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9:『普通』の男
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『セオ』ことセオドール・グランディアは自身が無個性であると自覚している。10人中10人が普通だと答えるような、ごくごく普通の、美形でも不細工でもない顔立ちと中背中肉の身体で、特にこれと言って特技や人より秀でたところもない。セオドールは子供の頃から、その他大勢に埋没していた。サンガレアの中央の街の片隅で生まれ育ち、初恋が近所の優しくて面倒見がいいお兄さんだったこともあって、自分は男が好きな性的嗜好を持っていると自覚した。
セオドールの父親は街の役所に勤めていて、幼いセオドールに『安定して比較的高収入な役所勤めをしろ』と言い聞かせて育てた。セオドールは自分も父親同様街の役所に就職するのが当たり前だと思って大きくなった。セオドールは天才ではない。むしろ、人よりもずっと努力をしなければいけないような凡人である。セオドールは父親に言われるがまま、勉強をひたすら頑張り、サンガレアの中央の街にある高等学校を卒業して、無事に中央の街の役所に就職できた。セオドールはひたすら真面目に仕事をするしか能がなかった。特に秀でたところがあるわけでもなく、就職するまではずっと勉強漬けで趣味らしい趣味もなかった。淡い初恋は告白すらできずに終わったし、20代半ばまで恋人ができたこともセックスをしたこともなかった。
セオドールの人生にちょっとした転機が訪れたのは24歳の頃だった。生まれて初めて恋人ができたのだ。相手は同じ課に勤めていた先輩で、セオドールは彼から酒を飲むこともセックスの快感も芝居や読書を楽しむことも教えてもらった。残念ながら初めての恋人とは3年程で別れることになったが、彼と付き合うことになってから両親に男が好きだとカミングアウトをし、長生き手続きをすることにした。
セックスの楽しさを知って、セオドールは少し変わった。それ以前よりも人付き合いに積極的になったし、それまで見向きもしなかった『娯楽』というものに自分から進んで触れるようになった。芝居や読書、酒などの『娯楽』を楽しむようになると、自然と人との会話や話題も増えた。セオドールは本当に普通の没個性的な容姿だからモテる訳ではないが、それでも何人かの恋人はできた。恋人がいない時は一夜限りの快感を楽しむということも自然と覚えた。
街の役所勤めが20年目に突入しようという時に総合庁への異動を何故か打診され、セオドールはそれを受けた。総合庁は優秀なエリート揃いだと噂されている。何故、真面目だけが取り柄のような普通が服を着て歩いているみたいなセオドールがそんな所に推薦されたのか、未だに分からない。総合庁で働き始めても、セオドールの仕事に対する姿勢は変わらない。ただ真面目に仕事に取り組むだけだ。セオドールはなんだかんだで上手く仕事をこなせた。勿論、仕事に必要な知識を寝る間を惜しんでひたすら頭に叩き込んだりと努力は常にしている。
仕事も私生活も、セオドールなりに充実した日々を送っている。10年前に結婚も考えていた恋人と別れて以来、恋人はできていない。それでも一夜限りの遊び相手を求めてバーに行き、それなりに酒とセックスを楽しんだりしている。正直、普通以外の何者でもないセオドールが誘っても、相手が頷いてくれる確率は3割程だ。酒だけ飲んで帰る夜の方が圧倒的に多い。それでもセオドールは満足していた。自分がそれほど魅力的な見た目ではないことは自覚している。それなのに自分とセックスをしてくれる相手がいることが素直に嬉しい。セックスをしていると『普通』で『無個性』なセオドールでも、相手にとって『特別』になれているような気がして、凄く満たされる。たとえ、それが一夜限りの相手でも。
セオドールはセックスの快感も大好きだが、それ以上に仮初めでも誰かの『特別』になりたかった。
ーーーーーー
セオドールはお風呂上がりにソファーに座って家にストックしている蒸留酒を飲みながら、ローテーブルの上に置きっぱなしのマフラーを眺めていた。
ウーゴと偶然再会して、その時に借りて、というか問答無用で首に巻かれて、返しそびれてしまったものだ。マフラーはとても温かく、微かにウーゴの匂いがした。
ウーゴは何故自分に声をかけたのだろうか。その上、その時風邪を引いていたセオドールを心配してくれて、マフラーを巻いてくれて、家まで送ってくれた上に林檎までくれて、更には携帯通信具の連絡先の交換までしてくれた。
ウーゴにとっては自分は単なる一夜限りの相手だ。童貞卒業の相手ではあるが、ウーゴのように見た目も性格もいい男なら、望めばいくらでも相手はいる。ウーゴの筆下ろしをセオドールがしたのは、本当に偶々のことだ。別にウーゴがセオドールを気にかけるような必要もない。忘れられて当然だと思っていた。それなのにウーゴはセオドールを見つけて自分から声をかけてきた。セオドールの肩に触れ、隣に並んで歩き、別れ際にセオドールの頬にキスをして『またね』と言った。
携帯通信具の連絡先を交換した2日後、『風邪は治った?』とウーゴから短い文章が携帯通信具に届いた。セオドールは『治ったよ』とだけ返した。なんて返信したらいいのか分からなかったのだ。ウーゴからは『よかった』と返信があった。
年末というかなり仕事が忙しい時期で、それなりに修羅場であった為、セオドールはウーゴのことを考える余裕がなかった。当然セオドールからウーゴに連絡はしていないし、ウーゴからもそれから連絡はなかった。
やっと仕事納めを無事に迎え、年末年始の休みに入った。そして、ふとローテーブルに置きっぱなしにしてすっかり忘れていたウーゴのマフラーの存在とウーゴのことを思い出したのだ。
じーっとマフラーを見る。
マフラーを返した方がいいと思う。連絡手段があるのだから、早めにウーゴに連絡した方が多分いいとも思う。魔術研究所も年末年始の休みに入っている筈だ。でも、なんだか二の足を踏んでしまっている自分がいる。何故だろう。
セオドールはぐっとグラスの中の蒸留酒を一息で飲み干し、なんとなく、酒臭い大きな溜め息を吐いた。
ーーーーーー
そうだ。オナニーをしよう。
今は新年を迎えて2日目の昼前である。セオドールは暇を持て余していた。
新年明けて7日間はどこの店も休みだし、外に出れば、領地の内外から訪れた人々でごった返している。中央の街在住の者は、店が開くまでの間の食料品などを買い込んで自宅に籠って過ごす者が多い。セオドールもその1人である。一般的に年越しは家族と過ごすものだが、セオドールにはもう家族はいない。恋人がいる時は恋人と過ごすが、今はいない。もう10年程、年末年始の休みは1人で家に引き込もっている。
年末年始の休みに入ってからすぐに必要なものの買い出しをして、普段よりも念入りに家の掃除をした。年越しであった昨日は、暇潰しも兼ねて時間と手間のかかる料理を作った。昨日作った牛肉の赤ワイン煮や手作りのパン、その他が残っている為、昼食を作る必要がない。例年だと大抵積み本が何冊かあり、その消化をしたりするのだが、今年はそんなに本を買っておらず、残念ながら未読の本が家にはない。既読の本を読み返してもいいのだが、なんとなく気分じゃない。暇である。
セオドールは自分のベッドに寝転がって、ぼーっと天井を見上げていた身体を起こした。うん。オナニーしよう。真っ昼間だが、休みだし、誰もセオドールの家には来ないのだから何の問題もない。
セオドールはベッドから降りて、ベッドの下に置いてある紙袋を引きずり出した。掛け布団と毛布を適当にずらして、紙袋の中身をベッドのシーツの上に並べる。
お徳用ローション。黒いアナルビーズ。魔石内臓で動くバイブ。ぺニスの形そっくりなそこそこ大きいディルド。
セオドールの1人遊びの素敵な相棒達である。もう何年もの間付き合ってくれている。そろそろ新顔が欲しい。近いうちに花街にある大人の玩具専門店にでも行こうか。
セオドールは寝室に置いてあるチェストから大判のバスタオルを取り出して、ベッドのシーツの上に敷いた。念のため、空調を確認して、少し暖房の設定温度を高くした。朝起きた時に暖房を入れていたので寝室の中は暖かいが、全裸になるには少し肌寒い。寝室の温度が上がるまでに1度寝室を出て、セオドールは台所へ行き、お気に入りの蒸留酒の瓶とグラス、水を入れたピッチャーをお盆にのせて寝室へと運んだ。ベッド横の小さな目覚まし時計しか置いていないサイドテーブルにお盆を置いたら準備完了である。お風呂には終わった後に入る。どうせ汚れるのだから。
部屋着のゆったりとした厚地のセーターを脱ぐと、ベッドのヘッドボードに置いていた携帯通信具が鳴った。一瞬無視しようかと思ったが、セオドールは小さく溜め息を吐いて携帯通信具を手に取った。誰だろう。セオドールの携帯通信具には基本的に仕事関連の人の連絡先しか入っていない。唯一の例外はウーゴだ。
携帯通信具を弄ると、まさかの例外ウーゴからだった。
『挽き肉のパイ好き?』
その1文だけが送られてきていた。セオドールは首を傾げた。何故唐突に挽き肉のパイ?不思議に思いながらも短く返信する。
『好きだよ』
すぐにウーゴから返信がきた。
『うん』
『うん』ってなんだ。何なのだろう。よく分からない。もしかしたら酒に酔っているのではないだろうか。ウーゴは家族と同居しているから、新年の祝いをしている筈だ。酔って、よく分からないことをしているのだろう。多分だけど。
10分程ベッドに腰かけて『うん』に対する返事を考えてみたが、何も思いつかない。いや本当に何と返したものか。
むぅ、と唇を少し尖らせて携帯通信具を見つめていると、玄関の呼び鈴が鳴った。突然の音にビクッと思わず身体が震えた。
誰だろう。いやマジで誰だろう。セオドールの家に用事がある者などいない筈である。この時期は余所の人が多いし、酔っぱらいも多いから、トラブルがあちこちで起きたりする。セオドールも1度領地外から来ていた酔っぱらい集団(4人)に何故か突撃お宅訪問をされ、領軍のお世話になったことがある。
居留守を使おうかとも一瞬思ったが、誰が来たのかと好奇心が少しうずうずしたので、音をたてないように家の中を移動して玄関に向かい、ドアの覗き穴から外を見た。
ウーゴがいた。
セオドールの父親は街の役所に勤めていて、幼いセオドールに『安定して比較的高収入な役所勤めをしろ』と言い聞かせて育てた。セオドールは自分も父親同様街の役所に就職するのが当たり前だと思って大きくなった。セオドールは天才ではない。むしろ、人よりもずっと努力をしなければいけないような凡人である。セオドールは父親に言われるがまま、勉強をひたすら頑張り、サンガレアの中央の街にある高等学校を卒業して、無事に中央の街の役所に就職できた。セオドールはひたすら真面目に仕事をするしか能がなかった。特に秀でたところがあるわけでもなく、就職するまではずっと勉強漬けで趣味らしい趣味もなかった。淡い初恋は告白すらできずに終わったし、20代半ばまで恋人ができたこともセックスをしたこともなかった。
セオドールの人生にちょっとした転機が訪れたのは24歳の頃だった。生まれて初めて恋人ができたのだ。相手は同じ課に勤めていた先輩で、セオドールは彼から酒を飲むこともセックスの快感も芝居や読書を楽しむことも教えてもらった。残念ながら初めての恋人とは3年程で別れることになったが、彼と付き合うことになってから両親に男が好きだとカミングアウトをし、長生き手続きをすることにした。
セックスの楽しさを知って、セオドールは少し変わった。それ以前よりも人付き合いに積極的になったし、それまで見向きもしなかった『娯楽』というものに自分から進んで触れるようになった。芝居や読書、酒などの『娯楽』を楽しむようになると、自然と人との会話や話題も増えた。セオドールは本当に普通の没個性的な容姿だからモテる訳ではないが、それでも何人かの恋人はできた。恋人がいない時は一夜限りの快感を楽しむということも自然と覚えた。
街の役所勤めが20年目に突入しようという時に総合庁への異動を何故か打診され、セオドールはそれを受けた。総合庁は優秀なエリート揃いだと噂されている。何故、真面目だけが取り柄のような普通が服を着て歩いているみたいなセオドールがそんな所に推薦されたのか、未だに分からない。総合庁で働き始めても、セオドールの仕事に対する姿勢は変わらない。ただ真面目に仕事に取り組むだけだ。セオドールはなんだかんだで上手く仕事をこなせた。勿論、仕事に必要な知識を寝る間を惜しんでひたすら頭に叩き込んだりと努力は常にしている。
仕事も私生活も、セオドールなりに充実した日々を送っている。10年前に結婚も考えていた恋人と別れて以来、恋人はできていない。それでも一夜限りの遊び相手を求めてバーに行き、それなりに酒とセックスを楽しんだりしている。正直、普通以外の何者でもないセオドールが誘っても、相手が頷いてくれる確率は3割程だ。酒だけ飲んで帰る夜の方が圧倒的に多い。それでもセオドールは満足していた。自分がそれほど魅力的な見た目ではないことは自覚している。それなのに自分とセックスをしてくれる相手がいることが素直に嬉しい。セックスをしていると『普通』で『無個性』なセオドールでも、相手にとって『特別』になれているような気がして、凄く満たされる。たとえ、それが一夜限りの相手でも。
セオドールはセックスの快感も大好きだが、それ以上に仮初めでも誰かの『特別』になりたかった。
ーーーーーー
セオドールはお風呂上がりにソファーに座って家にストックしている蒸留酒を飲みながら、ローテーブルの上に置きっぱなしのマフラーを眺めていた。
ウーゴと偶然再会して、その時に借りて、というか問答無用で首に巻かれて、返しそびれてしまったものだ。マフラーはとても温かく、微かにウーゴの匂いがした。
ウーゴは何故自分に声をかけたのだろうか。その上、その時風邪を引いていたセオドールを心配してくれて、マフラーを巻いてくれて、家まで送ってくれた上に林檎までくれて、更には携帯通信具の連絡先の交換までしてくれた。
ウーゴにとっては自分は単なる一夜限りの相手だ。童貞卒業の相手ではあるが、ウーゴのように見た目も性格もいい男なら、望めばいくらでも相手はいる。ウーゴの筆下ろしをセオドールがしたのは、本当に偶々のことだ。別にウーゴがセオドールを気にかけるような必要もない。忘れられて当然だと思っていた。それなのにウーゴはセオドールを見つけて自分から声をかけてきた。セオドールの肩に触れ、隣に並んで歩き、別れ際にセオドールの頬にキスをして『またね』と言った。
携帯通信具の連絡先を交換した2日後、『風邪は治った?』とウーゴから短い文章が携帯通信具に届いた。セオドールは『治ったよ』とだけ返した。なんて返信したらいいのか分からなかったのだ。ウーゴからは『よかった』と返信があった。
年末というかなり仕事が忙しい時期で、それなりに修羅場であった為、セオドールはウーゴのことを考える余裕がなかった。当然セオドールからウーゴに連絡はしていないし、ウーゴからもそれから連絡はなかった。
やっと仕事納めを無事に迎え、年末年始の休みに入った。そして、ふとローテーブルに置きっぱなしにしてすっかり忘れていたウーゴのマフラーの存在とウーゴのことを思い出したのだ。
じーっとマフラーを見る。
マフラーを返した方がいいと思う。連絡手段があるのだから、早めにウーゴに連絡した方が多分いいとも思う。魔術研究所も年末年始の休みに入っている筈だ。でも、なんだか二の足を踏んでしまっている自分がいる。何故だろう。
セオドールはぐっとグラスの中の蒸留酒を一息で飲み干し、なんとなく、酒臭い大きな溜め息を吐いた。
ーーーーーー
そうだ。オナニーをしよう。
今は新年を迎えて2日目の昼前である。セオドールは暇を持て余していた。
