13 / 161
第二章 歓迎晩餐会
1.出発
しおりを挟む
早朝、私はお父様とお母様に謁見し、別れの挨拶をした。
きょうだいたちも集まってくれて、私は涙ながらに別れを惜しんだ。
お姉様は、その場には来られなかったけど、侍女が手紙を渡してくれた。
後で読もうと、大切に手荷物の中へしまった。
私は侍女のグレーテルと共に馬車へ乗り込む。
長旅仕様で、乗り心地を優先しているのでスピードはあまり出ない。
3~4日は馬車の中で過ごさなければならないことを思うとうんざりする。
たくさんの家臣や貴族が見送る中、馬車は出発した。
宰相もいて、深々と頭を下げた。
顔を上げた宰相の表情がひどく不安そうで、私は訝しむ。
私は懐かしい故郷を目に焼き付けようと、窓から懸命に外を見ていた。
さようなら、私の生まれた場所。
さようならお父様、お母様、きょうだいたち、育ててくれた人。
そして私を育んでくれた、メンデエル王国…
先に出発したクラウスや二コラ、そのほか従者たちのことを考えると心配になる。
一刻も早く追いつきたい、けど徒歩の彼らを追い越してしまったら、彼らの行軍は今よりもっと大変なものになってしまう。
だから、慌てず急がず、かといってゆっくり過ぎずに進んでいかなければならない。
そもそも私は国外どころか、国内、城の外へ出たのもほぼ初めてだ。
だけど全然浮き立つ気持ちはない。
大国ルーマデュカ。
どんなところなのだろう。
王太子にもう少し期待できたなら、この旅ももうちょっと心躍るものになったのかもしれない。
誰でもいい、とりあえずメンデエルの王女でありさえすれば、といった事情が露骨に透けて見える嫁入りなんて、どういう心構えでいればいいのだろう。
結局、王太子という人が、どんな顔なのかも全然判らないままだ。
まあ、見た目どうあれ、向こうは私に興味なんてまるっきりないんだから、どんな風体でもいいけどね。
とにかく無事にルーマデュカに着いて、新たな生活を構築することが大事だわ。
私が表に出ることはほとんどないんでしょうから、好きに暮らせそう。
それだけが唯一の心の支えだ。
ルーマデュカ王国についての基礎知識は、教育係のユーベルヴェークに一通り教わった。
メンデエル王国に比べれば新興国ではあるけれど、豊かな国で各国との貿易も盛んで、今の王様は英邁な君主だとの呼び声高いらしい。
王妃様がお洒落で流行りものがお好きだそうで、宮廷は最新のファッションや音楽、芸術に溢れているそうだ。
交易が盛んなため、珍しい食べ物なども集まっているみたい。
それは楽しみだわ。
私はそんなことをつらつら考えながら、ひたすら馬車に揺られてルーマデュカ王国を目指した。
きょうだいたちも集まってくれて、私は涙ながらに別れを惜しんだ。
お姉様は、その場には来られなかったけど、侍女が手紙を渡してくれた。
後で読もうと、大切に手荷物の中へしまった。
私は侍女のグレーテルと共に馬車へ乗り込む。
長旅仕様で、乗り心地を優先しているのでスピードはあまり出ない。
3~4日は馬車の中で過ごさなければならないことを思うとうんざりする。
たくさんの家臣や貴族が見送る中、馬車は出発した。
宰相もいて、深々と頭を下げた。
顔を上げた宰相の表情がひどく不安そうで、私は訝しむ。
私は懐かしい故郷を目に焼き付けようと、窓から懸命に外を見ていた。
さようなら、私の生まれた場所。
さようならお父様、お母様、きょうだいたち、育ててくれた人。
そして私を育んでくれた、メンデエル王国…
先に出発したクラウスや二コラ、そのほか従者たちのことを考えると心配になる。
一刻も早く追いつきたい、けど徒歩の彼らを追い越してしまったら、彼らの行軍は今よりもっと大変なものになってしまう。
だから、慌てず急がず、かといってゆっくり過ぎずに進んでいかなければならない。
そもそも私は国外どころか、国内、城の外へ出たのもほぼ初めてだ。
だけど全然浮き立つ気持ちはない。
大国ルーマデュカ。
どんなところなのだろう。
王太子にもう少し期待できたなら、この旅ももうちょっと心躍るものになったのかもしれない。
誰でもいい、とりあえずメンデエルの王女でありさえすれば、といった事情が露骨に透けて見える嫁入りなんて、どういう心構えでいればいいのだろう。
結局、王太子という人が、どんな顔なのかも全然判らないままだ。
まあ、見た目どうあれ、向こうは私に興味なんてまるっきりないんだから、どんな風体でもいいけどね。
とにかく無事にルーマデュカに着いて、新たな生活を構築することが大事だわ。
私が表に出ることはほとんどないんでしょうから、好きに暮らせそう。
それだけが唯一の心の支えだ。
ルーマデュカ王国についての基礎知識は、教育係のユーベルヴェークに一通り教わった。
メンデエル王国に比べれば新興国ではあるけれど、豊かな国で各国との貿易も盛んで、今の王様は英邁な君主だとの呼び声高いらしい。
王妃様がお洒落で流行りものがお好きだそうで、宮廷は最新のファッションや音楽、芸術に溢れているそうだ。
交易が盛んなため、珍しい食べ物なども集まっているみたい。
それは楽しみだわ。
私はそんなことをつらつら考えながら、ひたすら馬車に揺られてルーマデュカ王国を目指した。
0
お気に入りに追加
1,869
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる