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運命の人の探し方
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冒険者が多く集う街パーノン。近くに大きなダンジョンがあり、其処は初心者から熟練者まで幅広い層に人気があるダンジョンである。
パーノンはダンジョンの恩恵を受け、とても栄えている街だ。
冒険者ギルドの受付カウンターに座り、バルドヴァーノはテキパキと仕事をしていた。受付カウンターの数は多いが、それ以上に受付カウンターを訪れる冒険者達の方が多い。冒険者ギルドの受付は女性も多少はいるが、破落戸紛いの荒くれ者も多いので、基本的にツーマンセルで男性職員が中心になってやっている。
バルドヴァーノは相方のカミッロと共に、仕事用の笑みを浮かべ、朝から休憩をとる間もなく働いていた。
午後のお茶の時間が近づく頃に、漸く冒険者達が少なくなってきた。夕方になると、また一気に押し寄せてくるので、休憩できる時に少しでも休憩しておかないと身体が保たない。バルドヴァーノは隣の受付に座っているベテラン達に声をかけ、カミッロと共に受付カウンターを離れ、ギルド2階の休憩室へと移動した。
バルドヴァーノは現在25歳、カミッロは年上で30歳である。カミッロが疲れた溜め息を吐き、愛妻弁当を取り出して食べ始めると、バルドヴァーノも出勤前に買っておいたサンドイッチを食べ始めた。
「ヴァーノ。今日は一段と忙しいな」
「そうですね。あれですかね。ダンジョン内で中レベルの魔物が増えてるからですかね」
「採取依頼も多いんだよなぁ。特に薬草系」
「怪我人が増えてるみたいですね。昨日の合コンに来てた医務局の女の子が愚痴ってましたよ」
「また合コンか。お前も遊んでばかりいないで、ちょっとは落ち着けよ」
「いやー。まだまだ遊びたいんでー。あ、今日は仕事終わりにデートの予定入ってるんで。残業しませんから。俺」
「俺も娘と風呂に入る約束してるから残業しない。なに?昨日お持ち帰りした子?」
「いや?ちょっと前から声かけてた冒険者の女の子です。ピチピチの18歳。まだルーキーですよ」
「田舎から出てきたばっかの子だろ」
「初で可愛いですよねぇ」
「気の毒に。お前みたいな遊び人に遊ばれてポイされるのか」
「まぁ。冒険者は旅をするものですしー。若いうちに失敗しとかないとね」
「よく言うわ。そのうち刺されるぞ」
「あははっ。その時はその時ですよ」
話しながら手早く昼食を腹に詰め込み、バルドヴァーノはカミッロと一緒に足早に受付カウンターに戻った。まだ昼食を食べることができていない職員もいる。早く交代してやらないと、夕方の修羅場を乗り切れない。残業する気がないから、何としてでも仕事は定時で終わらせる。
バルドヴァーノは気合を入れて、仕事用の笑みを浮かべ、受付業務を再開した。
バルドヴァーノは遊び人とよく言われる。バルドヴァーノ自身は、自分が遊び人だとは思っていない。むしろ、唯一の愛に憧れるロマンチストだ。何処で誰と出会い、恋に落ちるか分からない。唯一絶対の伴侶を見つけたいから、バルドヴァーノは積極的に、少しでも気になったら、女にも男にも声をかける。バルドヴァーノの唯一の伴侶が女とは限らないので、男にも普通に声をかけるし、少しでもいいなと思ったら口説く。
恋人として付き合い始めたら、浮気はしない。しかし、何故だかいつも長続きしない。すぐに思ってしまうのだ。なんだか違うな、と。勿論、バルドヴァーノは若い健康な男なので、性欲発散の為に一夜限りの相手と遊ぶことはある。しかし、ちゃんと恋人になった相手がいる時は、そういう遊びはしない。が、街ではすっかり遊び人だと定着してしまっているので、あまり信用されたことはない。
バルドヴァーノは定時で仕事を終えると、デート相手との待ち合わせ場所の途中にある花屋で小さな花束を買い、軽い足取りで待ち合わせ場所に向かった。今夜のデートは恋人になってもらおうと思っている相手だ。カミッロには遊んでポイみたいなことを言われたが、別に最初からポイするつもりはない。付き合ってみて微妙だったら別れるというだけだ。今夜は一応まだ手を出すつもりもない。初な田舎娘を弄ぶ気はない。誠実で紳士的なデートをするだけだ。
バルドヴァーノは鼻歌を歌いながら大通りを歩き、目当ての女を見つけると、明るい笑みを浮かべて声をかけた。
------
バルドヴァーノは、ひりひりと痛む頬を擦りながら出勤した。今朝方、恋人と別れた。付き合ってまだ2ヶ月なのだが、やはりなんか違うなと思い、バルドヴァーノの部屋に泊まっていた彼女に起き抜けに別れ話を切り出した。結果、元恋人から全力の平手打ちをくらった。
今回の恋人が冒険者じゃなくて助かった。下手に冒険者だったら、顔の形が変わっていたかもしれない。バルドヴァーノは、小さな溜め息を吐いた。バルドヴァーノの唯一の伴侶は一体何処にいるのだろう。パズルのピースのように、バルドヴァーノとぴったりと合わさる運命の人は絶対にいると思うのだ。今回も違ったが。
バルドヴァーノはギルドの職員用ドアの前で、静かに深呼吸をした。凹んでいる暇などない。今日も仕事は忙しいのだ。仕事をろくにしない男など、運命の人が現れた時に振り向いてもらえない可能性が高い。バルドヴァーノは、暇さえあれば女にも男にも声をかけているが、仕事だけはきっちり真面目にやっている。ギルド内でも、そこはちゃんと評価されている。そろそろ勤続10年になる。部下はいないが、後輩はそれなりにいる。尊敬している上司や先輩も多い。彼らに情けない格好悪いところは見せたくない。どれだけ遊び人と言われようが、これだけはバルドヴァーノの小さなプライドのようなものだ。
バルドヴァーノは気合を入れて、ギルド内に入った。
