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『生きたい』二人は破門されたい
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日が昇る頃。アレッシオは冷たい水で黙々と洗濯をしながら、ぼそっと呟いた。盥の水面に映る瞳は輝きがなく、まるで死んだ魚のようだ。
「破門されたい……」
アレッシオは、貴族の庶子だ。生まれてすぐに母親が亡くなり、貴族の父親によって、神殿に預けられた。一度神殿に入り、神官になると、外の世界には出られない。毎日毎日、朝と夕方に神に祈りを捧げ、無駄に広い神殿の掃除をして、治療目的で神殿に訪れる民に医療魔法を施すだけの日々を過ごしている。
アレッシオは、神官として出世することは無い。父親は結構な大貴族らしいのだが、正妻がかなりの悋気持ちらしい。アレッシオの身の安全の為にも、その他大勢に埋没しておかなければいけないそうだ。
アレッシオは、もう30が近い。10代の頃から、ずっと息苦しい代わり映えのない神殿から出たくて堪らなかった。神に仕える神官は、性行為を禁じられている。このまま死ぬまでずっと、誰の温もりも知らず、退屈で窮屈な日々を過ごしていくのかと思うと、いっそのこと死んでしまいたくなる。アレッシオは、外に出たい。外に出て、自由に好きなものを食べて、好きなものを見て、好きなことをして、好きな人と熱を分け合いたい。有り体に言えば、セックスがしたい。セックスが。
神官が性行為即ちセックスをすると、破門される。破門されれば、医療魔法を封印され、二度と神殿に立ち入ることはできなくなる。高度な医療魔法は、基本的に神殿でしか受けられない。もし、大病や大怪我をしたとしても、破門されれば、神殿での治療を受けられなくなるし、医療魔法を封印されているので、自分で治療することもできなくなる。だが、それがなんだというのだ。このまま、鳥籠の中の小鳥のように、ただ惰性で生きているだけの生に何の意味がある。
たとえ野垂れ死にすることになっても、アレッシオは『生きたい』。今の生きているのに死んでいるような状態は、もううんざりだ。手っ取り早く破門されようと思えば、セックスをするのが一番早い。
アレッシオは、洗った服を絞りながら、なんとかしてセックスの相手を見つけようと決めた。
セックスの相手を見つけようと決めて、早三ヶ月。無駄に時間が過ぎるだけで、相手なんか見つからない。
アレッシオは、見た目は悪くないと思う。肩まで長さがある母親譲りだという銀髪はサラサラでキレイだと言われることが多いし、緑色の瞳は、宝石みたいだと言われたことがある。顔立ちは優しく整っていると言われる。身体つきは中背中肉だが、痩せぎすでも太り過ぎでもないので、別にいいと思う。
セックスに興味がありそうな神殿の男を探しているのだが、中々見つからない。神殿に訪れる男や女に手を出すのは、流石に相手が気の毒だ。神官とセックスをすると、その相手も咎められる。一番無難なのは、破門されたいと思っている神官もしくは聖騎士だ。主に神殿の警備をしている聖騎士も、セックスが禁じられている。セックスをしたら破門になるのは、聖騎士も一緒だ。
アレッシオは、どうにか相手を見つけられないかと頭を悩ませる日々を送っている。
ーーーーーー
アレッシオは、今日も今日とて、いつもと変わらない一日を送っていた。朝早くに祈りを捧げ、洗濯をし、神殿の掃除をしてから、訪れる者達を医療魔法で治療する。
壮年の男の腰を治した後に診察室に入ってきたのは、聖騎士の男だった。鍛練中に怪我をしたらしい。左腕の二の腕の骨がバッキリ折れていた。アレッシオは、聖騎士の男の二の腕に医療魔法をかけながら、チラッと聖騎士の男の顔を見た。淡い茶髪に深い緑色の瞳をした精悍な男前である。なんとも生真面目そうな印象を受けるが、よくよく見れば、目が死んでいる。目が生き生きと輝いていれば、とても女受けがよさそうな顔立ちだが、目が死んだ魚の目よりも濁った感じである。
アレッシオは、周囲に聞こえない程小さな声で、聖騎士の男に話しかけた。
「貴方は、此処で生き続けたいですか?」
聖騎士の男が死んだような目でアレッシオを見て、ボソッと呟いた。
「いっそ死んだ方がマシだ」
アレッシオは、聖騎士の男の答えを聞くと、微かに微笑んだ。もしかしたら、丁度いい相手が見つかったのかもしれない。
アレッシオは、また小さな声で話しかけた。
「今宵の月が中天の頃に、中庭の杏の木の下に」
アレッシオの言葉に、聖騎士の男が、パチリと一度だけ瞬きをした後で無言で頷いた。治療が終わると、聖騎士の男はボソッと礼の言葉を口にして去っていった。
その夜。月が中天になる頃に、アレッシオは部屋を抜け出し、中庭の大きな杏の木の下へと向かった。アレッシオは平神官なので、ずっと四人部屋で寝ている。同室の神官に気づかれないように、アレッシオは慎重に部屋を出た。
月明かりに照らされた杏の木の下に行けば、昼間の目が死んでいる聖騎士の男が、木の下に胡座をかいて座っていた。アレッシオは、ゆるく笑みを浮かべて、男に近づいた。
「こんばんは。私はアレッシオと申します」
「知っている」
「おや」
「やたら美しい神官がいると、聖騎士の中でも話題になっている」
「へぇ。そうなんですね。貴方のお名前は?」
「イザイア」
「歳は?」
「25」
「私は29歳です。単刀直入に言いますね。私とセックスをして、一緒に破門されませんか?」
「……何故」
「外の世界に出たいのです。死ぬまでずっと窮屈で退屈な日々を過ごすなんて心底嫌なんですよ。外の世界に出て、自由が欲しいのです」
「何故、俺に声を?」
「貴方の目が死んでいたからですね。そして、私の問いに、『死んだ方がマシだ』と答えました。死ぬくらいなら、一緒に破門されて、外の世界で生きてみませんか?」
「……貴方とセックスをする。稽古と称してリンチされるのも、窮屈な暮らしも、もううんざりだ」
「貴方は他の聖騎士から暴行を受けているのですか」
「俺の母親は娼婦だ。売春は、神殿の教えでは罪だろう。罪人の子供だからと、好き勝手にされている」
「なるほど。では、こんなつまらない世界から飛び出して、外の世界で一緒に生きましょうか。医療魔法は封じられますが、薬の知識ならあります。薬師の真似事くらいはできるかと」
「俺は剣を振るうことしかできない」
「貴方が護衛を、私が薬師をして、旅をしたらよろしいでしょう」
「そう上手くいくのか」
「さあ? 出たとこ勝負ではありますけど、少なくとも、外に出れば、好きに生きて、好きに死ねますね」
「最高だな。神殿では、自殺も禁じられている。外に出た後、どうなっても構わない。自由が欲しい。己の意思で死ねる自由が」
「外に出た瞬間に死なれても、ちょっと困るのですが、まぁ、そこは貴方の自由ですよ。じゃあ、セックスをしましょうか」
「あぁ。場所は?」
「今、此処で。巡回の者に気づかれる可能性が高い方がいいでしょう?」
「分かった。やり方は分かるのか」
「セックスの仕方は知りませんが、人体については知識があります。肛門を使うことになりますが、女性の身体のように肛門は濡れないので、水魔法を使えば、多分なんとかなる筈です」
「ふぅん。俺は何も知らない。任せる」
「えぇ。一度、酒瓶を自分の肛門に入れて取れなくなった老爺を治療したことがあるので、なんとなく、どうすればペニスが肛門に入るかは推測できます」
「その老爺はイカれているのか」
「自慰をしていて取れなくなったらしいですよ」
「ふぅん。おかしな男もいるものだな」
「まぁ、世の中には色んな人がいるのでしょう。では、始めましょうか」
「あぁ」
アレッシオは、するっと着ていた寝間着を脱ぎ捨て、下着も脱ぎ、全裸になった。イザイアも服を脱ぎ始めたので、アレッシオはその場に腰を下ろして、服を脱ぐイザイアをじっと見た。
イザイアの身体は筋肉質で逞しいが、暴行を受けたと思わしき青痣が沢山あった。本当に、他の聖騎士達の憂さ晴らしの玩具にされているのだろう。
アレッシオは、少し考えた後、自分の腰に手を当てて、直腸内に浄化魔法をかけた。何もせずにペニスをアナルの中に挿れたら、間違いなく大惨事になる。ついでに、水魔法で粘度の高い水を掌に生成する。女の愛液はぬるついているらしいと小耳に挟んだことがあるので、サラサラの水よりも、ぬるぬるの水の方がいいのだろう。多分。
アレッシオは、胡座をかいて座っている全裸のイザイアの足を跨ぎ、イザイアの逞しい肩に左手を置いて、右手で自分のアナルに触れた。風呂や排泄の後に拭くくらいしか、自分のアナルに触れたことはない。きゅっとキツく閉じているアナルを少しでも柔らかくするべく、アナルの表面を濡れた指先でくにくにとマッサージしてみる。気持ち悪い訳ではないが、気持ちがいい訳でもない。
アレッシオは、一度大きく深呼吸をすると、思い切って指を一本アナルの中に押し込んだ。痛くはないが、異物感がある。これは本当に気持ちよくなれるのだろうかと疑問に思いながら、アナルを拡げるべく、指をゆっくり抜き差しして、指を回す。
なんとなく馴染んできた気がするので、今度は二本の指を挿れてみる。少し引き攣るような感じはするが、まだ問題ない。指を抜き差ししながら、熱く柔らかい腸壁をやんわりと擦っていると、小さな痼のようなものに指先が触れた。瞬間、生まれて初めて感じる強烈な刺激がアレッシオを襲った。
「う、あっ!?」
「どうした」
「い、いや、なんか、今、すごいのきました」
「すごいの」
「なんかすごいの……うっ、うぁ、ふっ、ふっ、ん~~っ!」
そこを指の腹ですりすりすると、背筋を経験したことがない何かが走り抜ける。はっ、はっ、と浅く速い息を吐きながら、アレッシオは初めての刺激に夢中になった。そういえば、アレッシオは、自慰と呼ばれる行為もしたことがない。自慰すらも神殿では禁じられている。もしかすると、これは『快感』と呼ばれるものなのかもしれない。指でアナルを弄りながら、自分の下腹部を見れば、勃起して、ペニスの先っぽが濡れていた。
アレッシオは、ずるぅっと指を引き抜くと、荒い息を吐きながら、イザイアの股間に手を伸ばした。濡れた手で、萎えているイザイアのペニスを掴み、勃起させようと試みる。自慰は実際にしたことはないが、患者達の下世話な世間話で、チラッと耳にしたことがある。ペニスは手で擦ると勃起するらしい。
実際にやってみると、イザイアのペニスは、次第にむくむくと大きく硬くなっていった。大きさは、アレッシオのペニスと然程変わらない。手を動かしながら、チラッとイザイアの顔を見れば、小さく浅い呼吸をしながら、どこか堪えるような顔をしていた。
アレッシオは、イザイアのペニスが勃起すると、尻の位置を調節して、イザイアの勃起したペニスの先っぽを自分の濡れたアナルに押しつけた。
少しだけ怖い。これから、アレッシオ達は禁忌を犯す。でも、それ以上にワクワクしている。セックスをすれば、アレッシオ達は自由になる。
アレッシオは、見上げてくるイザイアの瞳をじっと見つめながら、意識して大きく息を吐き、ゆっくりと腰を下ろし始めた。メリメリと狭いアナルを抉じ開けるようにして、イザイアの太くて硬いペニスがアナルの中に入ってくる。かなり痛いが、奇妙な興奮の方が上回っている。
ゴリッとイザイアのペニスが、アレッシオの刺激が強いところを刺激してきた。部位的に、恐らく前立腺だろう。前立腺が気持ちいいだなんて初めて知った。
イザイアが低く唸り、ガシッとアレッシオの腰を強く掴んで、そのまま勢いよく押し倒してきた。
「うわぁ!? あぅっ!? あっ! うぐっ、まっ……」
「はっ、はっ、なんだこれ……すげぇっ」
