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5:嬉しい変化と穏やかな日常
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フィガロは憮然とした顔で、積み木を一つ積み上げた。アンジェリーナが笑顔でニーズに話しかけた。
「次はニーズの番よ。崩さないように気をつけてね」
「うん」
「……なぁ」
「何? フィガロ」
「何でアンタも一緒に積み木してるわけ?」
「一緒に遊んだ方が楽しいじゃない」
「そうでもねぇよ。つーか、何で俺についてきたんだよ」
「友達と一緒に遊ぶのに理由がいるの?」
「いつ、俺とアンタが友達になったんだよ」
「友達と思ったその瞬間から友達なのよ。あ、ニーズ、上手ね」
「えへー。つぎ、おねえちゃん」
「えぇ。あら、四角の積み木が少ないわね。難易度上がってきたわー」
アンジェリーナが楽しそうにニーズと顔を見合わせて笑った。
フィガロが熱を出して一週間が経っている。もう完全によくなっており、小学校にも通っている。今日はいつも通り1人で小学校から帰ろうとしたら、何故かアンジェリーナがついてきた。フィガロの家の近くで、1人で木の枝で地面に絵を描いていたニーズを見つけたので、一応フィガロがニーズに声をかけたら、何故か3人で道端の隅っこで積み木をして遊ぶことになった。何故だ。
ニーズがにぱっと笑って、フィガロを見上げた。
「おにいちゃんだよ」
「……ん」
フィガロは細めの積み木を積み木の塔の一番上に乗せた。そっと置いたつもりなのに、積み木の塔はぐらぐらと揺れ、がちゃっと崩れた。
「あ」
「フィガロの負けー」
「かったー」
「……これ勝ち負けあんのかよ」
アンジェリーナとニーズが手を叩いて楽しそうに笑った。アンジェリーナとニーズが、もう一回やろうと再び積み木を手に取った。フィガロも仕方がなく小さな積み木を一つ手に取った。
ニーズが三角の積み木をそれなりに高くなった積み木の塔の一番上に乗せていると、ニーズの父親ラウトが家から出てきた。3人で遊んでいるのを見ると、ラウトが柔らかく微笑んだ。
「こんにちは。フィガロ君。それと、えっと、はじめまして。お嬢さんはフィガロ君のお友達かな? ニーズと遊んでくれてありがとう。僕はニーズの父親のラウトです」
「こんにちは。ラウトおじさん。アンジェリーナ・ヒューストンです。アンジーって呼んでください」
「……こんにちは」
「パパ! 見てっ!」
「おや。随分高く積めたね。すごいじゃないか」
ニーズがラウトを見上げて、自慢気に積み木の塔を指差した。ラウトが褒めると、ニーズが嬉しそうに笑って、何故かフィガロに抱きついた。
「おにいちゃんとおねえちゃんとやった!」
「遊んでもらえてよかったねぇ」
「うん!」
「もうそろそろ夕暮れだから、ニーズはお家に入ろうね。アンジーちゃんは家は近いのかい?」
「うちは第2地区で喫茶店やってるの。『木漏れ日』って名前の喫茶店」
「あぁ。知っているよ。何度か行ったことがあるからね。オムレツサンドが美味しいお店だよね」
「そうなの」
「ここからじゃ少し離れているから、送っていこうか」
「大丈夫よ。多分もうちょいしたらパパが迎えに来てくれるもの」
「そうかい。それなら迎えが来るまで一緒に待っていよう」
「ありがとう。おじさん。フィガロ。ニーズ。迎えが来るまで続きをしましょうよ」
「うん!」
結局、アンジェリーナの父親が迎えに来るまで、道の隅っこで積み木をしていた。ラウトだけでなく、途中で帰って来たガイナも参戦し、何故か妙に盛り上がった。積み木なのに。アンジェリーナは『また遊びましょうね』と言って帰っていった。ガイナがやけに嬉しそうに、『友達ができてよかったな』と言って笑い、フィガロの頭をガシガシ撫でた。
ーーーーーー
ガイナは職場からの帰宅途中に買い物を済ませ、早歩きで家へと帰った。家の側に着くと、すぐ近くの道端で子供達が遊んでいるのが見えた。今日は縄跳びをしているようだ。ガイナは遊んでいる子供達を見て、頬を弛めた。
フィガロに一緒に遊ぶ友達ができて本当によかった。なんだかんだでニーズのことを気にかけて、毎日のように遊んでやる優しい我が子を自慢して回りたい。人付き合いに消極的なフィガロがこうして毎日外で誰かと遊ぶなんて、中央の街にいた頃はなかったことだ。アンジェリーナのお陰でもあるので、フィガロと友達になってくれたアンジェリーナには本当に感謝をしている。
アンジェリーナがガイナに気づいて、手を大きく振った。
「ガイナおじさーん。おかえりなさーい」
「おじちゃーーん」
「おーう」
ガイナは真っ直ぐに子供達に歩み寄った。子供達の側にいくと、フィガロがガイナを見上げ、健康的に少し日焼けした頬を弛めた。
「おかえり。父さん」
「ただいま。フィガロ。職場で桃を貰ったんだ。皆、おやつにどうだ?」
「桃! やったぁ! 私大好き!」
「ぼくも!」
「洗ってくるから、ちょーだい」
「俺が洗ってくるから、3人とも先に手を洗えよ」
「「はぁーい」」
「ん。早く行くぞ」
「えぇ! ニーズ! 行こ!」
「うん!」
アンジェリーナがニーズの手を握り、フィガロを先頭に小走りでガイナの家の中に入っていった。ガイナは桃ではしゃぐ子供達が可愛くて、クックッと小さく笑いながら、子供達の後を追いかけた。
空が赤く染まり出すと、ラウトが自分の家から出て来た。子供達はガイナの家の前で縄跳びをして遊んでいる。ガイナは子供達の様子を見ながら、庭に干した洗濯物を取り込んでいた。
ラウトが子供達の様子に柔らかく頬を弛め、庭にいるガイナに声をかけてきた。
「ガイナさん。こんにちは。今日もありがとうございます」
「おう。こんにちは。修羅場は終わったかい? 先生」
「先生なんて呼ばれる程じゃないですよ……残念ながらまだですねぇ」
「目の下の隈やべぇぞ。先生」
「あー……ははは……中々筆がのらないものですから」
「作家先生も大変だな」
「いやぁ。そうでもないです。軍人さんの方が余程大変でしょう?」
「俺は身体を動かすのが性に合ってっから、そうでもねぇよ」
「そうですか。僕は子供の頃から運動が苦手でしたから、少し羨ましいです」
「ははっ。あぁ。今日、職場で桃を貰ってよ。よかったら先生とじいさんも食ってくれ。いっぱい貰ったんだわ。足が早ぇから傷む前に食わねぇと勿体ねぇし」
「ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
ラウトとは、毎日のように顔を合わせて立ち話をするようになった。ラウトはいつもボサボサの頭で、瓶底みたいな分厚いレンズの丸いフレームの眼鏡をかけている。目の下に隈があることが多く、どことなく不健康そうな雰囲気ではあるが、穏やかな優しい性格をしているようで、子供達を見て、おっとり笑っていることが多い。
ガイナは洗濯物を全て取り込み、家の中に入って貰い物の桃をいくつか紙袋に入れた。アンジェリーナにも持って帰ってもらえる程沢山貰ったので、アンジェリーナの家用にも分けて別の紙袋に入れる。
ガイナが桃を入れた紙袋を持って外に出ると、アンジェリーナの祖父シュルツが来ていた。
「よぉ。シュルツじいさん」
「や。ガイナ。アンジーに桃をくれたんだって? ありがとね」
「まだ沢山あるから貰ってくれよ。俺達だけじゃ食いきれねぇくらい貰ったんだわ」
「桃はオーランドも好きだから、ありがたく貰うよ」
「いつもわりぃな。迎えに来てもらってよ。なんなら俺がアンジーを送っていこうか?」
「いいよ。アンジーが好きでここに来てるんだし。うちの近所には一緒に遊ぶ相手がいなくてさ。それに、俺もアンジーとお喋りしながら帰るの楽しいし」
「そうかい。じゃあ、また頼むわ」
「うん。アンジー。そろそろ帰ろう」
「はぁーい。またね! フィガロ。ニーズ」
「……ん」
「またねー!」
アンジェリーナが笑顔で手を振り、シュルツと手を繋いで帰っていった。
ラウトがフィガロにくっついているニーズの頭を撫でた。
「ニーズ。僕達も帰ろうか。遊ぶのはまた明日ね」
「はぁーい」
「じゃあな。ニーズ坊。あ、先生。これ、桃」
「ありがとうございます。いただきます」
ラウトが穏やかに笑って紙袋を受け取り、ニーズと手を繋いで家に帰っていった。ガイナは縄跳びを片付けているフィガロの頭をガシガシと撫でた。
「大急ぎで飯作るから、ちょっと待ってろよ」
「一緒にやる」
「あ? 遊ぶなり本読むなりしてていいぞ」
「やる……父さんと料理すんの好きだし」
「……そうか。なら、一緒にやるか」
「ん」
フィガロの言葉が本当に嬉しくて、ガイナはニッと笑って上機嫌にフィガロの頭をわしゃわしゃと撫で回した。フィガロと一緒に家の中に入り、真っ直ぐに台所へと向かう。
バーバラでの暮らしは予想していたよりも穏やかで楽しいものだと、ガイナはご機嫌にそう思った。
バーバラに来てから、フィガロが笑うことが増えたのが一番の変化かもしれない。本当に嬉しい変化だ。
いつも明るく元気なアンジェリーナやフィガロに懐いているニーズのお陰だろう。
次の休みにはアンジェリーナの家の喫茶店に行こう。なんだかんだで、ちゃんと客として行ったことがない。ラウトの仕事が大丈夫そうなら、ラウトとニーズも誘おう。ラウトはそんなに口数が多い方ではないが、話してみると、とても穏やかで優しい話し方をする。ラウトと話していると、なんとなく和む。
バーバラに来て、人の縁に恵まれたのかもしれない。
ガイナは上機嫌にフィガロと話しながら、夕食を一緒に作った。
「次はニーズの番よ。崩さないように気をつけてね」
「うん」
「……なぁ」
「何? フィガロ」
「何でアンタも一緒に積み木してるわけ?」
「一緒に遊んだ方が楽しいじゃない」
「そうでもねぇよ。つーか、何で俺についてきたんだよ」
「友達と一緒に遊ぶのに理由がいるの?」
「いつ、俺とアンタが友達になったんだよ」
「友達と思ったその瞬間から友達なのよ。あ、ニーズ、上手ね」
「えへー。つぎ、おねえちゃん」
「えぇ。あら、四角の積み木が少ないわね。難易度上がってきたわー」
アンジェリーナが楽しそうにニーズと顔を見合わせて笑った。
フィガロが熱を出して一週間が経っている。もう完全によくなっており、小学校にも通っている。今日はいつも通り1人で小学校から帰ろうとしたら、何故かアンジェリーナがついてきた。フィガロの家の近くで、1人で木の枝で地面に絵を描いていたニーズを見つけたので、一応フィガロがニーズに声をかけたら、何故か3人で道端の隅っこで積み木をして遊ぶことになった。何故だ。
ニーズがにぱっと笑って、フィガロを見上げた。
「おにいちゃんだよ」
「……ん」
フィガロは細めの積み木を積み木の塔の一番上に乗せた。そっと置いたつもりなのに、積み木の塔はぐらぐらと揺れ、がちゃっと崩れた。
「あ」
「フィガロの負けー」
「かったー」
「……これ勝ち負けあんのかよ」
アンジェリーナとニーズが手を叩いて楽しそうに笑った。アンジェリーナとニーズが、もう一回やろうと再び積み木を手に取った。フィガロも仕方がなく小さな積み木を一つ手に取った。
ニーズが三角の積み木をそれなりに高くなった積み木の塔の一番上に乗せていると、ニーズの父親ラウトが家から出てきた。3人で遊んでいるのを見ると、ラウトが柔らかく微笑んだ。