朝の一番忙しい時間帯を過ぎ、少しだけ受付に訪れる冒険者達の数が落ち着いてきた頃。バルドヴァーノが座っているカウンターの前に、とても大きな身体の男がやってきた。顔は傷痕だらけで、小さな子供が見たら泣きだすこと間違いなしの人相の悪さである。太めの眉も、何故か瞳孔が開きっぱなしに見えるギョロリとした大きな目も、鷲鼻も、薄い唇も、子供に怖がられる要素しかない。背が高く、筋肉質なのが黒い装備の上からでも分かる程鍛えられた厚みのある身体をしている。
バルドヴァーノは仕事用の笑みを浮かべ、男に明るく挨拶をした。
「こんにちは。ミルコさん。依頼達成報告ですか?」
「あぁ。ん」
「はい。まずは依頼書を確認しますね。討伐と素材採取依頼ですね。バジリスクの討伐と、素材は此方でお間違いないですか?」
「あぁ」
「はい。では、お手数ですが、素材鑑定カウンターにて、討伐証拠の魔石、素材の確認と査定をお願いいたします。終わりましたら、素材鑑定カウンターで発行される書類を持って、こちらにもう一度お越しください。依頼達成受領書と報酬をお渡しいたします」
「あぁ」
ミルコという冒険者は半年程前にパーノンにやって来た流れの冒険者だ。上位ランクで、素材の取り扱いが丁寧な腕のいい冒険者である。歳は多分30前後くらいだろう。かなり無口だが、いつもバルドヴァーノの所で受付をしてくれるという常連さんである。
冒険者によっては、受付に座る人間に全く拘らない者や逆に気に入っている受付の人間の所にしか行かない者がいる。どちらかと言えば、前者が多い。受付カウンターの職員は、単なるギルドの備品のように思っている冒険者が一定数いる。脅せばどうにでもできると舐めている者も多い。
パーノンは人気が高いダンジョンがあるせいで、冒険者の出入りが非常に多い。低ランクから中ランクでも、ダンジョンに潜ればそれなりの収穫を得られると有名で、結果、本当に有象無象の冒険者達が集まってくる。故に、質が悪い者も非常に多い。冒険者ギルドの受付職員の離職率は結構高く、仕事を辞める者は、大体が質の悪い冒険者達の対応に疲れたり、何かしらの被害にあった者ばかりだ。
バルドヴァーノも最低限の護身術は身につけているが、それでも何度も殴られたり、切りかかられたことがある。実はそれなりに危険な仕事だったりする。
ミルコは口数は少ないし、見た目は凶悪だが、理不尽な要求をしたり、変なイチャモンをつけてこないし、自分が受けた依頼は完璧にこなしてくれる。ミルコがいると、他の雑魚冒険者達も静かになるし、バルドヴァーノにとっては、中々にいい常連さんなのである。
バルドヴァーノは戻ってきたミルコに愛想よく笑いながら、手早く書類を処理して、報酬をミルコに手渡した。
バルドヴァーノは疲れた溜め息を吐きながら、職員用のドアから出た。今日は散々な日だった。破落戸紛いの雑魚冒険者にイチャモンをつけられ顔を殴られるは、そこそこ上位な中堅冒険者にネチネチと謂れのない嫌味を言われるは、食事に誘った男には断られるは、仕事がどうしても終わらずに残業になるはで、元恋人に引っぱたかれた朝からいいことが全然無かった。
こういう時は酒を飲むに限る。少しだけ嬉しいことに、明日は休日だ。残念ながら、デートの予定は入っていないが。予定が無いのなら、これから作ればいい。馴染みのバーに行けば、今夜の遊び相手か、明日のデート相手が見つかるだろう。自慢じゃないが、バルドヴァーノは顔がいい。『遊び人だと分かっていても、一度でいいから遊ばれたい』と街の若い女達に言われているくらいには顔がいい。バルドヴァーノの顔は、『まるで物語の王子様みたい』なのだそうだ。淡い金髪も淡い青色の瞳も、確かに物語に登場する王子様のような配色である。顔立ちは我ながら優しい雰囲気に整っているし、身体つきも一応筋トレをしているので、それなりに締まっている。ゴリゴリマッチョじゃないあたりが、割と女受けがいい。
バルドヴァーノは一度大きく深呼吸をしてから、疲れきった頭を切り替え、軽い足取りで馴染みのバーへと向かった。
バーに着くと、バルドヴァーノはさっと店内を見回し、2人組の女の冒険者達の側に近寄った。歳は20代半ばで、それなりに腕が立ちそうな2人である。おまけに結構美人だ。バルドヴァーノは、2人に近づくと、にっこり笑って声をかけた。
「ご一緒してもいいかな?お姉さん達」
「あら」
「いいわよ。色男」
「ありがとう。良かったら一杯奢らせてくれないかな?美味しい酒は美人に飲んでもらわなきゃ」
「ふふっ。口が上手いのね」
「じゃあ、奢ってもらおうかしら」
女達が満更でもない感じで笑った。慣れた様子なので、これは恋人よりも遊び相手にいいかもしれない。3人で楽しむのもありだ。バルドヴァーノは機嫌よく笑みを浮かべ、近くにいた店員に声をかけた。
女達と楽しくお喋りをしながら酒を飲んでいると、賑やかだったバーの店内がいきなり静かになった。何事かと思ってバーの入り口辺りを見れば、そこにミルコがいた。
隣に座っている女が、嫌そうに顔を顰めた。
「ヤダ。『赤の猟犬』じゃない」
「最悪。折角のお酒が不味くなるわ」
「『赤の猟犬』ってミルコさんのこと?」
「そうよ。『血塗れミルコ』とも呼ばれてるわね」
「狙った獲物は絶対に逃さないのよ。デカい大剣をぶん回すから、あいつが来たら巻き込まれないように逃げろって言われてんの。近くにいる連中にお構いなしで馬鹿でかい剣を振り回すし、戦い方が汚いのよ」
「ふーん。そうなんだ。でも素材の扱いはすごくいいよ?」
「素材の扱いだけでしょ。あいつが戦った後って酷いのよ。周りが血だらけで」
「そうそう。本人も返り血で真っ赤になるしね。全然スマートじゃないわ」
「へぇー」
どうやらミルコは他の冒険者達からあまり好かれていないらしい。だからソロで冒険者をしているのだろうか。カウンター席に1人で座ったミルコを見て、バルドヴァーノは好奇心がうずうずし始めた。『赤の猟犬』『血塗れミルコ』と呼ばれている男は、何を考えているのだろうか。受付では殆どまともに話したことがない。バルドヴァーノはミルコに対して割と好印象を抱いているが、ミルコの方はどうだろう。バルドヴァーノは、少しでもいいから、ミルコと話してみたくなった。
