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2:何事も一日にして成らず
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マイキーは濡れた髪をタオルで拭きつつ、憂鬱な溜め息を吐いた。日課の朝の筋トレを終え、シャワーを浴びた後である。
朝食を食べたら、幼なじみとも言えるカーラとケビンの家に行かなくてはいけない。午前中にカーラの父親であるケリーに剣の稽古をつけてもらい、午後からはカーラ夫婦の次男であるコリンに装飾品の作り方を教える約束をしている。マイキーは父親と同じく、装飾品を作る職人である。父親が48歳とまだ若く、現役バリバリなので、一緒に花街にある店を切り盛りしている。
9歳の頃から元軍人のケリーに剣と護身術を教えてもらっている。マイキーは元々運動音痴なので、そんなに強くはなれなかったし、実際、結婚をするまで一緒に剣を習っていたカーラの方が強いくらいだ。しかし、なんとか喧嘩で自衛できる程度にはなった。店兼自宅が花街にあるので、酔っぱらいの喧嘩などに巻き込まれることがたまにある。マイキーの父親は喧嘩が弱くて、マイキーが子供の頃はたまに殴られて怪我をしたりしていた。自分と家族を守りたくて、ケリーに剣と護身術を習い始めた。運動音痴のマイキーは中々強くなれなかったが、それでも15年以上身体を鍛えているので、それなりに身体もしっかりしているし、喧嘩に巻き込まれても勝てはしないが負けもしない。怪我をすることも殆んどない。
マイキーの初恋は1つ年上のカーラである。昨年、ものすごく勇気を振り絞ってカーラにプロポーズをしたが、『ケビンだけがいればいいから』とフラれてしまった。
この世は男女比が平等ではなく、6:4で男の方が多い。故に、土の宗主国では複婚や同性婚が法的に認められている。女は5人まで夫をもつことができる。
マイキーは子供の頃からずっと恋をしていたカーラの2番目の夫になりたかった。カーラの夫であるケビンとは、子供の頃から一緒にケリーに剣を習っていて普通に仲がいいし、カーラと結婚しても、ケビンともうまくやれると思っていた。ケビンとの子供であるカーラの3人の息子達も本当に可愛いと思っている。自分との子供が産まれても、彼らと分け隔てなく愛して大事にできると思っていた。しかし、フラれてしまった。
正直まだ心の傷は癒えていないし、未だにカーラに恋をしている。プロポーズをしてフラれて以来、ぶっちゃけカーラ達の家に行くのが気まずくて仕方がない。しかし、ケリーに剣の稽古をつけてもらいたいし、コリンとの約束もある。コリンは様々な装飾品に興味があるらしく、1度簡単なピアスの作り方を教えてやったら見事にどハマりした。まだ7歳だが手先が器用で、色の組み合わせなどのセンスもいい。かなり将来有望なので、できたら将来は職人になってほしいところである。マイキーには5つ年下の弟がいるが、弟は花屋を経営している男と結婚したので子供は望めない。マイキーはカーラ以外と結婚する気がない。跡取りがいないので、できたらコリンに店を継いでほしい。
マイキーは自分に気合いを入れるように両頬をピシャリと手で叩くと、朝食を作るために台所へと向かった。
カーラ達の家に行くと、いつも稽古をしている中庭に、初めて見る背が高い少年とものすごい美少女がいた。
今日もハゲ頭が眩しいケリーがマイキーに向けて手を振った。最近剣を習い始めたコリンがマイキーに勢いよく笑顔で抱きついてきたので受け止めつつ、ケリーに挨拶をする。
「おはよう。おじちゃん。コリン」
「おう。おはよう」
「おっはよー!」
ケリーがひょろ長い感じの細い少年と美少女を指差した。
「今日からこいつらも一緒だ」
「フィン・スカンジナビアです。17歳です」
「ディルムッド・ファレロです!14歳です!ディルって呼んでください!」
「あ、どうも。マイキー・ニカインドです。おじちゃん、ディルは兎も角、フィンも剣やるの?女の子だけど」
「僕は男です」
「あ、そうなんだ。ごめんね」
「いえ。慣れてます」
「こいつらは筋トレメインなんだよ。マッチョになりたいんだと」
「へぇー」
「とりあえず走り込みからな。今日は俺はフィンとディルと走るから、マイキーはコリンと走ってくれないか?」
「いいよ」
「いえーい!先生と一緒ー!」
コリンがマイキーに抱きついたまま、嬉しそうにぴょんぴょん跳び跳ねた。コリンが可愛くて思わず頬を緩ませてコリンの頭を撫でると、ディルムッドが話しかけてきた。
「マイキーさんは学校の先生なんですか?マイキーさんも師匠程じゃないけど、いい筋肉してますね!」
「ありがとう?俺は単なる職人だよ。装飾品を作ってるんだ。コリンが俺を先生って呼ぶのは、俺がコリンに装飾品の作り方を教えてるから」
「俺ね!こないだはネックレス作ったよ!母さんにあげたんだ!」
「へぇー。すげぇな。コリン君」
「えっへへー」
「よーし。じゃあ準備体操したら早速走るぞー」
「「はいっ!」」
元気がいい少年達の返事から今日の稽古が始まった。普段は準備体操をした後、30分程走り、その後はひたすら練習用の剣を振ったり、ケリーと組手をしたりするが、今日はいつもとはメニューが変わる。
マイキーとコリンはいつも通り走った後、2人で剣の素振りをすることになった。マイキーはぶっちゃけ弱いが、基礎はしっかりできていて、剣の振り方は無駄がなくてとてもキレイだと言われている。まだまだ習い始めたばかりのコリンに教えてやることもできるレベルなので、今日はコリンと2人で剣を振る。ケリーは少年達の走り込みに付き合った後、基本となる筋トレの仕方を教えて、その後1時間程マイキーの剣の稽古に付き合ってくれるそうだ。
全員で準備体操をしっかりしたら、早速今日のメニューの開始である。
マイキーとコリンがケリーから言われていた剣の素振りの回数を終え、今度は2人で筋トレをしている時にケリーと少年達が帰って来た。ざっと2時間程ずっと走っていたらしい。ディルムッドはかなりヘロヘロになって、中庭に入るなりへたりこんだが、フィンはケロッとした顔をしていた。
「じいさん。おかえりー」
「おかえり。おじちゃん達」
「おー。ただいまー」
「ディルは大丈夫?」
「はぁ、はぁ、だ、だいじょばない……」
「フィンは足が速いな。あと意外と体力あるな」
「走るのは小さい頃から好きなんです」
「お、そうか。ディルはあんま運動得意じゃない感じか?」
「はぁ、はぁ、か、完全、室内派、です……」
「あー。だから細いのかもな。よーし。水分補給したら次は筋トレやるぞー」
「はいっ!」
「はいぃぃぃ……」
フィンは元気よく、ディルムッドはヘロヘロな返事をした。カーラが用意してくれていた塩や砂糖を少し入れてレモンを絞ってある水を飲んでいると、フィンがケリーに話しかけた。
「師匠。日焼け止めを塗り直していいですか?」
「ん?いいぞ」
「フィン兄ちゃん。日焼け止め塗ってんの?」
「うん。僕は肌が弱くて。日焼けすると真っ赤になって、めちゃくちゃ痛くなるんだ」
「うわぁ。大変だなぁ」
「難儀な体質だな。まぁ、日焼けって軽度の火傷らしいしな。汗で流れるだろうから、しっかり塗っとけよ」
「はい」
日焼け止めを塗り直したフィンと既に疲れきっているディルが腕立て伏せを始めた横で、マイキーは再びコリンと剣の素振りを始めた。たまにコリンの姿勢や剣の振り方を指導しつつ、マイキーもぶんぶん練習用の剣を振っていると、コリンが素振りを止めて、マイキーに自分の掌を見せてきた。
「先生ー。豆が潰れた」
「あ、本当だ」
「いたい」
「だよな。カーラー!」
マイキーは中庭に面している廊下の窓に顔を突っ込み、家の中にいるカーラを呼んだ。すぐにライナーを抱っこしたカーラと長男のアイールがやって来た。
「なに?」
「コリンの手の豆が潰れたんだ。薬ちょうだい」
