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第二部
冬の最中
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ケディが男の体に戻って一月近く経った。
まだまだ冬が終わる気配はなく、毎日の様に雪が降っている。
たまに雪が止んでいる日に雪降ろしや雪かきをしたり、買い出しに街に出る以外、ずっと家の中で過ごしていた。
歩き回るのが好きなアーチャはいい加減、退屈と運動不足で鬱屈としていた。
アーチャは暖炉で暖まっている部屋の中で憂鬱な溜め息を吐いた。
今日は月に一度の変態との面会日である。
今日はケディも休みで家にいるので、変なことにはならないだろうが、憂鬱である。
朝から火のついた煙草を咥えながら、暖炉の前を陣取って紫煙と共に何度も溜め息を吐き出している。
憂鬱オーラを撒き散らすアーチャを余所に、ケディは洗濯物を干していた。
「変態が来てる間、砦に行っとくか?俺」
「いや、いてよ。変態が暴走したらどうする」
「変態の痴態は見たくないんだが」
「やらねぇよ」
「そうかよ」
洗濯物を干し終わったケディが風呂場に籠を置きに行ったタイミングで家の玄関からノックする音が聞こえた。
アーチャは溜め息を吐きながら、まだ半ばの煙草を暖炉に放り込んでのろのろと立ち上がり、玄関のドアを開けた。
目の前にはコートの前を自分ではだけた女がハァハァしながら立っていた。
コートの下にはブーツしか身につけていない。
アーチャは無言でドアを閉めた。
「ん?きたか?」
ケディが風呂場から戻ってきた。
ケディの方を向き、真顔で口を開いた。
「変態だ」
「変態だろうな」
何を言ってる?と訝しげな顔をするケディの太い腕を掴んだ。
「違う。変態だ。女の変態」
「はぁ?」
「コートの下裸の女の変態がいる」
「あ?」
ケディが右眉を上げて、アーチャと入れ替わるように玄関のドアの前に立ち、ドアを開けた。
ケディの後ろから外を覗くと、相も変わらずハァハァ言ってる裸コートの女がいた。
「……どちら様で?」
ケディが結構引いてる声で女に尋ねた。
すると、女が少し不服そうな顔をして口を開いた。
「何故副団長がいらっしゃるので?今日は折角のアーチャとの逢瀬の日なのに」
「……もしかして、てめぇ変態か」
「貴方に変態と言われる筋合いはありません。シャリー・フォレットです」
女は変態ことシャリー・フォレットだった。
ケディの後ろから顔を出しているアーチャを見ると、嬉しそうに目を輝かせた。
アーチャは頭が痛くなるのを感じた。
ーーーーーー
とりあえず何故か女になっている変態を家の中に入れて、お茶を出した。
見てる方が寒いので、コートの前はしっかり閉じさせた。
アーチャは優雅にお茶を飲む変態をじろっと睨んだ。
「なんで女になってんの」
「アーチャは女が好きなのだろう?」
「別に好きじゃねぇよ、どこの情報だごらぁ」
「副団長にかけた魔術を解除する時、副団長からアーチャの匂いがした」
変態が意味ありげにニッコリ微笑んだ。
元の顔立ちが整っているから、誰がどう見ても美女である。
なんとなくイラッとする。
「したのだろう?女の副団長と」
「匂いって、心底きめぇんだけど」
「アーチャが普段つれないのは男だからだったんだな」
「違うわ呆け」
「この通りアーチャ好みの姿になってきた。ご褒美をくれてもいいだろう?道具もちゃんと用意してある」
「しないからな?しないからな?つーか、女が好きなわけじゃねぇよ」
「あ?女のが好きだろ?アンタ」
それまで黙ってお茶を啜っていたケディが口を出した。じろっとそちらを睨むが、ニヤニヤと愉快そうに笑っていて、堪える気配がまるでない。
「女が好きなわけじゃないし、アンタとはしないからな」
「何故だ」
「むしろ何故すると思った」
「副団長とはして、何故私とはしてくれないんだ」
変態が不満そうに唇を尖らせた。
アーチャは痛む米神を指で揉んだ。眉間には深い皺ができている。