「こんにちは。フィガロ君。それと、えっと、はじめまして。お嬢さんはフィガロ君のお友達かな? ニーズと遊んでくれてありがとう。僕はニーズの父親のラウトです」
「こんにちは。ラウトおじさん。アンジェリーナ・ヒューストンです。アンジーって呼んでください」
「……こんにちは」
「パパ! 見てっ!」
「おや。随分高く積めたね。すごいじゃないか」
ニーズがラウトを見上げて、自慢気に積み木の塔を指差した。ラウトが褒めると、ニーズが嬉しそうに笑って、何故かフィガロに抱きついた。
「おにいちゃんとおねえちゃんとやった!」
「遊んでもらえてよかったねぇ」
「うん!」
「もうそろそろ夕暮れだから、ニーズはお家に入ろうね。アンジーちゃんは家は近いのかい?」
「うちは第2地区で喫茶店やってるの。『木漏れ日』って名前の喫茶店」
「あぁ。知っているよ。何度か行ったことがあるからね。オムレツサンドが美味しいお店だよね」
「そうなの」
「ここからじゃ少し離れているから、送っていこうか」
「大丈夫よ。多分もうちょいしたらパパが迎えに来てくれるもの」
「そうかい。それなら迎えが来るまで一緒に待っていよう」
「ありがとう。おじさん。フィガロ。ニーズ。迎えが来るまで続きをしましょうよ」
「うん!」
結局、アンジェリーナの父親が迎えに来るまで、道の隅っこで積み木をしていた。ラウトだけでなく、途中で帰って来たガイナも参戦し、何故か妙に盛り上がった。積み木なのに。アンジェリーナは『また遊びましょうね』と言って帰っていった。ガイナがやけに嬉しそうに、『友達ができてよかったな』と言って笑い、フィガロの頭をガシガシ撫でた。
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ガイナは職場からの帰宅途中に買い物を済ませ、早歩きで家へと帰った。家の側に着くと、すぐ近くの道端で子供達が遊んでいるのが見えた。今日は縄跳びをしているようだ。ガイナは遊んでいる子供達を見て、頬を弛めた。
フィガロに一緒に遊ぶ友達ができて本当によかった。なんだかんだでニーズのことを気にかけて、毎日のように遊んでやる優しい我が子を自慢して回りたい。人付き合いに消極的なフィガロがこうして毎日外で誰かと遊ぶなんて、中央の街にいた頃はなかったことだ。アンジェリーナのお陰でもあるので、フィガロと友達になってくれたアンジェリーナには本当に感謝をしている。
アンジェリーナがガイナに気づいて、手を大きく振った。
「ガイナおじさーん。おかえりなさーい」
「おじちゃーーん」
「おーう」
ガイナは真っ直ぐに子供達に歩み寄った。子供達の側にいくと、フィガロがガイナを見上げ、健康的に少し日焼けした頬を弛めた。
「おかえり。父さん」
「ただいま。フィガロ。職場で桃を貰ったんだ。皆、おやつにどうだ?」
「桃! やったぁ! 私大好き!」
「ぼくも!」
「洗ってくるから、ちょーだい」
「俺が洗ってくるから、3人とも先に手を洗えよ」
「「はぁーい」」
「ん。早く行くぞ」
「えぇ! ニーズ! 行こ!」
「うん!」
アンジェリーナがニーズの手を握り、フィガロを先頭に小走りでガイナの家の中に入っていった。ガイナは桃ではしゃぐ子供達が可愛くて、クックッと小さく笑いながら、子供達の後を追いかけた。
空が赤く染まり出すと、ラウトが自分の家から出て来た。子供達はガイナの家の前で縄跳びをして遊んでいる。ガイナは子供達の様子を見ながら、庭に干した洗濯物を取り込んでいた。
ラウトが子供達の様子に柔らかく頬を弛め、庭にいるガイナに声をかけてきた。
「ガイナさん。こんにちは。今日もありがとうございます」
「おう。こんにちは。修羅場は終わったかい? 先生」
「先生なんて呼ばれる程じゃないですよ……残念ながらまだですねぇ」
「目の下の隈やべぇぞ。先生」
「あー……ははは……中々筆がのらないものですから」
「作家先生も大変だな」
「いやぁ。そうでもないです。軍人さんの方が余程大変でしょう?」
「俺は身体を動かすのが性に合ってっから、そうでもねぇよ」
「そうですか。僕は子供の頃から運動が苦手でしたから、少し羨ましいです」
「ははっ。あぁ。今日、職場で桃を貰ってよ。よかったら先生とじいさんも食ってくれ。いっぱい貰ったんだわ。足が早ぇから傷む前に食わねぇと勿体ねぇし」
「ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
ラウトとは、毎日のように顔を合わせて立ち話をするようになった。ラウトはいつもボサボサの頭で、瓶底みたいな分厚いレンズの丸いフレームの眼鏡をかけている。目の下に隈があることが多く、どことなく不健康そうな雰囲気ではあるが、穏やかな優しい性格をしているようで、子供達を見て、おっとり笑っていることが多い。
ガイナは洗濯物を全て取り込み、家の中に入って貰い物の桃をいくつか紙袋に入れた。アンジェリーナにも持って帰ってもらえる程沢山貰ったので、アンジェリーナの家用にも分けて別の紙袋に入れる。
ガイナが桃を入れた紙袋を持って外に出ると、アンジェリーナの祖父シュルツが来ていた。
「よぉ。シュルツじいさん」
「や。ガイナ。アンジーに桃をくれたんだって? ありがとね」
「まだ沢山あるから貰ってくれよ。俺達だけじゃ食いきれねぇくらい貰ったんだわ」
「桃はオーランドも好きだから、ありがたく貰うよ」
「いつもわりぃな。迎えに来てもらってよ。なんなら俺がアンジーを送っていこうか?」
「いいよ。アンジーが好きでここに来てるんだし。うちの近所には一緒に遊ぶ相手がいなくてさ。それに、俺もアンジーとお喋りしながら帰るの楽しいし」
「そうかい。じゃあ、また頼むわ」
「うん。アンジー。そろそろ帰ろう」
「はぁーい。またね! フィガロ。ニーズ」
「……ん」
「またねー!」
アンジェリーナが笑顔で手を振り、シュルツと手を繋いで帰っていった。
ラウトがフィガロにくっついているニーズの頭を撫でた。
「ニーズ。僕達も帰ろうか。遊ぶのはまた明日ね」
「はぁーい」
「じゃあな。ニーズ坊。あ、先生。これ、桃」
「ありがとうございます。いただきます」
ラウトが穏やかに笑って紙袋を受け取り、ニーズと手を繋いで家に帰っていった。ガイナは縄跳びを片付けているフィガロの頭をガシガシと撫でた。
「大急ぎで飯作るから、ちょっと待ってろよ」
「一緒にやる」
「あ? 遊ぶなり本読むなりしてていいぞ」
「やる……父さんと料理すんの好きだし」
「……そうか。なら、一緒にやるか」
「ん」
フィガロの言葉が本当に嬉しくて、ガイナはニッと笑って上機嫌にフィガロの頭をわしゃわしゃと撫で回した。フィガロと一緒に家の中に入り、真っ直ぐに台所へと向かう。
バーバラでの暮らしは予想していたよりも穏やかで楽しいものだと、ガイナはご機嫌にそう思った。
バーバラに来てから、フィガロが笑うことが増えたのが一番の変化かもしれない。本当に嬉しい変化だ。
いつも明るく元気なアンジェリーナやフィガロに懐いているニーズのお陰だろう。
次の休みにはアンジェリーナの家の喫茶店に行こう。なんだかんだで、ちゃんと客として行ったことがない。ラウトの仕事が大丈夫そうなら、ラウトとニーズも誘おう。ラウトはそんなに口数が多い方ではないが、話してみると、とても穏やかで優しい話し方をする。ラウトと話していると、なんとなく和む。
バーバラに来て、人の縁に恵まれたのかもしれない。
ガイナは上機嫌にフィガロと話しながら、夕食を一緒に作った。
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