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断れないおっさんのお話。
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ユベールはブラシで汚れた便器を擦りながら、大きな溜め息を吐いた。誰だ便器の周りにまでうんこを撒き散らかした奴は。ちゃんと便器の中に出せ。
ユベールは黙々とトイレ掃除をしながら、情けない自分に泣きたくなった。
ユベールは騎士団に勤めている。渾名は『便利屋』である。頼まれたら何でもホイホイ引き受けるから、そう呼ばれるようになった。
ユベールは昔から押しに弱く、断れない質だ。嫌だと思っても、嫌とは言えない情けないヘタレ野郎である。16歳で騎士団に入団して早20年。遠征の時以外は、毎日騎士団の建物のトイレ掃除をしている。本来ならば、新人が交代でやる筈のものだ。入団した年に、ユベールは皆が嫌がるトイレ掃除を同期の連中から頼まれ、もとい押し付けられた。断れずに、ユベールはヘラヘラと笑って引き受けてしまった。1年だけのことだからと、毎日何ヶ所もあるトイレ掃除をしていたが、翌年に、後輩である新人に、またトイレ掃除を頼まれた。トイレ掃除以外でも、頼まれたら断れずに皆が嫌がる雑用などをしていたので、入団して1年もすれば、ユベールは『頼んだら断らない便利な奴』だと思われるようになった。それを知った新人達が面白半分にユベールにトイレ掃除を頼み、ユベールは断れずに引き受け、それから毎年そんな感じでトイレ掃除を押しつけられ続けている。
トイレ掃除以外でも、面倒な仕事や皆が嫌がる仕事は『便利屋にやらせろ』みたいな感じになっている。断れないユベールが一番悪いのだが、何でも押しつけてこようとする職場の者達も正直どうかと思う。
ユベールが働いているのは、複数ある騎士団の中で最も格下なところで、平民出身が殆どである。騎士としての誇り?何それ美味いの?みたいな感じで、雑魚な魔物を討伐したり、他の強い騎士団の露払いや雑用みたいなことをやっている。そのせいか、所属する騎士の質は良くない。
幸い、今のところ大きな借金を押しつけられたりはしていない。少額の金は頻繁に貸しているが。ある程度まともな者は後日にちゃんと返してくれるが、返ってきていないものも多い。お陰で、ユベールは貯金もない貧乏生活をしている。全ては断れない自分が悪い。
借金を押しつけられたことはないが、女を押しつけられたことはある。遠い親戚から身持ちが悪いと評判の年増を嫁にしてくれと頼まれ、断りきれずに結婚した。まだ20歳の頃の事である。ちなみに相手の女は40を過ぎていた。身持ちが悪いのは本当で、毎日のように男を連れ込み、寝室でずっこんばっこん楽しんでいた。そんなに美人ではないのに、不思議と男に好かれる女で、年増でも相手の男は全然途切れなかった。結婚して5年目に、女は連れ込んだ男に首を絞められて死んだ。プレイ中の不幸な事故らしい。自宅に帰ってすぐに、呆然としている全裸の男と嫁だった死体を見てしまったユベールは、なんかもうショック過ぎて、それから数年の間インポになった。
自分がヘタレ過ぎて嫌になる。何でも、嫌なら嫌だと言って、断ればいいのだ。『断る』と一言言えばいいだけなのに、それができない。
ユベールはトイレ掃除を終えると、手を洗ってから、今度は馬小屋へと向かった。次は馬糞の処理である。自分の馬は自分で面倒をみるのが原則なのだが、馬糞の処理はユベールがやっている。午後から訓練をしていたので、もうすっかり日が暮れそうな時間である。早く終わらせなくては、今日も帰るのが遅くなる。家に帰っても誰も待っていないが。
ユベールは背中に哀愁を漂わせながら、馬小屋へと走った。
------
ユベールの朝は早い。ユベールの趣味は身体を鍛えることだ。毎日、日が昇る少し前に起き出し、きっかり1時間走ってから、筋トレをして、剣の素振りをする。人はユベールを簡単に裏切るが、己の筋肉だけは裏切らない。ユベールが頑張れば頑張っただけ、応えてくれる。お陰で、ユベールは体格と腕っ節は騎士団内でも上位である。『便利屋』と馬鹿にされて、いいようにこき使われているが。自分の情けない性格が憎い。
ユベールが亡くなった親から継いだ家の庭で腕立て伏せならぬ指立て伏せに励んでいると、小さな門の所から声をかけられた。指立て伏せをやりながら顔だけ上げると、最近筋トレ仲間になったマクシムがいた。マクシムは騎士ではない。街の役所に勤める文官である。歳はちょうどユベールより10歳下で、大人しそうな印象を受ける容姿の、穏やかな性格をした男だ。淡い栗色の髪とブラウンの瞳、よくよく見れば整っているが地味な顔立ちをしていて、体格は中背痩身である。ちなみに、ユベールは濃い金髪に深い青色の瞳をしていて、羊っぽい顔をしていると言われることが多い。間違いなく馬鹿にされていると思う。
マクシムがおっとりと笑って、庭に入ってきた。
「おはようございます。ユベールさん。すいません。ちょっと遅くなりました」
「大丈夫だ。準備運動は?」
「まだです。さくっとやっちゃいます」
「準備運動は入念にやれよ。身体を痛めるぞ」
「はい」
マクシムが指立て伏せをするユベールの隣で準備運動を始めた。
マクシムとは、雨の日とユベールが遠征で不在の時以外は、毎朝一緒に筋トレをしている。ざっと3ヶ月前に飲み屋のカウンターでたまたまマクシムと隣同士になり、お互いに既に酔っ払っていたこともあって、初対面だったが実に楽しく話して盛り上がった。帰り際に、『筋トレの指導をしてもらいたい』と頼まれた。マクシムはほっそりとした身体つきで、食べても太りにくく、筋肉もつきにくい体質らしい。『自分の貧相な身体がコンプレックスで、好きな人に告白もできない。情けない自分を変えていきたいから協力してほしい』と頼まれた。ユベールは快く引き受けた。こんなに前向きでやりがいのあることを頼まれるのは、多分初めてだ。以来、ユベールは毎日のようにマクシムに筋トレを指導しながら、一緒に筋トレに励んでいる。
やる気はあるが筋肉はないマクシムを励ましながら今朝の筋トレを終え、ユベールは剣の素振りを始めた。マクシムは家の中に入って、朝食を作ってくれている。
一緒に筋トレを始めた初日に、マクシムから『どうしてもお礼がしたい』と言われ、それなら……と朝食の用意を頼んだ。ユベールとしては、財布を渡すから朝市で何か買ってきてくれ、というつもりだったのだが、マクシムは朝市で材料を買ってきて、ユベールの家の台所で調理をして、ユベールに食べさせてくれた。特別美味しいというような料理ではないが、誰かがユベールの為に作ってくれた温かい出来たての料理を食べるのは随分と久しぶりで、ユベールは本当に嬉しかった。
マクシムは穏やかで優しく、頑張り屋な性格をしており、周りにはキツい性格の者が殆どなユベールにとっては、マクシムは完全に癒やし要員になった。
剣の素振りも終えて家の中に入ると、マクシムが居間のテーブルに朝食の皿を並べていた。今日はオムレツと焼いたソーセージがメインである。ユベールはマクシムに言われて、いそいそと風呂場へ向かい、シャワーで汗を流した。服を着てから居間に戻って、マクシムと一緒に朝食を食べる。
ユベールよりも食事量が少ないマクシムが、いつも先に食べ終える。マクシムが珈琲を飲みながら、朝からがっつりな量を食べているユベールに話しかけてきた。
「ユベールさん。あの、明日は確かお休みの日ですよね。よかったら、今夜一緒にお酒を飲みませんか?僕も明日は休みなんです」
「お。いいな。何処で飲む?」
「ユベールさんさえ良ければ、此処でいいですか?親戚から、すごく美味しいチーズを貰ったんです。ワインにとてもよく合うんですよ。お店に持っていく訳にもいかないですし、僕は実家住まいなので、できたら場所を貸してもらいたいです」
「そんなに美味いチーズなら、家族と食った方がいいんじゃないか?」
「家族の分もありますよ。いっぱい貰ったんです。本当に美味しいから、ユベールさんにも食べてもらいたいなって思って。日頃のお礼みたいな感じです」
「んー……そういうことなら喜んで。ワインは俺が用意しようか」
「いえ。ワインも持ってきます。家族は皆ワインが好きじゃなくて。飲むのは僕だけなんです。ワインも貰ったんですけど、僕以外誰も飲まないから、よければ一緒に飲んで欲しいです」
「じゃあ、ありがたくご馳走になるわ」
「ありがとうございます。仕事が終わったら、また来ますね」
「あぁ。なんとか残業しないで帰るわ」
「お願いします。ははっ。楽しみです」
ふわっと嬉しそうに笑ったマクシムに、ユベールはほっこりした。本当にマクシムは癒やしである。騎士団の連中とは大違いだ。こんなにユベールを気遣いつつも、ユベールが喜ぶようなことをしてくれる者は誰一人としていない。
今日は何としてでも定時で帰る。仕事を押しつけられても、死ぬ気でやればきっとなんとかなる。
ユベールはそう決意して、マクシム手作りの朝食を残さず食べきった。
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なんとか残業1時間程で家に帰り着き、門の前でずっと待ってくれていたマクシムに、ユベールは土下座をして謝った。マクシムは穏やかな笑みを浮かべて許してくれた上に、『遅くまでお疲れ様でした』と、ユベールを労ってくれた。天使かよ、と思った。
マクシムが夕食になるようなものまで買ってきてくれていたので、ユベールはマクシムの優しい気遣いに涙がちょちょ切れそうになった。
ユベールはマクシムと一緒に家に入り、居間でゆっくりと食事とワインを楽しみ始めた。
マクシムとの穏やかで楽しい会話は途切れることなく続き、気づけば日付が変わりそうな時間帯になっていた。マクシムが持ってきてくれたワインもチーズも本当に美味しかった。ワインを飲みきったので、今は買い置きしていた蒸留酒を飲んでいる。安物だが、マクシムが楽しそうに笑いながら飲んでくれるので、なんだかいつもよりも美味しく感じる。
酒精で微かに赤らんだ顔でニコニコと笑いながら、マクシムが酒が無くなったグラスをテーブルに置き、パンッと軽く音をさせながら両手を合わせて、こてんと首を傾げた。
「マクシム?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「ん?」
「お願いがね、あるんです」
「ん?なんだ?俺にできることか?」
「ユベールさんじゃないとできないことです。えへへっ。ちょっと着てみて欲しいものがあるんです」
「着てみて欲しいもの?」
ユベールはきょとんとして、足元に置いていた自分の鞄を膝に乗せて鞄の中に手を突っ込んだマクシムを眺めた。鞄の中から取り出した白い紙袋をマクシムから手渡される。ユベールは不思議に思いながらも受け取り、紙袋の中身を見てみた。何やら白い布が入っている。ユベールは紙袋から布を取り出して広げ、ビシッと固まった。
向こうが透けて見えるくらい薄い布は、所謂ベビードールと呼ばれるものだった。デザインは明らかに女もので、ほっそい肩紐に、レースで縁取られた胸元、フリルがひらひらの裾、そして胸の下辺りから布が分かれていて、容易く腹から下が見えてしまうデザインである。デザインは完全に女ものなのに、妙にサイズがデカい。大柄で筋肉質なユベールで着れちゃいそうな気がするサイズである。
ユベールはダラダラと嫌な汗を流しながら、ニコニコと笑っているマクシムに、恐る恐る話しかけた。
「マ、マクシム?これ、なんだ?」
「ユベールさんに似合いそうだなぁって思って、買っちゃいました。あ、パンツもありますよ」
「はいっ!?」
「えへへっ。早速着てみてください」
「これをっ!?」
「はい。絶対可愛いと思います」
「俺が!?これを!?着るの!?」
「お願いしますー。ユベールさんが着てるところを見たいんです。絶対可愛いですよ」
「しょ、正気か……あの、俺だぞ?よく見ろ?俺だぞ?どこからどう見てもゴッツいオッサンだぞ?俺36だからな?普通にオッサンだからな?」
「はい。可愛いと思います」
「嘘だろマジかよ。……うん。マクシム。えっと、ちょっと目のお医者さんの所に行こうか。俺も一緒についていくから」
「僕、視力はすごくいいですよ」
「い、いやぁ?ど、どうだろう?」
「ユベールさん」
「あ、はい」
「お願いです。着てみてください」
マクシムが両手を合わせて、若干上目遣いで頼んできた。ユベールはダラダラと嫌な汗を流し、目を泳がせつつ、無言で頷いた。だって断れない。
ユベールは、とても嬉しそうに笑うマクシムに乾いた笑みを返し、椅子から立ち上がって、その場で服を脱ぎ始めた。
感想。死にたい。誰でもいいから俺を殺せ。
ユベールは死んだ魚よりも濁った目をして、遠くを見た。可愛らしくもセクシーなデザインのベビードールを着ている。20代前半くらいの女が着たら、さぞかし似合うし、そそられるのだろうが、着ているのは齢36のオッサンである。キッツい。
ユベールの生着替えを穏やかな笑みを浮かべて眺めていたマクシムが、パチパチと拍手をしながら、嬉しそうに頬を染めて笑った。
「やっぱり!絶対に似合うと思ったんです。すごく可愛いです」
「あ、はい。どうも……」
「ユベールさん。ユベールさん」
「……今度はなんでしょう……」
「見てください。ユベールさんが可愛くて、こんなになっちゃいました」
マクシムが座ったまま何やらゴソゴソ身動きして、椅子から立ち上がりながら、いきなり自分のズボンとパンツをずり下ろした。ぎょっとしたユベールの視界に、マクシムの勃起したペニスが入る。マクシムのペニスは勃起して、元気いっぱいに反り返っていた。しかも、デカい。ちょっとどころではなく、ドン引く程デカい。なにそれ、棍棒ですか?魔物を殴り殺す武器ですか?と言いたいくらいデカい。皮が剥けて丸出しの赤い亀頭が微妙に濡れて鈍く光っている。ずっしりと大きな陰嚢も丸見えになっている。
マクシムがいつも通りの穏やかな顔で笑いながら、自分のペニスの太い竿を握り、ユベールに見せつけるように、ゆっくりとペニスを擦り始めた。
ユベールは顔を引き攣らせて、じわじわと後ろに下がり始めた。ユベールが自分のデッカいペニスを片手で擦りながら、ゆっくりと近づいてくる。
「マ、マクシム?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「な、なんだ?えっと、それ、仕舞おうな?いい子だからナイナイしような?ちんちんは他人に見せるものじゃないぞ?」
「今から気持ちいいことしましょうね」
「……………ひゃい……」
ユベールは笑顔のマクシムから奇妙な圧を感じて、すぐに泣く泣く白旗を上げた。
寝室に移動して、ユベールは羞恥に顔を染めながら、ベッドの上で女豹のポーズをしていた。マクシムがデッカいペニスを丸出しにしたまま、ユベールの周りをぐるぐる回って、色んな角度からユベールの身体を見ている。死にたい。いっそ殺せ。ベビードールの裾は太腿の半ばまであるが、スケスケなので、下に穿いているパンツも丸見えである。というか、尻が丸見えである。同じ紙袋に入っていたパンツは、繊細なレースが大変可愛らしいセクシーなTバック紐パンだった。
自分のペニスをシコシコ擦りながらユベールを褒め称えつつユベールの身体をガン見しまくっていたマクシムが、四つん這いになっているユベールの顔の方に来て、いきなりユベールの顔に精液をぶっかけてきた。熱くて青臭い液体をかけられて、ユベールは呆然とマクシムを見上げた。マクシムがうっとりとした顔で微笑んで、ユベールの頬を優しく撫でた。
「ユベールさん。ユベールさん。可愛いです」
「え、えぇ……」
「身体を起こしてください」
「え、あ、はい……」
鼻筋や頬をマクシムの熱い精液が垂れていくのを感じながら、ユベールは言われた通りに身体を起こして、膝立ちになった。マクシムが精液で汚れたユベールの頬を優しく両手で包み込み、自分の精液で汚れているユベールの頬を、べろーっと舐めた。
「うひっ!?」
「はぁ……ユベールさん。本当に可愛いです」
「えっ、あっ、ちょっ……」
マクシムがユベールの太い首筋に顔を埋め、ユベールの肌に熱い舌を這わせてきた。マクシムが身体をくっつけ、抱きしめられた。ぴったりとくっついたまま、首を舐め回される。セックスなんて15年間くらいしていない。触れる他人の熱と肌を這うぬるつく熱い舌の感触が、久しぶり過ぎる感覚を呼び起こす。ぶっちゃけ気持ちがいい。薄いベビードールの上から背中や腰を撫で回すマクシムの手も、首だけでなく鎖骨や盛り上がった胸筋の上の方を舐めているマクシムの舌も、じわじわ気持ちがいい。ユベールは、ふっ、ふっ、と荒くなる息を殺しながら、マクシムの肩を掴み、軽く押した。
「マ、マクシム……その、も、もういいだろ?これ以上はほら、洒落にならんというか……」
「ユベールさん」
「な、なんだ?」
「腕を上げて、頭の後ろで手を組んでください」
「……えー……あー……」
「ユベールさん。お願い?」
マクシムが上目遣いで、こてんと首を傾げながら、にこーっと笑った。ユベールは泣く泣く両腕を上げ、頭の後ろで手を組んだ。ベビードールを着たオッサンの毛がもっさり生えた脇に鼻先を突っ込んで匂いを嗅ぎながら、マクシムがうっとりとした顔で熱心に舐め始めた。オッサンの臭い脇を美味そうに舐め回しているマクシムを見ながら、ユベールは思った。さようなら。俺のケツ処女。これはもうダメだわ。
脇を舐め回されて、擽ったさに身をよじりながら、ユベールはなんかもう色々諦めた。
ベビードールを着たまま、色んな恥ずかしいポーズをさせられつつ、マクシムに全身を舐め回された。今はマクシムの希望で、ベッドに座ったマクシムの顔に自分の股間をぐりぐりと押しつけている。はぁはぁと熱いマクシムの吐息が、薄い布越しに舐めまわされて勃起してしまったユベールのペニスにかかる。ぐりぐりとマクシムの顔面に熱くなった股間を擦りつけていると、ユベールの剥き出しの筋肉質な尻肉を両手で揉みながら股間の匂いを嗅ぎまくっているマクシムが、ユベールの股間から少し顔を離した。
「ユベールさん。そろそろ挿れたいです」
「……マジでヤるのか……」
「はい。あのね、ユベールさん」
「今度は何だよ」
「僕、ユベールさんが大好きです」
「……は?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「え?は?え?」
「老後のお世話は任せてくださいね」
「……は?」
ぽかんとしているユベールを見上げて、にっこりと笑い、マクシムがすりすりとユベールの股間に頬擦りをした。
何が何やら、もう本当に意味が分からない。何がどうしてこうなった。
ユベールはマクシムにアナルをしつこい程舐め回され、指で本気泣きしちゃうくらいアナルを責められ、現在はずっぽりとマクシムのやべぇくらいデッカいペニスがユベールのアナルに入り込んでいる。大変遺憾ながら、ユベールのアナルにはとっても才能があったらしい。アナルなんて弄られるのは生まれて初めてだったのに、前立腺とやらを弄られまくって、泣きわめきながら射精しちゃった程度には気持ちよくなってしまった。
みっちりと狭い直腸内をマクシムの熱くて固くて太いペニスが隙間なく埋め、どんどん奥に奥にと入ってくる。痛いのに、腸壁をマクシムのペニスでじわじわと擦られるのが正直気持ちがいい。
ユベールは情けなく鼻水まで垂らしてえぐえぐ泣きながら、正常位でマクシムのペニスをアナルで受け入れていた。マクシムのペニスがどんどん深く入ってくる。ちょっと待て。これはマジで入ったらいけないところまで入るんじゃないのか。ユベールが怯えて顔を引き攣らせていると、マクシムの動きが止まった。もしかして、全部入ったのかも。マクシムが、ちゅっ、ちゅっと小さな音を立ててユベールの顔中にキスを落としてくる。なんとなく少しだけユベールがほっとした次の瞬間、ガツンッと強い衝撃がユベールを襲い、鋭い痛みと強烈過ぎる快感が脳天へと突き抜けた。
「ひぎっ!?」
「あはっ。ユベールさん。ユベールさん。可愛い。大好き」
「いぃ!?ぐっ!ひっ!ひっ!……ぎ、ぃあぁ!?」
「気持ちいい?気持ちいい?今ね、ユベールさんの結腸ズコズコしてるんですよ」
「あひっ!ひぃっ!あ、あぁぁぁぁ!!」
結腸って一体何だ。そう言いたいが、激しく強く腹の奥をズンズンガンガン突き上げられまくっており、それどころじゃない。痛みと快感で頭の中が真っ白になり、マジでお迎えがきそうな気すらしてくる。ごっすんごっすん突き上げられながら、既に弄られまくって若干ひりひりしている乳首をマクシムに両手で摘まれ、ぐいっと引っ張られた。
「ひぎゃっ!?」
ビクンッと身体から勝手に跳ねてしまう。自分の裏返った汚い喘ぎ声とマクシムの楽しそうな笑い声しか耳に入らない。
痛みと快感に泣き叫ぶユベールの唇を優しく吸って、マクシムがにっこりと笑った。
「ユベールさん。大好き」
「あ、あぁぁぁぁっ!!」
マクシムがビクビク震えているユベールの身体を強く抱きしめ、ユベールの耳元で低く喘いだ。腹の中で、微かにマクシムのペニスがピクピクと震えているような感覚がする。多分、ユベールの中でマクシムが射精している。ユベールも何故か射精していた。
ユベールは精液すら出なくなって、最終的におしっこを漏らす程、延々とマクシムに貪られた。
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腰とアナルの激痛に唸りながら、ユベールはご機嫌なマクシムに横から抱きつかれていた。
未だにセクシーなベビードールは着たままである。パンツは気づいたら無くなっていた。ユベールの頬に何度もキスをしながら、マクシムがなんとも嬉しそうな声でユベールの名前を呼んだ。
「ユベールさん。大好きです」
「……あー……うん。散々聞いた……」
「ふふっ。僕ね、今度昇進するんです」
「あ、はい」
「だから、ユベールさんはお仕事辞めてくださいね」
「……は?」
「『便利屋』そう呼ばれてるんでしょ?」
「……まぁ……」
「貴方を十分養えるだけの収入になります。仕事を辞めて、家にいてください。……貴方が『便利屋』なんて呼ばれて、周りに好き勝手されるのは我慢ならない」
「えーと……」
「働きたいなら働いてもらってもいいですけど、騎士団は辞めてください。優しい貴方が、辛い思いをする必要なんて絶対にありません」
「…………」
「貴方の側に死ぬまでいます。僕と一緒に生きてください。老後のお世話だって喜んでやります。一緒に毎朝筋トレして、僕が作った朝ご飯を一緒に食べてください」
「……俺、オッサンなんだが……」
「知ってます。可愛いです」
「……取り柄とかねぇし、ヘタレだし、いいとこなんて全然ねぇぞ」
「ユベールさんは優しいし、すっごく真面目です。それに努力家だし、可愛いし、一生懸命で、本当に可愛いです」
「えー……いやぁ?」
「……僕、ユベールさんのこと、結構前から知ってました。僕の兄が騎士団で働いてるんです」
「あ?マジで?」
「はい。兄に届け物をしに騎士団に行った時に、訓練してるユベールさんを見ました。すごく格好良くて、兄にユベールさんのことを聞きました。それから、たまに騎士団にユベールさんを見に行ってたんです。ユベールさん、いつも誰かの頼みごとを聞いて、何でも一生懸命やってました。頑張ってるユベールさんは格好いいけど、ユベールさんを馬鹿にしてる周りの連中が本当に嫌いなんです。だから、僕はユベールさんに騎士団を辞めてほしいです」
「お、おう……」
「ユベールさん。今すぐじゃなくていいから、僕のこと、好きになって欲しいです。……これは『貴方へのお願い』じゃないです。ただの、僕の願望です。貴方の心は貴方だけのものだ」
「…………」
「あ、でも。一緒に暮らしてくださいね。ユベールさんに好きになってもらえるように、僕、頑張りますから」
ユベールは真顔でマクシムの顔を見つめた。マクシムはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべていたが、目が怖いくらい真剣だった。どうやらユベールは真剣にマクシムに好かれているらしい。
ユベールは困って、むにむにと唇を動かした。誰かにこんなに真っ直ぐに好かれたのは、もしかしたら初めてかもしれない。エラい目にあったが、全然腹が立たないし、何故だが妙にマクシムが可愛く思える。
ユベールは小さく溜め息を吐いて、痛む身体を動かし、マクシムのほっそりとした身体を抱きしめた。
こんなに愛されたら嬉しくて断れないではないか。
ユベールは、マクシムの唇に触れるだけのキスをして、大喜びで何度もキスを返してくるマクシムの頭を撫でた。
1ヶ月後には騎士団を辞め、ユベールはマクシムと一緒に暮らし始めた。無職は流石に嫌なので、近所の子供達に剣を教える教室と、大人向けの筋トレ教室を始めた。これが意外と評判がよく、ユベールは地味に忙しい毎日を送ることになった。
マクシムは何十年経っても、ユベールのことを可愛いと言うし、大好きと言ってキスをしてくる。
ユベールも、2回に1回くらいは、マクシムに可愛いと言って、大好きとキスをし返すようになった。
誰もが便利に使っていた『便利屋』は、いつしか、たった1人の為にしか動かなくなった。
(おしまい)
ユベールは黙々とトイレ掃除をしながら、情けない自分に泣きたくなった。
ユベールは騎士団に勤めている。渾名は『便利屋』である。頼まれたら何でもホイホイ引き受けるから、そう呼ばれるようになった。
ユベールは昔から押しに弱く、断れない質だ。嫌だと思っても、嫌とは言えない情けないヘタレ野郎である。16歳で騎士団に入団して早20年。遠征の時以外は、毎日騎士団の建物のトイレ掃除をしている。本来ならば、新人が交代でやる筈のものだ。入団した年に、ユベールは皆が嫌がるトイレ掃除を同期の連中から頼まれ、もとい押し付けられた。断れずに、ユベールはヘラヘラと笑って引き受けてしまった。1年だけのことだからと、毎日何ヶ所もあるトイレ掃除をしていたが、翌年に、後輩である新人に、またトイレ掃除を頼まれた。トイレ掃除以外でも、頼まれたら断れずに皆が嫌がる雑用などをしていたので、入団して1年もすれば、ユベールは『頼んだら断らない便利な奴』だと思われるようになった。それを知った新人達が面白半分にユベールにトイレ掃除を頼み、ユベールは断れずに引き受け、それから毎年そんな感じでトイレ掃除を押しつけられ続けている。
トイレ掃除以外でも、面倒な仕事や皆が嫌がる仕事は『便利屋にやらせろ』みたいな感じになっている。断れないユベールが一番悪いのだが、何でも押しつけてこようとする職場の者達も正直どうかと思う。
ユベールが働いているのは、複数ある騎士団の中で最も格下なところで、平民出身が殆どである。騎士としての誇り?何それ美味いの?みたいな感じで、雑魚な魔物を討伐したり、他の強い騎士団の露払いや雑用みたいなことをやっている。そのせいか、所属する騎士の質は良くない。
幸い、今のところ大きな借金を押しつけられたりはしていない。少額の金は頻繁に貸しているが。ある程度まともな者は後日にちゃんと返してくれるが、返ってきていないものも多い。お陰で、ユベールは貯金もない貧乏生活をしている。全ては断れない自分が悪い。
借金を押しつけられたことはないが、女を押しつけられたことはある。遠い親戚から身持ちが悪いと評判の年増を嫁にしてくれと頼まれ、断りきれずに結婚した。まだ20歳の頃の事である。ちなみに相手の女は40を過ぎていた。身持ちが悪いのは本当で、毎日のように男を連れ込み、寝室でずっこんばっこん楽しんでいた。そんなに美人ではないのに、不思議と男に好かれる女で、年増でも相手の男は全然途切れなかった。結婚して5年目に、女は連れ込んだ男に首を絞められて死んだ。プレイ中の不幸な事故らしい。自宅に帰ってすぐに、呆然としている全裸の男と嫁だった死体を見てしまったユベールは、なんかもうショック過ぎて、それから数年の間インポになった。
自分がヘタレ過ぎて嫌になる。何でも、嫌なら嫌だと言って、断ればいいのだ。『断る』と一言言えばいいだけなのに、それができない。
ユベールはトイレ掃除を終えると、手を洗ってから、今度は馬小屋へと向かった。次は馬糞の処理である。自分の馬は自分で面倒をみるのが原則なのだが、馬糞の処理はユベールがやっている。午後から訓練をしていたので、もうすっかり日が暮れそうな時間である。早く終わらせなくては、今日も帰るのが遅くなる。家に帰っても誰も待っていないが。
ユベールは背中に哀愁を漂わせながら、馬小屋へと走った。
------
ユベールの朝は早い。ユベールの趣味は身体を鍛えることだ。毎日、日が昇る少し前に起き出し、きっかり1時間走ってから、筋トレをして、剣の素振りをする。人はユベールを簡単に裏切るが、己の筋肉だけは裏切らない。ユベールが頑張れば頑張っただけ、応えてくれる。お陰で、ユベールは体格と腕っ節は騎士団内でも上位である。『便利屋』と馬鹿にされて、いいようにこき使われているが。自分の情けない性格が憎い。
ユベールが亡くなった親から継いだ家の庭で腕立て伏せならぬ指立て伏せに励んでいると、小さな門の所から声をかけられた。指立て伏せをやりながら顔だけ上げると、最近筋トレ仲間になったマクシムがいた。マクシムは騎士ではない。街の役所に勤める文官である。歳はちょうどユベールより10歳下で、大人しそうな印象を受ける容姿の、穏やかな性格をした男だ。淡い栗色の髪とブラウンの瞳、よくよく見れば整っているが地味な顔立ちをしていて、体格は中背痩身である。ちなみに、ユベールは濃い金髪に深い青色の瞳をしていて、羊っぽい顔をしていると言われることが多い。間違いなく馬鹿にされていると思う。
マクシムがおっとりと笑って、庭に入ってきた。
「おはようございます。ユベールさん。すいません。ちょっと遅くなりました」
「大丈夫だ。準備運動は?」
「まだです。さくっとやっちゃいます」
「準備運動は入念にやれよ。身体を痛めるぞ」
「はい」
マクシムが指立て伏せをするユベールの隣で準備運動を始めた。
マクシムとは、雨の日とユベールが遠征で不在の時以外は、毎朝一緒に筋トレをしている。ざっと3ヶ月前に飲み屋のカウンターでたまたまマクシムと隣同士になり、お互いに既に酔っ払っていたこともあって、初対面だったが実に楽しく話して盛り上がった。帰り際に、『筋トレの指導をしてもらいたい』と頼まれた。マクシムはほっそりとした身体つきで、食べても太りにくく、筋肉もつきにくい体質らしい。『自分の貧相な身体がコンプレックスで、好きな人に告白もできない。情けない自分を変えていきたいから協力してほしい』と頼まれた。ユベールは快く引き受けた。こんなに前向きでやりがいのあることを頼まれるのは、多分初めてだ。以来、ユベールは毎日のようにマクシムに筋トレを指導しながら、一緒に筋トレに励んでいる。
やる気はあるが筋肉はないマクシムを励ましながら今朝の筋トレを終え、ユベールは剣の素振りを始めた。マクシムは家の中に入って、朝食を作ってくれている。
一緒に筋トレを始めた初日に、マクシムから『どうしてもお礼がしたい』と言われ、それなら……と朝食の用意を頼んだ。ユベールとしては、財布を渡すから朝市で何か買ってきてくれ、というつもりだったのだが、マクシムは朝市で材料を買ってきて、ユベールの家の台所で調理をして、ユベールに食べさせてくれた。特別美味しいというような料理ではないが、誰かがユベールの為に作ってくれた温かい出来たての料理を食べるのは随分と久しぶりで、ユベールは本当に嬉しかった。
マクシムは穏やかで優しく、頑張り屋な性格をしており、周りにはキツい性格の者が殆どなユベールにとっては、マクシムは完全に癒やし要員になった。
剣の素振りも終えて家の中に入ると、マクシムが居間のテーブルに朝食の皿を並べていた。今日はオムレツと焼いたソーセージがメインである。ユベールはマクシムに言われて、いそいそと風呂場へ向かい、シャワーで汗を流した。服を着てから居間に戻って、マクシムと一緒に朝食を食べる。
ユベールよりも食事量が少ないマクシムが、いつも先に食べ終える。マクシムが珈琲を飲みながら、朝からがっつりな量を食べているユベールに話しかけてきた。
「ユベールさん。あの、明日は確かお休みの日ですよね。よかったら、今夜一緒にお酒を飲みませんか?僕も明日は休みなんです」
「お。いいな。何処で飲む?」
「ユベールさんさえ良ければ、此処でいいですか?親戚から、すごく美味しいチーズを貰ったんです。ワインにとてもよく合うんですよ。お店に持っていく訳にもいかないですし、僕は実家住まいなので、できたら場所を貸してもらいたいです」
「そんなに美味いチーズなら、家族と食った方がいいんじゃないか?」
「家族の分もありますよ。いっぱい貰ったんです。本当に美味しいから、ユベールさんにも食べてもらいたいなって思って。日頃のお礼みたいな感じです」
「んー……そういうことなら喜んで。ワインは俺が用意しようか」
「いえ。ワインも持ってきます。家族は皆ワインが好きじゃなくて。飲むのは僕だけなんです。ワインも貰ったんですけど、僕以外誰も飲まないから、よければ一緒に飲んで欲しいです」
「じゃあ、ありがたくご馳走になるわ」
「ありがとうございます。仕事が終わったら、また来ますね」
「あぁ。なんとか残業しないで帰るわ」
「お願いします。ははっ。楽しみです」
ふわっと嬉しそうに笑ったマクシムに、ユベールはほっこりした。本当にマクシムは癒やしである。騎士団の連中とは大違いだ。こんなにユベールを気遣いつつも、ユベールが喜ぶようなことをしてくれる者は誰一人としていない。
今日は何としてでも定時で帰る。仕事を押しつけられても、死ぬ気でやればきっとなんとかなる。
ユベールはそう決意して、マクシム手作りの朝食を残さず食べきった。
-------
なんとか残業1時間程で家に帰り着き、門の前でずっと待ってくれていたマクシムに、ユベールは土下座をして謝った。マクシムは穏やかな笑みを浮かべて許してくれた上に、『遅くまでお疲れ様でした』と、ユベールを労ってくれた。天使かよ、と思った。
マクシムが夕食になるようなものまで買ってきてくれていたので、ユベールはマクシムの優しい気遣いに涙がちょちょ切れそうになった。
ユベールはマクシムと一緒に家に入り、居間でゆっくりと食事とワインを楽しみ始めた。
マクシムとの穏やかで楽しい会話は途切れることなく続き、気づけば日付が変わりそうな時間帯になっていた。マクシムが持ってきてくれたワインもチーズも本当に美味しかった。ワインを飲みきったので、今は買い置きしていた蒸留酒を飲んでいる。安物だが、マクシムが楽しそうに笑いながら飲んでくれるので、なんだかいつもよりも美味しく感じる。
酒精で微かに赤らんだ顔でニコニコと笑いながら、マクシムが酒が無くなったグラスをテーブルに置き、パンッと軽く音をさせながら両手を合わせて、こてんと首を傾げた。
「マクシム?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「ん?」
「お願いがね、あるんです」
「ん?なんだ?俺にできることか?」
「ユベールさんじゃないとできないことです。えへへっ。ちょっと着てみて欲しいものがあるんです」
「着てみて欲しいもの?」
ユベールはきょとんとして、足元に置いていた自分の鞄を膝に乗せて鞄の中に手を突っ込んだマクシムを眺めた。鞄の中から取り出した白い紙袋をマクシムから手渡される。ユベールは不思議に思いながらも受け取り、紙袋の中身を見てみた。何やら白い布が入っている。ユベールは紙袋から布を取り出して広げ、ビシッと固まった。
向こうが透けて見えるくらい薄い布は、所謂ベビードールと呼ばれるものだった。デザインは明らかに女もので、ほっそい肩紐に、レースで縁取られた胸元、フリルがひらひらの裾、そして胸の下辺りから布が分かれていて、容易く腹から下が見えてしまうデザインである。デザインは完全に女ものなのに、妙にサイズがデカい。大柄で筋肉質なユベールで着れちゃいそうな気がするサイズである。
ユベールはダラダラと嫌な汗を流しながら、ニコニコと笑っているマクシムに、恐る恐る話しかけた。
「マ、マクシム?これ、なんだ?」
「ユベールさんに似合いそうだなぁって思って、買っちゃいました。あ、パンツもありますよ」
「はいっ!?」
「えへへっ。早速着てみてください」
「これをっ!?」
「はい。絶対可愛いと思います」
「俺が!?これを!?着るの!?」
「お願いしますー。ユベールさんが着てるところを見たいんです。絶対可愛いですよ」
「しょ、正気か……あの、俺だぞ?よく見ろ?俺だぞ?どこからどう見てもゴッツいオッサンだぞ?俺36だからな?普通にオッサンだからな?」
「はい。可愛いと思います」
「嘘だろマジかよ。……うん。マクシム。えっと、ちょっと目のお医者さんの所に行こうか。俺も一緒についていくから」
「僕、視力はすごくいいですよ」
「い、いやぁ?ど、どうだろう?」
「ユベールさん」
「あ、はい」
「お願いです。着てみてください」
マクシムが両手を合わせて、若干上目遣いで頼んできた。ユベールはダラダラと嫌な汗を流し、目を泳がせつつ、無言で頷いた。だって断れない。
ユベールは、とても嬉しそうに笑うマクシムに乾いた笑みを返し、椅子から立ち上がって、その場で服を脱ぎ始めた。
感想。死にたい。誰でもいいから俺を殺せ。
