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第一部
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全員があらかた食べ終わったのを確認すると、カップを回収し台所に向かう。
ケトルでお湯を沸かしながらカップを洗い、お茶の用意をする。
買ってきた荷物が入った袋をあさり、中から飾り気のないお盆を取り出して全員分のお茶を置き持ちあげると、一つ溜息を吐いて部屋へと戻る。
(ちょっとした正念場だね、こりゃ)
気合を入れるように、背筋を伸ばして彼らの元に向かった。
‐‐‐‐‐‐
部屋に戻りお茶の入ったカップを全員に配る。
配り終えて、もはや定位置と化した玄関に向かおうとすると、一脚しかない椅子を熊二号に無言で勧められた。
ベッドの脇に置かれた椅子に座ると、デカイ男たちに囲まれる形になるため正直座りたくない。友好関係にないむさ苦しい野郎どもに囲まれるなんて、冗談抜きで不快極まりないが、熊二号からは無言の威圧が、子供からは懇願にも似たプレッシャーが押し寄せるため嫌々な空気を醸し出しながら大人しく椅子に座った。
椅子に座ったことで子供と目線を合わせることが容易になった。
深みのある緑色のその眼は今は何故か不安に揺れていた。そのことをかすかに訝しく思う。
(この形でも一応いい歳した男だよねぇ……気が弱いのか?騎士なのに……)
子供が目を閉じて深く息を吸って吐く。
再び目を開いたときには先ほどまでの揺れた瞳ではなく、どこまでも透明な真剣な眼差しに変わっていた。
「まずは貴女に心よりの感謝と謝罪を致します。貴女が協力してくださらなかったら、今頃私は無事でいられたか分からない。そして……」
「お久しぶりでございます。ご無事でありましたことをお喜び申し上げます。……アチュミ・タニジマ様」
「!?」
無表情に近かった顔が、スッと完全に無表情になったことが自分でも分かった。
子供は怖い位真摯な瞳で此方を見つめており、凍りついたようにその瞳から目が離せない。
静かな室内に、自分の急速に速くなった心音が響くんじゃないか、というほど、忙しなく大きく心臓が鼓動を刻む。
何故、この子供が自分の名前を知っている?
寝不足で鈍りがちだった脳みそが、忙しない心音と共に急速に回転し始める。
この世界に来て城を放り出された後は、『アーチャ・タニージャ』としか名乗って来なかった。
些か舌っ足らずな発音とはいえ、篤美の本名を知っている者は片手ほどの人数しかいないはずだ。
(……こいつ……)
絞り出すように出した問いかける声は、情けないほどに掠れていた。
「……アンタ……あの場にいた人間かっ!」
「……名乗り遅れまして申し訳ありません。私はヒュルト・マクゴナル・トゥーラ。あの時は騎士団総長という立場で召喚に立ち会っておりました。……もう一人の異世界よりの花嫁様……」
(……やっぱりっ!!)
異世界よりの花嫁、という言葉が彼の口から零れ落ちた瞬間、室内に驚愕の声があがった。
どういうことだっ!!
そんなはずがないでしょう!!
何を言ってるんですか!?花嫁様は既に婚姻を済まされているじゃないですか!!
静観の体で話を聞いていた騎士達の驚愕し、混乱する声で、室内は一気に騒がしくなるが、篤美の耳にはそれらが一つとして言葉として入っていなかった。
目の前にあるやや強張った顔を見つめる。確かにあの場に剣を下げた赤毛の男がいたことが、記憶に甦る。
(アレは……こいつだっ!)
「……確かに……いたわね、ヒュルト・マクゴナル・トゥーラ。また会う羽目になるとは思わなかったわ」
「……あの時は……申し訳ありませんでした。あれからお探ししておりましたが、中々見つけられず、只ならぬ苦労をされたことでしょう。心より……お詫び申し上げます。」
姿勢を変え、土下座のような形で頭を下げる姿が目に映る。ベッドのシーツに額を擦りつけ、かすかに震える掠れた声で謝罪を口にした彼の姿は、まるで断罪を待つかのようであった。
耳鳴りのように響き程の心音が大きくなる。
それにつられるように、呼吸が速くなる。頭が弾けてしまいそうなほど痛む。
まるで走馬灯のように、この世界に来てからの記憶が頭の中を濁流のように流れる。
(何故……こいつが謝る?……何故今になって、しかも……)
知らぬうちに握りしめていた拳に更に力がこもる。短く切りそろえている爪が肉に食い込むのが分かった。
今、自分がどんな顔をしているのか分からない。
ただ、自分の意思と関係なく、引き攣れたように顔の筋肉が動くのが分かった。
掠れ切った喉を無理やり動かす。
「……探していた……だと?」
自分でもこんな声が出るのかと、頭の片隅で場違いに思うほど、その声は低く掠れ憎しみに塗れていた。
溜まり溜まったこの世界に来てからの恨み辛みが、体中を荒れ狂い毛穴からにじみ出るかのように感じた。
土下座している小さな子供の身体が、ピクッと小さく震える。
「……貴様らが無理やり私をこの世界に拉致ってきた挙句、右も左も分からん私を文字通り放り出してっ……あの場で助けてもくれなかったくせにっ!!それを今更のこのこ現われて、探していたと抜かすかっ!!」
「……申し訳ありませんっ」
「今、謝るくらいなら何故あの時助けてくれなかった!?アンタらの勝手な都合で召喚されて!気に食わないからって引きずられて放り投げられてっ!!」
目の前が真っ赤に染まる。情けないほど震えながらも、興奮に伴い徐々に声が大きくなる。目が異様に熱い。握りしめた震える拳にボタボタと涙が落ちる。
事情が把握できずとも、篤美の剣幕に押されたのか、少し前のヒュルト・マクゴナル・トゥーラの発言にざわついていた騎士達は息を潜めるように静かに此方を見ていた。
「……っ謝るくらいなら、還してよ!!……ねぇ、アンタらにこの世界での国や生活があるように…私にもあるんだよ……自分の国も!仕事も!大事な家族も!友達も!!」
興奮に身を任せ、立ち上がる。ガタンっと椅子が倒れる音がする。
全身を震わせ叫ぶ。
「全部っ!全部っ!!私の大事なものをお前らが奪ったっ!!大事なっ……私の居場所をっ……!!」
「……っ今更謝ってすむとでも思ってんのっ!?ふざけんじゃねぇよ!!てめぇらは何様だ!!違う世界の人間の人生まで好き勝手しやがってっ!神にでもなったつもりかっ!!」
「ふざけんなっ!!還せよ!還してよっ!!こんな世界、私の世界じゃない。私の居場所じゃないっ!」
「私のっ……私のっ……私の全てを返してよぉ……」
膝の力が抜け、ベッドのシーツにしがみつくように膝まづく。
「……あぁ…あ、あ……ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…」
自分の中から生じた爆発的な衝動に身体はコントロールを失い、ただただ気が違えたように、ナニカを吐き出すように衝動のままに哭く。
「……ご、めん、なさい」
泣きそうな小さい声が聞こえた。
‐‐‐‐‐‐‐
全身を震わせながら、悲しみに塗れた獣のように慟哭する彼女。
その姿は痛々しい。
もはや言葉として意味をなさぬ声を叫んでいる彼女の頭に魔力をこめた指先を軽く触れさせる。
その途端に、哭く声がピタリととまり、糸の切れた操り人形のように身体が力なく崩れ落ちた。シーツにすがるように背中をまるめてうつ伏せている彼女の腕をとる。
身体が幼くなったことで腕力もそれ相当になったようで、彼女が未だ指先が白くなるほどシーツを握りしめていることもあり、気を失っている彼女をベッドに寝かせようと引っ張るもなかなか動かない。
彼女の気が違えたかのような様子に呆然としていたケディが、ハッと一番に正気づいて彼女を抱きあげてくれる。