バルドヴァーノは一緒に飲んでいた2人の女に断りを入れると、さっと席を立って、周囲から避けられているミルコに近寄った。予定変更である。今夜はミルコと一緒に飲んで、お喋りをする。ミルコが望めばセックスをしてもいい。バルドヴァーノは男女もタチネコもなんでもどんとこいというタイプだ。
バルドヴァーノはミルコの側に立ち、にっこりと笑ってミルコに話しかけた。
「隣いいかな?」
「……好きにしろ」
「ありがとう。何飲んでるの?」
「火酒」
「いいね。俺も同じのにするよ」
「…………」
「バルドヴァーノ・イボォンツォ。ヴァーノでいいよ。バルドヴァーノって少し長いでしょ。ミルコさん、いつも俺の所に来てくれるでしょ。あれ結構嬉しくてさぁ。ミルコさんはいい常連さんだよね。素材の扱いがすごく丁寧で、素材鑑定カウンターの人達もいつも褒めてるよ」
「そうか」
「ミルコさんは何が好き?此処って来たことある?此処の干し肉とチーズって美味いんだよ。マスターの実家で作ってるんだって」
「そうか」
「よかったら試してみない?」
「……あぁ」
ぶっきらぼうなミルコの応えに、バルドヴァーノは満面の笑みを浮かべた。意思疎通はちゃんとできている。酒が進めば、きっともっと話せる気がする。バルドヴァーノは嬉々として店員に声をかけた。
-------
ふわふわとしていた意識が、鋭い刺激で一気に覚醒した。目を開ければ、見慣れた天井が見える。バルドヴァーノの家の寝室の天井だ。強い刺激がひっきりなしに襲ってきて、バルドヴァーノは身をよじって喘いだ。ぬるりとした熱い感触が肌を這う。バルドヴァーノが自分の胸元へ視線を向ければ、傷痕だらけの顔のギョロリとした目がじっとバルドヴァーノの顔を見ていた。瞳孔がいつもより開いているように見える。薄いアンバーの瞳なので、端的に怖い。が、何故だかバルドヴァーノは妙に嬉しくなった。
バルドヴァーノは自分の状態をすぐに把握した。ミルコに乳首を舐められながら、アナルを指で弄られている。容赦なく前立腺をぐりぐりされる強い刺激で、泥酔1歩手前だった状態から酔いが冷めたようだ。記憶が濁っていてハッキリと思い出せないが、どうやら自分はミルコを誘うことに成功したらしい。くふっと笑ってから、バルドヴァーノはミルコの指の刺激に大きく喘いだ。
ミルコの指が酷く気持ちがいい。ぐりぐりぐりぐりとバルドヴァーノの前立腺を苛めているミルコの指を、アナルが勝手にキツく締めつけてしまう。そういえば、男に抱かれるのは少し久しぶりだ。泥酔1歩手前だったバルドヴァーノがミルコをリードできたとは思えないので、ミルコは男を抱く知識があったのだろう。正直、ミルコが男もイケるとは思っていなかった。嬉しい誤算である。何故嬉しいのかは、よく分からない。どうやらバルドヴァーノのアナルにはミルコの太い指が3本も入っているらしい。アナルの中を拡げるように、指をバラバラに動かされて気づいた。ちゅくちゅくと緩急をつけて吸われている乳首も気持ちがいい。
バルドヴァーノは身体の中を駆け回る快感に小さく震えながら、ミルコの名前を呼んだ。
「あっ、はぁっ、ミルコさん」
「ん」
「キスして」
「ん」
ちゅぽっと小さな音を立て、ミルコの唇がバルドヴァーノの乳首から離れた。のしかかってくる大きな傷痕だらけの身体にしがみつくように、ミルコの太い首に両腕を絡めて、バルドヴァーノはねだるように口を開けて舌を伸ばした。ミルコの肉厚の舌がバルドヴァーノの舌に絡み、ぬるぬると擦り合わさるようにして舌を舐められる。微妙に精液の味がするから、どうやらバルドヴァーノは一度ミルコの口でイッたようだ。自分の精液の味に酷く興奮する。ミルコの舌がぬるりとバルドヴァーノの口内に潜り込み、躊躇なくバルドヴァーノが一番好きな上顎を舐め始めた。背筋がぞわぞわする快感に、アナルが勝手に締まる。上顎をぬるぬる舐め回されながら、トントントントンッと軽く叩く感じで前立腺を刺激されると、堪らなく気持ちがいい。ミルコの汗でしっとりとした熱い肌の感触も心地いい。バルドヴァーノは、喘ぎながら、不明瞭な声でミルコの名前を再び呼んだ。
ミルコがバルドヴァーノの口内から舌を抜き、強くバルドヴァーノの下唇を吸ってから、伏せていた上体を起こした。どれだけ弄られていたのかは分からないが、熱く疼いて堪らないバルドヴァーノのアナルから、ミルコの指が抜け出ていった。
くるっと軽々とミルコに身体をひっくり返され、四つん這いの状態にされる。ミルコのゴツゴツした固い大きな左手がバルドヴァーノの腰を掴み、物欲し気にひくつくアナルに熱くて固いものが触れた。ミルコのペニスだ、と思った次の瞬間、一気に最奥まで勢いよくペニスで突き刺された。強すぎる衝撃で、かはっと息が詰まる。頭が一瞬で真っ白になった。
「あぁっ!?」
痛いのか気持ちいいのか分からない。ただ先程あった多少の余裕が吹き飛んだ。固くて太くて長くて熱いものが、バルドヴァーノの入ってはいけない所にまで入っている。ガンガンと強くそこを突き上げられると、鋭い痛みと脳みそが痺れて溶けでるような強過ぎる快感に襲われる。みちみちと限界まで拡がっているアナルの入り口が激しく擦られ、太くて固いカリで勢いよく前立腺をごりっごりっと強く刺激されながら、入ってはいけない奥深くを突き上げられる。
「あ、うぁ、う、うえっ、おぅぇっ、あっ、あっ、あっ、うぼぉぇっ」
バルドヴァーノはガンガンヤバい程奥を突き上げられながら、びしゃびしゃと胃の内容物を吐き出した。嘔吐くバルドヴァーノの身体を容赦なくミルコが突き上げてくる。苦しい。気持ちいい。痛い。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
バルドヴァーノは悲鳴のような喘ぎ声を上げながら、ガクガクと身体を震わせ、漏らすように精液をシーツに向けて吐き出した。イッている敏感な身体の奥を更に激しく突き上げられる。内臓がミルコのペニスで突き上げられ、揺さぶられ、脳みそが溶けるような強過ぎる快感に襲われる。
「あぁぁぁぁぁっ!!ひぃぎぃっ!」
「ヴァーノ」
「あぁぁぁぁっ!しぬっ!しぬっ!あぁぁぁぁっ!!」
「ヴァーノ」
あまりの快感に逃げようとする身体を、ぐっと強く肩を捕まれて阻まれる。ズンッと一際強く身体の奥を突き上げられた。その瞬間、目の前が真っ暗になり、バルドヴァーノは意識を飛ばした。
バルドヴァーノの意識が再び戻った時、バルドヴァーノのアナルの中にはまだミルコのペニスが入り込んでおり、ズンズンと奥深くを突き上げられていた。堪らず悲鳴を上げたバルドヴァーノの尻を強く掴み、バルドヴァーノの身体の下にいるミルコが更に激しく腰を使い始めた。脳みそが焼ききれそうな快感で、本気で死にそうな気がする。
バルドヴァーノはミルコに激しく揺さぶられながら、ミルコの顔を見た。興奮しきったように、ミルコの瞳孔が開き、獣のような息を吐いている。バルドヴァーノは自分でも気づかないうちに、うっとりと微笑んだ。見つけた。理由なんか分からない。でも、見つけた。バルドヴァーノの運命の人だ。
バルドヴァーノは不思議な確信と共に、大きく吠えて、激しすぎる絶頂の感覚に背をしならせた。
------
バルドヴァーノはぐったりとベッドに横たわったまま、ベッドの側の床に正座しているミルコを爛々とした目で見つめた。バルドヴァーノが目覚めると、吐いた上にイキ過ぎておしっこまで漏らした筈の汚れたシーツがキレイなものになっており、バルドヴァーノの身体もキレイにされていた。アナルにはまだ何か入っているような感覚がするし、腰を中心に全身が痛い。
神妙な顔で項垂れているミルコを見つめて、バルドヴァーノはうっとりと微笑んだ。
「ミルコさん」
「すまなかった」
「とりあえず今から教会と役所に行きましょうか」
「……ん?」
「ミルコさん。俺が好きでしょ?」
「……あぁ」
ミルコが気まずそうな顔で小さく頷いた。バルドヴァーノは満面の笑みを浮かべた。バルドヴァーノは確信していた。絶対にミルコはバルドヴァーノが好きだと。何故かは分からない。強いて言えば男の勘である。バルドヴァーノは爛々と目を輝かせて、力が入らない手でミルコを手招きした。
大きな身体を縮こませて、おずおずと近寄ってくるミルコが大変可愛らしい。ミルコは今も全裸で、傷痕だらけの身体は勿論、棍棒のようなペニスも見えている。よくもあんなものが自分の中に入ったなと、感心してしまうくらい、ミルコのペニスは大きかった。
反省している犬のように、ベッドの上に顎を乗せたミルコの頭をやんわりと撫で、バルドヴァーノはふふっと笑った。
「ミルコさん。ミルコさんは俺の運命の人だからね。逃さないよ」
「そうか」
「うん。結婚式はいつ挙げる?」
「……結婚するのか」
「しないの?」
「したい」
「あはっ。仮にしたくないって言っても逃さないけどね。ミルコさん。ミルコさん」
「なんだ」
「俺は多分どちゃくそ重いから。覚悟しといてね」
ミルコがきょとんと目を丸くした。こてんと首を小さく傾げた後、獰猛な顔でミルコが笑った。
「俺も、多分、重い」
「わぉ。俺達お似合い過ぎじゃない。ミルコさん。死んだ後も俺を愛してね」
「あぁ」
「約束破ったら地の果てどころか地獄まで追いかけるから」
「あぁ」
「ミルコさん。大好き」
「……愛している。ヴァーノ」
昨夜の凶暴さは何処へやったのか、おずおずと躊躇いがちに、ミルコが優しくバルドヴァーノの唇にキスをした。
少し後になって聞いたのだが、ミルコはバルドヴァーノの笑顔と柔らかい物言いに一目惚れしたらしい。『赤の猟犬』『血塗れミルコ』と渾名をつけられる程に返り血で汚れて帰るが、バルドヴァーノに会うからと、毎回わざわざ風呂に入って着替えてから受付に来ていたらしい。本当は一週間程で別のダンジョンがある街に行く予定だったが、バルドヴァーノがいるからと、パーノンに腰を落ち着けることにしたのだとか。いじらしくて可愛くて堪らないではないか。
バルドヴァーノはミルコのことを少しずつ知る度に、ミルコのことがより大好きになり、メロメロどころではなくなった。実はクッキーが好きだとか、意外と料理が上手いとか、でも裁縫はてんで駄目だとか、ミルコを知れば知る程、ミルコが可愛くて堪らなくなった。
バルドヴァーノはミルコを自分の家に住まわせた。バルドヴァーノの家は亡くなった祖父から継いだ家で、古いし然程大きくないが、2人で暮らすには十分な広さがある。ベッドだけは特注した頑丈で大きなものに新調して、二人の愛の巣を作った。
バルドヴァーノはピタリと遊ばなくなった。唯一無二の伴侶がいるのだから、遊ぶ必要などない。ミルコに愛されているので、他の人間なんか視界にも入らない。バルドヴァーノは引き続き冒険者ギルドの受付で働き、ミルコは冒険者ギルドに併設されている冒険者向けの訓練場で教官として働き始めた。主に素材の取り扱いについて講義をしている。ミルコは戦い方は汚いらしいが、冒険者ギルドの素材鑑定カウンターの者達が感心する程素材の剥ぎ取り方等の扱いが上手い。バルドヴァーノと1日たりとて離れたくなかったミルコは、冒険者をあっさりと辞めた。毎日2人で手を繋いで出勤し、2人で手を繋いで家に帰っている。
バルドヴァーノはミルコと一緒に夕食を作りながら、台所の壁に貼り付けてあるカレンダーを見た。赤い印がつけてある日付を確認すると、ふふっと笑って、黙々と野菜を刻んでいるミルコの背中に張り付いた。
「ミルコさん」
「ん」
「明日は結婚記念日だからデートしよう」
「ん」
「20回目だしね。なんかこう特別なことがしたいなぁ」
「……店は予約してある」
「わぉ。流石は俺のミルコさーん。好きっ!」
「ん」
ミルコが包丁を使っていた手を止め、くるりと回り、バルドヴァーノの身体を正面から抱きしめた。おねだりしなくてもキスをしてくれるミルコに、バルドヴァーノはくふふっとご機嫌に笑った。バルドヴァーノは、結婚した時よりも老けて更に顔が怖くなったミルコに、弾けるような明るい笑みを向けて、愛おしい運命の伴侶の身体をぎゅうっと抱きしめた。
(おしまい)
パーノンはダンジョンの恩恵を受け、とても栄えている街だ。
冒険者ギルドの受付カウンターに座り、バルドヴァーノはテキパキと仕事をしていた。受付カウンターの数は多いが、それ以上に受付カウンターを訪れる冒険者達の方が多い。冒険者ギルドの受付は女性も多少はいるが、破落戸紛いの荒くれ者も多いので、基本的にツーマンセルで男性職員が中心になってやっている。
バルドヴァーノは相方のカミッロと共に、仕事用の笑みを浮かべ、朝から休憩をとる間もなく働いていた。
午後のお茶の時間が近づく頃に、漸く冒険者達が少なくなってきた。夕方になると、また一気に押し寄せてくるので、休憩できる時に少しでも休憩しておかないと身体が保たない。バルドヴァーノは隣の受付に座っているベテラン達に声をかけ、カミッロと共に受付カウンターを離れ、ギルド2階の休憩室へと移動した。
バルドヴァーノは現在25歳、カミッロは年上で30歳である。カミッロが疲れた溜め息を吐き、愛妻弁当を取り出して食べ始めると、バルドヴァーノも出勤前に買っておいたサンドイッチを食べ始めた。
「ヴァーノ。今日は一段と忙しいな」
「そうですね。あれですかね。ダンジョン内で中レベルの魔物が増えてるからですかね」
「採取依頼も多いんだよなぁ。特に薬草系」
「怪我人が増えてるみたいですね。昨日の合コンに来てた医務局の女の子が愚痴ってましたよ」
「また合コンか。お前も遊んでばかりいないで、ちょっとは落ち着けよ」
「いやー。まだまだ遊びたいんでー。あ、今日は仕事終わりにデートの予定入ってるんで。残業しませんから。俺」
「俺も娘と風呂に入る約束してるから残業しない。なに?昨日お持ち帰りした子?」
「いや?ちょっと前から声かけてた冒険者の女の子です。ピチピチの18歳。まだルーキーですよ」
「田舎から出てきたばっかの子だろ」
「初で可愛いですよねぇ」
「気の毒に。お前みたいな遊び人に遊ばれてポイされるのか」
「まぁ。冒険者は旅をするものですしー。若いうちに失敗しとかないとね」
「よく言うわ。そのうち刺されるぞ」
「あははっ。その時はその時ですよ」
話しながら手早く昼食を腹に詰め込み、バルドヴァーノはカミッロと一緒に足早に受付カウンターに戻った。まだ昼食を食べることができていない職員もいる。早く交代してやらないと、夕方の修羅場を乗り切れない。残業する気がないから、何としてでも仕事は定時で終わらせる。
バルドヴァーノは気合を入れて、仕事用の笑みを浮かべ、受付業務を再開した。
バルドヴァーノは遊び人とよく言われる。バルドヴァーノ自身は、自分が遊び人だとは思っていない。むしろ、唯一の愛に憧れるロマンチストだ。何処で誰と出会い、恋に落ちるか分からない。唯一絶対の伴侶を見つけたいから、バルドヴァーノは積極的に、少しでも気になったら、女にも男にも声をかける。バルドヴァーノの唯一の伴侶が女とは限らないので、男にも普通に声をかけるし、少しでもいいなと思ったら口説く。
恋人として付き合い始めたら、浮気はしない。しかし、何故だかいつも長続きしない。すぐに思ってしまうのだ。なんだか違うな、と。勿論、バルドヴァーノは若い健康な男なので、性欲発散の為に一夜限りの相手と遊ぶことはある。しかし、ちゃんと恋人になった相手がいる時は、そういう遊びはしない。が、街ではすっかり遊び人だと定着してしまっているので、あまり信用されたことはない。
バルドヴァーノは定時で仕事を終えると、デート相手との待ち合わせ場所の途中にある花屋で小さな花束を買い、軽い足取りで待ち合わせ場所に向かった。今夜のデートは恋人になってもらおうと思っている相手だ。カミッロには遊んでポイみたいなことを言われたが、別に最初からポイするつもりはない。付き合ってみて微妙だったら別れるというだけだ。今夜は一応まだ手を出すつもりもない。初な田舎娘を弄ぶ気はない。誠実で紳士的なデートをするだけだ。
バルドヴァーノは鼻歌を歌いながら大通りを歩き、目当ての女を見つけると、明るい笑みを浮かべて声をかけた。
------
バルドヴァーノは、ひりひりと痛む頬を擦りながら出勤した。今朝方、恋人と別れた。付き合ってまだ2ヶ月なのだが、やはりなんか違うなと思い、バルドヴァーノの部屋に泊まっていた彼女に起き抜けに別れ話を切り出した。結果、元恋人から全力の平手打ちをくらった。
今回の恋人が冒険者じゃなくて助かった。下手に冒険者だったら、顔の形が変わっていたかもしれない。バルドヴァーノは、小さな溜め息を吐いた。バルドヴァーノの唯一の伴侶は一体何処にいるのだろう。パズルのピースのように、バルドヴァーノとぴったりと合わさる運命の人は絶対にいると思うのだ。今回も違ったが。
バルドヴァーノはギルドの職員用ドアの前で、静かに深呼吸をした。凹んでいる暇などない。今日も仕事は忙しいのだ。仕事をろくにしない男など、運命の人が現れた時に振り向いてもらえない可能性が高い。バルドヴァーノは、暇さえあれば女にも男にも声をかけているが、仕事だけはきっちり真面目にやっている。ギルド内でも、そこはちゃんと評価されている。そろそろ勤続10年になる。部下はいないが、後輩はそれなりにいる。尊敬している上司や先輩も多い。彼らに情けない格好悪いところは見せたくない。どれだけ遊び人と言われようが、これだけはバルドヴァーノの小さなプライドのようなものだ。
バルドヴァーノは気合を入れて、ギルド内に入った。
朝の一番忙しい時間帯を過ぎ、少しだけ受付に訪れる冒険者達の数が落ち着いてきた頃。バルドヴァーノが座っているカウンターの前に、とても大きな身体の男がやってきた。顔は傷痕だらけで、小さな子供が見たら泣きだすこと間違いなしの人相の悪さである。太めの眉も、何故か瞳孔が開きっぱなしに見えるギョロリとした大きな目も、鷲鼻も、薄い唇も、子供に怖がられる要素しかない。背が高く、筋肉質なのが黒い装備の上からでも分かる程鍛えられた厚みのある身体をしている。
バルドヴァーノは仕事用の笑みを浮かべ、男に明るく挨拶をした。
「こんにちは。ミルコさん。依頼達成報告ですか?」
「あぁ。ん」
「はい。まずは依頼書を確認しますね。討伐と素材採取依頼ですね。バジリスクの討伐と、素材は此方でお間違いないですか?」
「あぁ」
「はい。では、お手数ですが、素材鑑定カウンターにて、討伐証拠の魔石、素材の確認と査定をお願いいたします。終わりましたら、素材鑑定カウンターで発行される書類を持って、こちらにもう一度お越しください。依頼達成受領書と報酬をお渡しいたします」
「あぁ」
ミルコという冒険者は半年程前にパーノンにやって来た流れの冒険者だ。上位ランクで、素材の取り扱いが丁寧な腕のいい冒険者である。歳は多分30前後くらいだろう。かなり無口だが、いつもバルドヴァーノの所で受付をしてくれるという常連さんである。
冒険者によっては、受付に座る人間に全く拘らない者や逆に気に入っている受付の人間の所にしか行かない者がいる。どちらかと言えば、前者が多い。受付カウンターの職員は、単なるギルドの備品のように思っている冒険者が一定数いる。脅せばどうにでもできると舐めている者も多い。
パーノンは人気が高いダンジョンがあるせいで、冒険者の出入りが非常に多い。低ランクから中ランクでも、ダンジョンに潜ればそれなりの収穫を得られると有名で、結果、本当に有象無象の冒険者達が集まってくる。故に、質が悪い者も非常に多い。冒険者ギルドの受付職員の離職率は結構高く、仕事を辞める者は、大体が質の悪い冒険者達の対応に疲れたり、何かしらの被害にあった者ばかりだ。
バルドヴァーノも最低限の護身術は身につけているが、それでも何度も殴られたり、切りかかられたことがある。実はそれなりに危険な仕事だったりする。
ミルコは口数は少ないし、見た目は凶悪だが、理不尽な要求をしたり、変なイチャモンをつけてこないし、自分が受けた依頼は完璧にこなしてくれる。ミルコがいると、他の雑魚冒険者達も静かになるし、バルドヴァーノにとっては、中々にいい常連さんなのである。
バルドヴァーノは戻ってきたミルコに愛想よく笑いながら、手早く書類を処理して、報酬をミルコに手渡した。
バルドヴァーノは疲れた溜め息を吐きながら、職員用のドアから出た。今日は散々な日だった。破落戸紛いの雑魚冒険者にイチャモンをつけられ顔を殴られるは、そこそこ上位な中堅冒険者にネチネチと謂れのない嫌味を言われるは、食事に誘った男には断られるは、仕事がどうしても終わらずに残業になるはで、元恋人に引っぱたかれた朝からいいことが全然無かった。
こういう時は酒を飲むに限る。少しだけ嬉しいことに、明日は休日だ。残念ながら、デートの予定は入っていないが。予定が無いのなら、これから作ればいい。馴染みのバーに行けば、今夜の遊び相手か、明日のデート相手が見つかるだろう。自慢じゃないが、バルドヴァーノは顔がいい。『遊び人だと分かっていても、一度でいいから遊ばれたい』と街の若い女達に言われているくらいには顔がいい。バルドヴァーノの顔は、『まるで物語の王子様みたい』なのだそうだ。淡い金髪も淡い青色の瞳も、確かに物語に登場する王子様のような配色である。顔立ちは我ながら優しい雰囲気に整っているし、身体つきも一応筋トレをしているので、それなりに締まっている。ゴリゴリマッチョじゃないあたりが、割と女受けがいい。
バルドヴァーノは一度大きく深呼吸をしてから、疲れきった頭を切り替え、軽い足取りで馴染みのバーへと向かった。
バーに着くと、バルドヴァーノはさっと店内を見回し、2人組の女の冒険者達の側に近寄った。歳は20代半ばで、それなりに腕が立ちそうな2人である。おまけに結構美人だ。バルドヴァーノは、2人に近づくと、にっこり笑って声をかけた。
「ご一緒してもいいかな?お姉さん達」
「あら」
「いいわよ。色男」
「ありがとう。良かったら一杯奢らせてくれないかな?美味しい酒は美人に飲んでもらわなきゃ」
「ふふっ。口が上手いのね」
「じゃあ、奢ってもらおうかしら」
女達が満更でもない感じで笑った。慣れた様子なので、これは恋人よりも遊び相手にいいかもしれない。3人で楽しむのもありだ。バルドヴァーノは機嫌よく笑みを浮かべ、近くにいた店員に声をかけた。
女達と楽しくお喋りをしながら酒を飲んでいると、賑やかだったバーの店内がいきなり静かになった。何事かと思ってバーの入り口辺りを見れば、そこにミルコがいた。
隣に座っている女が、嫌そうに顔を顰めた。
「ヤダ。『赤の猟犬』じゃない」
「最悪。折角のお酒が不味くなるわ」
「『赤の猟犬』ってミルコさんのこと?」
「そうよ。『血塗れミルコ』とも呼ばれてるわね」
「狙った獲物は絶対に逃さないのよ。デカい大剣をぶん回すから、あいつが来たら巻き込まれないように逃げろって言われてんの。近くにいる連中にお構いなしで馬鹿でかい剣を振り回すし、戦い方が汚いのよ」
「ふーん。そうなんだ。でも素材の扱いはすごくいいよ?」
「素材の扱いだけでしょ。あいつが戦った後って酷いのよ。周りが血だらけで」
「そうそう。本人も返り血で真っ赤になるしね。全然スマートじゃないわ」
「へぇー」
どうやらミルコは他の冒険者達からあまり好かれていないらしい。だからソロで冒険者をしているのだろうか。カウンター席に1人で座ったミルコを見て、バルドヴァーノは好奇心がうずうずし始めた。『赤の猟犬』『血塗れミルコ』と呼ばれている男は、何を考えているのだろうか。受付では殆どまともに話したことがない。バルドヴァーノはミルコに対して割と好印象を抱いているが、ミルコの方はどうだろう。バルドヴァーノは、少しでもいいから、ミルコと話してみたくなった。
バルドヴァーノは一緒に飲んでいた2人の女に断りを入れると、さっと席を立って、周囲から避けられているミルコに近寄った。予定変更である。今夜はミルコと一緒に飲んで、お喋りをする。ミルコが望めばセックスをしてもいい。バルドヴァーノは男女もタチネコもなんでもどんとこいというタイプだ。
バルドヴァーノはミルコの側に立ち、にっこりと笑ってミルコに話しかけた。
「隣いいかな?」
「……好きにしろ」
「ありがとう。何飲んでるの?」
「火酒」
「いいね。俺も同じのにするよ」
「…………」
「バルドヴァーノ・イボォンツォ。ヴァーノでいいよ。バルドヴァーノって少し長いでしょ。ミルコさん、いつも俺の所に来てくれるでしょ。あれ結構嬉しくてさぁ。ミルコさんはいい常連さんだよね。素材の扱いがすごく丁寧で、素材鑑定カウンターの人達もいつも褒めてるよ」
「そうか」
「ミルコさんは何が好き?此処って来たことある?此処の干し肉とチーズって美味いんだよ。マスターの実家で作ってるんだって」
「そうか」
「よかったら試してみない?」
「……あぁ」
ぶっきらぼうなミルコの応えに、バルドヴァーノは満面の笑みを浮かべた。意思疎通はちゃんとできている。酒が進めば、きっともっと話せる気がする。バルドヴァーノは嬉々として店員に声をかけた。
-------
ふわふわとしていた意識が、鋭い刺激で一気に覚醒した。目を開ければ、見慣れた天井が見える。バルドヴァーノの家の寝室の天井だ。強い刺激がひっきりなしに襲ってきて、バルドヴァーノは身をよじって喘いだ。ぬるりとした熱い感触が肌を這う。バルドヴァーノが自分の胸元へ視線を向ければ、傷痕だらけの顔のギョロリとした目がじっとバルドヴァーノの顔を見ていた。瞳孔がいつもより開いているように見える。薄いアンバーの瞳なので、端的に怖い。が、何故だかバルドヴァーノは妙に嬉しくなった。
バルドヴァーノは自分の状態をすぐに把握した。ミルコに乳首を舐められながら、アナルを指で弄られている。容赦なく前立腺をぐりぐりされる強い刺激で、泥酔1歩手前だった状態から酔いが冷めたようだ。記憶が濁っていてハッキリと思い出せないが、どうやら自分はミルコを誘うことに成功したらしい。くふっと笑ってから、バルドヴァーノはミルコの指の刺激に大きく喘いだ。
ミルコの指が酷く気持ちがいい。ぐりぐりぐりぐりとバルドヴァーノの前立腺を苛めているミルコの指を、アナルが勝手にキツく締めつけてしまう。そういえば、男に抱かれるのは少し久しぶりだ。泥酔1歩手前だったバルドヴァーノがミルコをリードできたとは思えないので、ミルコは男を抱く知識があったのだろう。正直、ミルコが男もイケるとは思っていなかった。嬉しい誤算である。何故嬉しいのかは、よく分からない。どうやらバルドヴァーノのアナルにはミルコの太い指が3本も入っているらしい。アナルの中を拡げるように、指をバラバラに動かされて気づいた。ちゅくちゅくと緩急をつけて吸われている乳首も気持ちがいい。
バルドヴァーノは身体の中を駆け回る快感に小さく震えながら、ミルコの名前を呼んだ。
「あっ、はぁっ、ミルコさん」
「ん」
「キスして」
「ん」
ちゅぽっと小さな音を立て、ミルコの唇がバルドヴァーノの乳首から離れた。のしかかってくる大きな傷痕だらけの身体にしがみつくように、ミルコの太い首に両腕を絡めて、バルドヴァーノはねだるように口を開けて舌を伸ばした。ミルコの肉厚の舌がバルドヴァーノの舌に絡み、ぬるぬると擦り合わさるようにして舌を舐められる。微妙に精液の味がするから、どうやらバルドヴァーノは一度ミルコの口でイッたようだ。自分の精液の味に酷く興奮する。ミルコの舌がぬるりとバルドヴァーノの口内に潜り込み、躊躇なくバルドヴァーノが一番好きな上顎を舐め始めた。背筋がぞわぞわする快感に、アナルが勝手に締まる。上顎をぬるぬる舐め回されながら、トントントントンッと軽く叩く感じで前立腺を刺激されると、堪らなく気持ちがいい。ミルコの汗でしっとりとした熱い肌の感触も心地いい。バルドヴァーノは、喘ぎながら、不明瞭な声でミルコの名前を再び呼んだ。
ミルコがバルドヴァーノの口内から舌を抜き、強くバルドヴァーノの下唇を吸ってから、伏せていた上体を起こした。どれだけ弄られていたのかは分からないが、熱く疼いて堪らないバルドヴァーノのアナルから、ミルコの指が抜け出ていった。
くるっと軽々とミルコに身体をひっくり返され、四つん這いの状態にされる。ミルコのゴツゴツした固い大きな左手がバルドヴァーノの腰を掴み、物欲し気にひくつくアナルに熱くて固いものが触れた。ミルコのペニスだ、と思った次の瞬間、一気に最奥まで勢いよくペニスで突き刺された。強すぎる衝撃で、かはっと息が詰まる。頭が一瞬で真っ白になった。
「あぁっ!?」
痛いのか気持ちいいのか分からない。ただ先程あった多少の余裕が吹き飛んだ。固くて太くて長くて熱いものが、バルドヴァーノの入ってはいけない所にまで入っている。ガンガンと強くそこを突き上げられると、鋭い痛みと脳みそが痺れて溶けでるような強過ぎる快感に襲われる。みちみちと限界まで拡がっているアナルの入り口が激しく擦られ、太くて固いカリで勢いよく前立腺をごりっごりっと強く刺激されながら、入ってはいけない奥深くを突き上げられる。
「あ、うぁ、う、うえっ、おぅぇっ、あっ、あっ、あっ、うぼぉぇっ」
バルドヴァーノはガンガンヤバい程奥を突き上げられながら、びしゃびしゃと胃の内容物を吐き出した。嘔吐くバルドヴァーノの身体を容赦なくミルコが突き上げてくる。苦しい。気持ちいい。痛い。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
バルドヴァーノは悲鳴のような喘ぎ声を上げながら、ガクガクと身体を震わせ、漏らすように精液をシーツに向けて吐き出した。イッている敏感な身体の奥を更に激しく突き上げられる。内臓がミルコのペニスで突き上げられ、揺さぶられ、脳みそが溶けるような強過ぎる快感に襲われる。
「あぁぁぁぁぁっ!!ひぃぎぃっ!」
「ヴァーノ」
「あぁぁぁぁっ!しぬっ!しぬっ!あぁぁぁぁっ!!」
「ヴァーノ」
あまりの快感に逃げようとする身体を、ぐっと強く肩を捕まれて阻まれる。ズンッと一際強く身体の奥を突き上げられた。その瞬間、目の前が真っ暗になり、バルドヴァーノは意識を飛ばした。
バルドヴァーノの意識が再び戻った時、バルドヴァーノのアナルの中にはまだミルコのペニスが入り込んでおり、ズンズンと奥深くを突き上げられていた。堪らず悲鳴を上げたバルドヴァーノの尻を強く掴み、バルドヴァーノの身体の下にいるミルコが更に激しく腰を使い始めた。脳みそが焼ききれそうな快感で、本気で死にそうな気がする。
