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46:復職

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セドリックの1歳の誕生日の数日後。アルフレッドは久方ぶりに魔法省浄化課の白い制服に袖を通した。数日前にバージルがシャツの洗濯とアイロンかけをやってくれたので、洗濯屋に頼んだ時と同じように、シャツがパリッとしている。アルフレッドは洗面台の鏡で髭の剃り残しがないかを最終チェックすると、通勤用の鞄を片手に玄関に向かった。普段は髭の剃り残しなど気にしないが、今日は1年半以上ぶりの出勤である。流石に今日くらいは気合を入れたい。数日前に嫌々ながら床屋にも行った。正確に言うと、バージルに連行された。髪を短く切り、普段は使わない整髪料を使って髪を整えると、いつもよりも格段にこざっぱりとした印象になった。間違いなく今日限定である。面倒で髪のセットなんて毎朝やっていられない。

玄関の所で、セドリックを抱っこしたオリビアに見送ってもらった。
バージルは昨日から1か月半の任務に行っている。セドリックが生まれてからは特に、長期の任務はできるだけ断っていたらしいが、流石に断り切れなくなってきたらしい。出立前に、『くれぐれも無理や無茶はするな』と、しつこい程言われた。
オリビアは、セドリックが日中にアルフレッドがいないことに慣れるまで、王都にいてくれることになった。正直かなりありがたい。オリビアの負担が増えて申し訳ないのだが、仕事を辞めるという選択肢はないので、オリビアに甘えさせてもらうことにした。
オリビアが機嫌のいいセドリックを抱っこして、にっこりと笑った。


「いってらっしゃい。アル。忘れ物はない?気をつけなさいね。今日は定時で帰れるのでしょう?セドリックと一緒にお留守番してるわ」

「頼んだよ。お袋。定時で帰る予定だけど、もしかしたら少し遅くなるかもしれない。色々確認しておきたいことが多いからさ」

「いきなり飛ばさないようにね。じゃないと、あっという間に息切れしちゃうわ」

「うん。ありがと。セドリック。パパは仕事に行ってくるわ」

「うー?」

「パパ頑張ってくる。お前も留守番を頑張ってくれ」


アルフレッドが少し屈んでセドリックの柔らかい頬にキスをすると、セドリックが楽しそうな笑い声を上げた。まだ物事をしっかり理解できる歳ではないので仕方がないのだが、間違いなく分かっていない。昼間にアルフレッドがいなくても、あんまり泣かないでくれるといい。


「んー。セドリック、大丈夫かな」

「大丈夫よ。マルタちゃん達もいてくれるし。それに、どうしても慣れなきゃいけないことですもの」

「うん。じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」


アルフレッドはオリビアとセドリックに見送られて、家を出た。歩きながら、アルフレッドは大きく深呼吸をした。かなり久しぶりの仕事だ。今日は浄化の現状の把握と浄化魔法が以前と同様に使いこなせるか、身体能力がどれほど戻っているかを検証することで1日が終わるだろう。実際に浄化の仕事に出るのは、早くても3日後の予定である。アルフレッドは真っ直ぐに前を見て、自分のもう1つの居場所へと向かった。

1日の仕事を終え、アルフレッドは急ぎ足で帰宅していた。浄化魔法も身体能力も何の問題もなかった。予定を早めて、明日から早速、王都から一番近い瘴気の発生が少ない場所に行くことになった。タイミングがいいのか悪いのか、瘴気の発生箇所が急に増えた。たまにこういう時がある。猫の手も借りたい程の状況になっているので、一番瘴気の発生量が少ない場所に派遣されることになった。往復で5日程の旅程になる。キックスが『もう少し間を置いてからの派遣にしたかった』と渋い顔をしていたが、アルフレッドとしては好都合だ。できるだけ早く勘を取り戻したい。早々に、オリビアにセドリックを丸投げすることになって申し訳ない思いはあるが、アルフレッドはワクワクする心を押さえきれなかった。自分が成すべきと決めたことができる。信頼している仲間達と共に闘える。長くできなかったことができるようになった喜びで胸がいっぱいである。セドリックと離れるのは、正直かなり辛いし、心配でもある。しかし、セドリックの為にも、自分自身の為にも、頑張れるだけ頑張りたい。
アルフレッドは、ご機嫌斜めであろうセドリックを早く抱きしめる為に、夕暮れに染まる家路を急いだ。

アルフレッドはセドリックの大きな泣き声で出迎えられた。オリビアに聞けば、昼前から殆どずっと泣いていたらしい。生まれてから今まで、こんなにセドリックと離れたことがない。こうなるとアルフレッドもオリビアも予想していたことなので、アルフレッドは苦笑いしてギャン泣きしているセドリックを抱っこした。泣いているセドリックをあやし、少し落ち着いたら、セドリックをおんぶ紐でおんぶをして、夕食を作り始めた。オリビアに明日から浄化に出ることを告げると、『セドリックのことは任せて、貴方は成すべきことを成しなさい』と頭を撫でられた。
普段はセドリックを赤ん坊用のベッドで寝かせるが、今夜だけは一緒に寝ることにした。セドリックを自分の胸の上に乗せて、アルフレッドは優しくセドリックの頭を撫でた。


