夜の散歩

丸井まー(旧:まー)

文字の大きさ
上 下
35 / 59
第一部

しおりを挟む
拘束されたシャリー・フォレットは、目の前の厳しい顔をした騎士団の面々に対し、飄々とした様子を崩さなかった。時折、アーチャの方へチラチラ視線をやる程度には余裕があった。


「シャリー・フォレット。誰の命令だ」

「そんなもの、貴方方とて察してらっしゃるでしょう?殿下ですよ、王太子殿下」

「命令の内容は?」

「ヒュルト・マクゴナル・トゥーラ騎士団総長、あ、今はディリア騎士団長でしたか。貴方の殺害です」

「……あの場で俺を殺すことは簡単だったはずだ。何故、殺さなかった」

「殺してはつまらないと思いまして。ついでに言うと、私は宮廷魔術師の端くれですからね。流石に貴方のご友人の魔術師長殿を敵には回したくない」

「だが、殿下の命を受けたのだろう?」

「そりゃ、近々王となられる方から命令されたら受けざるを得ないでしょう?」

「……俺をこのような姿にしたのは?」

「私はスカートまでは穿かせてませんよ?」

「……そこに触れるな。何故、子供の姿にしたのかと聞いている」

「新しく考えた魔術を試したかっただけです」


ふざけているのか、本気なのか、その飄々とした佇まいからは判断が難しかった。


「俺の殺害の命令は遂行できていないだろう?殿下のその後の命はどうなっている」

「同行した者が私以外皆死にましたからねぇ。不本意ながら、その旨を殿下にお伝えしましたよ。しなかったら私まで死んだものとして扱われるでしょうから。それは些か具合が悪い」

「殿下はなんと?」

「苛立っておいででしたよ。ただ、一先ず人前に出られない姿にしたとは報告しましたから、少しは溜飲も下がったご様子ではありましたね」

「……そうか」


シャリー・フォレットの証言により、血の半分繋がった弟であり、次期国王である男から命が狙われていることが確定した。
ヒューは幼い顔を苦々しくしかめた。


「国王陛下のご様子は何か聞いてあるか?」

「良くないということは耳にしてますね。近々王太子殿下の即位式が行われるそうで」

「そうか」

「実は貴方の殺害命令は継続中なのです」


室内が一気に殺気だった。


「しかし、ある条件を呑んでくださるなら、貴方方に危害を加えることはしないと約束しましょう。勿論、トゥーラ騎士団長にかけた魔術も解いて差し上げます」

「条件とはなんだ」

「一つはこちらの領地で私を保護してくださること。私も裏切り者や反逆者として殺されたくはありませんからね。もう一つは……」


そこで、シャリー・フォレットはアーチャの方を見た。


「アーチャを頂きます」

「駄目だっ!!」

「ざけんなっ!!」


ヒューと同時に叫び声を挙げた。
人前でなに言い出すんだ、この変態!


「一つ目の条件は兎も角、アーチャを貴様のような奴にやれるかっ!!」

「ふんっ。アーチャは私の、私だけのご主人様です。本来なら他人に許可をとる必要などない」

「ご、ご主人様だとっ!?」

「アンタまだそんなアホなこと言ってんの!?」

「私をこんな体にはしたのはアーチャだろう?責任はとってもらわねば困る」


そこで、全員がアーチャの方をみた。
アーチャの背にたらりと汗が流れた。
ヒューが恐る恐るアーチャに問いかけた。


「アーチャ。あの、どういうことですか……?」

「アーチャは私を新しい世界へと連れていってくれた素晴らしい私のご主人様だ。僕として、側に侍ることは当然のことだろう?」


変態が嬉々として語りだした。

お子様に聞かせられないような、赤裸々で破廉恥な内容をだらだらと垂れ流し始めたシャリー・フォレットを横目に、騎士団の者達はアーチャに何とも言えない視線を向けた。

アーチャは急速に頭が痛くなってきた。

(とりあえず誰かこの変態を黙らせてくれっ!!)



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪妃の愛娘

りーさん
恋愛
 私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。  その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。  そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!  いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!  こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。  あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

田舎者の俺が貴族になるまで

satomi
ファンタジー
見た目は麗しの貴公子の公爵令息だが長期間田舎暮らしをしていたため、強い田舎訛りと悪い姿勢が板についてしまった。 このままでは王都で社交などとんでもない!公爵家の長男がこのままでは! ということで、彼は努力をするのです。 わりと都合主義です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩
ファンタジー
「ほっといて下さい」のもうひとつのお話です。 本編とは関係ありません。時系列も適当で色々と矛盾がありますが、軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ✱【注意】話によってはネタバレになりますので【ほっといて下さい】をお読みになってからの方がいいかと思います。

書物革命

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)
ファンタジー
『私は人間が、お前が嫌い。大嫌い。』 壺中の天(こちゅうのてん)こと人間界に居る志郎 豊(しろう ゆたか)は、路地で焼かれていた本を消火したおかげで、異性界へと来てしまった。 そしてその才を見込まれて焚書士(ふんしょし)として任命されてしまう。 "焚書"とは機密データや市民にとっては不利益な本を燃やし、焼却すること。 焼却と消火…漢字や意味は違えど豊はその役目を追う羽目になったのだ。 元の世界に戻るには焚書士の最大の敵、枢要の罪(すうようのざい)と呼ばれる書物と戦い、焼却しないといけない。 そして彼の相棒(パートナー)として豊に付いたのが、傷だらけの少女、反魂(はんごん)の書を司るリィナであった。 仲良くしようとする豊ではあるが彼女は言い放つ。 『私はお前が…人間が嫌い。だってお前も、私を焼くんだろ?焼いてもがく私を見て、笑うんだ。』 彼女の衝撃的な言葉に豊は言葉が出なかった。 たとえ人間の姿としても書物を"人間"として扱えば良いのか? 日々苦悶をしながらも豊は焚書士の道を行く。

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

処理中です...