バルドヴァーノはミルコに激しく揺さぶられながら、ミルコの顔を見た。興奮しきったように、ミルコの瞳孔が開き、獣のような息を吐いている。バルドヴァーノは自分でも気づかないうちに、うっとりと微笑んだ。見つけた。理由なんか分からない。でも、見つけた。バルドヴァーノの運命の人だ。
バルドヴァーノは不思議な確信と共に、大きく吠えて、激しすぎる絶頂の感覚に背をしならせた。
------
バルドヴァーノはぐったりとベッドに横たわったまま、ベッドの側の床に正座しているミルコを爛々とした目で見つめた。バルドヴァーノが目覚めると、吐いた上にイキ過ぎておしっこまで漏らした筈の汚れたシーツがキレイなものになっており、バルドヴァーノの身体もキレイにされていた。アナルにはまだ何か入っているような感覚がするし、腰を中心に全身が痛い。
神妙な顔で項垂れているミルコを見つめて、バルドヴァーノはうっとりと微笑んだ。
「ミルコさん」
「すまなかった」
「とりあえず今から教会と役所に行きましょうか」
「……ん?」
「ミルコさん。俺が好きでしょ?」
「……あぁ」
ミルコが気まずそうな顔で小さく頷いた。バルドヴァーノは満面の笑みを浮かべた。バルドヴァーノは確信していた。絶対にミルコはバルドヴァーノが好きだと。何故かは分からない。強いて言えば男の勘である。バルドヴァーノは爛々と目を輝かせて、力が入らない手でミルコを手招きした。
大きな身体を縮こませて、おずおずと近寄ってくるミルコが大変可愛らしい。ミルコは今も全裸で、傷痕だらけの身体は勿論、棍棒のようなペニスも見えている。よくもあんなものが自分の中に入ったなと、感心してしまうくらい、ミルコのペニスは大きかった。
反省している犬のように、ベッドの上に顎を乗せたミルコの頭をやんわりと撫で、バルドヴァーノはふふっと笑った。
「ミルコさん。ミルコさんは俺の運命の人だからね。逃さないよ」
「そうか」
「うん。結婚式はいつ挙げる?」
「……結婚するのか」
「しないの?」
「したい」
「あはっ。仮にしたくないって言っても逃さないけどね。ミルコさん。ミルコさん」
「なんだ」
「俺は多分どちゃくそ重いから。覚悟しといてね」
ミルコがきょとんと目を丸くした。こてんと首を小さく傾げた後、獰猛な顔でミルコが笑った。
「俺も、多分、重い」
「わぉ。俺達お似合い過ぎじゃない。ミルコさん。死んだ後も俺を愛してね」
「あぁ」
「約束破ったら地の果てどころか地獄まで追いかけるから」
「あぁ」
「ミルコさん。大好き」
「……愛している。ヴァーノ」
昨夜の凶暴さは何処へやったのか、おずおずと躊躇いがちに、ミルコが優しくバルドヴァーノの唇にキスをした。
少し後になって聞いたのだが、ミルコはバルドヴァーノの笑顔と柔らかい物言いに一目惚れしたらしい。『赤の猟犬』『血塗れミルコ』と渾名をつけられる程に返り血で汚れて帰るが、バルドヴァーノに会うからと、毎回わざわざ風呂に入って着替えてから受付に来ていたらしい。本当は一週間程で別のダンジョンがある街に行く予定だったが、バルドヴァーノがいるからと、パーノンに腰を落ち着けることにしたのだとか。いじらしくて可愛くて堪らないではないか。
バルドヴァーノはミルコのことを少しずつ知る度に、ミルコのことがより大好きになり、メロメロどころではなくなった。実はクッキーが好きだとか、意外と料理が上手いとか、でも裁縫はてんで駄目だとか、ミルコを知れば知る程、ミルコが可愛くて堪らなくなった。
バルドヴァーノはミルコを自分の家に住まわせた。バルドヴァーノの家は亡くなった祖父から継いだ家で、古いし然程大きくないが、2人で暮らすには十分な広さがある。ベッドだけは特注した頑丈で大きなものに新調して、二人の愛の巣を作った。
バルドヴァーノはピタリと遊ばなくなった。唯一無二の伴侶がいるのだから、遊ぶ必要などない。ミルコに愛されているので、他の人間なんか視界にも入らない。バルドヴァーノは引き続き冒険者ギルドの受付で働き、ミルコは冒険者ギルドに併設されている冒険者向けの訓練場で教官として働き始めた。主に素材の取り扱いについて講義をしている。ミルコは戦い方は汚いらしいが、冒険者ギルドの素材鑑定カウンターの者達が感心する程素材の剥ぎ取り方等の扱いが上手い。バルドヴァーノと1日たりとて離れたくなかったミルコは、冒険者をあっさりと辞めた。毎日2人で手を繋いで出勤し、2人で手を繋いで家に帰っている。
バルドヴァーノはミルコと一緒に夕食を作りながら、台所の壁に貼り付けてあるカレンダーを見た。赤い印がつけてある日付を確認すると、ふふっと笑って、黙々と野菜を刻んでいるミルコの背中に張り付いた。
「ミルコさん」
「ん」
「明日は結婚記念日だからデートしよう」
「ん」
「20回目だしね。なんかこう特別なことがしたいなぁ」
「……店は予約してある」
「わぉ。流石は俺のミルコさーん。好きっ!」
「ん」
ミルコが包丁を使っていた手を止め、くるりと回り、バルドヴァーノの身体を正面から抱きしめた。おねだりしなくてもキスをしてくれるミルコに、バルドヴァーノはくふふっとご機嫌に笑った。バルドヴァーノは、結婚した時よりも老けて更に顔が怖くなったミルコに、弾けるような明るい笑みを向けて、愛おしい運命の伴侶の身体をぎゅうっと抱きしめた。
(おしまい)
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お読み下さり、本当にありがとうございました!!
好きー。大好きですー(語彙力がなくてすみません
うわーーーーん!!
ありがとうございますーーーーーー!!(泣)
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お楽しみいただけたのでしたら、なによりも嬉しいです!!
お読みくださり、本当にありがとうございました!!