愛されない王妃は王宮生活を謳歌する

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第二章 歓迎晩餐会

2.到着

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 メンデエル国を出発して2日目の夜中に国境を越え、隣国のベルクセイア・バーグマン国に入った。
 まるで逃避行のように、馬車は昼夜を問わずに走り続ける。
 私もグレーテルも疲労困憊で、食事もまともに摂れず眠ることもあまりできなかった。
 やっと少しばかりうとうとすると、車輪の車軸が折れてものすごい音がして馬車が傾き、私たちは飛び起きた。

 何でこんな思いをしなきゃいけないの…
 これが本当に、他国へ嫁ぐ王女の、花嫁道中なのかしら。
 私はなんだか情けなくなって、何度か涙をこぼした。
 グレーテルも私の肩を抱きしめて、一緒に泣いてくれた。

 そしてベルクセイア・バーグマン国を横断してルーマデュカ国へ入り、5日目の夕方、ようやくルーマデュカ国の首都に辿り着いた。
 国から騎馬で付き従ってきたディートリヒが、汗まみれ・埃まみれで極度の疲労を顔ににじませながらも、しっかりと私を支えて馬車から降ろし、城への階段を上がって行った。

 鍛えてないなんて思っちゃったけど、やっぱり百戦錬磨の上級騎士は凄い。
 こんな時でも威厳がある。
 メンデエル王国の気概を背負ってここに立っている、と全身から発しているようだ。
 私は自分の、人を見る目の浅薄さを恥じ、反省した。

 私は、メンデエル王国の王女としてルーマデュカ王国の王太子妃となるべくここに来た。
 私がしっかりしなくちゃ。
 私に付き従って、異国の地に来てくれた人たちに申し訳ない。
 私を信じて送り出してくれた、お父様・お母様、それから臣下の者たち国民たちに恥じないよう、私はここで懸命に生きて行かなければ。

 女好きの王太子なんてどうでもいい。
 愛妾が誰でも関係ない。
 
 私は傲然と頭を上げ、寄り掛かっていたディートリヒから体を起こして自分で一歩一歩、歩き出した。
 ディートリヒは驚いたように私の腰に添えていた腕を外し、私の耳元まで屈んで「その意気でございますよ、姫様」と不敵な笑いを声ににじませて囁いた。
 「当然よ。
 わたくしを誰だと思っているの?」
 私は大きな城の扉を睨みつけるようにして囁き返すと、一度立ち止まった。

 先触れの従者がとっくに私の到着を報せているはずなのに、城の前にはあまり人がいなくて、扉も閉まったままだ。
 普通は、臣下の者から順に並んで、迎えるものじゃないのかな??
 私は訝しく思いながら、後ろに控えているディートリヒとバルヒェットという近衛兵に「伝わってないのかしら」と小さな声で訊いた。

 バルヒェットはディートリヒより年若く、この任務に誇りを感じてくれているようだった。
 訝しむというよりは怒りをにじませ、一歩前に出て大声で衛兵やそこらにいた人たちに呼ばわった。
 「メンデエル王国より、リンスター王女殿下がお越しになられた!
 開門を!」

 えっ、という感じで衛兵たちは顔を見合わせ、慌てて敬礼してから扉を開けた。
 もしかして、聞いてなかったの…?
 
 私たちは一瞬、呆気にとられ、とりあえず開けられた扉から城の中へ入って行った。
 

 
 
 
 
 
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