14 / 161
第二章 歓迎晩餐会
2.到着
しおりを挟む
メンデエル国を出発して2日目の夜中に国境を越え、隣国のベルクセイア・バーグマン国に入った。
まるで逃避行のように、馬車は昼夜を問わずに走り続ける。
私もグレーテルも疲労困憊で、食事もまともに摂れず眠ることもあまりできなかった。
やっと少しばかりうとうとすると、車輪の車軸が折れてものすごい音がして馬車が傾き、私たちは飛び起きた。
何でこんな思いをしなきゃいけないの…
これが本当に、他国へ嫁ぐ王女の、花嫁道中なのかしら。
私はなんだか情けなくなって、何度か涙をこぼした。
グレーテルも私の肩を抱きしめて、一緒に泣いてくれた。
そしてベルクセイア・バーグマン国を横断してルーマデュカ国へ入り、5日目の夕方、ようやくルーマデュカ国の首都に辿り着いた。
国から騎馬で付き従ってきたディートリヒが、汗まみれ・埃まみれで極度の疲労を顔ににじませながらも、しっかりと私を支えて馬車から降ろし、城への階段を上がって行った。
鍛えてないなんて思っちゃったけど、やっぱり百戦錬磨の上級騎士は凄い。
こんな時でも威厳がある。
メンデエル王国の気概を背負ってここに立っている、と全身から発しているようだ。
私は自分の、人を見る目の浅薄さを恥じ、反省した。
私は、メンデエル王国の王女としてルーマデュカ王国の王太子妃となるべくここに来た。
私がしっかりしなくちゃ。
私に付き従って、異国の地に来てくれた人たちに申し訳ない。
私を信じて送り出してくれた、お父様・お母様、それから臣下の者たち国民たちに恥じないよう、私はここで懸命に生きて行かなければ。
女好きの王太子なんてどうでもいい。
愛妾が誰でも関係ない。
私は傲然と頭を上げ、寄り掛かっていたディートリヒから体を起こして自分で一歩一歩、歩き出した。
ディートリヒは驚いたように私の腰に添えていた腕を外し、私の耳元まで屈んで「その意気でございますよ、姫様」と不敵な笑いを声ににじませて囁いた。
「当然よ。
わたくしを誰だと思っているの?」
私は大きな城の扉を睨みつけるようにして囁き返すと、一度立ち止まった。
先触れの従者がとっくに私の到着を報せているはずなのに、城の前にはあまり人がいなくて、扉も閉まったままだ。
普通は、臣下の者から順に並んで、迎えるものじゃないのかな??
私は訝しく思いながら、後ろに控えているディートリヒとバルヒェットという近衛兵に「伝わってないのかしら」と小さな声で訊いた。
バルヒェットはディートリヒより年若く、この任務に誇りを感じてくれているようだった。
訝しむというよりは怒りをにじませ、一歩前に出て大声で衛兵やそこらにいた人たちに呼ばわった。
「メンデエル王国より、リンスター王女殿下がお越しになられた!
開門を!」
えっ、という感じで衛兵たちは顔を見合わせ、慌てて敬礼してから扉を開けた。
もしかして、聞いてなかったの…?
私たちは一瞬、呆気にとられ、とりあえず開けられた扉から城の中へ入って行った。
まるで逃避行のように、馬車は昼夜を問わずに走り続ける。
私もグレーテルも疲労困憊で、食事もまともに摂れず眠ることもあまりできなかった。
やっと少しばかりうとうとすると、車輪の車軸が折れてものすごい音がして馬車が傾き、私たちは飛び起きた。
何でこんな思いをしなきゃいけないの…
これが本当に、他国へ嫁ぐ王女の、花嫁道中なのかしら。
私はなんだか情けなくなって、何度か涙をこぼした。
グレーテルも私の肩を抱きしめて、一緒に泣いてくれた。
そしてベルクセイア・バーグマン国を横断してルーマデュカ国へ入り、5日目の夕方、ようやくルーマデュカ国の首都に辿り着いた。
国から騎馬で付き従ってきたディートリヒが、汗まみれ・埃まみれで極度の疲労を顔ににじませながらも、しっかりと私を支えて馬車から降ろし、城への階段を上がって行った。
鍛えてないなんて思っちゃったけど、やっぱり百戦錬磨の上級騎士は凄い。
こんな時でも威厳がある。
メンデエル王国の気概を背負ってここに立っている、と全身から発しているようだ。
私は自分の、人を見る目の浅薄さを恥じ、反省した。
私は、メンデエル王国の王女としてルーマデュカ王国の王太子妃となるべくここに来た。
私がしっかりしなくちゃ。
私に付き従って、異国の地に来てくれた人たちに申し訳ない。
私を信じて送り出してくれた、お父様・お母様、それから臣下の者たち国民たちに恥じないよう、私はここで懸命に生きて行かなければ。
女好きの王太子なんてどうでもいい。
愛妾が誰でも関係ない。
私は傲然と頭を上げ、寄り掛かっていたディートリヒから体を起こして自分で一歩一歩、歩き出した。
ディートリヒは驚いたように私の腰に添えていた腕を外し、私の耳元まで屈んで「その意気でございますよ、姫様」と不敵な笑いを声ににじませて囁いた。
「当然よ。
わたくしを誰だと思っているの?」
私は大きな城の扉を睨みつけるようにして囁き返すと、一度立ち止まった。
先触れの従者がとっくに私の到着を報せているはずなのに、城の前にはあまり人がいなくて、扉も閉まったままだ。
普通は、臣下の者から順に並んで、迎えるものじゃないのかな??
私は訝しく思いながら、後ろに控えているディートリヒとバルヒェットという近衛兵に「伝わってないのかしら」と小さな声で訊いた。
バルヒェットはディートリヒより年若く、この任務に誇りを感じてくれているようだった。
訝しむというよりは怒りをにじませ、一歩前に出て大声で衛兵やそこらにいた人たちに呼ばわった。
「メンデエル王国より、リンスター王女殿下がお越しになられた!
開門を!」
えっ、という感じで衛兵たちは顔を見合わせ、慌てて敬礼してから扉を開けた。
もしかして、聞いてなかったの…?
私たちは一瞬、呆気にとられ、とりあえず開けられた扉から城の中へ入って行った。
1
お気に入りに追加
1,869
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる