10 / 61
10
しおりを挟む
約半年後。
サンガレアの実家から、また荷物が届いた。
今はナイルはベッドで昼寝をしているので、ディリオは静かに部屋の中に大量の重い箱を運び込んだ。箱を開けて、中身を確認していく。保存のきく食料品が殆どだ。あとは身内の薬師が作った薬やエロ本、オナホ等のエロ製品だった。新作オナホをチェックしていると、箱の底の方に何本も張り型が入っていた。
使用感想を送らなければ、また新たに試作品を送ってくることはない。試作品がまた送られてきたということは、ナイルは張り型を使ったのだろう。寝ているナイルをチラッと見る。前立腺の感想を聞いてみたい。どれだけ気持ちいいのだろうか。正直かなり気になる。痔の悪化という心配がなければ、ディリオだって前立腺開発をしてみたいのだ。しかし、ナイルに尻の話題を振るのは如何なものだろう。結局ディリオは自分ではできないのだ。どれだけ気持ちいいのか聞いても、実体験はできない。聞いても空しいだけかもしれない。
ディリオはナイルに前立腺の感想を聞くのは止めにした。無言で少しナイルを羨ましく思いながら、ナイル用の鞄に張り型やオナホ、ローションを詰めていく。
繊細すぎる自分の肛門が憎い。もっと気持ちいいことがしたいのに。オナホだけで我慢するしかない。ディリオはアンニュイな溜め息を吐いた。
ーーーーーー
寂れたド田舎では特に大きな事件もなく、ディリオにとって2度目のトリット領での冬が訪れていた。暖かい気候のサンガレアに比べると、北にあるトリット領はかなり寒い。ただでさえ寒がりのディリオにはツラい季節がきてしまった。
朝。いつも通りの時間に目覚めた。
布団の中の温かいナイルの身体から離れたくない。昨年の冬にナイルと一緒にベッドで寝るようになってから、他の季節も惰性で一緒に寝るようになっていた。本人に言ったことはないが、ナイルからは不思議と落ち着くいい匂いがする。ディリオはナイルの匂いを結構気に入っていた。
温かいベッドの中から心底出たくないが、弁当と朝食を作らねばならない。名残惜しく眠るナイルに抱きついて暖をとり、鼻をナイルのうなじに擦りつけてクンクンとナイルの匂いを嗅ぐと、溜め息を吐いてディリオは布団から出た。朝勃ちしている自分の股関をなんとなく見る。ナイルが泊まっていない時は朝からサクッと抜く時もあるが、今日は無理だ。小便すればおさまる。空調をつけているから部屋の中は多少暖かいが、トイレはかなり冷える。分厚い上着を来て、手を擦りあわせながらディリオはトイレに行った。
出勤してすぐに、ナイルが直属の上司であるバリー小隊長に呼び出された。普段は仕事もせず、昼間から執務室で酒を飲むか、愛人を連れ込んでセックスしてるかのどちらかで、ナイルを呼び出すことなどないのに。
不思議に思いながらナイルを見送り、書類を処理していく。ナイル班の担当ではないのに、経理の書類まで混ざっている。どこまで仕事をしない奴らの集まりなんだ、ここは。
溜め息を吐きながら、仕方なく書類を片付けていると、不機嫌そうな顔でナイルが執務室に戻ってきた。
「おかえりなさい。何の用件でした?」
「……俺とお前、同時に特別長期休暇だ」
「……は?」
遠隔地に赴任していると、特別長期休暇というものが数年に1度与えられる。里帰りができるようにとの配慮によるものだが、ディリオはまだ赴任してきて2年目だ。普通なら、こんな短期間でもらえるものではない。第一、ガーゴイル中隊で唯一まともに仕事をしているナイル班の班長と副班長が長期休暇なんてもので休んだら仕事はどうなる。
「マジですか?」
「あぁ」
「何でまた」
「知らん。上の決定だ。何を考えていやがるんだか」
ナイルが溜め息を吐いた。ディリオも溜め息を吐きたい。本当に馬鹿じゃないかと思う。掃き溜め部隊の上層部は何を考えているのだろう。
「仕事はどうなるんですか?」
「ダブリンを補佐につけて、クインシーに班長代理をさせるしかないだろ。アイツ以外まともに班を指揮できる奴がいない」