ユベールは死んだ魚よりも濁った目をして、遠くを見た。可愛らしくもセクシーなデザインのベビードールを着ている。20代前半くらいの女が着たら、さぞかし似合うし、そそられるのだろうが、着ているのは齢36のオッサンである。キッツい。
ユベールの生着替えを穏やかな笑みを浮かべて眺めていたマクシムが、パチパチと拍手をしながら、嬉しそうに頬を染めて笑った。
「やっぱり!絶対に似合うと思ったんです。すごく可愛いです」
「あ、はい。どうも……」
「ユベールさん。ユベールさん」
「……今度はなんでしょう……」
「見てください。ユベールさんが可愛くて、こんなになっちゃいました」
マクシムが座ったまま何やらゴソゴソ身動きして、椅子から立ち上がりながら、いきなり自分のズボンとパンツをずり下ろした。ぎょっとしたユベールの視界に、マクシムの勃起したペニスが入る。マクシムのペニスは勃起して、元気いっぱいに反り返っていた。しかも、デカい。ちょっとどころではなく、ドン引く程デカい。なにそれ、棍棒ですか?魔物を殴り殺す武器ですか?と言いたいくらいデカい。皮が剥けて丸出しの赤い亀頭が微妙に濡れて鈍く光っている。ずっしりと大きな陰嚢も丸見えになっている。
マクシムがいつも通りの穏やかな顔で笑いながら、自分のペニスの太い竿を握り、ユベールに見せつけるように、ゆっくりとペニスを擦り始めた。
ユベールは顔を引き攣らせて、じわじわと後ろに下がり始めた。ユベールが自分のデッカいペニスを片手で擦りながら、ゆっくりと近づいてくる。
「マ、マクシム?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「な、なんだ?えっと、それ、仕舞おうな?いい子だからナイナイしような?ちんちんは他人に見せるものじゃないぞ?」
「今から気持ちいいことしましょうね」
「……………ひゃい……」
ユベールは笑顔のマクシムから奇妙な圧を感じて、すぐに泣く泣く白旗を上げた。
寝室に移動して、ユベールは羞恥に顔を染めながら、ベッドの上で女豹のポーズをしていた。マクシムがデッカいペニスを丸出しにしたまま、ユベールの周りをぐるぐる回って、色んな角度からユベールの身体を見ている。死にたい。いっそ殺せ。ベビードールの裾は太腿の半ばまであるが、スケスケなので、下に穿いているパンツも丸見えである。というか、尻が丸見えである。同じ紙袋に入っていたパンツは、繊細なレースが大変可愛らしいセクシーなTバック紐パンだった。
自分のペニスをシコシコ擦りながらユベールを褒め称えつつユベールの身体をガン見しまくっていたマクシムが、四つん這いになっているユベールの顔の方に来て、いきなりユベールの顔に精液をぶっかけてきた。熱くて青臭い液体をかけられて、ユベールは呆然とマクシムを見上げた。マクシムがうっとりとした顔で微笑んで、ユベールの頬を優しく撫でた。
「ユベールさん。ユベールさん。可愛いです」
「え、えぇ……」
「身体を起こしてください」
「え、あ、はい……」
鼻筋や頬をマクシムの熱い精液が垂れていくのを感じながら、ユベールは言われた通りに身体を起こして、膝立ちになった。マクシムが精液で汚れたユベールの頬を優しく両手で包み込み、自分の精液で汚れているユベールの頬を、べろーっと舐めた。
「うひっ!?」
「はぁ……ユベールさん。本当に可愛いです」
「えっ、あっ、ちょっ……」
マクシムがユベールの太い首筋に顔を埋め、ユベールの肌に熱い舌を這わせてきた。マクシムが身体をくっつけ、抱きしめられた。ぴったりとくっついたまま、首を舐め回される。セックスなんて15年間くらいしていない。触れる他人の熱と肌を這うぬるつく熱い舌の感触が、久しぶり過ぎる感覚を呼び起こす。ぶっちゃけ気持ちがいい。薄いベビードールの上から背中や腰を撫で回すマクシムの手も、首だけでなく鎖骨や盛り上がった胸筋の上の方を舐めているマクシムの舌も、じわじわ気持ちがいい。ユベールは、ふっ、ふっ、と荒くなる息を殺しながら、マクシムの肩を掴み、軽く押した。
「マ、マクシム……その、も、もういいだろ?これ以上はほら、洒落にならんというか……」
「ユベールさん」
「な、なんだ?」
「腕を上げて、頭の後ろで手を組んでください」
「……えー……あー……」
「ユベールさん。お願い?」
マクシムが上目遣いで、こてんと首を傾げながら、にこーっと笑った。ユベールは泣く泣く両腕を上げ、頭の後ろで手を組んだ。ベビードールを着たオッサンの毛がもっさり生えた脇に鼻先を突っ込んで匂いを嗅ぎながら、マクシムがうっとりとした顔で熱心に舐め始めた。オッサンの臭い脇を美味そうに舐め回しているマクシムを見ながら、ユベールは思った。さようなら。俺のケツ処女。これはもうダメだわ。
脇を舐め回されて、擽ったさに身をよじりながら、ユベールはなんかもう色々諦めた。
ベビードールを着たまま、色んな恥ずかしいポーズをさせられつつ、マクシムに全身を舐め回された。今はマクシムの希望で、ベッドに座ったマクシムの顔に自分の股間をぐりぐりと押しつけている。はぁはぁと熱いマクシムの吐息が、薄い布越しに舐めまわされて勃起してしまったユベールのペニスにかかる。ぐりぐりとマクシムの顔面に熱くなった股間を擦りつけていると、ユベールの剥き出しの筋肉質な尻肉を両手で揉みながら股間の匂いを嗅ぎまくっているマクシムが、ユベールの股間から少し顔を離した。
「ユベールさん。そろそろ挿れたいです」
「……マジでヤるのか……」
「はい。あのね、ユベールさん」
「今度は何だよ」
「僕、ユベールさんが大好きです」
「……は?」
「ユベールさん。ユベールさん」
「え?は?え?」
「老後のお世話は任せてくださいね」
「……は?」
ぽかんとしているユベールを見上げて、にっこりと笑い、マクシムがすりすりとユベールの股間に頬擦りをした。
何が何やら、もう本当に意味が分からない。何がどうしてこうなった。
ユベールはマクシムにアナルをしつこい程舐め回され、指で本気泣きしちゃうくらいアナルを責められ、現在はずっぽりとマクシムのやべぇくらいデッカいペニスがユベールのアナルに入り込んでいる。大変遺憾ながら、ユベールのアナルにはとっても才能があったらしい。アナルなんて弄られるのは生まれて初めてだったのに、前立腺とやらを弄られまくって、泣きわめきながら射精しちゃった程度には気持ちよくなってしまった。
