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22:仲良し一家と過ごす休日

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秋の豊穣祭の次の休日。
プルートはスルト・キルト兄弟と共に、画材も扱っている文具屋に来ていた。ダナーは今日は仕事らしい。
初心者向けの油画セットも売っており、キャンバスも手頃な大きさのものがあった。
キルトが油画セットを見て目を輝かせ、値段を見て、しゅんとなった。


「おじさん。やっぱりいいです。思ってたより高いもん」

「え?いいよいいよ。気にしなくて。僕のために描いてもらうんだし」

「でも……」

「本当はあの絵を買い取りたいくらいだったんだよ。すっごく気に入っちゃって。でも、おじいちゃん達も欲しいかなって諦めたんだ。僕は君の絵が好きだよ。できたら、新しいものにも挑戦してほしいな」

「……うん」


プルートが笑ってキルトの頭を撫でると、キルトが嬉しそうに笑った。
店内を見て回っていたスルトが、本を片手に戻ってきた。


「キルト。油画の本あったぞ。初心者向けのやつ」

「ありがとう!にいちゃん!」

「よかったね」

「……プルートおじさん。本当にこんなに買ってもらっていいんですか?」

「ん?勿論。キルト君の絵が欲しいからね。正当な報酬だよ」

「……ありがとうございます」


スルトがぺこっと頭を下げた。プルートはなんとなくスルトの頭を撫でてから、ふと思いついたことを2人に提案した。


「よかったら、動物カフェに行かない?ペットと一緒に食事をしたりできるんだ。今から僕の家にミーミを迎えに行って、おじいちゃん達が家に居たら、おじいちゃん達も誘って。ご飯もケーキも美味しいし、ペット用のご飯もあるんだ」

「へぇ。そんな所があるんだ」

「行きたいです!」

「うん。じゃあ、一緒に行こうね」


プルートは笑って、目を輝かせているキルトの頭をわしゃわしゃと撫でた。
会計を済ませ、プルートの家に行き、うたた寝していたミーミを抱っこして、老夫婦の家に行った。幸い老夫婦は2人とも家に居て、動物カフェに誘うと、喜んで出かける準備を始めた。

皆で動物カフェに行き、可愛い猫ちゃん達に癒やされながら、美味しい昼食を食べていると、スルトがプルートに話しかけてきた。


「プルートおじさん。おじさんは役所に勤めてるんでしょ?」

「そうだよ。一応生活課の課長をやってるよ」

「俺も役所に就職したいんだ。どんなことを重点的に勉強した方がいいの?」

「そうだなぁ……数字に強いに超したことはないかな。あと、受付業務もあるし、愛想がいいと、役所に来る人が安心して相談や手続きができるね」

「愛想……愛想ってどうやったら身につくんだろ」

「口角を上げてごらん。それだけで微笑んでるように見えるから」


プルートがお手本のように口角を上げると、スルトもぎこちなく口角を上げた。堅い感じはするが、こういうことは慣れが一番である。


「そんな感じで、鏡の前で練習してみるといいよ。そうしたら、自然とできるようになるし」

「うん。ありがとう。おじさん」

「今年が高等学校の受験かな?」

「来年の年明けの1ヶ月後が試験日」

「じゃあ、今は追い込み時期かぁ。無理しないように頑張ってね」

「ありがとう。……おじさんってさ、父さんと恋人にならないの?」

「えー。うーん。ならないかなぁ。結婚はもうしたくないし、恋人も正直面倒でね。もう今年で44だし、今の生活が気に入ってるから、このままでいいかな」

「ふーん。プルートおじさんなら、父さんの恋人でもいいのに」

「ははっ。僕としては、友達くらいがいいかな」


プルートは美味しい珈琲を飲みながら、のほほんと笑った。スルトが残念そうな顔をしたが、本当に結婚も恋人も面倒で嫌だ。パパ活もできなくなるし。
プルートには、まだ寄り添ってくれる誰かは必要ない。遊び相手とミーミがいてくれたら、それで十分である。

動物カフェでのんびりした後、老夫婦の家で早速キルトがミーミとニャルコのスケッチをすることになった。2匹とも動物カフェで遊び回っていたので、おねむになっている。
老夫婦の家に行くと、自分の寝床に行くニャルコにミーミも一緒についていって、2匹でくっついて眠ってしまった。思わず悶えそうなくらい可愛らしい。
プルートが静かに端末で写真を撮っている横で、キルトが鞄からスケッチブックと鉛筆を取り出した。早速スケッチを始めたキルトの邪魔にならないように、プルートはそぅっと老夫婦達がいるテーブルの所へ移動した。
グラッドソンが珈琲を淹れてくれたので、有難くてご馳走になる。美味しい珈琲に、まったりとした空気が流れた。