すかさず彼女に場所をゆずり、シーツをまくる。心得たようにケディが彼女を壊れ物を扱うようにそっと寝かせ、まくったシーツを丁寧に彼女に被せる。
あれ以上叫んでいたら、おそらく間違いなく喉を潰していただろう。熟練の修羅場慣れした騎士であるケディすら呑まれた、怒りと憎しみと悲しみに満ち溢れた慟哭。
泣き声なんて生易しいものじゃない。あれは慟哭としかいいようがない。
簡単な魔術で眠らせたが、彼女の眦からは未だに大粒の涙が後から後から零れ出でて止まる様子もない。
眠っていることを確かめているのか、涙を拭ってあげているのか分からないが、ケディが傍から見ても優しくそっと彼女の頬に触れ、すぐに手を離した。
昔から変わらない、厳めしい顔が、今は困惑にかすかに歪んでいた。
「……眠らせたのか?」
「……うん。少し休ませないと。あのままじゃ間違いなく喉がダメになっちゃう」
「なぁ……ヒュー」
「……ちゃんと説明するよ。俺への襲撃のことも……彼女のことも」
‐‐‐‐‐‐‐
狂ったように泣き叫んでいると、ナニカが自分の中に入ってきた。一瞬で全身の力が抜ける。
叫び枯れかけていた喉はその機能を完全に止め、全身に力が入らないため閉じてしまった瞼を開けることもダランと脱力した手足を動かすこともできない。
ただ意識だけはハッキリしていた。そして、つい先程まで気が違えそうなほど荒れ狂っていた頭も心も一気に冷め、落ち着いていた。
まんま金縛りの状態で、ゴツイ腕に抱き上げられベッドに寝かせられる。
頬に優しく触れる温もりを感じたが、正直何勝手に触ってやがんだ、と思う。許可なく女に触れるのは失礼だ。例えそれが40代のオバサンであろうとも。
涙腺が決壊したかのような勢いでダバダバ涙が頬を伝う感触がする。
指一本動かせず、それを拭う事もできない。かなり気になるが、大人しく動くようになるまで待つしかないのだろうか。
ほんの数分前までの激情はいっそ清々しいほど、なくなっていた。
「……ちゃんと説明するよ。俺への襲撃のことも……彼女のことも」
ヒュルト・マクゴナル・トゥーラの子供らしい高めの声が聞こえた。
さて、彼はありのままを話すのだろうか?国家権力の狗とも言える騎士団の人間に。
「これから話すことは口外無用だからね。俺も厳重に口止めされているから、どっかからか噂話とかでちゃったらかなりヤバいんだよね。」
「前置きはいいから、とっとと説明しろ、ヒュー坊」
「その呼び方やめてよ、ケディ。確かに今はこんな姿だけど、子供じゃないんだから」
「ヒュー、話をすすめて」
「あ、ごめん。えっと……初めから話そうか」
複数の話声が聞こえ、仮にも騎士団長とその下の騎士とは思えないフランクさで会話がなされているのに、内心首を傾げる。(生身の肉体はまだまだ動きそうな気配がない)
「本来の花嫁召喚の儀は王太子殿下の18歳の誕生日にされる予定だったんだ。陛下に妃を娶る年頃になったと判断された年の誕生日の日に誕生祝いと共に召喚された花嫁との婚約を行うのが慣習だからね。……否、実際誕生日の日にもされたんだけど、そっちは知ってるでしょ?殿下の誕生日に召喚された花嫁が現王太子妃殿下。でも実はその一月前にも花嫁召喚を行っていた。その時に召喚されたのが彼女、アチュミ・タニジマ様なんだよ」
「殿下がどうしても誕生日の婚約の前に花嫁を召喚したいとごねられてさ。せっかく婚約するんだから、会ったその日に婚約するよりひと月くらい早めに呼んで仲良くなっておいてから婚約する方が花嫁にとっても自分にとってもいいだろう、との仰せでね。」
「召喚の準備やら花嫁を迎える準備があるから、初めは陛下も反対しておられたんだけど、どうやら王妃様に泣きついたみたいで。陛下は王妃様に強く出らないから結局押し切られてしまったんだよ」
「で、受け入れ準備も万全と云い難いし、貴族への紹介とかできるだけの余裕ができるかどうか分からなかったし、殿下が、呼んだ花嫁との時間を貴族との挨拶だのに使いたくない、婚約したらどうせ嫌でも公務や王妃教育が始まってゆっくり時間も取れなくなるから今くらい極力二人っきりで過ごしたいと仰られて、結局ごくごく限られた人数で緘口令が敷かれた状態で召喚を行ったんだよ。だから、このことを知っているのはあの時召喚に立ち会った者だけのはずだ」
(……そんな事前事情があったとは。あのクソ王子、どうしようもねぇなぁ、おい。ていうか王妃に泣きついたってマザコンかよ。ちょーキモいし。)
身体が動かせないか、試しに指先に力を入れてみる。先ほどまではピクリともしなかったが、ぎこちなくゆっくりとだが指が動いた。瞼に腕に口に喉に、ゆっくりと力を入れ慎重に動かす。
「召喚の儀で彼女は異世界からこの国に召喚された。けど、殿下は……」
「『こんな不細工な女、冗談じゃない。……とっとと追い出せ』」
上半身をゆっくり起こしながら、この二年、一度として忘れたことがない発言を一字一句違わず言う。
「そう言って、私は文字通り城の中を引きづられて城門の外へ放り出されたわ」
全員の視線が子供から此方に移ったのが分かった。特に此方に背を向けるようにベッドの端っこに腰かけていた子供が勢いよく振り返った。
「気がつかれましたか?」
「最初っから意識だけはあったよ。身体は動かなかったけど。何かしたの?」
「あ、えっと……ひどく取乱してらっしゃったので……ひとまず一度眠っていただこうかと思って……すいません」
「……気分は?」
「最高とはとてもじゃないが言えないけど、一応御蔭さまで落ち着きましたよ。副団長様。すいませんね、取り乱しちゃいまして」
「いや……」
「……どうぞ」
「あ、ありがとう」
涙でガッビガビになっている頬を擦りながら、熊二号へと顔を向ける。が、何故か頭を掻きながら目を反らされた。……そんなに見るに堪えない顔になっているのか。
バルト・クエーツが水と濡れタオルを持ってきてくれた。有り難く礼を言い、垂れ流しで泣いたせいでペキペキする顔を濡れタオルでざっと拭い、コップの水を一息で飲み干す。
「続き、どうぞ。もう冷めたし、これ以上取り乱したりしないから」
「あ、はい。その、殿下が今アチュミ様が仰ったことを言われて、混乱してらっしゃったアチュミ様を連行しようとされたものですから、神官長殿やシリア達と懸命に説得しようとしたんだけど聞く耳を持たれなくて……」
「奮闘の甲斐なく結果的に放り出されたと」
「そういうこと」
「何も殿下の前で助け舟を出さずとも、放り出された後にばれないようにシレッと回収すればよかったんじゃないんですか?」
わざわざ「はい、先生!」と言わんばかりの姿勢で狐君が発言した。その問いに、子供は眉間に皺をよせ、可愛らしい顔には似合わない渋い顔をした。
「それができていたら、こんなことになっていないよ。アチュミ様には言い訳のようになってしまいますが、殿下はあろうことか、あの場にいた全員を次回の召喚会議と称して一昼夜拘束しやがりまして。その間、部下は勿論、侍女達とも接触が一切できませんでしたから、その時はどうすることもできず……拘束が解けたらすぐに探しにいったんですけど、手掛かりもなく、なかなか見つけることが出来なくて……悪いのは全てこちらなのに……その責任をとるべきなのにそれも果たせず、しなくてよい苦労をさせてしまいました……」
しょんぼりと子供が項垂れる。思わず頭を撫でてやりたくなるほどの凹みっぷりである。そんな状況ではないかもしれないが、ちょっと可愛い。
この子、すごく真面目だわ。弄られ真面目君的な臭いがする。
思わず手をワキワキさせていると、熊二号が此方をガン見しながら問いかけてきた。
「放り出された後、どうなったんだ?この街に来たのは一月前なんだろ?」
「黙秘権を行使する」
「……何故に?」
「ぶっちゃけ思い出したくない」
「う、も、申し訳ありません。俺たちが殿下をお止めできていればっ……」
子供が半べそかいて、また謝ってきた。
あらやだ……何この子、可愛い。
可愛いがこのままベソベソされても話が進まない。溜息を一つ吐いて彼の頭をガシガシ撫でくり回す。それはもう、グワングワンと。
驚いたのか、子供は目を見開いた状態で此方を凝視しつつ固まっている。
「あのねぇ、さっきあんだけ泣き喚いといて説得力無いかも知れないけど、別に今更どうだっていいのよ。アンタに何度も謝ってもらったって、過ぎた時間は戻らないし元の世界にゃ還れない。正直、もうとっくに諦めついてんの。さっきのは……まぁ、アレよ。頭に血が上ったってヤツよ。ぶっちゃけ八つ当たりよ。私がアンタに八つ当たりしたのと、アンタが私を助けようとしてくれてて、ちゃんと謝ってくれたってことでとりあえずこの場は互いにチャラにしようや」
「……八つ当たりですか?」
「うん」
「どう考えても正当なお怒りであり、俺ら、あ、否、私達は憎まれて当然だと思うんですけど……」
「別に丁寧に言い換えんと普通に話してくれて構わんよ。この社会に適応するのならば、むしろ私がアンタに丁寧に話すべきなんでしょうよ。けど悪いが、私ぁ色々と諦めまくってはいるが、この国の理に従うつもりはないんでね。お前さんが王族だろうが騎士団長だろうが敬う気は一切ない!!」
「……俺、そんなに堂々と敬う気がない宣言されたの生まれて初めてです……」
「だろうね」
にやり、と顔を笑の形に歪める。
頭を篤美に鷲掴みされたままの状態で呆然と此方を見ていた子供が、ガックリと脱力するように肩から力を抜いた。口元にはやや呆れたような笑みまで浮かんでいる。
お互いに多少のクールダウンができたようだ。これならば、次の話に進んでもよかろう。
「さて、私の話はもういいだろ?次はアンタの番だよ」
少しだけ緩んでいた子供の顔が、スッと真剣なものに変わった。
ケトルでお湯を沸かしながらカップを洗い、お茶の用意をする。
買ってきた荷物が入った袋をあさり、中から飾り気のないお盆を取り出して全員分のお茶を置き持ちあげると、一つ溜息を吐いて部屋へと戻る。
(ちょっとした正念場だね、こりゃ)
気合を入れるように、背筋を伸ばして彼らの元に向かった。
‐‐‐‐‐‐
部屋に戻りお茶の入ったカップを全員に配る。
配り終えて、もはや定位置と化した玄関に向かおうとすると、一脚しかない椅子を熊二号に無言で勧められた。
ベッドの脇に置かれた椅子に座ると、デカイ男たちに囲まれる形になるため正直座りたくない。友好関係にないむさ苦しい野郎どもに囲まれるなんて、冗談抜きで不快極まりないが、熊二号からは無言の威圧が、子供からは懇願にも似たプレッシャーが押し寄せるため嫌々な空気を醸し出しながら大人しく椅子に座った。
椅子に座ったことで子供と目線を合わせることが容易になった。
深みのある緑色のその眼は今は何故か不安に揺れていた。そのことをかすかに訝しく思う。
(この形でも一応いい歳した男だよねぇ……気が弱いのか?騎士なのに……)
子供が目を閉じて深く息を吸って吐く。
再び目を開いたときには先ほどまでの揺れた瞳ではなく、どこまでも透明な真剣な眼差しに変わっていた。
「まずは貴女に心よりの感謝と謝罪を致します。貴女が協力してくださらなかったら、今頃私は無事でいられたか分からない。そして……」
「お久しぶりでございます。ご無事でありましたことをお喜び申し上げます。……アチュミ・タニジマ様」
「!?」
無表情に近かった顔が、スッと完全に無表情になったことが自分でも分かった。
子供は怖い位真摯な瞳で此方を見つめており、凍りついたようにその瞳から目が離せない。
静かな室内に、自分の急速に速くなった心音が響くんじゃないか、というほど、忙しなく大きく心臓が鼓動を刻む。
何故、この子供が自分の名前を知っている?
寝不足で鈍りがちだった脳みそが、忙しない心音と共に急速に回転し始める。
この世界に来て城を放り出された後は、『アーチャ・タニージャ』としか名乗って来なかった。
些か舌っ足らずな発音とはいえ、篤美の本名を知っている者は片手ほどの人数しかいないはずだ。
(……こいつ……)
絞り出すように出した問いかける声は、情けないほどに掠れていた。
「……アンタ……あの場にいた人間かっ!」
「……名乗り遅れまして申し訳ありません。私はヒュルト・マクゴナル・トゥーラ。あの時は騎士団総長という立場で召喚に立ち会っておりました。……もう一人の異世界よりの花嫁様……」
(……やっぱりっ!!)
異世界よりの花嫁、という言葉が彼の口から零れ落ちた瞬間、室内に驚愕の声があがった。
どういうことだっ!!
そんなはずがないでしょう!!
何を言ってるんですか!?花嫁様は既に婚姻を済まされているじゃないですか!!
静観の体で話を聞いていた騎士達の驚愕し、混乱する声で、室内は一気に騒がしくなるが、篤美の耳にはそれらが一つとして言葉として入っていなかった。
目の前にあるやや強張った顔を見つめる。確かにあの場に剣を下げた赤毛の男がいたことが、記憶に甦る。
(アレは……こいつだっ!)
「……確かに……いたわね、ヒュルト・マクゴナル・トゥーラ。また会う羽目になるとは思わなかったわ」
「……あの時は……申し訳ありませんでした。あれからお探ししておりましたが、中々見つけられず、只ならぬ苦労をされたことでしょう。心より……お詫び申し上げます。」
姿勢を変え、土下座のような形で頭を下げる姿が目に映る。ベッドのシーツに額を擦りつけ、かすかに震える掠れた声で謝罪を口にした彼の姿は、まるで断罪を待つかのようであった。
耳鳴りのように響き程の心音が大きくなる。
それにつられるように、呼吸が速くなる。頭が弾けてしまいそうなほど痛む。
まるで走馬灯のように、この世界に来てからの記憶が頭の中を濁流のように流れる。
(何故……こいつが謝る?……何故今になって、しかも……)
知らぬうちに握りしめていた拳に更に力がこもる。短く切りそろえている爪が肉に食い込むのが分かった。
今、自分がどんな顔をしているのか分からない。
ただ、自分の意思と関係なく、引き攣れたように顔の筋肉が動くのが分かった。
掠れ切った喉を無理やり動かす。
「……探していた……だと?」
自分でもこんな声が出るのかと、頭の片隅で場違いに思うほど、その声は低く掠れ憎しみに塗れていた。
溜まり溜まったこの世界に来てからの恨み辛みが、体中を荒れ狂い毛穴からにじみ出るかのように感じた。
土下座している小さな子供の身体が、ピクッと小さく震える。
「……貴様らが無理やり私をこの世界に拉致ってきた挙句、右も左も分からん私を文字通り放り出してっ……あの場で助けてもくれなかったくせにっ!!それを今更のこのこ現われて、探していたと抜かすかっ!!」
「……申し訳ありませんっ」
「今、謝るくらいなら何故あの時助けてくれなかった!?アンタらの勝手な都合で召喚されて!気に食わないからって引きずられて放り投げられてっ!!」
目の前が真っ赤に染まる。情けないほど震えながらも、興奮に伴い徐々に声が大きくなる。目が異様に熱い。握りしめた震える拳にボタボタと涙が落ちる。
事情が把握できずとも、篤美の剣幕に押されたのか、少し前のヒュルト・マクゴナル・トゥーラの発言にざわついていた騎士達は息を潜めるように静かに此方を見ていた。
「……っ謝るくらいなら、還してよ!!……ねぇ、アンタらにこの世界での国や生活があるように…私にもあるんだよ……自分の国も!仕事も!大事な家族も!友達も!!」
興奮に身を任せ、立ち上がる。ガタンっと椅子が倒れる音がする。
全身を震わせ叫ぶ。
「全部っ!全部っ!!私の大事なものをお前らが奪ったっ!!大事なっ……私の居場所をっ……!!」
「……っ今更謝ってすむとでも思ってんのっ!?ふざけんじゃねぇよ!!てめぇらは何様だ!!違う世界の人間の人生まで好き勝手しやがってっ!神にでもなったつもりかっ!!」
「ふざけんなっ!!還せよ!還してよっ!!こんな世界、私の世界じゃない。私の居場所じゃないっ!」
「私のっ……私のっ……私の全てを返してよぉ……」
膝の力が抜け、ベッドのシーツにしがみつくように膝まづく。
「……あぁ…あ、あ……ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…」
自分の中から生じた爆発的な衝動に身体はコントロールを失い、ただただ気が違えたように、ナニカを吐き出すように衝動のままに哭く。
「……ご、めん、なさい」
泣きそうな小さい声が聞こえた。
‐‐‐‐‐‐‐
全身を震わせながら、悲しみに塗れた獣のように慟哭する彼女。
その姿は痛々しい。
もはや言葉として意味をなさぬ声を叫んでいる彼女の頭に魔力をこめた指先を軽く触れさせる。
その途端に、哭く声がピタリととまり、糸の切れた操り人形のように身体が力なく崩れ落ちた。シーツにすがるように背中をまるめてうつ伏せている彼女の腕をとる。
身体が幼くなったことで腕力もそれ相当になったようで、彼女が未だ指先が白くなるほどシーツを握りしめていることもあり、気を失っている彼女をベッドに寝かせようと引っ張るもなかなか動かない。
彼女の気が違えたかのような様子に呆然としていたケディが、ハッと一番に正気づいて彼女を抱きあげてくれる。
すかさず彼女に場所をゆずり、シーツをまくる。心得たようにケディが彼女を壊れ物を扱うようにそっと寝かせ、まくったシーツを丁寧に彼女に被せる。
あれ以上叫んでいたら、おそらく間違いなく喉を潰していただろう。熟練の修羅場慣れした騎士であるケディすら呑まれた、怒りと憎しみと悲しみに満ち溢れた慟哭。
泣き声なんて生易しいものじゃない。あれは慟哭としかいいようがない。
簡単な魔術で眠らせたが、彼女の眦からは未だに大粒の涙が後から後から零れ出でて止まる様子もない。
眠っていることを確かめているのか、涙を拭ってあげているのか分からないが、ケディが傍から見ても優しくそっと彼女の頬に触れ、すぐに手を離した。
昔から変わらない、厳めしい顔が、今は困惑にかすかに歪んでいた。
「……眠らせたのか?」
「……うん。少し休ませないと。あのままじゃ間違いなく喉がダメになっちゃう」
「なぁ……ヒュー」
「……ちゃんと説明するよ。俺への襲撃のことも……彼女のことも」
‐‐‐‐‐‐‐
狂ったように泣き叫んでいると、ナニカが自分の中に入ってきた。一瞬で全身の力が抜ける。
叫び枯れかけていた喉はその機能を完全に止め、全身に力が入らないため閉じてしまった瞼を開けることもダランと脱力した手足を動かすこともできない。
ただ意識だけはハッキリしていた。そして、つい先程まで気が違えそうなほど荒れ狂っていた頭も心も一気に冷め、落ち着いていた。
まんま金縛りの状態で、ゴツイ腕に抱き上げられベッドに寝かせられる。
頬に優しく触れる温もりを感じたが、正直何勝手に触ってやがんだ、と思う。許可なく女に触れるのは失礼だ。例えそれが40代のオバサンであろうとも。
涙腺が決壊したかのような勢いでダバダバ涙が頬を伝う感触がする。
指一本動かせず、それを拭う事もできない。かなり気になるが、大人しく動くようになるまで待つしかないのだろうか。
ほんの数分前までの激情はいっそ清々しいほど、なくなっていた。
「……ちゃんと説明するよ。俺への襲撃のことも……彼女のことも」
ヒュルト・マクゴナル・トゥーラの子供らしい高めの声が聞こえた。
さて、彼はありのままを話すのだろうか?国家権力の狗とも言える騎士団の人間に。
「これから話すことは口外無用だからね。俺も厳重に口止めされているから、どっかからか噂話とかでちゃったらかなりヤバいんだよね。」
「前置きはいいから、とっとと説明しろ、ヒュー坊」
「その呼び方やめてよ、ケディ。確かに今はこんな姿だけど、子供じゃないんだから」
「ヒュー、話をすすめて」
「あ、ごめん。えっと……初めから話そうか」
複数の話声が聞こえ、仮にも騎士団長とその下の騎士とは思えないフランクさで会話がなされているのに、内心首を傾げる。(生身の肉体はまだまだ動きそうな気配がない)
「本来の花嫁召喚の儀は王太子殿下の18歳の誕生日にされる予定だったんだ。陛下に妃を娶る年頃になったと判断された年の誕生日の日に誕生祝いと共に召喚された花嫁との婚約を行うのが慣習だからね。……否、実際誕生日の日にもされたんだけど、そっちは知ってるでしょ?殿下の誕生日に召喚された花嫁が現王太子妃殿下。でも実はその一月前にも花嫁召喚を行っていた。その時に召喚されたのが彼女、アチュミ・タニジマ様なんだよ」
「殿下がどうしても誕生日の婚約の前に花嫁を召喚したいとごねられてさ。せっかく婚約するんだから、会ったその日に婚約するよりひと月くらい早めに呼んで仲良くなっておいてから婚約する方が花嫁にとっても自分にとってもいいだろう、との仰せでね。」
「召喚の準備やら花嫁を迎える準備があるから、初めは陛下も反対しておられたんだけど、どうやら王妃様に泣きついたみたいで。陛下は王妃様に強く出らないから結局押し切られてしまったんだよ」
「で、受け入れ準備も万全と云い難いし、貴族への紹介とかできるだけの余裕ができるかどうか分からなかったし、殿下が、呼んだ花嫁との時間を貴族との挨拶だのに使いたくない、婚約したらどうせ嫌でも公務や王妃教育が始まってゆっくり時間も取れなくなるから今くらい極力二人っきりで過ごしたいと仰られて、結局ごくごく限られた人数で緘口令が敷かれた状態で召喚を行ったんだよ。だから、このことを知っているのはあの時召喚に立ち会った者だけのはずだ」
(……そんな事前事情があったとは。あのクソ王子、どうしようもねぇなぁ、おい。ていうか王妃に泣きついたってマザコンかよ。ちょーキモいし。)
身体が動かせないか、試しに指先に力を入れてみる。先ほどまではピクリともしなかったが、ぎこちなくゆっくりとだが指が動いた。瞼に腕に口に喉に、ゆっくりと力を入れ慎重に動かす。
「召喚の儀で彼女は異世界からこの国に召喚された。けど、殿下は……」
「『こんな不細工な女、冗談じゃない。……とっとと追い出せ』」
上半身をゆっくり起こしながら、この二年、一度として忘れたことがない発言を一字一句違わず言う。
「そう言って、私は文字通り城の中を引きづられて城門の外へ放り出されたわ」
全員の視線が子供から此方に移ったのが分かった。特に此方に背を向けるようにベッドの端っこに腰かけていた子供が勢いよく振り返った。
「気がつかれましたか?」
「最初っから意識だけはあったよ。身体は動かなかったけど。何かしたの?」
「あ、えっと……ひどく取乱してらっしゃったので……ひとまず一度眠っていただこうかと思って……すいません」
「……気分は?」
「最高とはとてもじゃないが言えないけど、一応御蔭さまで落ち着きましたよ。副団長様。すいませんね、取り乱しちゃいまして」
「いや……」
「……どうぞ」
「あ、ありがとう」
涙でガッビガビになっている頬を擦りながら、熊二号へと顔を向ける。が、何故か頭を掻きながら目を反らされた。……そんなに見るに堪えない顔になっているのか。
バルト・クエーツが水と濡れタオルを持ってきてくれた。有り難く礼を言い、垂れ流しで泣いたせいでペキペキする顔を濡れタオルでざっと拭い、コップの水を一息で飲み干す。
「続き、どうぞ。もう冷めたし、これ以上取り乱したりしないから」
「あ、はい。その、殿下が今アチュミ様が仰ったことを言われて、混乱してらっしゃったアチュミ様を連行しようとされたものですから、神官長殿やシリア達と懸命に説得しようとしたんだけど聞く耳を持たれなくて……」
「奮闘の甲斐なく結果的に放り出されたと」
「そういうこと」
「何も殿下の前で助け舟を出さずとも、放り出された後にばれないようにシレッと回収すればよかったんじゃないんですか?」
わざわざ「はい、先生!」と言わんばかりの姿勢で狐君が発言した。その問いに、子供は眉間に皺をよせ、可愛らしい顔には似合わない渋い顔をした。
「それができていたら、こんなことになっていないよ。アチュミ様には言い訳のようになってしまいますが、殿下はあろうことか、あの場にいた全員を次回の召喚会議と称して一昼夜拘束しやがりまして。その間、部下は勿論、侍女達とも接触が一切できませんでしたから、その時はどうすることもできず……拘束が解けたらすぐに探しにいったんですけど、手掛かりもなく、なかなか見つけることが出来なくて……悪いのは全てこちらなのに……その責任をとるべきなのにそれも果たせず、しなくてよい苦労をさせてしまいました……」
しょんぼりと子供が項垂れる。思わず頭を撫でてやりたくなるほどの凹みっぷりである。そんな状況ではないかもしれないが、ちょっと可愛い。
この子、すごく真面目だわ。弄られ真面目君的な臭いがする。
思わず手をワキワキさせていると、熊二号が此方をガン見しながら問いかけてきた。
「放り出された後、どうなったんだ?この街に来たのは一月前なんだろ?」
「黙秘権を行使する」
「……何故に?」
「ぶっちゃけ思い出したくない」
「う、も、申し訳ありません。俺たちが殿下をお止めできていればっ……」
子供が半べそかいて、また謝ってきた。
あらやだ……何この子、可愛い。
可愛いがこのままベソベソされても話が進まない。溜息を一つ吐いて彼の頭をガシガシ撫でくり回す。それはもう、グワングワンと。
驚いたのか、子供は目を見開いた状態で此方を凝視しつつ固まっている。
「あのねぇ、さっきあんだけ泣き喚いといて説得力無いかも知れないけど、別に今更どうだっていいのよ。アンタに何度も謝ってもらったって、過ぎた時間は戻らないし元の世界にゃ還れない。正直、もうとっくに諦めついてんの。さっきのは……まぁ、アレよ。頭に血が上ったってヤツよ。ぶっちゃけ八つ当たりよ。私がアンタに八つ当たりしたのと、アンタが私を助けようとしてくれてて、ちゃんと謝ってくれたってことでとりあえずこの場は互いにチャラにしようや」
「……八つ当たりですか?」
「うん」
「どう考えても正当なお怒りであり、俺ら、あ、否、私達は憎まれて当然だと思うんですけど……」
「別に丁寧に言い換えんと普通に話してくれて構わんよ。この社会に適応するのならば、むしろ私がアンタに丁寧に話すべきなんでしょうよ。けど悪いが、私ぁ色々と諦めまくってはいるが、この国の理に従うつもりはないんでね。お前さんが王族だろうが騎士団長だろうが敬う気は一切ない!!」
「……俺、そんなに堂々と敬う気がない宣言されたの生まれて初めてです……」
「だろうね」
にやり、と顔を笑の形に歪める。
頭を篤美に鷲掴みされたままの状態で呆然と此方を見ていた子供が、ガックリと脱力するように肩から力を抜いた。口元にはやや呆れたような笑みまで浮かんでいる。
お互いに多少のクールダウンができたようだ。これならば、次の話に進んでもよかろう。
「さて、私の話はもういいだろ?次はアンタの番だよ」
少しだけ緩んでいた子供の顔が、スッと真剣なものに変わった。
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