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7:スイカって意外と好き嫌い分かれるよね
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フィンは病院から出て、重苦しい大きな溜め息を吐いた。筋トレを始めてから便秘は少しマシになっているのだが、イボ痔は変わらず健在である。なくなってしまえばいいのに。いつもの薬を貰ってきた。まだ手術が必要なレベルなものはできていないが、それでも辛いし、いつか手術レベルのものができるんじゃないかと戦々恐々としている。
今日は日射しが強いので帽子を被ってきた。病院の中は空調がきいていて涼しかったが、外に出た途端に、むわっとした暑い空気に包まれる。日焼け止めをしっかり塗っているが、それでも汗で流れたりするので、フィンは夏でも外に出る時は基本的に長袖長ズボンである。素直にくっっそ暑い。今すぐ冷たい水を飲みたい。
喫茶店にでも寄ろうかなぁ、とぼんやり思いながらフィンが歩き始めたら、進行方向から見知った人物が歩いてきた。マイキーである。マイキーは羨ましいくらい普通の顔をしている。穏やかな性格が滲み出ているような雰囲気の顔で、身長も普通である。筋肉はついているが、ケリー程筋骨粒々な感じではない。ケリーがガチムチマッチョなら、マイキーはそこそこマッチョといったところだろう。それでもフィンには羨ましい体型である。マイキーは現在27歳である。成人しているとはいえ、まだ17歳のフィンと比べたら、はるかに大人の男って感じの体つきをしている。
マイキーもフィンに気づいたのか、ニコッと笑って手を振ってきた。
「やぁ。フィン。こんにちは」
「こんにちは。マイキーさん」
「もしかしてそこの病院から出てきた?どっか具合悪いの?」
「え、あー……ちょっとした持病……みたいな……」
「おや。大丈夫なの?筋トレ毎日やってるんでしょ?」
「あ、それは全然問題ないです!」
「それならいいけど」
「マイキーさんは今日はお休みですか?」
「うん。毎週水曜日は店の定休日なんだ」
「そうなんですね」
「あ、そうだ。フィンってスイカ好き?」
「好きです。父と弟が嫌いだから、基本的に家じゃ食べられませんけど」
「あ、そうなんだ。うちも父さんがスイカ嫌いなんだよね。よかったらさ、スイカを少し貰ってくれない?知り合いからさ、かなり大きなスイカをまるっと1個貰っちゃってね。半分は今弟夫婦の所に持っていったんだけど、まだあと4分の1は残ってるんだよね。一昨日に貰って、魔導冷蔵庫に入れる為に切っちゃってるから、早めに食べた方がいいんだけど。一昨日と昨日でも、俺1人じゃ4分の1しか食べられなくてさ。正直、残りも全部1人で食うのは辛いものがあってねー。あ、味は保証するよ。すっごい甘くて旨いよ」
「えっと、じゃあ、いただいてもいいですか?僕以外、誰も食べないから買わないんですよね。最後に食べたのは多分小学生の時なんです。給食のデザートで出ませんでした?」
「出てたね。俺の仲がいい友達もスイカ嫌いだったから、スイカが出た時はいっつも貰ってた」
「スイカって意外と好き嫌い分かれますよね」
「だよね。なんか匂いが苦手って理由が多い気がする」
「あー……うちの父と弟もそれです」
「旨いし、いい匂いだと思うんだけどなぁ」
「ですよねぇ」
「じゃあ、俺の家に来てもらえる?ここら辺、花街の入り口みたいなもんだし。花街の中心より少し先に俺の家あるから、そんなに歩かなくていいよ」
「はい。ありがとうございます」
フィンはマイキーと並んで花街へと向けて歩き始めた。花街に入ったことはない。初めて入る花街は、まだ昼間だというのに人通りが結構多く、少し気後れしてしまうくらい賑やかである。