新年明けて7日間はどこの店も休みだし、外に出れば、領地の内外から訪れた人々でごった返している。中央の街在住の者は、店が開くまでの間の食料品などを買い込んで自宅に籠って過ごす者が多い。セオドールもその1人である。一般的に年越しは家族と過ごすものだが、セオドールにはもう家族はいない。恋人がいる時は恋人と過ごすが、今はいない。もう10年程、年末年始の休みは1人で家に引き込もっている。
年末年始の休みに入ってからすぐに必要なものの買い出しをして、普段よりも念入りに家の掃除をした。年越しであった昨日は、暇潰しも兼ねて時間と手間のかかる料理を作った。昨日作った牛肉の赤ワイン煮や手作りのパン、その他が残っている為、昼食を作る必要がない。例年だと大抵積み本が何冊かあり、その消化をしたりするのだが、今年はそんなに本を買っておらず、残念ながら未読の本が家にはない。既読の本を読み返してもいいのだが、なんとなく気分じゃない。暇である。
セオドールは自分のベッドに寝転がって、ぼーっと天井を見上げていた身体を起こした。うん。オナニーしよう。真っ昼間だが、休みだし、誰もセオドールの家には来ないのだから何の問題もない。
セオドールはベッドから降りて、ベッドの下に置いてある紙袋を引きずり出した。掛け布団と毛布を適当にずらして、紙袋の中身をベッドのシーツの上に並べる。
お徳用ローション。黒いアナルビーズ。魔石内臓で動くバイブ。ぺニスの形そっくりなそこそこ大きいディルド。
セオドールの1人遊びの素敵な相棒達である。もう何年もの間付き合ってくれている。そろそろ新顔が欲しい。近いうちに花街にある大人の玩具専門店にでも行こうか。
セオドールは寝室に置いてあるチェストから大判のバスタオルを取り出して、ベッドのシーツの上に敷いた。念のため、空調を確認して、少し暖房の設定温度を高くした。朝起きた時に暖房を入れていたので寝室の中は暖かいが、全裸になるには少し肌寒い。寝室の温度が上がるまでに1度寝室を出て、セオドールは台所へ行き、お気に入りの蒸留酒の瓶とグラス、水を入れたピッチャーをお盆にのせて寝室へと運んだ。ベッド横の小さな目覚まし時計しか置いていないサイドテーブルにお盆を置いたら準備完了である。お風呂には終わった後に入る。どうせ汚れるのだから。
部屋着のゆったりとした厚地のセーターを脱ぐと、ベッドのヘッドボードに置いていた携帯通信具が鳴った。一瞬無視しようかと思ったが、セオドールは小さく溜め息を吐いて携帯通信具を手に取った。誰だろう。セオドールの携帯通信具には基本的に仕事関連の人の連絡先しか入っていない。唯一の例外はウーゴだ。
携帯通信具を弄ると、まさかの例外ウーゴからだった。
『挽き肉のパイ好き?』
その1文だけが送られてきていた。セオドールは首を傾げた。何故唐突に挽き肉のパイ?不思議に思いながらも短く返信する。
『好きだよ』
すぐにウーゴから返信がきた。
『うん』
『うん』ってなんだ。何なのだろう。よく分からない。もしかしたら酒に酔っているのではないだろうか。ウーゴは家族と同居しているから、新年の祝いをしている筈だ。酔って、よく分からないことをしているのだろう。多分だけど。
10分程ベッドに腰かけて『うん』に対する返事を考えてみたが、何も思いつかない。いや本当に何と返したものか。
むぅ、と唇を少し尖らせて携帯通信具を見つめていると、玄関の呼び鈴が鳴った。突然の音にビクッと思わず身体が震えた。
誰だろう。いやマジで誰だろう。セオドールの家に用事がある者などいない筈である。この時期は余所の人が多いし、酔っぱらいも多いから、トラブルがあちこちで起きたりする。セオドールも1度領地外から来ていた酔っぱらい集団(4人)に何故か突撃お宅訪問をされ、領軍のお世話になったことがある。
居留守を使おうかとも一瞬思ったが、誰が来たのかと好奇心が少しうずうずしたので、音をたてないように家の中を移動して玄関に向かい、ドアの覗き穴から外を見た。
ウーゴがいた。
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