イザイアがアレッシオの腰を両手で掴んだまま、遠慮なしにガンガン激しく腰を振り始めた。アレッシオは、背中が地面の草に擦れる微妙な痛さと、アナルの中を暴れ回るイザイアのペニスがもたらす痛みと、恐らく快感と思われる感覚に、悲鳴じみた声を上げた。痛い。痛い。でも、多分気持ちがいい。
アレッシオは、腰を浮かせた状態で、強く地面の草を踏みしめた。イザイアの勢いは激しくて、両手で地面に生えた短めの草を掴み、地面に触れている足先で踏ん張っていないと、なんだか気がおかしくなりそうだ。
「あっ! あっ! う、あぁっ!」
「あーー、出るっ、出るっ!」
イザイアのペニスが、ずりゅずりゅと激しくアレッシオのアナルに出入りして、強く前立腺を擦りながら、更に太くなった。一際強くアナルの中を突き上げられたかと思えば、イザイアが低く呻いて身体をぶるっと震わせ、熱い息を吐いた。
腹の中で、イザイアのペニスが微かにピクピクと震えている。アレッシオは、はぁー、はぁー、と大きな息を吐きながら、鈍く痛むアナルからイザイアの萎えたペニスが抜け出る感覚に小さく喘いだ。
だらしなく地面に寝転がったままのアレッシオを見下ろして、イザイアが、どこかぼんやりとした顔で笑った。
「まだ、したい」
「……ふ、ははっ! 私の中はそんなによかったですか?」
「あぁ。こんなの初めてだ」
「私もですよ。ねぇ。私も君に挿れてみてもいいですか? 中にね、気持ちいいところがありますよ」
「ふぅん? ……貴方は出していないな。俺だけ気持ちいい思いをするのは不公平だ」
「気持ちよくなれるように頑張ります」
「あぁ」
目が死んでいた筈のイザイアの瞳が、今は熱を孕んで爛々と輝いている。アレッシオの目も、多分同じだろう。セックスってすごい。イザイアと繋がっていると、不思議と『生きている』という感じがする。
アレッシオは、イザイアを促して、こちらに尻を向けて四つん這いになってもらった。イザイアの腰から尻に向けて撫で下ろし、直腸に浄化魔法をかける。水魔法でぬるぬるの水を生成してから、アレッシオは、イザイアのムッキリした筋肉質な肉厚の尻たぶを片手で掴んで、アナル周りの尻肉を広げた。きゅっとキツく閉じているイザイアのアナルに、ぬるつく指で触れる。ぬるぬるとアナルの表面を優しく撫で回すと、イザイアが大きな溜め息を吐いて、腰をくねらせた。
「それ、なんか、ゾクゾクする」
「『気持ちがいい』ってことでしょう」
「多分? 初めての感覚だから、よく分からない」
「そうですね。私もでしたよ。でも、私もさっきは多分気持ちよかったです」
「は、ぁ……」
「指を挿れますね。……多分、このあたり……?」
「うぁっ!?」
「あ、ここですね。前立腺が気持ちがいいだなんて、初めて知りましたよ」
「え、あっ、ちょっ、まっ、うっ、うっ、あぁっ!」
イザイアの腸内の前立腺を指の腹ですりすりすると、イザイアが背をしならせて、腰を震わせた。前立腺をすりすりする度に、きゅっ、きゅっ、とイザイアの括約筋が締まる。イザイアの中は熱くて柔らかい。括約筋のキツい締めつけに、なんだか背筋がゾクゾクしてくる。
アレッシオは、指が二本入って、スムーズに動かせるまで、イザイアのアナルをできるだけ優しく弄った。
ずるぅっとイザイアのアナルから指を引き抜き、萎えていない自分のペニスにぬるぬるの水を馴染ませるように手で擦る。手で擦るだけで、何か出てしまいそうな感覚がする。多分、尿ではなく精液なのだろう。自分のペニスを濡れた手で擦るだけで、変な声が出そうになる程、背筋や腰がぞわぞわする。多分、これも『気持ちがいい』。
アレッシオは、肩で息をしているイザイアのムッキリした尻肉を両手で掴み、濡れて微かにひくひくしているイザイアのアナルに、自分の濡れたペニスの先っぽを押しつけた。イザイアのアナルは熱く、ゆっくりと腰を動かして狭いアナルの中にペニスを押し込めば、キツい締めつけのところを通り過ぎ、熱くて柔らかいものにペニスが包まれていく感覚がする。アレッシオは、思わず溜め息を吐いた。これが、『気持ちいい』。アナルでイザイアのペニスを受け入れた時とは違う快感が、なんとも心地いい。
アレッシオは、我慢できずにすぐに本能が赴くままに腰を激しく振り始めた。
「おっ! あっ! あぁっ! うっ、あぁっ!」
「あぁ……これは、すごい……多分、このあたり……」
「あぁっ!? そ、こはっ! んっ! あっ! はっ、うぁぁっ!」
イザイアの腹側にある前立腺を意識してペニスで擦るように腰を振れば、イザイアが背をしならせて、吠えるような声を上げた。パンパンパンパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く。どんどん何かが飛び出しそうな感覚が強まっていく。アレッシオは、その感覚に流されるまま、パァンと一際強く下腹部をイザイアの尻に打ちつけた。排尿とは違う、初めて感じる射精の快感に、アレッシオは溜め息のような喘ぎ声をもらした。尿道を勢いよく精液が飛び出していく。腰をゆるく振って、ぬこぬこと精液を全部出し切ると、アレッシオはゆっくりと萎えたペニスを引き抜いた。
荒い息を吐きながら、イザイアの汗でしっとりしているムッキリした尻肉を両手で掴んで広げれば、閉じ切らないアナルから、こぽぉっと白い精液が零れ落ちた。夢精は10代の頃にしたことがある。その時に見たものと同じものだから、精液で間違いない。
ひくひくと収縮しながらアレッシオの精液をアナルから垂らしているイザイアに、不思議な興奮を覚える。
イザイアが、ゆっくりと身体を起こして、身体ごと振り返った。
「アレッシオ。まだ、足りない」
「ふふっ。私もです。ねぇ、イザイア」
「なんだ」
「もっともっと『自由』になりましょう?」
「あぁ」