マイキーと天気の話とか当たり障りのない世間話をしながら歩き、一軒の店の前で歩きを止めた。店の看板に『装飾品専門店ニカインド』と書かれている。マイキーが店のドアの鍵を開けて中に入ったので、フィンも続いて中に入った。空調をつけていない店内は、外よりももわっとした暑い空気で満ちている。薄暗い店内は本当に沢山のキラキラ光る様々な装飾品で溢れていた。念のため、と入り口のドアの鍵を閉めたマイキーに続いて店の奥へと進むと、カウンターがあり、カウンターの奥には結構急な角度の階段があった。階段を上がるマイキーに続いていく。
「階段の横にドアがあったでしょ?あの奥が工房なんだ。家は2階」
「そうなんですね」
「この階段、結構急でしょ?気をつけてね。たまに父さんが膝が上がりきらなくて足をぶつけたりするんだよね。危ないから改装したいんだけど、中々ねー。改装するとなると、工事の間はずっと店を閉めなきゃいけなくなるし。まぁ、そこそこ古い建物だから、いつかはしなきゃいけないんだけどさ」
「難しいところですよね。うちの店も家もだいぶ古いから、本格的に改築するか、いっそ壊して建て直すか、父がすっごい悩んでます」
「場合によっては、いっそ壊して建て直した方が安くすむもんね」
「そうらしいですね」
階段を上りきり、短い廊下を歩くと、居間らしき部屋に入った。そこを突っ切り、マイキーに続いて台所に入った。そんなに広くない台所には食卓らしきテーブルもあるので、ここでいつも食事をとっているのだろう。とても生活感が溢れる台所に、なんだかより親近感が湧く。シンクの近くの隅っこに置いてある小さなガラスのコップに、少量の茶色い液体が入っていた。多分『めんつゆトラップ』だと思う。夏に増える小蝿を捕るには1番効果的らしい。フィンも本でその存在を知って、自宅でやっている。気持ち悪いくらい小蝿が浮いている時もあり、そんな時はフィルに代わりに狭い裏庭の隅っこに捨ててもらう。フィンは虫が大嫌いだ。
マイキーが魔導冷蔵庫から4分の1に切ったスイカを取り出した。かなりデカい。4分の1の筈なのに、小さめのスイカ1玉分くらいある。
「……大きいですね」
「でしょ。父さんの知り合いにスイカも作ってる農家さんがいてさ。大きくなり過ぎた上に表面に細かい傷がいっぱいあって市場には出せないからってくれたんだ。あ、なんなら今少し食べる?外暑かったし、冷えてるから美味しいよ」
「あ、じゃあ、いただきます」
「うん。切るよ。座ってて。……あ、ちょっと待って」
「……?はい」
マイキーがテーブルの上にまな板と包丁を置き、まな板の上にスイカを置くと、パタパタと走って居間の方に向かった。すぐに戻ってきたマイキーの手には格子柄のクッションがあった。
「はい。これ使ってよ。普通の木の椅子だから、そのまんまだと痛いでしょ」
「え?」
「あ、違った?痔かなって思ったんだけど」
マイキーの言葉に驚いて、フィンは目を見開いた。フィンが痔持ちであることは、父親以外、誰も知らない筈なのに。
「な、な、な、な……」
「な?」
「な、なんで、ご、ご存知、なん、ですか……?」
「え?単なる推測?花街に近い関係であそこの病院ってお尻関係の治療に特化してるし。あとフィンの家って普通に街中にあるでしょ?小さい所も含めたら、あの辺り結構病院の数多いから、普通の病気でわざわざ花街の近くに来る必要ないし」
「う……」
「ついでに『持病みたいな』って言ってたから、痔かなって。あ、もしかして知られたくなかった?」
「う、あ、はい……」
「あー……ごめんね。誰にも言わないから」
「お、お願いします……」
「うちの父さんもたまーに痔になってさ。あそこの病院に行くんだよね。1度手術したこともあるよ」
「えっ!?そうなんですか!?」
「うん。うちの父さんさー、1度集中し出したら本当にまる1日同じ姿勢で全然動かなかったりするからさ。痔になりやすいんだよね」
「あー……僕も基本的に座り仕事なので……」
「ずっと同じ体勢でいるのって、よくないらしいね。仕事の合間にちょっとストレッチとかしてみたら?少しは違うかも」
「あ、はい。してみます」
ぶっちゃけ痔の手術をしたことがあるというマイキーの父親の話を聞いてみたい。痔の手術ってどんな感じなのだろうか。手術が必要なレベルの痔になる可能性がゼロではないフィンとしては、是非とも体験談を聞いてみたい。
「あ、あの……お父様は今日は……」
「ん?出掛けてるよ。母さんの所に行ってる。俺の母さん、結構人気な娼館の一人娘でさ。女だてらに娼館の経営やってるんだよね。基本的に忙しくて家に来たりとかできないから、父さんが休みの度に会いに行ってる」
「あ、そうなんですか……」
正直かなり残念である。痔を患ったことがある知り合いなんて誰もいない。この痛みと苦しみと羞恥を理解してもらえる!と一瞬かなり期待したので、本当に残念である。
マイキーからクッションを受け取って、ありがたく使わせてもらう。実際、固い木の椅子に直に座るのは痛くて辛いので、マイキーの気遣いがありがたい。
マイキーが4分の1のスイカを半分に切り、それを更に2つに切り分けた。
「フィンには少し多いかな?」
「いえ、大丈夫です。スイカって殆んど水分ですし」
「そう?無理はしなくていいから」
「ありがとうございます」
マイキーが切り分けたスイカを各々の皿にのせ、大きめのスプーンを添えて渡してくれた。礼を言ってスイカを1口食べてみると、とても甘くて、瑞々しく、すごく美味しい。しっかりと冷えていて、外が本当に暑かったから、それも嬉しい。思わず頬が緩んでしまう。
「すごく美味しいです」
「でしょ?甘いよねー」
「はい」
「残ってるのも半分に切るから持って帰ってよ。皿と袋は貸すからさ」
「ありがとうございます!……本当にすっごい久しぶりに食べます」
「買っても1人じゃ中々食べきれないもんね」
「そうなんです。傷ませたら勿体無いですし」
「分かるなぁ。俺も貰った時にしか食べないもん」
マイキーとポツポツ話しながら、冷たく甘いスイカを食べる。結構な大きさだったが、喉も渇いていたし、ペロリと食べきれてしまった。
マイキーに皿と袋を今度返しに来ると約束し、マイキーに花街の外まで送ってもらって、フィンは帰路についた。
痔ですごく落ちていた気分が、今はすっかり軽くなっている。いつかマイキーの父親と痔について語り合える日がくると嬉しい。マイキーととりとめのない話をするのもすごく楽しかった。
フィンは軽い足取りで家へと帰った。
今日は日射しが強いので帽子を被ってきた。病院の中は空調がきいていて涼しかったが、外に出た途端に、むわっとした暑い空気に包まれる。日焼け止めをしっかり塗っているが、それでも汗で流れたりするので、フィンは夏でも外に出る時は基本的に長袖長ズボンである。素直にくっっそ暑い。今すぐ冷たい水を飲みたい。
喫茶店にでも寄ろうかなぁ、とぼんやり思いながらフィンが歩き始めたら、進行方向から見知った人物が歩いてきた。マイキーである。マイキーは羨ましいくらい普通の顔をしている。穏やかな性格が滲み出ているような雰囲気の顔で、身長も普通である。筋肉はついているが、ケリー程筋骨粒々な感じではない。ケリーがガチムチマッチョなら、マイキーはそこそこマッチョといったところだろう。それでもフィンには羨ましい体型である。マイキーは現在27歳である。成人しているとはいえ、まだ17歳のフィンと比べたら、はるかに大人の男って感じの体つきをしている。
マイキーもフィンに気づいたのか、ニコッと笑って手を振ってきた。
「やぁ。フィン。こんにちは」
「こんにちは。マイキーさん」
「もしかしてそこの病院から出てきた?どっか具合悪いの?」
「え、あー……ちょっとした持病……みたいな……」
「おや。大丈夫なの?筋トレ毎日やってるんでしょ?」
「あ、それは全然問題ないです!」
「それならいいけど」
「マイキーさんは今日はお休みですか?」
「うん。毎週水曜日は店の定休日なんだ」
「そうなんですね」
「あ、そうだ。フィンってスイカ好き?」
「好きです。父と弟が嫌いだから、基本的に家じゃ食べられませんけど」