「プルート。よかったら晩ご飯も一緒にどう?」

「喜んで。あ、前にご馳走になった豚肉の煮物の作り方を教えてもらいたいです。あれ、すごく美味しかったんで」

「いいよ。一緒に作ろうか」

「おじいちゃん。デザートにプリンが食べたい。俺も手伝うから作ってよ」

「勿論いいとも!珈琲を飲んだら、一緒に買い物に行こうかね」

「はい」

「うん」


アルブーノは集中してスケッチをしているキルトと一緒に家に残ると言ったので、グラッドソンとスルトと共に、老夫婦の家を出た。
買い物をして老夫婦の家に帰ると、ダナーがいた。仕事が漸く終わったそうだ。相変わらず疲れた顔をしている。


「ダナー。おかえり。急ぎの仕事は終わったのかい?」

「あぁ。なんとか。プルートさん。キルトに色々買ってくれてありがとうございます」

「いえいえ。殆ど僕の為の出費なんで」

「何かお礼がしたいんだが……」

「キルト君の絵を貰えたら、それで十分だよ。僕の家は殺風景だから、前々から何か飾るものが欲しかったんだ」


これは遠慮ではなく、本当の事だ。ミーミ用の猫タワーはあるが、他に部屋に飾ったりするようなものはない。観葉植物でも買ってみるかと思ったこともあったが、多分枯らしてしまうので結局買わなかった。家にあるのは豊穣祭の時に買った猫草くらいである。
納得してくれたのか、ダナーはそれ以上何も言ってこなかった。
あと少しで午後のお茶の時間なので、プルートはグラッドソンと一緒にパンケーキを焼くことにした。ダナーも台所へ来たので、一緒に作るみたいだ。
材料を小さなテーブルに出しながら、グラッドソンがニコニコと笑った。


「ダナー。貰い物の林檎があるから焼いてくれるかな」

「了解。シナモン多めだろ?」

「うん。プルートは僕とパンケーキを焼こう」

「はい。どのくらい焼きます?」

「うーん。人数が多いからね。多めに焼こうか。スルトもキルトも食べ盛りだし」


プルートはサクッと小麦粉等の分量を計り、2つの金属製のボウルに分けて入れた。グラッドソンと手分けして材料を混ぜ、フライパンで焼いていく。プルートがパンケーキを焼いている隣で、ダナーが切った林檎をバターと砂糖とシナモンをかけて焼き始めた。ふわっと香る甘い匂いが美味しそうである。
結構な量のパンケーキを焼き上げると、グラッドソンが珈琲を淹れてくれた。キルトの分だけは、蜂蜜入りの甘いミルクを作った。
居間のテーブルに出来上がったパンケーキ等を運ぶと、子供達が嬉しそうにいそいそと椅子に座った。
ダナーが作った焼き林檎は程よい甘さで、パンケーキとよく合って美味しかった。今度バレッドが家に来た時に作ってやろう。作り方は隣で見て覚えた。

美味しいパンケーキと珈琲でほっこりした後は、夕食作りである。スルトと一緒に、豚肉の煮物をグラッドソンに習う。先にプリンを手早く仕込んでから、プリンを蒸している間に、塊の豚肉を軽く下茹でして、調味料と共に煮込んでいく。野菜たっぷりのスープと芋と卵のサラダも作る。3人でお喋りをしながら、作業していると、あっという間に夕食が完成した。どれも美味しそうにできている。
グラッドソンがワインを出してきたので、大人はワインを飲むことになった。
皆で椅子に座り、乾杯をしてから、夕食を食べ始めた。甘辛い豚肉の煮込みに白ワインがよく合う。素直に美味しい。
子供達はバケットに豚肉の煮物を乗せて齧りついている。プルートも真似してみたら、すごく美味しかった。豚肉の脂の甘みがじわぁっと口の中に広がり、小麦粉の香りがしっかりとしているバケットと合わさって絶妙に美味しい。
プルートはお腹いっぱいになるまで、グラッドソン達と喋りながら、賑やかな夕食を楽しんだ。





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寝ているミーミを抱っこして帰宅し、風呂に入ってから執筆をしていると、端末の通知音が鳴った。端末を手に取って弄れば、ダナーから連絡がきていた。今日のお礼と、来週の休日にデートをしないかというお誘いであった。プルートはすぐに了承する返事を送った。お肌ピチピチの若い子もいいが、同年代のダナーとするセックスも楽しい。秋の豊穣祭を一緒に回ったが、それも楽しかった。
ダナーはどんなデートをするのだろうか。なんだか楽しみでワクワクしてしまう。
プルートは上機嫌に鼻歌を歌いながら、執筆を再開した。

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