「クインシーは書類仕事が壊滅的にダメじゃないですか。ダブリンの負担が大きすぎませんか?」
「……それ以外どうしようもない」
「まぁ、そうですけど」
2人揃ってまた溜め息を吐いた。
「ちなみに休暇はどれくらいの期間なんですか?」
「3ヶ月」
「……無駄に長いなぁ。いつから?」
「再来週からだ」
「……クインシーとダブリンに引き継ぎとか色々しなきゃいけませんね」
「あぁ。呼んできてくれ」
「分かりました」
ディリオは執務室から出ると、班の者がいる大部屋へと足早に向かった。長期休暇中、ディリオはサンガレアに帰るとして、ナイルはどうするのだろうか。ナイルから家族の話を聞いたことはない。王都の生まれというのは聞いたことがある。3ヶ月もあれば王都に行って帰ってできる。ナイルも実家に帰るのだろうか。
大部屋に着くと、ちょうどクインシーが巡回から帰ってきていた。クインシーとダブリンに声をかけて、一緒にナイルの執務室へと戻る。
一番寒い時期に暖かい気候の実家に里帰りできるのは素直に嬉しいが、仕事の事を考えるとなんとも喜べない。ナイル達が不在の間にクインシー達では対処できない事が起きてしまったり、何もなくても休暇明けの仕事の山を想像して、ディリオは早くも憂鬱になってしまった。
ナイルと2人で無言で帰路につく。冷たい風に吹かれながら、ディリオはマフラーに鼻先を埋めた。横を歩くナイルの頭を見下ろす。ナイルは男としてはかなり背が低い。女の平均身長あるかないか位だ。ディリオの父親もだいぶ背が低いが、ナイル程ではない。ディリオとナイルは頭1つ分くらい身長差があるので、屈んで覗きこまないと、横に並んで歩いているナイルの表情はよく分からない。
「班長」
「なんだ」
「長期休暇中はどうするんですか?」
「家で酒でも飲んでる」
「ご実家には戻らないので?」
「左遷になった時に勘当されてる」
「あら」
ふむ。
ディリオは少し考えた。
ナイルがトリット領に残るのならば、その場合の食事と睡眠はどうなるのだろうか。この約2年でナイルをかなり太らせることに成功している。しかし、それでもまだまだ細い。3ヶ月もあると、ディリオが来る以前の食生活に戻ってしまえばまた痩せてしまう。それはかなり嫌だ。食が兎に角細く、脂の多い肉は受けつけない体質のナイルに食事を少しでも多く食べさせる為に、かなり頑張ってきたのだ。知恵を絞り、毎日のように試行錯誤しながら、ナイルが食べられるものを作り続けてきた。ナイルはそもそも食べることが好きではないようだし、ディリオがいなければ、ナイルは多分また携帯食料を噛るだけの生活に戻る。そして痩せる。それだけは、なんとしてでも避けねばならない。
歩きながら、ディリオはふと名案が思い浮かんだ。ナイルもディリオと一緒にサンガレアに行けばいいのだ。そうすれば食事の心配をしなくてすむし、土の聖域があり土の神子がいるサンガレアは土の民にとっては居心地がいい場所だから、睡眠の方も心配しなくていい。なんて素晴らしい考えだ。ついでに剣術馬鹿な元将軍の祖父やサンガレア領軍の連中にナイルを鍛えてもらえれば、トリット領での日々の訓練に張り合いが出る。完璧ではないか。
「班長」
「なんだ」
「班長は俺と一緒にサンガレアに行くってことで」
「……は?」
ナイルがポカンとした顔でディリオを見上げた。何を言われたか理解できないという表情だ。そんなナイルにディリオは力強く頷いた。
「班長は俺とサンガレアに行きます。決定事項です」
「……勝手に決めるな」
「俺がいない間の飯と睡眠どうする気ですか。また痩せることになったら俺の努力が無駄になるじゃないですか。だから連れていきます」
「……飯くらい自分で食える」
「また携帯食料ですか?」
ナイルが言葉に詰まった。
ディリオがいなければ自分の食事事情が元の通り悪化する自覚はあるのだろう。ナイルは味が濃いものも得意ではないから、トリット領のキツい塩味の料理はそもそも口に合わない。ただでさえ食に積極的ではないのだ。店で金を払ってまで、口に合わないものを食べるわけがない。
「……お前の実家って、サンガレア公爵家だろう」
「そうですよ」
「そんなところに俺みたいなのが行けるか。場違いにも程がある」
「うち、めちゃくちゃ庶民派なんで問題ないです。野菜は畑から収穫!肉は業者に生きたままの家畜を連れてきてもらって家で解体!果物は畑か山に採りに行く!まぁ、そんな感じの家です。ばあ様の方針で使用人は1人もいませんよ」
「……いや、でも」
「でも、じゃありませんよ。決定事項です。決!定!事!項!」
「…………」
「あ、王都までは飛竜で行って、王都からは邸の転移陣で移動しますんで。そのつもりでいてください。着替えとかは最低限でいいですよ。気候が王都ともかなり違いますから、向こうで揃えた方がいいし」
「……行くとは言ってない」
「だから決定事項ですって。世話になるのが心苦しいとかなら、それこそ観光の合間に畑の世話とか手伝ってくれたらいいですし」
「畑の世話なんてしたことねぇよ」
「おや都会っ子」
「うるせぇ」
「ま、現地で教えますから大丈夫ですよ」
「だから、行くって言ってない」
「決定事項って何度も言ってるでしょ。つべこべ言わずに準備しといてくださいね」
ディリオは有無を言わさずナイルと共に里帰りすることを決定した。
拗ねたように唇を少し尖らせるナイルの顔を眺めながら夕食を食べる。休暇明けの仕事が今から憂鬱ではあるが、それなりに楽しい休暇になりそうな予感がする。ディリオは夕食を食べながら、ばあ様への手紙の文面を考えた。
サンガレアの実家から、また荷物が届いた。
今はナイルはベッドで昼寝をしているので、ディリオは静かに部屋の中に大量の重い箱を運び込んだ。箱を開けて、中身を確認していく。保存のきく食料品が殆どだ。あとは身内の薬師が作った薬やエロ本、オナホ等のエロ製品だった。新作オナホをチェックしていると、箱の底の方に何本も張り型が入っていた。
使用感想を送らなければ、また新たに試作品を送ってくることはない。試作品がまた送られてきたということは、ナイルは張り型を使ったのだろう。寝ているナイルをチラッと見る。前立腺の感想を聞いてみたい。どれだけ気持ちいいのだろうか。正直かなり気になる。痔の悪化という心配がなければ、ディリオだって前立腺開発をしてみたいのだ。しかし、ナイルに尻の話題を振るのは如何なものだろう。結局ディリオは自分ではできないのだ。どれだけ気持ちいいのか聞いても、実体験はできない。聞いても空しいだけかもしれない。
ディリオはナイルに前立腺の感想を聞くのは止めにした。無言で少しナイルを羨ましく思いながら、ナイル用の鞄に張り型やオナホ、ローションを詰めていく。
繊細すぎる自分の肛門が憎い。もっと気持ちいいことがしたいのに。オナホだけで我慢するしかない。ディリオはアンニュイな溜め息を吐いた。
ーーーーーー
寂れたド田舎では特に大きな事件もなく、ディリオにとって2度目のトリット領での冬が訪れていた。暖かい気候のサンガレアに比べると、北にあるトリット領はかなり寒い。ただでさえ寒がりのディリオにはツラい季節がきてしまった。
朝。いつも通りの時間に目覚めた。
布団の中の温かいナイルの身体から離れたくない。昨年の冬にナイルと一緒にベッドで寝るようになってから、他の季節も惰性で一緒に寝るようになっていた。本人に言ったことはないが、ナイルからは不思議と落ち着くいい匂いがする。ディリオはナイルの匂いを結構気に入っていた。
温かいベッドの中から心底出たくないが、弁当と朝食を作らねばならない。名残惜しく眠るナイルに抱きついて暖をとり、鼻をナイルのうなじに擦りつけてクンクンとナイルの匂いを嗅ぐと、溜め息を吐いてディリオは布団から出た。朝勃ちしている自分の股関をなんとなく見る。ナイルが泊まっていない時は朝からサクッと抜く時もあるが、今日は無理だ。小便すればおさまる。空調をつけているから部屋の中は多少暖かいが、トイレはかなり冷える。分厚い上着を来て、手を擦りあわせながらディリオはトイレに行った。
出勤してすぐに、ナイルが直属の上司であるバリー小隊長に呼び出された。普段は仕事もせず、昼間から執務室で酒を飲むか、愛人を連れ込んでセックスしてるかのどちらかで、ナイルを呼び出すことなどないのに。
不思議に思いながらナイルを見送り、書類を処理していく。ナイル班の担当ではないのに、経理の書類まで混ざっている。どこまで仕事をしない奴らの集まりなんだ、ここは。
溜め息を吐きながら、仕方なく書類を片付けていると、不機嫌そうな顔でナイルが執務室に戻ってきた。
「おかえりなさい。何の用件でした?」
「……俺とお前、同時に特別長期休暇だ」
「……は?」
遠隔地に赴任していると、特別長期休暇というものが数年に1度与えられる。里帰りができるようにとの配慮によるものだが、ディリオはまだ赴任してきて2年目だ。普通なら、こんな短期間でもらえるものではない。第一、ガーゴイル中隊で唯一まともに仕事をしているナイル班の班長と副班長が長期休暇なんてもので休んだら仕事はどうなる。
「マジですか?」
「あぁ」
「何でまた」
「知らん。上の決定だ。何を考えていやがるんだか」
ナイルが溜め息を吐いた。ディリオも溜め息を吐きたい。本当に馬鹿じゃないかと思う。掃き溜め部隊の上層部は何を考えているのだろう。
「仕事はどうなるんですか?」
「ダブリンを補佐につけて、クインシーに班長代理をさせるしかないだろ。アイツ以外まともに班を指揮できる奴がいない」
「クインシーは書類仕事が壊滅的にダメじゃないですか。ダブリンの負担が大きすぎませんか?」
「……それ以外どうしようもない」
「まぁ、そうですけど」
2人揃ってまた溜め息を吐いた。
「ちなみに休暇はどれくらいの期間なんですか?」
「3ヶ月」
「……無駄に長いなぁ。いつから?」
「再来週からだ」
「……クインシーとダブリンに引き継ぎとか色々しなきゃいけませんね」
「あぁ。呼んできてくれ」
「分かりました」
ディリオは執務室から出ると、班の者がいる大部屋へと足早に向かった。長期休暇中、ディリオはサンガレアに帰るとして、ナイルはどうするのだろうか。ナイルから家族の話を聞いたことはない。王都の生まれというのは聞いたことがある。3ヶ月もあれば王都に行って帰ってできる。ナイルも実家に帰るのだろうか。
大部屋に着くと、ちょうどクインシーが巡回から帰ってきていた。クインシーとダブリンに声をかけて、一緒にナイルの執務室へと戻る。
一番寒い時期に暖かい気候の実家に里帰りできるのは素直に嬉しいが、仕事の事を考えるとなんとも喜べない。ナイル達が不在の間にクインシー達では対処できない事が起きてしまったり、何もなくても休暇明けの仕事の山を想像して、ディリオは早くも憂鬱になってしまった。
ナイルと2人で無言で帰路につく。冷たい風に吹かれながら、ディリオはマフラーに鼻先を埋めた。横を歩くナイルの頭を見下ろす。ナイルは男としてはかなり背が低い。女の平均身長あるかないか位だ。ディリオの父親もだいぶ背が低いが、ナイル程ではない。ディリオとナイルは頭1つ分くらい身長差があるので、屈んで覗きこまないと、横に並んで歩いているナイルの表情はよく分からない。
「班長」
「なんだ」
「長期休暇中はどうするんですか?」
「家で酒でも飲んでる」
「ご実家には戻らないので?」
「左遷になった時に勘当されてる」
「あら」
ふむ。
ディリオは少し考えた。
ナイルがトリット領に残るのならば、その場合の食事と睡眠はどうなるのだろうか。この約2年でナイルをかなり太らせることに成功している。しかし、それでもまだまだ細い。3ヶ月もあると、ディリオが来る以前の食生活に戻ってしまえばまた痩せてしまう。それはかなり嫌だ。食が兎に角細く、脂の多い肉は受けつけない体質のナイルに食事を少しでも多く食べさせる為に、かなり頑張ってきたのだ。知恵を絞り、毎日のように試行錯誤しながら、ナイルが食べられるものを作り続けてきた。ナイルはそもそも食べることが好きではないようだし、ディリオがいなければ、ナイルは多分また携帯食料を噛るだけの生活に戻る。そして痩せる。それだけは、なんとしてでも避けねばならない。