みっちりと狭い直腸内をマクシムの熱くて固くて太いペニスが隙間なく埋め、どんどん奥に奥にと入ってくる。痛いのに、腸壁をマクシムのペニスでじわじわと擦られるのが正直気持ちがいい。
ユベールは情けなく鼻水まで垂らしてえぐえぐ泣きながら、正常位でマクシムのペニスをアナルで受け入れていた。マクシムのペニスがどんどん深く入ってくる。ちょっと待て。これはマジで入ったらいけないところまで入るんじゃないのか。ユベールが怯えて顔を引き攣らせていると、マクシムの動きが止まった。もしかして、全部入ったのかも。マクシムが、ちゅっ、ちゅっと小さな音を立ててユベールの顔中にキスを落としてくる。なんとなく少しだけユベールがほっとした次の瞬間、ガツンッと強い衝撃がユベールを襲い、鋭い痛みと強烈過ぎる快感が脳天へと突き抜けた。
「ひぎっ!?」
「あはっ。ユベールさん。ユベールさん。可愛い。大好き」
「いぃ!?ぐっ!ひっ!ひっ!……ぎ、ぃあぁ!?」
「気持ちいい?気持ちいい?今ね、ユベールさんの結腸ズコズコしてるんですよ」
「あひっ!ひぃっ!あ、あぁぁぁぁ!!」
結腸って一体何だ。そう言いたいが、激しく強く腹の奥をズンズンガンガン突き上げられまくっており、それどころじゃない。痛みと快感で頭の中が真っ白になり、マジでお迎えがきそうな気すらしてくる。ごっすんごっすん突き上げられながら、既に弄られまくって若干ひりひりしている乳首をマクシムに両手で摘まれ、ぐいっと引っ張られた。
「ひぎゃっ!?」
ビクンッと身体から勝手に跳ねてしまう。自分の裏返った汚い喘ぎ声とマクシムの楽しそうな笑い声しか耳に入らない。
痛みと快感に泣き叫ぶユベールの唇を優しく吸って、マクシムがにっこりと笑った。
「ユベールさん。大好き」
「あ、あぁぁぁぁっ!!」
マクシムがビクビク震えているユベールの身体を強く抱きしめ、ユベールの耳元で低く喘いだ。腹の中で、微かにマクシムのペニスがピクピクと震えているような感覚がする。多分、ユベールの中でマクシムが射精している。ユベールも何故か射精していた。
ユベールは精液すら出なくなって、最終的におしっこを漏らす程、延々とマクシムに貪られた。
------
腰とアナルの激痛に唸りながら、ユベールはご機嫌なマクシムに横から抱きつかれていた。
未だにセクシーなベビードールは着たままである。パンツは気づいたら無くなっていた。ユベールの頬に何度もキスをしながら、マクシムがなんとも嬉しそうな声でユベールの名前を呼んだ。
「ユベールさん。大好きです」
「……あー……うん。散々聞いた……」
「ふふっ。僕ね、今度昇進するんです」
「あ、はい」
「だから、ユベールさんはお仕事辞めてくださいね」
「……は?」
「『便利屋』そう呼ばれてるんでしょ?」
「……まぁ……」
「貴方を十分養えるだけの収入になります。仕事を辞めて、家にいてください。……貴方が『便利屋』なんて呼ばれて、周りに好き勝手されるのは我慢ならない」
「えーと……」
「働きたいなら働いてもらってもいいですけど、騎士団は辞めてください。優しい貴方が、辛い思いをする必要なんて絶対にありません」
「…………」
「貴方の側に死ぬまでいます。僕と一緒に生きてください。老後のお世話だって喜んでやります。一緒に毎朝筋トレして、僕が作った朝ご飯を一緒に食べてください」
「……俺、オッサンなんだが……」
「知ってます。可愛いです」
「……取り柄とかねぇし、ヘタレだし、いいとこなんて全然ねぇぞ」
「ユベールさんは優しいし、すっごく真面目です。それに努力家だし、可愛いし、一生懸命で、本当に可愛いです」
「えー……いやぁ?」
「……僕、ユベールさんのこと、結構前から知ってました。僕の兄が騎士団で働いてるんです」
「あ?マジで?」
「はい。兄に届け物をしに騎士団に行った時に、訓練してるユベールさんを見ました。すごく格好良くて、兄にユベールさんのことを聞きました。それから、たまに騎士団にユベールさんを見に行ってたんです。ユベールさん、いつも誰かの頼みごとを聞いて、何でも一生懸命やってました。頑張ってるユベールさんは格好いいけど、ユベールさんを馬鹿にしてる周りの連中が本当に嫌いなんです。だから、僕はユベールさんに騎士団を辞めてほしいです」
「お、おう……」
「ユベールさん。今すぐじゃなくていいから、僕のこと、好きになって欲しいです。……これは『貴方へのお願い』じゃないです。ただの、僕の願望です。貴方の心は貴方だけのものだ」
「…………」
「あ、でも。一緒に暮らしてくださいね。ユベールさんに好きになってもらえるように、僕、頑張りますから」
ユベールは真顔でマクシムの顔を見つめた。マクシムはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべていたが、目が怖いくらい真剣だった。どうやらユベールは真剣にマクシムに好かれているらしい。
ユベールは困って、むにむにと唇を動かした。誰かにこんなに真っ直ぐに好かれたのは、もしかしたら初めてかもしれない。エラい目にあったが、全然腹が立たないし、何故だが妙にマクシムが可愛く思える。
ユベールは小さく溜め息を吐いて、痛む身体を動かし、マクシムのほっそりとした身体を抱きしめた。
こんなに愛されたら嬉しくて断れないではないか。
ユベールは、マクシムの唇に触れるだけのキスをして、大喜びで何度もキスを返してくるマクシムの頭を撫でた。
1ヶ月後には騎士団を辞め、ユベールはマクシムと一緒に暮らし始めた。無職は流石に嫌なので、近所の子供達に剣を教える教室と、大人向けの筋トレ教室を始めた。これが意外と評判がよく、ユベールは地味に忙しい毎日を送ることになった。
マクシムは何十年経っても、ユベールのことを可愛いと言うし、大好きと言ってキスをしてくる。
ユベールも、2回に1回くらいは、マクシムに可愛いと言って、大好きとキスをし返すようになった。
誰もが便利に使っていた『便利屋』は、いつしか、たった1人の為にしか動かなくなった。
(おしまい)
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