アレッシオが笑うと、イザイアも無邪気に笑った。イザイアは笑うと少し幼く見える。死んだ魚のような目は、今はしていない。まるで未来を見据えた子供のように、キラキラと輝いている。
アレッシオは、朝日が昇る頃まで、夢中でイザイアと絡み合い、初めての『自由』とセックスを楽しんだ。
ーーーーーー
アレッシオは、厠の個室で、イザイアのペニスを受け入れていた。イザイアとセックスをするのは、これで数回目だ。特にコソコソしている訳でもないが、未だに破門されていない。
イザイアとのセックスに慣れてきて、アナルにペニスを挿れられただけで気持ちよくなれるようになってきた。アレッシオは、立ったままイザイアのペニスを受け入れた状態で、小さく喘ぎながら、厠の壁に爪を立てた。
イザイアのペニスがゴリッと強くアレッシオの前立腺を擦った瞬間、身体の中を暴れ回っていた快感が弾け飛んで、アレッシオは間延びした声を上げながら、便器に向かって精液を飛ばした。
肩で息をするアレッシオのうなじを舐め回しながら、イザイアも低く唸って、ぐりぐりと下腹部をアレッシオの尻に押しつけてきた。腹の中で、イザイアのペニスが微かにピクピク震えながら、精液を吐き出している。
はぁーっと、二人同時に大きな溜め息を吐くと、イザイアが甘えるかのようにアレッシオの肩に頬をつけた。
「アレッシオ。交代」
「いいですよ。抜いてください」
「ん」
ずるぅとイザイアのペニスがアナルから抜け出る感覚すら、気持ちがいい。アレッシオは、イザイアと狭い個室の中で位置を交代して、厠の壁に手をついて尻を突き出したイザイアの直腸に浄化魔法をかけた。
水魔法でぬるぬるの水を出して、指でイザイアのアナルを解し、自然と勃起したペニスを突っ込んだ瞬間、どんどんどんどんっと厠の個室のドアが強く叩かれた。
「貴様ら! そこで何をしているっ!!」
「あはっ。やっと見つかりましたね」
「ちっ。終わってからがよかった」
「ふふっ。破門されたら、いくらでもできますよ」
アレッシオは、ゆっくりとイザイアの熱いアナルからペニスを引き抜いた。ちょっと不満気なイザイアの唇に、触れるだけのキスをする。キスという行為は、患者夫婦がしていたので知っている。イザイアにキスをするのは初めてだ。イザイアが、きょとんとして、不思議そうに首を傾げた。アレッシオは、ふふっと笑って、もう一度、イザイアに触れるだけのキスをした。唇を触れ合わせたまま、囁く。
「楽しい拷問が待ってますよ。それに耐えたら、いよいよ破門です」
「アレッシオ。耐えろよ」
「えぇ。勿論。イザイア。貴方も」
「ん」
厠の個室を出た途端、アレッシオとイザイアは、聖騎士の男達に拘束された。すぐに尋問室と言う名の拷問部屋へと連行される。
アレッシオは耐えた。血が止まる暇がない程鞭を打たれても、爪を全て剥がされても、破門の焼印を額につけられても、あえて、ずっと微笑んでいた。
恐らく、10日程経った頃。アレッシオは、聖騎士達に引き摺られるようにして、ボロ布と化した血まみれの服のまま、神殿の外に放り出された。全身が酷く痛み、今にも気を失ってしまいそうだが、アレッシオは高らかに笑った。
「あはっ! あははっ! 私は! 『自由』だ!」
アレッシオが一人笑っていると、神殿から、今度はボロボロのイザイアが放り出された。イザイアの凛々しく整っていた顔は、見る影もない程、腫れ上がっている。きっと、アレッシオよりもキツい拷問を受けたのだろう。額の焼印からは、まだ血が垂れている。
アレッシオは、ふらふらと地面に倒れているイザイアの元に移動した。倒れ込むようにイザイアの頭の前に座り込み、のろのろと身体を起こしたイザイアの、爪がない手を握る。
「イザイア。これで私達は『自由』です」
「あぁ。アレッシオ。死ぬその時まで、『生きたい』」
「はい。生きますよ。イザイア。とりあえず、此処を離れましょう。動けますか?」
「気合で動く」
「あはっ! 私も気合でなんとかします。イザイア」
「なんだ」
「この先に森があるでしょう?」
「あぁ」
「とりあえず、セックスしませんか?」
「ふはっ! 最高。ナニが切り落とされなくてよかった」
「ふふっ。それは確かに」
アレッシオは、イザイアと目を合わせて、笑った。身体はボロボロに傷ついているが、イザイアの目は、確かに生きている。きっと、アレッシオの目も『生きている』。
アレッシオはイザイアと手を繋いで、森を目指して、ゆっくりと歩き始めた。靴も履いていない。素足に地面に小さな石が刺さる感じがするが、この程度の痛み、なんてことはない。
アレッシオとイザイアは、『自由』を手に入れた。見たいものを見て、食べたいものを食べて、セックスをして、自分の思うがままに生きて死ねる。もう、篭の鳥なんかじゃない。
アレッシオは、森に着くと、イザイアの逞しい太い首に両腕を絡めて、イザイアの唇に触れるだけのキスをした。
「一緒に生きましょう。死ぬその瞬間まで」
「あぁ。アレッシオ。俺が死ぬ時は、貴方も連れて行く」
「あはっ! それはいいですね。是非とも、そうしてください。一緒に生きて、一緒に死にましょう」
イザイアが、笑うアレッシオの唇に触れるだけのキスをした。
それから二人は、森の中で思う存分傷ついた身体でセックスをした。
その翌日、通りすがりの商人に拾われ、商人に雇われることになった。商人は、真っ当な商人ではなく、違法薬物を取り扱う裏稼業の商人だった。アレッシオ達は、傷が完全に癒えて、それなりに金が貯まるまでは、商人の元で働き、その後は、二人で旅に出た。行く当てなんてない、気ままな旅だ。二人で世界を見に行く。
アレッシオは、イザイアと手を繋いだまま、空を見上げた。雲一つない青空を、一羽の鳥が優雅に飛んでいる。
アレッシオは、ふふっと笑って、すぐ隣のイザイアを見上げた。イザイアがこちらを見下ろして、ふっと笑った。
生きているのに死んでいた男達は、もういない。此処にいるのは、『生きている』アレッシオとイザイアだけだ。