歩きながら、ディリオはふと名案が思い浮かんだ。ナイルもディリオと一緒にサンガレアに行けばいいのだ。そうすれば食事の心配をしなくてすむし、土の聖域があり土の神子がいるサンガレアは土の民にとっては居心地がいい場所だから、睡眠の方も心配しなくていい。なんて素晴らしい考えだ。ついでに剣術馬鹿な元将軍の祖父やサンガレア領軍の連中にナイルを鍛えてもらえれば、トリット領での日々の訓練に張り合いが出る。完璧ではないか。
「班長」
「なんだ」
「班長は俺と一緒にサンガレアに行くってことで」
「……は?」
ナイルがポカンとした顔でディリオを見上げた。何を言われたか理解できないという表情だ。そんなナイルにディリオは力強く頷いた。
「班長は俺とサンガレアに行きます。決定事項です」
「……勝手に決めるな」
「俺がいない間の飯と睡眠どうする気ですか。また痩せることになったら俺の努力が無駄になるじゃないですか。だから連れていきます」
「……飯くらい自分で食える」
「また携帯食料ですか?」
ナイルが言葉に詰まった。
ディリオがいなければ自分の食事事情が元の通り悪化する自覚はあるのだろう。ナイルは味が濃いものも得意ではないから、トリット領のキツい塩味の料理はそもそも口に合わない。ただでさえ食に積極的ではないのだ。店で金を払ってまで、口に合わないものを食べるわけがない。
「……お前の実家って、サンガレア公爵家だろう」
「そうですよ」
「そんなところに俺みたいなのが行けるか。場違いにも程がある」
「うち、めちゃくちゃ庶民派なんで問題ないです。野菜は畑から収穫!肉は業者に生きたままの家畜を連れてきてもらって家で解体!果物は畑か山に採りに行く!まぁ、そんな感じの家です。ばあ様の方針で使用人は1人もいませんよ」
「……いや、でも」
「でも、じゃありませんよ。決定事項です。決!定!事!項!」
「…………」
「あ、王都までは飛竜で行って、王都からは邸の転移陣で移動しますんで。そのつもりでいてください。着替えとかは最低限でいいですよ。気候が王都ともかなり違いますから、向こうで揃えた方がいいし」
「……行くとは言ってない」
「だから決定事項ですって。世話になるのが心苦しいとかなら、それこそ観光の合間に畑の世話とか手伝ってくれたらいいですし」
「畑の世話なんてしたことねぇよ」
「おや都会っ子」
「うるせぇ」
「ま、現地で教えますから大丈夫ですよ」
「だから、行くって言ってない」
「決定事項って何度も言ってるでしょ。つべこべ言わずに準備しといてくださいね」
ディリオは有無を言わさずナイルと共に里帰りすることを決定した。
拗ねたように唇を少し尖らせるナイルの顔を眺めながら夕食を食べる。休暇明けの仕事が今から憂鬱ではあるが、それなりに楽しい休暇になりそうな予感がする。ディリオは夕食を食べながら、ばあ様への手紙の文面を考えた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
とある隠密の受難
nionea
BL
普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。
銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密
果たして隠密は無事貞操を守れるのか。
頑張れ隠密。
負けるな隠密。
読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。
※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。
溺愛
papiko
BL
長い間、地下に名目上の幽閉、実際は監禁されていたルートベルト。今年で20年目になる檻の中での生活。――――――――ついに動き出す。
※やってないです。
※オメガバースではないです。
【リクエストがあれば執筆します。】
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる