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3:種馬面接
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魔法省の小会議室にて、アルフレッドはコーネリーと並んで椅子に座り、面接を行っていた。種馬面接である。魔法省の入り口の所にある掲示板に、デカデカとした文字で『急募!種馬』と書いた紙を貼っておいたら、想定以上に希望者が集まった。元々事前に面接をする予定だったのだが、既に10人以上と面接をしており、中々に疲れている。主に精神面が。アルフレッドは死んだ魚みたいな濁った眼で目の前の椅子に座る男を見た。持参してもらった身上書を見れば、50が近いおっさんである。おっさんが好色そうな顔でニヤニヤといやらしく笑いながら、隣のコーネリーを見ている。
「コーネリーちゃんは処女だよねぇ。ぐふっ。おじさんがいっぱい種付けしてあげるよぉ」
「速やかに帰れ。きめぇ。次」
続いて、おどおどとした雰囲気の痩せた男が入ってきた。コーネリーを微妙な上目遣いでじっと見ている。歳は38歳だ。
「え、えへへ……コーネリーちゃんの中はどんな色かなぁ。拡張して観察してあげるよ」
「きめぇ。変態が。とっとと失せろ。次」
筋骨隆々という言葉が当て嵌まるような暑苦しいマッチョな男が入ってきた。ふんふんと鼻息が荒い。歳は45歳である。
「孕むまで3日でも5日でも抱き潰してやろう!俺の一物の虜になること間違いなしだ!コーネリー!」
「うぜぇ。きめぇ。野生に帰れ。脳みそ筋肉野郎。……次」
まるっと半日かけて26人も面接をしたが、あとに残されたのは度重なるセクハラで精神的に傷を負ったコーネリーと疲れ切ったアルフレッドだけだった。種馬希望者の9割がコーネリー目当てだった。アルフレッドでもいいと言った者は、『突っ込む穴があればババアでもいいです』とか抜かしやがる脳みそ下半身野郎だった。速攻で帰らせた。まともな人間が誰一人もいなかった。アルフレッドは目の前の長机にぐったりと突っ伏した。
「課長」
「なんだ」
「アプローチの仕方を完全に間違えていますよ。僕はもう男性不振になりそうな勢いです」
「堪えろ。男に戻るためだ」
「そうですけどぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁぁぁん!やだぁぁぁぁ!世の中変態ばっかりだぁぁぁぁ!!」
コーネリーが顔を両手で覆って、わっと泣き出した。泣きたいのはアルフレッドも同じである。まさか、ここまで酷い変態野郎ばかりが集まるとは想定外だ。1人か2人はまともな奴がくると思っていたのに。完全に計算外である。
キマーンヌ地方での仕事をなんとか無事に終え、王都に帰ったアルフレッド達は種馬探しを始めた。能天気だったコーネリーも、『そのうち月経がくるぞ』と言えば、顔色を悪くして焦り始めた。月経があるということが全然頭になかったらしい。コーネリーは姉が3人もいる。月経時の苦痛を切々と語られたり、月経中でイライラしている姉に八つ当たりされたりしたことがあるらしく、コーネリーはアルフレッド以上に月経に対する恐怖心を持っている。
手っ取り早くていいと思ったのだが、掲示板に張り紙作戦は大失敗だ。アルフレッドは机に頬をつけたまま、めそめそ泣いているコーネリーを見て口を開いた。
「コーネリー。次の作戦を考えるぞ」
「うぅ……セクハラされるのは嫌ですぅ」
「……知り合いの独身恋人なしに片っ端から声をかけて、念のため面接をするのはどうだ。少なくとも、やべぇ変態は来ないだろ」
「最初からそれをやればよかったんじゃないですか?」
「うるせぇ。よし。そうと決まれば種馬候補に総当たりで行くぞ。変態以外なら何でもいい」
「えぇーー。僕はちょっとくらいはこだわりたいですよぉ。見た目とかぁ。性格とかぁ」
「あ?お前、男と結婚する気があるのか?確か、法的には同性婚はできなかっただろ。事実婚が関の山じゃねぇの」
「男同士の結婚に関してはそうですよ。僕はまだまだ恋にも結婚にも憧れを持っていますからね。事実婚にはなりますけど、やっぱり素敵な人と結ばれて、2人の愛の結晶を産みたいじゃないですかぁ。えへっ」
「そんなもん、うんこと一緒に便所に流しちまえ。俺達には時間がないんだよ。えり好みをするな」
「課長の鬼ぃ!酷いっ!夢くらいみてもいいでしょぉぉぉぉ!」
「うるせぇ。おら。動くぞ。面接は3日後だ」
「はぁーい。ダメもとで同期とかに声をかけてみますよ」
「俺の同期は既婚者かヤベェ変態しかいないんだよな……知り合いに片っ端から声をかけるしかねぇな」
アルフレッドは仕事で関わったことがある男で、尚且つ未婚の男を思い浮かべて脳内にリストを作った。椅子から立ち上がり、コーネリーと一緒に小会議室を出る。時間は有限だ。アルフレッドはコーネリーと別れて、足早に歩き始めた。
------
第2回種馬面接の始まりである。今回は合わせて3人だけだ。アルフレッドの知り合いが1人と、コーネリーの知り合いが2人である。事前に簡単な身上書を持参してもらうようお願いしている。アルフレッドは真剣な顔つきで、コーネリーと一緒に1人目との面接を始めた。
1人目はまだ26歳で、総務課で働いている地味な見た目だが感じのいい男だった。アルフレッドの知り合いである。アルフレッドの同期の従弟で、同性の恋人が欲しいらしい。
「さて。クラーク君。同性の恋人を得ようと思えば、まずは先に女の身体と性行為をする必要があるんだが、そこらへんはどうなんだ?」
「えっと……正直に言えば自信がある訳じゃないんですが、その、一応娼館に行ったこともあって、女性ともできなくはないです。ただ、男性の方が好きなので、男性の方と結ばれたいですね。あ、でも子供が大好きなので、産んでいただけるのなら一緒に子育てをしたいです。……その、ちょっと言いにくいのですが、子供がいたら両親や家族が安心しますし。とはいえ、男性同士ではどうしても子供が望めませんから、産んでいただいた後に男性の姿に戻ってもらえるというのは、僕にとってかなり都合がいいと言いますか……その、失礼な物言いをしてしまい、申し訳ありません」
「コーネリー。違う意味でやべぇぞ。めちゃくちゃまともなのが来た」
「やべぇですね。なんかもう感動を覚えるレベルでまともです」
「……今までどんな方と面接されていらっしゃるんですか?」
「「変態」」
「えーと……大変でしたね?」
クラークが反応に困ったような微妙な笑みを浮かべた。これは初っ端からかなりの当たりがきた。その後いくつか質問をして、クラークからも質問を受けてから、面接終了となった。後日、面接の結果を知らせに行くと約束をして、1人目の面接者は帰って行った。
コーネリーがニコニコと笑いながら、話しかけてきた。
「課長。なんかめちゃくちゃ素敵な人でしたね!優しそうだし、穏やかで。見た目はちょっと地味だけど、清潔感があって、すごく感じがよかったし!結婚するなら、あぁいう人がいいいですねぇ」
「まぁ、残り2人と面接をしてからだが、コーネリー的にはクラーク君がいいか?」
「はいっ!先のことまで考えてくれているようですし、なんだか頼りがいのある大人って感じで素敵です!」
「ふーん。じゃあ次にいくか」
次の面接者は18歳だった。コーネリーの後輩らしい。親が歳をとってからできた子供で、高齢になった親を早く安心させたいそうだ。アルフレッドからしたら、下手したら自分の子供でもおかしくないような年齢である。一応一通り質問をしたりしてから、ひとまず帰ってもらった。
最後の面接者が入ってきた瞬間、アルフレッドは思わず椅子からずり落ちかけた。ぴしっと白銀騎士団の制服を着た男は、もはやアルフレッドの天敵と言っても過言ではないバージルである。アルフレッドはバッと隣のコーネリーを見た。
「おいっ!なんでクソッタレ嫌味野郎が来るんだ!」
「僕が声をかけたからですね」
「な・ん・で!こいつに声をかけやがった!!」
「えー。だって、課長と同年代だし。独身だし。いいかなぁって」
「お前、あとでぐりぐりの刑な」
「なんでぇ!?」
アルフレッドは露骨に嫌そうな顔を隠さずにバージルを見た。バージルも眉間に皺を寄せてこちらを見ている。
「コーネリー目当てか?流石に歳が離れ過ぎだろ。おっさん」
「誰がおっさんだ。俺はまだ32だ」
「うっそ。マジかよ」
「嘘をついてどうする」
「老けてんな。えー。じゃあ、マジでコーネリー狙いかよ」
「違う。若すぎて対象外だ」
「じゃあ何で来たんだよ」
「……20の時に上司からの紹介で結婚をしたが、2年で離婚をした。遠征中に浮気されて、浮気相手の子供を身ごもったからだ。以来、独身で過ごしていたが、親から結婚をして子供をつくれという催促が年々激しくなり、ついには騙し討ちで見合いまでさせられた。相手は17の少女だった。そんな子供と夫婦になれる訳がない。俺の家は一応旧家で、跡取りの問題もある。単純に子供が欲しい。子供がいれば、煩い親戚連中も黙るだろう。勿論、子供はきちんと養育する。産んでくれさえすれば、それ相応の謝礼もする」
「ふーん」
「こう言ってはなんだが、貴殿ならば俺の良心が痛まない」
「痛めよ。クソ野郎」
「貴殿は男に戻れる。俺は子供をもてる。後腐れなくお互いの目的が果たせると思うが?」
「……腹立つことに一理あんだよなぁ。腹立つことに」
「貴殿は浄化に関しては確かな実績を残している。相手が貴殿ならば、俺の両親も反対はしないだろう。優秀な血が混じるからな」
「めちゃくちゃ面倒くさそうな家なんだけど」
「俺は今は一人住まいだ。実家には殆ど帰っていない。事の説明は全て俺がしよう。貴殿を煩わせることはない」
「ふーん。……一応考えさせてくれ。面接の結果は後日伝えに行く」
「分かった」
バージルが騎士らしいきびきびとした動きで小会議室から出て行った。アルフレッドは溜め息を吐きながら、ガシガシと頭を掻いた。
「バージル班長って課長にぴったりじゃないですか?別に種馬と仲良くなる気はないんでしょう?」
「あるわけねぇだろ」
「子供をちゃんと育ててくれるみたいですし、割り切ってバージル班長にしたらどうです?18歳の子に手を出せるのなら別ですけど」
「無理だ。あのいたいけな青少年に手を出すくらいならバージルで我慢する」
「まぁ、バージル班長との話し合い次第ですけど、別に一緒に暮らさなきゃいけない訳じゃないし。とりあえずバージル班長にお願いをしてみて、どうしても相性が悪かった時はその時にまた考えたらいいんじゃないですか?時間もないですし」
「……しょうがねぇ。お前はクラーク君だろ?」
「はい。彼となら男に戻った後もいい関係を築けるような気がします」
「そうかい。そいつは何より」
アルフレッドは椅子から立ち上がった。そうと決まれば、諸々早い方がいい。事前に話し合わなければいけないこともある。アルフレッドは足早に小会議室を出て、バージルを探しに行った。
「コーネリーちゃんは処女だよねぇ。ぐふっ。おじさんがいっぱい種付けしてあげるよぉ」
「速やかに帰れ。きめぇ。次」
続いて、おどおどとした雰囲気の痩せた男が入ってきた。コーネリーを微妙な上目遣いでじっと見ている。歳は38歳だ。
「え、えへへ……コーネリーちゃんの中はどんな色かなぁ。拡張して観察してあげるよ」
「きめぇ。変態が。とっとと失せろ。次」
筋骨隆々という言葉が当て嵌まるような暑苦しいマッチョな男が入ってきた。ふんふんと鼻息が荒い。歳は45歳である。
「孕むまで3日でも5日でも抱き潰してやろう!俺の一物の虜になること間違いなしだ!コーネリー!」
「うぜぇ。きめぇ。野生に帰れ。脳みそ筋肉野郎。……次」
まるっと半日かけて26人も面接をしたが、あとに残されたのは度重なるセクハラで精神的に傷を負ったコーネリーと疲れ切ったアルフレッドだけだった。種馬希望者の9割がコーネリー目当てだった。アルフレッドでもいいと言った者は、『突っ込む穴があればババアでもいいです』とか抜かしやがる脳みそ下半身野郎だった。速攻で帰らせた。まともな人間が誰一人もいなかった。アルフレッドは目の前の長机にぐったりと突っ伏した。
「課長」
「なんだ」
「アプローチの仕方を完全に間違えていますよ。僕はもう男性不振になりそうな勢いです」
「堪えろ。男に戻るためだ」
「そうですけどぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁぁぁん!やだぁぁぁぁ!世の中変態ばっかりだぁぁぁぁ!!」
コーネリーが顔を両手で覆って、わっと泣き出した。泣きたいのはアルフレッドも同じである。まさか、ここまで酷い変態野郎ばかりが集まるとは想定外だ。1人か2人はまともな奴がくると思っていたのに。完全に計算外である。
キマーンヌ地方での仕事をなんとか無事に終え、王都に帰ったアルフレッド達は種馬探しを始めた。能天気だったコーネリーも、『そのうち月経がくるぞ』と言えば、顔色を悪くして焦り始めた。月経があるということが全然頭になかったらしい。コーネリーは姉が3人もいる。月経時の苦痛を切々と語られたり、月経中でイライラしている姉に八つ当たりされたりしたことがあるらしく、コーネリーはアルフレッド以上に月経に対する恐怖心を持っている。
手っ取り早くていいと思ったのだが、掲示板に張り紙作戦は大失敗だ。アルフレッドは机に頬をつけたまま、めそめそ泣いているコーネリーを見て口を開いた。
「コーネリー。次の作戦を考えるぞ」
「うぅ……セクハラされるのは嫌ですぅ」
「……知り合いの独身恋人なしに片っ端から声をかけて、念のため面接をするのはどうだ。少なくとも、やべぇ変態は来ないだろ」
「最初からそれをやればよかったんじゃないですか?」
「うるせぇ。よし。そうと決まれば種馬候補に総当たりで行くぞ。変態以外なら何でもいい」
「えぇーー。僕はちょっとくらいはこだわりたいですよぉ。見た目とかぁ。性格とかぁ」
「あ?お前、男と結婚する気があるのか?確か、法的には同性婚はできなかっただろ。事実婚が関の山じゃねぇの」
「男同士の結婚に関してはそうですよ。僕はまだまだ恋にも結婚にも憧れを持っていますからね。事実婚にはなりますけど、やっぱり素敵な人と結ばれて、2人の愛の結晶を産みたいじゃないですかぁ。えへっ」
「そんなもん、うんこと一緒に便所に流しちまえ。俺達には時間がないんだよ。えり好みをするな」
「課長の鬼ぃ!酷いっ!夢くらいみてもいいでしょぉぉぉぉ!」
「うるせぇ。おら。動くぞ。面接は3日後だ」
「はぁーい。ダメもとで同期とかに声をかけてみますよ」
「俺の同期は既婚者かヤベェ変態しかいないんだよな……知り合いに片っ端から声をかけるしかねぇな」
アルフレッドは仕事で関わったことがある男で、尚且つ未婚の男を思い浮かべて脳内にリストを作った。椅子から立ち上がり、コーネリーと一緒に小会議室を出る。時間は有限だ。アルフレッドはコーネリーと別れて、足早に歩き始めた。
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第2回種馬面接の始まりである。今回は合わせて3人だけだ。アルフレッドの知り合いが1人と、コーネリーの知り合いが2人である。事前に簡単な身上書を持参してもらうようお願いしている。アルフレッドは真剣な顔つきで、コーネリーと一緒に1人目との面接を始めた。
1人目はまだ26歳で、総務課で働いている地味な見た目だが感じのいい男だった。アルフレッドの知り合いである。アルフレッドの同期の従弟で、同性の恋人が欲しいらしい。
「さて。クラーク君。同性の恋人を得ようと思えば、まずは先に女の身体と性行為をする必要があるんだが、そこらへんはどうなんだ?」
「えっと……正直に言えば自信がある訳じゃないんですが、その、一応娼館に行ったこともあって、女性ともできなくはないです。ただ、男性の方が好きなので、男性の方と結ばれたいですね。あ、でも子供が大好きなので、産んでいただけるのなら一緒に子育てをしたいです。……その、ちょっと言いにくいのですが、子供がいたら両親や家族が安心しますし。とはいえ、男性同士ではどうしても子供が望めませんから、産んでいただいた後に男性の姿に戻ってもらえるというのは、僕にとってかなり都合がいいと言いますか……その、失礼な物言いをしてしまい、申し訳ありません」
「コーネリー。違う意味でやべぇぞ。めちゃくちゃまともなのが来た」
「やべぇですね。なんかもう感動を覚えるレベルでまともです」
「……今までどんな方と面接されていらっしゃるんですか?」
「「変態」」
「えーと……大変でしたね?」
クラークが反応に困ったような微妙な笑みを浮かべた。これは初っ端からかなりの当たりがきた。その後いくつか質問をして、クラークからも質問を受けてから、面接終了となった。後日、面接の結果を知らせに行くと約束をして、1人目の面接者は帰って行った。
コーネリーがニコニコと笑いながら、話しかけてきた。
「課長。なんかめちゃくちゃ素敵な人でしたね!優しそうだし、穏やかで。見た目はちょっと地味だけど、清潔感があって、すごく感じがよかったし!結婚するなら、あぁいう人がいいいですねぇ」
「まぁ、残り2人と面接をしてからだが、コーネリー的にはクラーク君がいいか?」
「はいっ!先のことまで考えてくれているようですし、なんだか頼りがいのある大人って感じで素敵です!」
「ふーん。じゃあ次にいくか」
次の面接者は18歳だった。コーネリーの後輩らしい。親が歳をとってからできた子供で、高齢になった親を早く安心させたいそうだ。アルフレッドからしたら、下手したら自分の子供でもおかしくないような年齢である。一応一通り質問をしたりしてから、ひとまず帰ってもらった。
最後の面接者が入ってきた瞬間、アルフレッドは思わず椅子からずり落ちかけた。ぴしっと白銀騎士団の制服を着た男は、もはやアルフレッドの天敵と言っても過言ではないバージルである。アルフレッドはバッと隣のコーネリーを見た。
「おいっ!なんでクソッタレ嫌味野郎が来るんだ!」
「僕が声をかけたからですね」
「な・ん・で!こいつに声をかけやがった!!」
「えー。だって、課長と同年代だし。独身だし。いいかなぁって」
「お前、あとでぐりぐりの刑な」
「なんでぇ!?」
アルフレッドは露骨に嫌そうな顔を隠さずにバージルを見た。バージルも眉間に皺を寄せてこちらを見ている。
「コーネリー目当てか?流石に歳が離れ過ぎだろ。おっさん」
「誰がおっさんだ。俺はまだ32だ」
「うっそ。マジかよ」
「嘘をついてどうする」
「老けてんな。えー。じゃあ、マジでコーネリー狙いかよ」
「違う。若すぎて対象外だ」
「じゃあ何で来たんだよ」
「……20の時に上司からの紹介で結婚をしたが、2年で離婚をした。遠征中に浮気されて、浮気相手の子供を身ごもったからだ。以来、独身で過ごしていたが、親から結婚をして子供をつくれという催促が年々激しくなり、ついには騙し討ちで見合いまでさせられた。相手は17の少女だった。そんな子供と夫婦になれる訳がない。俺の家は一応旧家で、跡取りの問題もある。単純に子供が欲しい。子供がいれば、煩い親戚連中も黙るだろう。勿論、子供はきちんと養育する。産んでくれさえすれば、それ相応の謝礼もする」
「ふーん」
「こう言ってはなんだが、貴殿ならば俺の良心が痛まない」
「痛めよ。クソ野郎」
「貴殿は男に戻れる。俺は子供をもてる。後腐れなくお互いの目的が果たせると思うが?」
「……腹立つことに一理あんだよなぁ。腹立つことに」
「貴殿は浄化に関しては確かな実績を残している。相手が貴殿ならば、俺の両親も反対はしないだろう。優秀な血が混じるからな」
「めちゃくちゃ面倒くさそうな家なんだけど」
「俺は今は一人住まいだ。実家には殆ど帰っていない。事の説明は全て俺がしよう。貴殿を煩わせることはない」
「ふーん。……一応考えさせてくれ。面接の結果は後日伝えに行く」
「分かった」
バージルが騎士らしいきびきびとした動きで小会議室から出て行った。アルフレッドは溜め息を吐きながら、ガシガシと頭を掻いた。
「バージル班長って課長にぴったりじゃないですか?別に種馬と仲良くなる気はないんでしょう?」
「あるわけねぇだろ」
「子供をちゃんと育ててくれるみたいですし、割り切ってバージル班長にしたらどうです?18歳の子に手を出せるのなら別ですけど」
「無理だ。あのいたいけな青少年に手を出すくらいならバージルで我慢する」
「まぁ、バージル班長との話し合い次第ですけど、別に一緒に暮らさなきゃいけない訳じゃないし。とりあえずバージル班長にお願いをしてみて、どうしても相性が悪かった時はその時にまた考えたらいいんじゃないですか?時間もないですし」
「……しょうがねぇ。お前はクラーク君だろ?」
「はい。彼となら男に戻った後もいい関係を築けるような気がします」
「そうかい。そいつは何より」
アルフレッドは椅子から立ち上がった。そうと決まれば、諸々早い方がいい。事前に話し合わなければいけないこともある。アルフレッドは足早に小会議室を出て、バージルを探しに行った。
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