「あ、そうなんだ。うちも父さんがスイカ嫌いなんだよね。よかったらさ、スイカを少し貰ってくれない?知り合いからさ、かなり大きなスイカをまるっと1個貰っちゃってね。半分は今弟夫婦の所に持っていったんだけど、まだあと4分の1は残ってるんだよね。一昨日に貰って、魔導冷蔵庫に入れる為に切っちゃってるから、早めに食べた方がいいんだけど。一昨日と昨日でも、俺1人じゃ4分の1しか食べられなくてさ。正直、残りも全部1人で食うのは辛いものがあってねー。あ、味は保証するよ。すっごい甘くて旨いよ」
「えっと、じゃあ、いただいてもいいですか?僕以外、誰も食べないから買わないんですよね。最後に食べたのは多分小学生の時なんです。給食のデザートで出ませんでした?」
「出てたね。俺の仲がいい友達もスイカ嫌いだったから、スイカが出た時はいっつも貰ってた」
「スイカって意外と好き嫌い分かれますよね」
「だよね。なんか匂いが苦手って理由が多い気がする」
「あー……うちの父と弟もそれです」
「旨いし、いい匂いだと思うんだけどなぁ」
「ですよねぇ」
「じゃあ、俺の家に来てもらえる?ここら辺、花街の入り口みたいなもんだし。花街の中心より少し先に俺の家あるから、そんなに歩かなくていいよ」
「はい。ありがとうございます」
フィンはマイキーと並んで花街へと向けて歩き始めた。花街に入ったことはない。初めて入る花街は、まだ昼間だというのに人通りが結構多く、少し気後れしてしまうくらい賑やかである。
マイキーと天気の話とか当たり障りのない世間話をしながら歩き、一軒の店の前で歩きを止めた。店の看板に『装飾品専門店ニカインド』と書かれている。マイキーが店のドアの鍵を開けて中に入ったので、フィンも続いて中に入った。空調をつけていない店内は、外よりももわっとした暑い空気で満ちている。薄暗い店内は本当に沢山のキラキラ光る様々な装飾品で溢れていた。念のため、と入り口のドアの鍵を閉めたマイキーに続いて店の奥へと進むと、カウンターがあり、カウンターの奥には結構急な角度の階段があった。階段を上がるマイキーに続いていく。
「階段の横にドアがあったでしょ?あの奥が工房なんだ。家は2階」
「そうなんですね」
「この階段、結構急でしょ?気をつけてね。たまに父さんが膝が上がりきらなくて足をぶつけたりするんだよね。危ないから改装したいんだけど、中々ねー。改装するとなると、工事の間はずっと店を閉めなきゃいけなくなるし。まぁ、そこそこ古い建物だから、いつかはしなきゃいけないんだけどさ」
「難しいところですよね。うちの店も家もだいぶ古いから、本格的に改築するか、いっそ壊して建て直すか、父がすっごい悩んでます」
「場合によっては、いっそ壊して建て直した方が安くすむもんね」
「そうらしいですね」
階段を上りきり、短い廊下を歩くと、居間らしき部屋に入った。そこを突っ切り、マイキーに続いて台所に入った。そんなに広くない台所には食卓らしきテーブルもあるので、ここでいつも食事をとっているのだろう。とても生活感が溢れる台所に、なんだかより親近感が湧く。シンクの近くの隅っこに置いてある小さなガラスのコップに、少量の茶色い液体が入っていた。多分『めんつゆトラップ』だと思う。夏に増える小蝿を捕るには1番効果的らしい。フィンも本でその存在を知って、自宅でやっている。気持ち悪いくらい小蝿が浮いている時もあり、そんな時はフィルに代わりに狭い裏庭の隅っこに捨ててもらう。フィンは虫が大嫌いだ。
マイキーが魔導冷蔵庫から4分の1に切ったスイカを取り出した。かなりデカい。4分の1の筈なのに、小さめのスイカ1玉分くらいある。
「……大きいですね」
「でしょ。父さんの知り合いにスイカも作ってる農家さんがいてさ。大きくなり過ぎた上に表面に細かい傷がいっぱいあって市場には出せないからってくれたんだ。あ、なんなら今少し食べる?外暑かったし、冷えてるから美味しいよ」
「あ、じゃあ、いただきます」
「うん。切るよ。座ってて。……あ、ちょっと待って」
「……?はい」
マイキーがテーブルの上にまな板と包丁を置き、まな板の上にスイカを置くと、パタパタと走って居間の方に向かった。すぐに戻ってきたマイキーの手には格子柄のクッションがあった。
「はい。これ使ってよ。普通の木の椅子だから、そのまんまだと痛いでしょ」
「え?」
「あ、違った?痔かなって思ったんだけど」
マイキーの言葉に驚いて、フィンは目を見開いた。フィンが痔持ちであることは、父親以外、誰も知らない筈なのに。
「な、な、な、な……」
「な?」
「な、なんで、ご、ご存知、なん、ですか……?」
「え?単なる推測?花街に近い関係であそこの病院ってお尻関係の治療に特化してるし。あとフィンの家って普通に街中にあるでしょ?小さい所も含めたら、あの辺り結構病院の数多いから、普通の病気でわざわざ花街の近くに来る必要ないし」
「う……」
「ついでに『持病みたいな』って言ってたから、痔かなって。あ、もしかして知られたくなかった?」
「う、あ、はい……」
「あー……ごめんね。誰にも言わないから」
「お、お願いします……」
「うちの父さんもたまーに痔になってさ。あそこの病院に行くんだよね。1度手術したこともあるよ」
「えっ!?そうなんですか!?」
「うん。うちの父さんさー、1度集中し出したら本当にまる1日同じ姿勢で全然動かなかったりするからさ。痔になりやすいんだよね」
「あー……僕も基本的に座り仕事なので……」
「ずっと同じ体勢でいるのって、よくないらしいね。仕事の合間にちょっとストレッチとかしてみたら?少しは違うかも」
「あ、はい。してみます」
ぶっちゃけ痔の手術をしたことがあるというマイキーの父親の話を聞いてみたい。痔の手術ってどんな感じなのだろうか。手術が必要なレベルの痔になる可能性がゼロではないフィンとしては、是非とも体験談を聞いてみたい。
「あ、あの……お父様は今日は……」
「ん?出掛けてるよ。母さんの所に行ってる。俺の母さん、結構人気な娼館の一人娘でさ。女だてらに娼館の経営やってるんだよね。基本的に忙しくて家に来たりとかできないから、父さんが休みの度に会いに行ってる」
「あ、そうなんですか……」
正直かなり残念である。痔を患ったことがある知り合いなんて誰もいない。この痛みと苦しみと羞恥を理解してもらえる!と一瞬かなり期待したので、本当に残念である。
マイキーからクッションを受け取って、ありがたく使わせてもらう。実際、固い木の椅子に直に座るのは痛くて辛いので、マイキーの気遣いがありがたい。
マイキーが4分の1のスイカを半分に切り、それを更に2つに切り分けた。
「フィンには少し多いかな?」
「いえ、大丈夫です。スイカって殆んど水分ですし」
「そう?無理はしなくていいから」
「ありがとうございます」
マイキーが切り分けたスイカを各々の皿にのせ、大きめのスプーンを添えて渡してくれた。礼を言ってスイカを1口食べてみると、とても甘くて、瑞々しく、すごく美味しい。しっかりと冷えていて、外が本当に暑かったから、それも嬉しい。思わず頬が緩んでしまう。
「すごく美味しいです」
「でしょ?甘いよねー」
「はい」
「残ってるのも半分に切るから持って帰ってよ。皿と袋は貸すからさ」
「ありがとうございます!……本当にすっごい久しぶりに食べます」
「買っても1人じゃ中々食べきれないもんね」
「そうなんです。傷ませたら勿体無いですし」
「分かるなぁ。俺も貰った時にしか食べないもん」
マイキーとポツポツ話しながら、冷たく甘いスイカを食べる。結構な大きさだったが、喉も渇いていたし、ペロリと食べきれてしまった。
マイキーに皿と袋を今度返しに来ると約束し、マイキーに花街の外まで送ってもらって、フィンは帰路についた。
痔ですごく落ちていた気分が、今はすっかり軽くなっている。いつかマイキーの父親と痔について語り合える日がくると嬉しい。マイキーととりとめのない話をするのもすごく楽しかった。
フィンは軽い足取りで家へと帰った。
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