「ありゃ。アイール。薬箱持ってきてよ」
「うん」
マイキーはアイールが持ってきてくれた薬箱から消毒液と傷薬を取り出した。コリンの豆が潰れて血が出ている所を消毒してやり、傷薬を塗って、ガーゼを当てた上から包帯を巻いてやる。
「先生は豆できないの?」
「もうできないよ。何年もやってるからね。豆が何度も潰れたら、そのうち皮膚が固く厚くなって胼胝になるんだ。そうなったら豆はできないよ」
「俺はいつなるの?」
「んー。まだまだ先かなぁ」
「えー。それじゃ、それまでずっと痛いの?」
「はははっ。まぁ、こればっかりは諦めるしかないかな」
「ぶー」
「今日はもう止めとく?」
「やるよ。早くじいさんみたいに強くなりたいもん」
「ははっ。じゃあ、やろうか」
「うん」
時折聞こえるディルムッドの情けない声を聞きながら、マイキーはコリンと剣の素振りを続けた。
ディルムッドがヘロヘロになりすぎたので、少年達は今日は終わりとなり、一緒に筋トレをしていたのに元気ピンピンなケリーと剣の手合わせをする。ケリーが振るう剣は重く速い。全然勝てる気がしないが、それでも必死にケリーの動きに食いついていく。半時程ケリー相手に剣を振るって、その後少し組手をしてから今日の稽古はおしまいである。
マイキーは大きく荒い呼吸のまま、ケリーに礼を言った。
「よーし。じゃあ、風呂に入ったら昼飯な。風呂に行くぞー。ディルー。あと少し頑張れー」
「ふぁーい……」
ヘロヘロのディルムッドをケリーが支えて、全員で風呂場に向かった。カーラ達の家は昔宿屋をしていたので風呂場が広く、更に温泉が引いてある。サンガレアは温泉地で、水源が豊かだから、申請して許可が下りれば、どこでも温泉が引けるのだ。
ディルムッドはかなりヘロヘロだが、フィンはまだマシな様子である。背が低くてかなり細いのに、意外と体力があるらしい。あと本当に男の子だった。豆が潰れて手が痛いコリンの頭と背中を洗ってやり、温泉に浸かると、気持ちよくて思わずほぅ、と小さな溜め息が出た。
稽古の後の温泉が子供の頃から好きだ。マイキーはまったりと温泉を楽しんだ。
朝食を食べたら、幼なじみとも言えるカーラとケビンの家に行かなくてはいけない。午前中にカーラの父親であるケリーに剣の稽古をつけてもらい、午後からはカーラ夫婦の次男であるコリンに装飾品の作り方を教える約束をしている。マイキーは父親と同じく、装飾品を作る職人である。父親が48歳とまだ若く、現役バリバリなので、一緒に花街にある店を切り盛りしている。
9歳の頃から元軍人のケリーに剣と護身術を教えてもらっている。マイキーは元々運動音痴なので、そんなに強くはなれなかったし、実際、結婚をするまで一緒に剣を習っていたカーラの方が強いくらいだ。しかし、なんとか喧嘩で自衛できる程度にはなった。店兼自宅が花街にあるので、酔っぱらいの喧嘩などに巻き込まれることがたまにある。マイキーの父親は喧嘩が弱くて、マイキーが子供の頃はたまに殴られて怪我をしたりしていた。自分と家族を守りたくて、ケリーに剣と護身術を習い始めた。運動音痴のマイキーは中々強くなれなかったが、それでも15年以上身体を鍛えているので、それなりに身体もしっかりしているし、喧嘩に巻き込まれても勝てはしないが負けもしない。怪我をすることも殆んどない。
マイキーの初恋は1つ年上のカーラである。昨年、ものすごく勇気を振り絞ってカーラにプロポーズをしたが、『ケビンだけがいればいいから』とフラれてしまった。
この世は男女比が平等ではなく、6:4で男の方が多い。故に、土の宗主国では複婚や同性婚が法的に認められている。女は5人まで夫をもつことができる。
マイキーは子供の頃からずっと恋をしていたカーラの2番目の夫になりたかった。カーラの夫であるケビンとは、子供の頃から一緒にケリーに剣を習っていて普通に仲がいいし、カーラと結婚しても、ケビンともうまくやれると思っていた。ケビンとの子供であるカーラの3人の息子達も本当に可愛いと思っている。自分との子供が産まれても、彼らと分け隔てなく愛して大事にできると思っていた。しかし、フラれてしまった。
正直まだ心の傷は癒えていないし、未だにカーラに恋をしている。プロポーズをしてフラれて以来、ぶっちゃけカーラ達の家に行くのが気まずくて仕方がない。しかし、ケリーに剣の稽古をつけてもらいたいし、コリンとの約束もある。コリンは様々な装飾品に興味があるらしく、1度簡単なピアスの作り方を教えてやったら見事にどハマりした。まだ7歳だが手先が器用で、色の組み合わせなどのセンスもいい。かなり将来有望なので、できたら将来は職人になってほしいところである。マイキーには5つ年下の弟がいるが、弟は花屋を経営している男と結婚したので子供は望めない。マイキーはカーラ以外と結婚する気がない。跡取りがいないので、できたらコリンに店を継いでほしい。
マイキーは自分に気合いを入れるように両頬をピシャリと手で叩くと、朝食を作るために台所へと向かった。
カーラ達の家に行くと、いつも稽古をしている中庭に、初めて見る背が高い少年とものすごい美少女がいた。
今日もハゲ頭が眩しいケリーがマイキーに向けて手を振った。最近剣を習い始めたコリンがマイキーに勢いよく笑顔で抱きついてきたので受け止めつつ、ケリーに挨拶をする。
「おはよう。おじちゃん。コリン」
「おう。おはよう」
「おっはよー!」
ケリーがひょろ長い感じの細い少年と美少女を指差した。
「今日からこいつらも一緒だ」
「フィン・スカンジナビアです。17歳です」
「ディルムッド・ファレロです!14歳です!ディルって呼んでください!」
「あ、どうも。マイキー・ニカインドです。おじちゃん、ディルは兎も角、フィンも剣やるの?女の子だけど」
「僕は男です」
「あ、そうなんだ。ごめんね」
「いえ。慣れてます」
「こいつらは筋トレメインなんだよ。マッチョになりたいんだと」
「へぇー」
「とりあえず走り込みからな。今日は俺はフィンとディルと走るから、マイキーはコリンと走ってくれないか?」
「いいよ」
「いえーい!先生と一緒ー!」
コリンがマイキーに抱きついたまま、嬉しそうにぴょんぴょん跳び跳ねた。コリンが可愛くて思わず頬を緩ませてコリンの頭を撫でると、ディルムッドが話しかけてきた。
「マイキーさんは学校の先生なんですか?マイキーさんも師匠程じゃないけど、いい筋肉してますね!」
「ありがとう?俺は単なる職人だよ。装飾品を作ってるんだ。コリンが俺を先生って呼ぶのは、俺がコリンに装飾品の作り方を教えてるから」
「俺ね!こないだはネックレス作ったよ!母さんにあげたんだ!」
「へぇー。すげぇな。コリン君」
「えっへへー」
「よーし。じゃあ準備体操したら早速走るぞー」
「「はいっ!」」
元気がいい少年達の返事から今日の稽古が始まった。普段は準備体操をした後、30分程走り、その後はひたすら練習用の剣を振ったり、ケリーと組手をしたりするが、今日はいつもとはメニューが変わる。
マイキーとコリンはいつも通り走った後、2人で剣の素振りをすることになった。マイキーはぶっちゃけ弱いが、基礎はしっかりできていて、剣の振り方は無駄がなくてとてもキレイだと言われている。まだまだ習い始めたばかりのコリンに教えてやることもできるレベルなので、今日はコリンと2人で剣を振る。ケリーは少年達の走り込みに付き合った後、基本となる筋トレの仕方を教えて、その後1時間程マイキーの剣の稽古に付き合ってくれるそうだ。
全員で準備体操をしっかりしたら、早速今日のメニューの開始である。
マイキーとコリンがケリーから言われていた剣の素振りの回数を終え、今度は2人で筋トレをしている時にケリーと少年達が帰って来た。ざっと2時間程ずっと走っていたらしい。ディルムッドはかなりヘロヘロになって、中庭に入るなりへたりこんだが、フィンはケロッとした顔をしていた。
「じいさん。おかえりー」
「おかえり。おじちゃん達」
「おー。ただいまー」
「ディルは大丈夫?」
「はぁ、はぁ、だ、だいじょばない……」
「フィンは足が速いな。あと意外と体力あるな」
「走るのは小さい頃から好きなんです」
「お、そうか。ディルはあんま運動得意じゃない感じか?」
「はぁ、はぁ、か、完全、室内派、です……」
「あー。だから細いのかもな。よーし。水分補給したら次は筋トレやるぞー」
「はいっ!」
「はいぃぃぃ……」
フィンは元気よく、ディルムッドはヘロヘロな返事をした。カーラが用意してくれていた塩や砂糖を少し入れてレモンを絞ってある水を飲んでいると、フィンがケリーに話しかけた。
「師匠。日焼け止めを塗り直していいですか?」
「ん?いいぞ」
「フィン兄ちゃん。日焼け止め塗ってんの?」
「うん。僕は肌が弱くて。日焼けすると真っ赤になって、めちゃくちゃ痛くなるんだ」
「うわぁ。大変だなぁ」
「難儀な体質だな。まぁ、日焼けって軽度の火傷らしいしな。汗で流れるだろうから、しっかり塗っとけよ」
「はい」
日焼け止めを塗り直したフィンと既に疲れきっているディルが腕立て伏せを始めた横で、マイキーは再びコリンと剣の素振りを始めた。たまにコリンの姿勢や剣の振り方を指導しつつ、マイキーもぶんぶん練習用の剣を振っていると、コリンが素振りを止めて、マイキーに自分の掌を見せてきた。
「先生ー。豆が潰れた」
「あ、本当だ」
「いたい」
「だよな。カーラー!」
マイキーは中庭に面している廊下の窓に顔を突っ込み、家の中にいるカーラを呼んだ。すぐにライナーを抱っこしたカーラと長男のアイールがやって来た。
「なに?」
「コリンの手の豆が潰れたんだ。薬ちょうだい」
「ありゃ。アイール。薬箱持ってきてよ」
「うん」
マイキーはアイールが持ってきてくれた薬箱から消毒液と傷薬を取り出した。コリンの豆が潰れて血が出ている所を消毒してやり、傷薬を塗って、ガーゼを当てた上から包帯を巻いてやる。
「先生は豆できないの?」
「もうできないよ。何年もやってるからね。豆が何度も潰れたら、そのうち皮膚が固く厚くなって胼胝になるんだ。そうなったら豆はできないよ」
「俺はいつなるの?」
「んー。まだまだ先かなぁ」
「えー。それじゃ、それまでずっと痛いの?」
「はははっ。まぁ、こればっかりは諦めるしかないかな」
「ぶー」
「今日はもう止めとく?」
「やるよ。早くじいさんみたいに強くなりたいもん」
「ははっ。じゃあ、やろうか」
「うん」
時折聞こえるディルムッドの情けない声を聞きながら、マイキーはコリンと剣の素振りを続けた。
ディルムッドがヘロヘロになりすぎたので、少年達は今日は終わりとなり、一緒に筋トレをしていたのに元気ピンピンなケリーと剣の手合わせをする。ケリーが振るう剣は重く速い。全然勝てる気がしないが、それでも必死にケリーの動きに食いついていく。半時程ケリー相手に剣を振るって、その後少し組手をしてから今日の稽古はおしまいである。
マイキーは大きく荒い呼吸のまま、ケリーに礼を言った。
「よーし。じゃあ、風呂に入ったら昼飯な。風呂に行くぞー。ディルー。あと少し頑張れー」
「ふぁーい……」
ヘロヘロのディルムッドをケリーが支えて、全員で風呂場に向かった。カーラ達の家は昔宿屋をしていたので風呂場が広く、更に温泉が引いてある。サンガレアは温泉地で、水源が豊かだから、申請して許可が下りれば、どこでも温泉が引けるのだ。
ディルムッドはかなりヘロヘロだが、フィンはまだマシな様子である。背が低くてかなり細いのに、意外と体力があるらしい。あと本当に男の子だった。豆が潰れて手が痛いコリンの頭と背中を洗ってやり、温泉に浸かると、気持ちよくて思わずほぅ、と小さな溜め息が出た。
稽古の後の温泉が子供の頃から好きだ。マイキーはまったりと温泉を楽しんだ。
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