「セドリック。寂しい思いをさせてごめんな。帰ってきたら、また一緒に寝ようぜ」


眠ってしまったセドリックの温かい体温を感じながら、アルフレッドも目を閉じた。




------
復職して1か月半が過ぎた。その間に3回短期間の浄化の仕事に出ており、アルフレッドもセドリックもそれなりに今の状況に慣れてきた。アルフレッドはかなり勘を取り戻し、次回からは、今のような簡単なものではなく、以前と同じように浄化の仕事に出ることになった。
今日はバージルが王都に帰還した。アルフレッドは帰宅途中に肉屋に寄り、大量の羊肉を買って帰った。
ギャン泣きはしていないがご機嫌斜めなセドリックを抱きしめて頬擦りとキスをしまくった後、アルフレッドは制服から楽な部屋着に着替えて、セドリックをおんぶして、いそいそと夕食を作り始めた。
下拵えが済んだ頃合いに、バージルが帰ってきた。オリビアに声をかけられて、アルフレッドは玄関に向かった。

薄汚れた制服を着ているバージルを出迎え、まずは怪我の確認をした。幸い今回は無傷だった。昼間に魔法省で帰還した部下達を出迎えた時にバージルの顔を見ている。簡単な報告を受けたので無傷だったことは知っているが、念の為である。抱きついてこようとしたバージルの腹に蹴りをいれ、アルフレッドはいそいそと夕食を完成させるために台所へと移動した。今夜は少し豪勢な夕食にする予定だ。デザートにセドリックが好きな林檎のレモン煮も作る。アルフレッドはご機嫌に鼻歌を歌いながら、手早く料理を作り上げた。

オリビアが今夜はセドリックと寝てくれるというので、甘えさせてもらうことにした。アルフレッドは明日も仕事なので回数はできないが、1回くらいならセックスをしても大丈夫だろう。アルフレッドは、オリビアと共にセドリックがオリビアの部屋に行くなり、担ぎ上げてきたバージルに大人しくされるがままになり、自分の部屋へと移動した。

しつこい程ねちっこい愛撫をされてぐずぐずになっているアルフレッドのアナルにペニスを突っ込んだバージルが、すぐには動かず、だらしなく色んな液体を垂れ流しているアルフレッドの顔面を舐め回した。


「アルフレッド」

「あ?」

「仕事はどうだ」

「このタイミングで聞くか普通」

「ちゃんと話を聞いていない」

「出すもん出してからにしろよ」

「1回しかできないのだから、早く終わらせたくない」

「あっそ。まぁ、なんとか順調にいってる。次からは通常通りの仕事をすることになった。4日後にナハント地方に行く予定だ」

「ナハント地方か……3週間はかかるな」

「おう。お前はまだ次の任務は決まってないだろ?俺が不在の間はセドリックを頼むわ」

「任せろ。瘴気の状態は」

「今のところ、中の下だな」

「魔物が出るな」

「あぁ。久々の魔物とのご対面だ。せいぜい愛嬌を振りまいてやるさ。その間に騎士達がサクッと倒してくれるだろ」

「お前が愛嬌を振りまく前に倒す。それが騎士の仕事だ」

「知ってる。信頼してるさ。次の仕事の騎士達のリーダーはハクナール班長だしな。何度も一緒に仕事をしたことがある。堅実な人だ。心配はねぇな」

「ハクナールなら大丈夫だろう。とはいえ、絶対はない。油断はするな」

「分かってる」

「セドリックは大丈夫だったか?」

「最初のうちは毎日ギャン泣きしてたけど、最近は慣れてくれたみてぇだわ」

「そうか。オリビアさんに負担をかけている。明後日から俺は2連休だ。その間、オリビアさんにはゆっくりしてもらおう」

「ん。明後日は俺も休みだ。セドリックと3人で出かけようぜ。その方がお袋もゆっくり好きなことができるだろ」

「そうだな。どこへ行く?」

「あー。午前中に丘に行って、遊んで、弁当食って、午後から街で買い物は?セドリックの服を買い足してぇし」

「それでいこう。弁当はハムのサンドイッチがいい」

「チーズたっぷり?」

「あぁ」

「しょうがねぇな」

「アルフレッド」

「なんだ」

「そろそろ動きたい」

「いいぜ。俺を楽しませろよ。むっつり野郎」

「では、期待に応えてやろう」


バージルが楽しそうに目を細めて、アルフレッドに触れるだけのキスをした。アルフレッドはクックッと低く笑いながら、動き始めたバージルの首に両腕を絡めた。


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