだ、私は、これからルーマデュカで暮らしていくのだ。
この人たちともうまくやって行かなければ。
私はメンデエルの侍女に『いいわ、ありがとう』と言って遠ざけ、代わりにつまらなそうに後ろに控えているルーマデュカの侍女にルーマデュカ語で話しかけた。
「わたくしの髪を整えてくださるかしら。
ルーマデュカ風の洗練された、流行りのヘアスタイルを教えて欲しいの」
ルーマデュカの侍女たちは驚いたように顔を見合わせ、片足を後ろに引いて小さくお辞儀をして「はい、王女様」と言って一人が私の後ろへ立って、長い漆黒の髪を梳った。
「あなたの名前は?」
「ジョアナと申します」
言いながら手早く髪を結い上げる。
メンデエル風とは全然違う、黒い私の髪でも軽やかに洗練されて見えるようなスタイルに仕上げてくれた。
メンデエルの侍女たちも驚いている。
私はジョアナが櫛を置いたのを見て「すごいわ、上手なのね」と褒め、首を回してあちこちの角度から眺める。
「明日、わたくしの歓迎晩餐会があるそうなの。
ジョアナにぜひ、明日もお願いしたいわ」
「はい、畏まりました。
喜んで承りますわ」
ジョアナは嬉しそうに少し微笑んで、またお辞儀をした。
今度はメンデエルの侍女たちがむくれているのが判った。
言葉の壁があるな…
私は唇を噛む。
なんとかしないと。
こんなことで侍女間に軋轢が生まれたりして、そればかりに神経を尖らせるような生活はバカバカしい。
『姫様、向こうにお食事の用意ができております』
メンデエルの侍女のユリアナが言って、私を立たせ、居室に連れていく。
『ねえ、ユリアナやグレーテルは、ルーマデュカ語を教わったわよね?』
私はユリアナに問う。
ユリアナは少し逡巡してから頷いた。
『…はい。ですが、1か月やそこらでは、しかも日々の仕事をしながらではなかなか…』
『そうか、それもそうよね』
通常通りの婚約から婚姻までの時間があれば、覚えられたろうに。
この突貫工事みたいな結婚では、そんなのも無理よね。
改めて、ルーマデュカの王様や王太子に腹が立つ。
お父様にも、だ。
そんな無茶ブリ、撥ねつけてくれればよかったのに。
婚約だって、何が何だかわからないうちに終わっていた。
大使が最初に来た時に、強引に結納の品を置いてったらしい。
ホント、頭に来ることばっかりだわ!
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