「だぁかぁらぁ……私はアンタとどうこうなる気もご主人様になる気もないんだって。……あと断じて女が好きな訳ではないからな」
「私の乳房は副団長よりささやかだが、それなりにあるぞ?」
「……そういう問題ではないし」
「ムダ毛の処理もしたし」
そういって再びコートの前を開けようとする変態の手を思わず掴んで止めた。
「やめろ変態」
アーチャの手が変態の手に触れた瞬間、花が咲いたような輝く笑顔になる変態。
引いた。
アーチャは素早く変態の手から手を離すと、なんとなく隣に座ってお茶を飲むケディの服に変態に触れた手を擦り付けた。
「おい」
「……いやだってなんか」
苛めをする子供の様な言い分だが、変態菌がついた気がして不快極まりない。
嫌そうな顔をして自分に触れた手を見るアーチャを、変態はハァハァしながら熱く見つめていた。今にも涎を垂らしそうな雰囲気である。
ハァハァする女になった変態。
心底嫌そうな顔をしているアーチャ。
ニヤニヤと面白そうに傍観しているケディ。
中々にカオスである。
ーーーーーー
この日もいつもと勝手が違ったが、なんとか何事もなく変態を帰らせることに成功した。
アーチャは心底疲れきって、テーブルにぐったりと突っ伏していた。
台所の方からはケディが夕食を作る物音がしている。
普段は夕食はアーチャが作るが、今日は精神的に疲れきって、とてもじゃないが気力がなかった。
テーブルに頬をつけて、ぼーっと窓の方を見ていると両手に皿を持ったケディが台所からやって来た。
「おら、飯だ。起きろ」
「へーい」
だらだらとした動作で上体を起こしたアーチャをケディは呆れた目で見た。テーブルの上に置かれた皿からはいい匂いがする。
マッシュポテトと鶏の香草焼きのようだ。
ケディは基本的に朝食しか作らないのに、最近地味に料理の腕を上げてきている気がする。食欲なんてなかったのに、目の前の湯気をたてる美味しそうな料理に腹がなる。
ケディからグラッパの注がれたコップを受け取り、両手を合わせた。
「いただきます」
「おう」
結構単純なもので、美味しい食事を食べ終え、酒を飲み、風呂から上がる頃には、アーチャの機嫌はすっかりいつも通りに戻っていた。
まだまだ冬が終わる気配はなく、毎日の様に雪が降っている。
たまに雪が止んでいる日に雪降ろしや雪かきをしたり、買い出しに街に出る以外、ずっと家の中で過ごしていた。
歩き回るのが好きなアーチャはいい加減、退屈と運動不足で鬱屈としていた。
アーチャは暖炉で暖まっている部屋の中で憂鬱な溜め息を吐いた。
今日は月に一度の変態との面会日である。
今日はケディも休みで家にいるので、変なことにはならないだろうが、憂鬱である。
朝から火のついた煙草を咥えながら、暖炉の前を陣取って紫煙と共に何度も溜め息を吐き出している。
憂鬱オーラを撒き散らすアーチャを余所に、ケディは洗濯物を干していた。
「変態が来てる間、砦に行っとくか?俺」
「いや、いてよ。変態が暴走したらどうする」
「変態の痴態は見たくないんだが」
「やらねぇよ」
「そうかよ」
洗濯物を干し終わったケディが風呂場に籠を置きに行ったタイミングで家の玄関からノックする音が聞こえた。
アーチャは溜め息を吐きながら、まだ半ばの煙草を暖炉に放り込んでのろのろと立ち上がり、玄関のドアを開けた。
目の前にはコートの前を自分ではだけた女がハァハァしながら立っていた。
コートの下にはブーツしか身につけていない。
アーチャは無言でドアを閉めた。
「ん?きたか?」
ケディが風呂場から戻ってきた。
ケディの方を向き、真顔で口を開いた。
「変態だ」
「変態だろうな」
何を言ってる?と訝しげな顔をするケディの太い腕を掴んだ。
「違う。変態だ。女の変態」
「はぁ?」
「コートの下裸の女の変態がいる」
「あ?」
ケディが右眉を上げて、アーチャと入れ替わるように玄関のドアの前に立ち、ドアを開けた。
ケディの後ろから外を覗くと、相も変わらずハァハァ言ってる裸コートの女がいた。
「……どちら様で?」
ケディが結構引いてる声で女に尋ねた。
すると、女が少し不服そうな顔をして口を開いた。
「何故副団長がいらっしゃるので?今日は折角のアーチャとの逢瀬の日なのに」
「……もしかして、てめぇ変態か」
「貴方に変態と言われる筋合いはありません。シャリー・フォレットです」
女は変態ことシャリー・フォレットだった。
ケディの後ろから顔を出しているアーチャを見ると、嬉しそうに目を輝かせた。
アーチャは頭が痛くなるのを感じた。
ーーーーーー
とりあえず何故か女になっている変態を家の中に入れて、お茶を出した。
見てる方が寒いので、コートの前はしっかり閉じさせた。
アーチャは優雅にお茶を飲む変態をじろっと睨んだ。
「なんで女になってんの」
「アーチャは女が好きなのだろう?」
「別に好きじゃねぇよ、どこの情報だごらぁ」
「副団長にかけた魔術を解除する時、副団長からアーチャの匂いがした」
変態が意味ありげにニッコリ微笑んだ。
元の顔立ちが整っているから、誰がどう見ても美女である。
なんとなくイラッとする。
「したのだろう?女の副団長と」
「匂いって、心底きめぇんだけど」
「アーチャが普段つれないのは男だからだったんだな」
「違うわ呆け」
「この通りアーチャ好みの姿になってきた。ご褒美をくれてもいいだろう?道具もちゃんと用意してある」
「しないからな?しないからな?つーか、女が好きなわけじゃねぇよ」
「あ?女のが好きだろ?アンタ」
それまで黙ってお茶を啜っていたケディが口を出した。じろっとそちらを睨むが、ニヤニヤと愉快そうに笑っていて、堪える気配がまるでない。
「女が好きなわけじゃないし、アンタとはしないからな」
「何故だ」
「むしろ何故すると思った」
「副団長とはして、何故私とはしてくれないんだ」
変態が不満そうに唇を尖らせた。
アーチャは痛む米神を指で揉んだ。眉間には深い皺ができている。
「だぁかぁらぁ……私はアンタとどうこうなる気もご主人様になる気もないんだって。……あと断じて女が好きな訳ではないからな」
「私の乳房は副団長よりささやかだが、それなりにあるぞ?」
「……そういう問題ではないし」
「ムダ毛の処理もしたし」
そういって再びコートの前を開けようとする変態の手を思わず掴んで止めた。
「やめろ変態」
アーチャの手が変態の手に触れた瞬間、花が咲いたような輝く笑顔になる変態。
引いた。
アーチャは素早く変態の手から手を離すと、なんとなく隣に座ってお茶を飲むケディの服に変態に触れた手を擦り付けた。
「おい」
「……いやだってなんか」
苛めをする子供の様な言い分だが、変態菌がついた気がして不快極まりない。
嫌そうな顔をして自分に触れた手を見るアーチャを、変態はハァハァしながら熱く見つめていた。今にも涎を垂らしそうな雰囲気である。
ハァハァする女になった変態。
心底嫌そうな顔をしているアーチャ。
ニヤニヤと面白そうに傍観しているケディ。
中々にカオスである。
ーーーーーー
この日もいつもと勝手が違ったが、なんとか何事もなく変態を帰らせることに成功した。
アーチャは心底疲れきって、テーブルにぐったりと突っ伏していた。
台所の方からはケディが夕食を作る物音がしている。
普段は夕食はアーチャが作るが、今日は精神的に疲れきって、とてもじゃないが気力がなかった。
テーブルに頬をつけて、ぼーっと窓の方を見ていると両手に皿を持ったケディが台所からやって来た。
「おら、飯だ。起きろ」
「へーい」
だらだらとした動作で上体を起こしたアーチャをケディは呆れた目で見た。テーブルの上に置かれた皿からはいい匂いがする。
マッシュポテトと鶏の香草焼きのようだ。
ケディは基本的に朝食しか作らないのに、最近地味に料理の腕を上げてきている気がする。食欲なんてなかったのに、目の前の湯気をたてる美味しそうな料理に腹がなる。
ケディからグラッパの注がれたコップを受け取り、両手を合わせた。
「いただきます」
「おう」
結構単純なもので、美味しい食事を食べ終え、酒を飲み、風呂から上がる頃には、アーチャの機嫌はすっかりいつも通りに戻っていた。
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