ぽつぽつとお喋りをしながら街道を歩くアレッシオ達の背を押すように、強く風が吹いた。
(おしまい)
「破門されたい……」
アレッシオは、貴族の庶子だ。生まれてすぐに母親が亡くなり、貴族の父親によって、神殿に預けられた。一度神殿に入り、神官になると、外の世界には出られない。毎日毎日、朝と夕方に神に祈りを捧げ、無駄に広い神殿の掃除をして、治療目的で神殿に訪れる民に医療魔法を施すだけの日々を過ごしている。
アレッシオは、神官として出世することは無い。父親は結構な大貴族らしいのだが、正妻がかなりの悋気持ちらしい。アレッシオの身の安全の為にも、その他大勢に埋没しておかなければいけないそうだ。
アレッシオは、もう30が近い。10代の頃から、ずっと息苦しい代わり映えのない神殿から出たくて堪らなかった。神に仕える神官は、性行為を禁じられている。このまま死ぬまでずっと、誰の温もりも知らず、退屈で窮屈な日々を過ごしていくのかと思うと、いっそのこと死んでしまいたくなる。アレッシオは、外に出たい。外に出て、自由に好きなものを食べて、好きなものを見て、好きなことをして、好きな人と熱を分け合いたい。有り体に言えば、セックスがしたい。セックスが。
神官が性行為即ちセックスをすると、破門される。破門されれば、医療魔法を封印され、二度と神殿に立ち入ることはできなくなる。高度な医療魔法は、基本的に神殿でしか受けられない。もし、大病や大怪我をしたとしても、破門されれば、神殿での治療を受けられなくなるし、医療魔法を封印されているので、自分で治療することもできなくなる。だが、それがなんだというのだ。このまま、鳥籠の中の小鳥のように、ただ惰性で生きているだけの生に何の意味がある。
たとえ野垂れ死にすることになっても、アレッシオは『生きたい』。今の生きているのに死んでいるような状態は、もううんざりだ。手っ取り早く破門されようと思えば、セックスをするのが一番早い。
アレッシオは、洗った服を絞りながら、なんとかしてセックスの相手を見つけようと決めた。
セックスの相手を見つけようと決めて、早三ヶ月。無駄に時間が過ぎるだけで、相手なんか見つからない。
アレッシオは、見た目は悪くないと思う。肩まで長さがある母親譲りだという銀髪はサラサラでキレイだと言われることが多いし、緑色の瞳は、宝石みたいだと言われたことがある。顔立ちは優しく整っていると言われる。身体つきは中背中肉だが、痩せぎすでも太り過ぎでもないので、別にいいと思う。
セックスに興味がありそうな神殿の男を探しているのだが、中々見つからない。神殿に訪れる男や女に手を出すのは、流石に相手が気の毒だ。神官とセックスをすると、その相手も咎められる。一番無難なのは、破門されたいと思っている神官もしくは聖騎士だ。主に神殿の警備をしている聖騎士も、セックスが禁じられている。セックスをしたら破門になるのは、聖騎士も一緒だ。
アレッシオは、どうにか相手を見つけられないかと頭を悩ませる日々を送っている。
ーーーーーー
アレッシオは、今日も今日とて、いつもと変わらない一日を送っていた。朝早くに祈りを捧げ、洗濯をし、神殿の掃除をしてから、訪れる者達を医療魔法で治療する。
壮年の男の腰を治した後に診察室に入ってきたのは、聖騎士の男だった。鍛練中に怪我をしたらしい。左腕の二の腕の骨がバッキリ折れていた。アレッシオは、聖騎士の男の二の腕に医療魔法をかけながら、チラッと聖騎士の男の顔を見た。淡い茶髪に深い緑色の瞳をした精悍な男前である。なんとも生真面目そうな印象を受けるが、よくよく見れば、目が死んでいる。目が生き生きと輝いていれば、とても女受けがよさそうな顔立ちだが、目が死んだ魚の目よりも濁った感じである。
アレッシオは、周囲に聞こえない程小さな声で、聖騎士の男に話しかけた。
「貴方は、此処で生き続けたいですか?」
聖騎士の男が死んだような目でアレッシオを見て、ボソッと呟いた。
「いっそ死んだ方がマシだ」
アレッシオは、聖騎士の男の答えを聞くと、微かに微笑んだ。もしかしたら、丁度いい相手が見つかったのかもしれない。
アレッシオは、また小さな声で話しかけた。
「今宵の月が中天の頃に、中庭の杏の木の下に」
アレッシオの言葉に、聖騎士の男が、パチリと一度だけ瞬きをした後で無言で頷いた。治療が終わると、聖騎士の男はボソッと礼の言葉を口にして去っていった。
その夜。月が中天になる頃に、アレッシオは部屋を抜け出し、中庭の大きな杏の木の下へと向かった。アレッシオは平神官なので、ずっと四人部屋で寝ている。同室の神官に気づかれないように、アレッシオは慎重に部屋を出た。
月明かりに照らされた杏の木の下に行けば、昼間の目が死んでいる聖騎士の男が、木の下に胡座をかいて座っていた。アレッシオは、ゆるく笑みを浮かべて、男に近づいた。
「こんばんは。私はアレッシオと申します」
「知っている」
「おや」
「やたら美しい神官がいると、聖騎士の中でも話題になっている」
「へぇ。そうなんですね。貴方のお名前は?」
「イザイア」
「歳は?」
「25」
「私は29歳です。単刀直入に言いますね。私とセックスをして、一緒に破門されませんか?」
「……何故」
「外の世界に出たいのです。死ぬまでずっと窮屈で退屈な日々を過ごすなんて心底嫌なんですよ。外の世界に出て、自由が欲しいのです」
「何故、俺に声を?」
「貴方の目が死んでいたからですね。そして、私の問いに、『死んだ方がマシだ』と答えました。死ぬくらいなら、一緒に破門されて、外の世界で生きてみませんか?」
「……貴方とセックスをする。稽古と称してリンチされるのも、窮屈な暮らしも、もううんざりだ」
「貴方は他の聖騎士から暴行を受けているのですか」
「俺の母親は娼婦だ。売春は、神殿の教えでは罪だろう。罪人の子供だからと、好き勝手にされている」
「なるほど。では、こんなつまらない世界から飛び出して、外の世界で一緒に生きましょうか。医療魔法は封じられますが、薬の知識ならあります。薬師の真似事くらいはできるかと」
「俺は剣を振るうことしかできない」
「貴方が護衛を、私が薬師をして、旅をしたらよろしいでしょう」
「そう上手くいくのか」
「さあ? 出たとこ勝負ではありますけど、少なくとも、外に出れば、好きに生きて、好きに死ねますね」
「最高だな。神殿では、自殺も禁じられている。外に出た後、どうなっても構わない。自由が欲しい。己の意思で死ねる自由が」
「外に出た瞬間に死なれても、ちょっと困るのですが、まぁ、そこは貴方の自由ですよ。じゃあ、セックスをしましょうか」
「あぁ。場所は?」
「今、此処で。巡回の者に気づかれる可能性が高い方がいいでしょう?」
「分かった。やり方は分かるのか」
「セックスの仕方は知りませんが、人体については知識があります。肛門を使うことになりますが、女性の身体のように肛門は濡れないので、水魔法を使えば、多分なんとかなる筈です」
「ふぅん。俺は何も知らない。任せる」
「えぇ。一度、酒瓶を自分の肛門に入れて取れなくなった老爺を治療したことがあるので、なんとなく、どうすればペニスが肛門に入るかは推測できます」
「その老爺はイカれているのか」
「自慰をしていて取れなくなったらしいですよ」
「ふぅん。おかしな男もいるものだな」
「まぁ、世の中には色んな人がいるのでしょう。では、始めましょうか」
「あぁ」
アレッシオは、するっと着ていた寝間着を脱ぎ捨て、下着も脱ぎ、全裸になった。イザイアも服を脱ぎ始めたので、アレッシオはその場に腰を下ろして、服を脱ぐイザイアをじっと見た。
イザイアの身体は筋肉質で逞しいが、暴行を受けたと思わしき青痣が沢山あった。本当に、他の聖騎士達の憂さ晴らしの玩具にされているのだろう。
アレッシオは、少し考えた後、自分の腰に手を当てて、直腸内に浄化魔法をかけた。何もせずにペニスをアナルの中に挿れたら、間違いなく大惨事になる。ついでに、水魔法で粘度の高い水を掌に生成する。女の愛液はぬるついているらしいと小耳に挟んだことがあるので、サラサラの水よりも、ぬるぬるの水の方がいいのだろう。多分。
アレッシオは、胡座をかいて座っている全裸のイザイアの足を跨ぎ、イザイアの逞しい肩に左手を置いて、右手で自分のアナルに触れた。風呂や排泄の後に拭くくらいしか、自分のアナルに触れたことはない。きゅっとキツく閉じているアナルを少しでも柔らかくするべく、アナルの表面を濡れた指先でくにくにとマッサージしてみる。気持ち悪い訳ではないが、気持ちがいい訳でもない。
アレッシオは、一度大きく深呼吸をすると、思い切って指を一本アナルの中に押し込んだ。痛くはないが、異物感がある。これは本当に気持ちよくなれるのだろうかと疑問に思いながら、アナルを拡げるべく、指をゆっくり抜き差しして、指を回す。
なんとなく馴染んできた気がするので、今度は二本の指を挿れてみる。少し引き攣るような感じはするが、まだ問題ない。指を抜き差ししながら、熱く柔らかい腸壁をやんわりと擦っていると、小さな痼のようなものに指先が触れた。瞬間、生まれて初めて感じる強烈な刺激がアレッシオを襲った。
「う、あっ!?」
「どうした」
「い、いや、なんか、今、すごいのきました」
「すごいの」
「なんかすごいの……うっ、うぁ、ふっ、ふっ、ん~~っ!」
そこを指の腹ですりすりすると、背筋を経験したことがない何かが走り抜ける。はっ、はっ、と浅く速い息を吐きながら、アレッシオは初めての刺激に夢中になった。そういえば、アレッシオは、自慰と呼ばれる行為もしたことがない。自慰すらも神殿では禁じられている。もしかすると、これは『快感』と呼ばれるものなのかもしれない。指でアナルを弄りながら、自分の下腹部を見れば、勃起して、ペニスの先っぽが濡れていた。
アレッシオは、ずるぅっと指を引き抜くと、荒い息を吐きながら、イザイアの股間に手を伸ばした。濡れた手で、萎えているイザイアのペニスを掴み、勃起させようと試みる。自慰は実際にしたことはないが、患者達の下世話な世間話で、チラッと耳にしたことがある。ペニスは手で擦ると勃起するらしい。
実際にやってみると、イザイアのペニスは、次第にむくむくと大きく硬くなっていった。大きさは、アレッシオのペニスと然程変わらない。手を動かしながら、チラッとイザイアの顔を見れば、小さく浅い呼吸をしながら、どこか堪えるような顔をしていた。
アレッシオは、イザイアのペニスが勃起すると、尻の位置を調節して、イザイアの勃起したペニスの先っぽを自分の濡れたアナルに押しつけた。
少しだけ怖い。これから、アレッシオ達は禁忌を犯す。でも、それ以上にワクワクしている。セックスをすれば、アレッシオ達は自由になる。
アレッシオは、見上げてくるイザイアの瞳をじっと見つめながら、意識して大きく息を吐き、ゆっくりと腰を下ろし始めた。メリメリと狭いアナルを抉じ開けるようにして、イザイアの太くて硬いペニスがアナルの中に入ってくる。かなり痛いが、奇妙な興奮の方が上回っている。
ゴリッとイザイアのペニスが、アレッシオの刺激が強いところを刺激してきた。部位的に、恐らく前立腺だろう。前立腺が気持ちいいだなんて初めて知った。
イザイアが低く唸り、ガシッとアレッシオの腰を強く掴んで、そのまま勢いよく押し倒してきた。
「うわぁ!? あぅっ!? あっ! うぐっ、まっ……」
「はっ、はっ、なんだこれ……すげぇっ」
イザイアがアレッシオの腰を両手で掴んだまま、遠慮なしにガンガン激しく腰を振り始めた。アレッシオは、背中が地面の草に擦れる微妙な痛さと、アナルの中を暴れ回るイザイアのペニスがもたらす痛みと、恐らく快感と思われる感覚に、悲鳴じみた声を上げた。痛い。痛い。でも、多分気持ちがいい。
アレッシオは、腰を浮かせた状態で、強く地面の草を踏みしめた。イザイアの勢いは激しくて、両手で地面に生えた短めの草を掴み、地面に触れている足先で踏ん張っていないと、なんだか気がおかしくなりそうだ。
「あっ! あっ! う、あぁっ!」
「あーー、出るっ、出るっ!」
イザイアのペニスが、ずりゅずりゅと激しくアレッシオのアナルに出入りして、強く前立腺を擦りながら、更に太くなった。一際強くアナルの中を突き上げられたかと思えば、イザイアが低く呻いて身体をぶるっと震わせ、熱い息を吐いた。
腹の中で、イザイアのペニスが微かにピクピクと震えている。アレッシオは、はぁー、はぁー、と大きな息を吐きながら、鈍く痛むアナルからイザイアの萎えたペニスが抜け出る感覚に小さく喘いだ。
だらしなく地面に寝転がったままのアレッシオを見下ろして、イザイアが、どこかぼんやりとした顔で笑った。
「まだ、したい」
「……ふ、ははっ! 私の中はそんなによかったですか?」
「あぁ。こんなの初めてだ」
「私もですよ。ねぇ。私も君に挿れてみてもいいですか? 中にね、気持ちいいところがありますよ」
「ふぅん? ……貴方は出していないな。俺だけ気持ちいい思いをするのは不公平だ」
「気持ちよくなれるように頑張ります」
「あぁ」
目が死んでいた筈のイザイアの瞳が、今は熱を孕んで爛々と輝いている。アレッシオの目も、多分同じだろう。セックスってすごい。イザイアと繋がっていると、不思議と『生きている』という感じがする。
アレッシオは、イザイアを促して、こちらに尻を向けて四つん這いになってもらった。イザイアの腰から尻に向けて撫で下ろし、直腸に浄化魔法をかける。水魔法でぬるぬるの水を生成してから、アレッシオは、イザイアのムッキリした筋肉質な肉厚の尻たぶを片手で掴んで、アナル周りの尻肉を広げた。きゅっとキツく閉じているイザイアのアナルに、ぬるつく指で触れる。ぬるぬるとアナルの表面を優しく撫で回すと、イザイアが大きな溜め息を吐いて、腰をくねらせた。
「それ、なんか、ゾクゾクする」
「『気持ちがいい』ってことでしょう」
「多分? 初めての感覚だから、よく分からない」
「そうですね。私もでしたよ。でも、私もさっきは多分気持ちよかったです」
「は、ぁ……」
「指を挿れますね。……多分、このあたり……?」
「うぁっ!?」
「あ、ここですね。前立腺が気持ちがいいだなんて、初めて知りましたよ」
「え、あっ、ちょっ、まっ、うっ、うっ、あぁっ!」
イザイアの腸内の前立腺を指の腹ですりすりすると、イザイアが背をしならせて、腰を震わせた。前立腺をすりすりする度に、きゅっ、きゅっ、とイザイアの括約筋が締まる。イザイアの中は熱くて柔らかい。括約筋のキツい締めつけに、なんだか背筋がゾクゾクしてくる。
アレッシオは、指が二本入って、スムーズに動かせるまで、イザイアのアナルをできるだけ優しく弄った。
ずるぅっとイザイアのアナルから指を引き抜き、萎えていない自分のペニスにぬるぬるの水を馴染ませるように手で擦る。手で擦るだけで、何か出てしまいそうな感覚がする。多分、尿ではなく精液なのだろう。自分のペニスを濡れた手で擦るだけで、変な声が出そうになる程、背筋や腰がぞわぞわする。多分、これも『気持ちがいい』。
アレッシオは、肩で息をしているイザイアのムッキリした尻肉を両手で掴み、濡れて微かにひくひくしているイザイアのアナルに、自分の濡れたペニスの先っぽを押しつけた。イザイアのアナルは熱く、ゆっくりと腰を動かして狭いアナルの中にペニスを押し込めば、キツい締めつけのところを通り過ぎ、熱くて柔らかいものにペニスが包まれていく感覚がする。アレッシオは、思わず溜め息を吐いた。これが、『気持ちいい』。アナルでイザイアのペニスを受け入れた時とは違う快感が、なんとも心地いい。
アレッシオは、我慢できずにすぐに本能が赴くままに腰を激しく振り始めた。
「おっ! あっ! あぁっ! うっ、あぁっ!」
「あぁ……これは、すごい……多分、このあたり……」
「あぁっ!? そ、こはっ! んっ! あっ! はっ、うぁぁっ!」
イザイアの腹側にある前立腺を意識してペニスで擦るように腰を振れば、イザイアが背をしならせて、吠えるような声を上げた。パンパンパンパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く。どんどん何かが飛び出しそうな感覚が強まっていく。アレッシオは、その感覚に流されるまま、パァンと一際強く下腹部をイザイアの尻に打ちつけた。排尿とは違う、初めて感じる射精の快感に、アレッシオは溜め息のような喘ぎ声をもらした。尿道を勢いよく精液が飛び出していく。腰をゆるく振って、ぬこぬこと精液を全部出し切ると、アレッシオはゆっくりと萎えたペニスを引き抜いた。
荒い息を吐きながら、イザイアの汗でしっとりしているムッキリした尻肉を両手で掴んで広げれば、閉じ切らないアナルから、こぽぉっと白い精液が零れ落ちた。夢精は10代の頃にしたことがある。その時に見たものと同じものだから、精液で間違いない。
ひくひくと収縮しながらアレッシオの精液をアナルから垂らしているイザイアに、不思議な興奮を覚える。
イザイアが、ゆっくりと身体を起こして、身体ごと振り返った。
「アレッシオ。まだ、足りない」
「ふふっ。私もです。ねぇ、イザイア」
「なんだ」
「もっともっと『自由』になりましょう?」
「あぁ」
アレッシオが笑うと、イザイアも無邪気に笑った。イザイアは笑うと少し幼く見える。死んだ魚のような目は、今はしていない。まるで未来を見据えた子供のように、キラキラと輝いている。
アレッシオは、朝日が昇る頃まで、夢中でイザイアと絡み合い、初めての『自由』とセックスを楽しんだ。
ーーーーーー
アレッシオは、厠の個室で、イザイアのペニスを受け入れていた。イザイアとセックスをするのは、これで数回目だ。特にコソコソしている訳でもないが、未だに破門されていない。
イザイアとのセックスに慣れてきて、アナルにペニスを挿れられただけで気持ちよくなれるようになってきた。アレッシオは、立ったままイザイアのペニスを受け入れた状態で、小さく喘ぎながら、厠の壁に爪を立てた。
イザイアのペニスがゴリッと強くアレッシオの前立腺を擦った瞬間、身体の中を暴れ回っていた快感が弾け飛んで、アレッシオは間延びした声を上げながら、便器に向かって精液を飛ばした。
肩で息をするアレッシオのうなじを舐め回しながら、イザイアも低く唸って、ぐりぐりと下腹部をアレッシオの尻に押しつけてきた。腹の中で、イザイアのペニスが微かにピクピク震えながら、精液を吐き出している。
はぁーっと、二人同時に大きな溜め息を吐くと、イザイアが甘えるかのようにアレッシオの肩に頬をつけた。
「アレッシオ。交代」
「いいですよ。抜いてください」
「ん」
ずるぅとイザイアのペニスがアナルから抜け出る感覚すら、気持ちがいい。アレッシオは、イザイアと狭い個室の中で位置を交代して、厠の壁に手をついて尻を突き出したイザイアの直腸に浄化魔法をかけた。
水魔法でぬるぬるの水を出して、指でイザイアのアナルを解し、自然と勃起したペニスを突っ込んだ瞬間、どんどんどんどんっと厠の個室のドアが強く叩かれた。
「貴様ら! そこで何をしているっ!!」
「あはっ。やっと見つかりましたね」
「ちっ。終わってからがよかった」
「ふふっ。破門されたら、いくらでもできますよ」
アレッシオは、ゆっくりとイザイアの熱いアナルからペニスを引き抜いた。ちょっと不満気なイザイアの唇に、触れるだけのキスをする。キスという行為は、患者夫婦がしていたので知っている。イザイアにキスをするのは初めてだ。イザイアが、きょとんとして、不思議そうに首を傾げた。アレッシオは、ふふっと笑って、もう一度、イザイアに触れるだけのキスをした。唇を触れ合わせたまま、囁く。
「楽しい拷問が待ってますよ。それに耐えたら、いよいよ破門です」
「アレッシオ。耐えろよ」
「えぇ。勿論。イザイア。貴方も」
「ん」
厠の個室を出た途端、アレッシオとイザイアは、聖騎士の男達に拘束された。すぐに尋問室と言う名の拷問部屋へと連行される。
アレッシオは耐えた。血が止まる暇がない程鞭を打たれても、爪を全て剥がされても、破門の焼印を額につけられても、あえて、ずっと微笑んでいた。
恐らく、10日程経った頃。アレッシオは、聖騎士達に引き摺られるようにして、ボロ布と化した血まみれの服のまま、神殿の外に放り出された。全身が酷く痛み、今にも気を失ってしまいそうだが、アレッシオは高らかに笑った。
「あはっ! あははっ! 私は! 『自由』だ!」
アレッシオが一人笑っていると、神殿から、今度はボロボロのイザイアが放り出された。イザイアの凛々しく整っていた顔は、見る影もない程、腫れ上がっている。きっと、アレッシオよりもキツい拷問を受けたのだろう。額の焼印からは、まだ血が垂れている。
アレッシオは、ふらふらと地面に倒れているイザイアの元に移動した。倒れ込むようにイザイアの頭の前に座り込み、のろのろと身体を起こしたイザイアの、爪がない手を握る。
「イザイア。これで私達は『自由』です」
「あぁ。アレッシオ。死ぬその時まで、『生きたい』」
「はい。生きますよ。イザイア。とりあえず、此処を離れましょう。動けますか?」
「気合で動く」
「あはっ! 私も気合でなんとかします。イザイア」
「なんだ」
「この先に森があるでしょう?」
「あぁ」
「とりあえず、セックスしませんか?」
「ふはっ! 最高。ナニが切り落とされなくてよかった」
「ふふっ。それは確かに」
アレッシオは、イザイアと目を合わせて、笑った。身体はボロボロに傷ついているが、イザイアの目は、確かに生きている。きっと、アレッシオの目も『生きている』。
アレッシオはイザイアと手を繋いで、森を目指して、ゆっくりと歩き始めた。靴も履いていない。素足に地面に小さな石が刺さる感じがするが、この程度の痛み、なんてことはない。
アレッシオとイザイアは、『自由』を手に入れた。見たいものを見て、食べたいものを食べて、セックスをして、自分の思うがままに生きて死ねる。もう、篭の鳥なんかじゃない。
アレッシオは、森に着くと、イザイアの逞しい太い首に両腕を絡めて、イザイアの唇に触れるだけのキスをした。
「一緒に生きましょう。死ぬその瞬間まで」
「あぁ。アレッシオ。俺が死ぬ時は、貴方も連れて行く」
「あはっ! それはいいですね。是非とも、そうしてください。一緒に生きて、一緒に死にましょう」
イザイアが、笑うアレッシオの唇に触れるだけのキスをした。
それから二人は、森の中で思う存分傷ついた身体でセックスをした。
その翌日、通りすがりの商人に拾われ、商人に雇われることになった。商人は、真っ当な商人ではなく、違法薬物を取り扱う裏稼業の商人だった。アレッシオ達は、傷が完全に癒えて、それなりに金が貯まるまでは、商人の元で働き、その後は、二人で旅に出た。行く当てなんてない、気ままな旅だ。二人で世界を見に行く。
アレッシオは、イザイアと手を繋いだまま、空を見上げた。雲一つない青空を、一羽の鳥が優雅に飛んでいる。
アレッシオは、ふふっと笑って、すぐ隣のイザイアを見上げた。イザイアがこちらを見下ろして、ふっと笑った。
生きているのに死んでいた男達は、もういない。此処にいるのは、『生きている』アレッシオとイザイアだけだ。
ぽつぽつとお喋りをしながら街道を歩くアレッシオ達の背を押すように、強く風が吹いた。
(おしまい)
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