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13:思わぬ見合い
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サンガレアに春が来た。
一人暮らしを始めて、そろそろ1年になる。ミーミとの暮らしも、『パパ活』も楽しくて、年明けから挑戦し始めた小説の執筆も難しいが楽しい。仕事も特に問題なく出来ているし、プルートは充実した日々を過ごしていた。
『パパ活』の遊び相手の1人だったダッドは無事に高等学校を卒業して、魔術研究所に就職した。『パパ活』も卒業ということで、ダッドとの最後の『パパ活』は色々とはっちゃけて、非常に楽しく、最後は笑顔でさよならをした。
今日は休日である。今日は『パパ活』の予定は入っておらず、仲良しの老夫婦と一緒にお茶会をする予定だ。プルートは朝早くからお茶会に持っていくパウンドケーキを焼いて、ミーミを連れて、家を出た。
老夫婦の家の玄関の呼び鈴を鳴らすと、笑顔のグラッドソンが出迎えてくれた。アルブーノとも挨拶をして、ミーミを2人の飼い猫ニャルコの近くに下ろしてやる。ミーミとニャルコは仲良しで、すぐにくっついて戯れて遊び始めた。
グラッドソンがパウンドケーキを切り分け、珈琲と共に運んできてくれた。グラッドソンにお礼を言って、珈琲を一口飲む。グラッドソンは珈琲を淹れるのがとても上手だ。グラッドソンに珈琲の淹れ方を習ったのだが、まだまだこの味には程遠い。
暫く猫の話や世間話をしていると、アルブーノが、唐突にプルートに端末を見せてきた。
端末には、どこかアルブーノに似ているような中年の男が映っていた。
「息子のダナーだ」
「へぇー。アルブーノさんに似てますね」
「今年で39になる。プルート。見合いする気はねぇか?」
「え……」
プルートはいきなりの話に驚いて、ピシッと固まった。困り顔をするプルートに、グラッドソンが説明をしてくれた。
「実は3ヶ月前に離婚したんだ。ダナーは服職人で、奥さんと上手くいかなくなって別れたんだよね」
「息子さんが2人いらっしゃいますよね」
「うん。上が14歳で、下が11歳。プルートの事情は知ってるから、結婚は嫌かなぁと思ったんだけど、僕達が知ってる人の中では、プルートが一番いいなぁって思って。あ!ちゃんと、うちの息子は家事とかバリバリするから!キレイ好きで掃除の鬼だし!」
「はぁ……いやでも……」
「……うちの息子は親の俺が言うのも何だが、お人好しってくらい優しい。子育ての手伝いは俺達でもできるが、息子に寄り添ってはやれないからよ。できたら、息子と一緒に寄り添って生きてくれる人がいてほしいのよ。まぁ、親心ってやつなんだが」
「んー。お気持ちは分からないでもないんですけど、女性と結婚されてらっしゃったのなら、女性の方がいいのでは?」
「いや。それがすっかり女性不信になってんだわ。なんか貯金を全部別の男に貢がれてたらしい」
「うわぁ……それはお気の毒……」
「会うだけ会っちゃもらえないかね」
プルートは少し困りながら悩んだ。老夫婦には、本当によくしてもらっている。もう結婚はしたくないが、そもそも相手の方がプルートのことを気に入らない可能性が高い訳だし、会うだけ会ってみるか。
プルートがそう言うと、アルブーノもグラッドソンも嬉しそうに笑った。
「今日の午後、うちに来るように連絡するわ。お互いラフな格好の方がいいだろ。孫達も呼んでいいか?」
「えぇ。それは勿論」
「プルート。それなら、こないだ作ってくれたクッキーの作り方を教えてくれないかな。あのジャムがのってるやつ。すごく美味しかったから、孫達にも食べさせたいんだ」
「いいですよ。材料はあります?」
「ジャムは苺しかないけど、それ以外はあるよ」
「あ、じゃあ、ブルーベリーとマーマレードをうちから持ってきますね。種類があった方が楽しいですし」
「ありがとう。助かるよ」
「いえいえ」
まさかの見合い話がきてしまったが、こんなハゲ1歩手前のおっさんを相手が気に入る訳がない。子供達だって嫌がるだろう。
プルートは断られる気満々で、楽観的に考え、一度自宅に帰り、ジャムを持って老夫婦の家に戻った。
グラッドソンと一緒にクッキーと昼食を作り、3人でのんびり昼食を楽しんでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
グラッドソン達の息子達が来るのには、少し早い時間だ。
グラッドソンとアルブーノが顔を見合わせ、アルブーノが椅子から立ち上がり、玄関へと向かった。
玄関の方から、アルブーノとアルブーノの息子一家がやって来た。
アルブーノの息子は、濃い茶髪に柔らかい胡桃色の瞳をしていて、中々に男前だったが、明らかに疲れた顔をしていた。上の子は父親似のようで、将来が楽しみな感じだが、なにやらぶすっとした顔をしている。下の子は母親似なのか、可愛らしい顔立ちをしていて、礼儀正しくプルートに『こんにちは』と挨拶をした後、グラッドソンに抱きつきにいった。
グラッドソンが下の子を抱きしめながら、ダナーを見上げた。
「ダナー。ちょっと早かったね」
「あぁ。悪い」
「お昼ご飯は?」
「食べてきた」
「そう。じゃあ僕達が食べ終わるまで、少し待っててよ。あ、この人がよく話してるプルートだよ。プルート。こっちは息子のダナー。上の子がスルトで、下の子がキルト」
プルートは椅子から立ち上がり、ダナー達と向かい合った。
「はじめまして。プルート・ガイナモーンです。ご両親には、いつもお世話になってます」
「……ダナー・ハルバードです。うちの両親と仲良くしてくれてるようで、ありがとうございます。ほら。スルト。キルト。挨拶」
「……スルトです。はじめまして。おじさん」
「キルトです」
「キルト君は一度会ったことがあるよね」
「うん。チョコレートくれたおじさん。あれ美味しかったです。ありがとうございました」
「いえいえ。お口に合ってよかったよ」
「おじいちゃん。おじいちゃん達が食べ終わるまで、ニャルコと遊んでていい?」
「いいよ」
「あれ?ちっこいにゃんこが増えてる」
「プルートの家の子さ。ミーミだよ。可愛いだろう」
「ふーん。おじさん。ミーミとも遊んでいいですか?」
「勿論いいよ」
「ありがとうございます」
スルトとキルトはミーミ達と遊びに行った。所在無さげなダナーだけが、プルート達の側にいる。グラッドソンがダナーに声をかけた。
「珈琲を淹れてくるから少し待ってなよ。椅子は折りたたみのを出してきて」
「いや、自分で淹れてくるから、父さん達は食べてろよ。食事中に来ちゃってごめん」
「まぁ気にするな」
ダナーが台所へと向かったので、プルートは椅子に座り、食事を再開した。
ダナーの疲れっぷりを見たら、なんだか以前の自分を思い出した。きっと毎日あんな顔をしていたのだろう。
仕事で疲れ、家事で疲れ、子育てで疲れ、離婚をしたのならば、離婚に関するあれこれでも疲れ……。なんともダナーが気の毒になってくる。だからといって、結婚はしたくないのだが。
珈琲を淹れてダナーが戻ってきた。大人の人数分淹れてきてくれたので、ちょうど食べ終わったプルートは、ありがたく食後の珈琲を楽しませてもらった。グラッドソンに習ったのだろう。ダナーが淹れてくれた珈琲は、グラッドソンの珈琲とそっくりで、とても美味しい。
プルートが素直にそう褒めると、ダナーが少し照れ臭そうに小さく笑った。
「父さん。親父。今日来たのは、見合いを断る為だ」
「何でだよ。プルートはすごくいい人なんだぞ」
「それは見たらなんとなく分かるよ。だけど、俺はもう結婚はしたくないんだ」
「しかしなぁ、1人じゃ大変だろうが」
「だからって再婚するのも変な話だろ。殆ど子育てを手伝ってほしいって言ってるようなものじゃないか」
「うっ……まぁ……」
「プルートさん」
「はい」
「すいません。多分、うちの両親が無理に頼んだんでしょう。申し訳ないんですが、見合いは無かったことにしてください」
「分かりました。僕も断られる気満々でしたから、気にしないでください。実は僕も去年の今頃離婚をしまして。今は独り身生活を満喫しているんですよ。僕ももう結婚はしたくないんです」
「あ、そうなんですか」
ダナーがどことなく、ほっとしたような顔をした。老夫婦には悪いが、プルートは本当に再婚する気がまるでないので、ダナーが先に断ってくれて助かった。
老夫婦はガッカリした顔をしていたが、『まぁ、本人同士の気持ちが一番大事だもんな』と納得していた。
それからは、普通に珈琲を楽しみ、子供達と一緒にミーミ達と遊んで、午前中に焼いたクッキーをお供にお茶を飲んでから、解散となった。
帰り際に、グラッドソンから謝られた。
「ごめんね。プルート。アルブーノがどうしてもプルートがいいって聞かなくてさ。まぁ、僕も反対しなかったんだけどね」
「いえ。そういう風に思ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
「ううん。遊ぶのもいいけど、君も誰かと寄り添えるといいなぁって。余計なお世話しちゃったね」
「……ありがとうございます。そうやって気遣ってもらえて、本当に嬉しいです」
「もし、気が変わったら言いなよ。これでも結構顔が広くてね。いい人紹介するよ」
「ははっ。その時はお願いしますね」
「うん。孫達と遊んでくれてありがとう。すごく楽しかったよ。またいつでもおいでよ」
「はい。次はお昼にいただいた鶏肉の煮物の作り方を教えてくださいよ」
「ははっ。勿論いいとも」
プルートはグラッドソンと笑顔で別れて、自宅に帰った。
遊び疲れておねむなミーミを籠のベッドに寝かせると、プルートは机の上にノートを置き、椅子に座ってペンを手に取った。
少しずつ書いていた小説が、あと少しでなんとか書き上がりそうなのだ。頭の中の物語を文章に書き起こしながら、ふと、プルートはペンを止めた。
今はミーミがいてくれて、『パパ活』をして遊んでくれる子達がいて、プルートの第二の人生を応援してくれるバレットがいる。
自分の人生に、寄り添って生きてくれる人は必要なのだろうか。
ダナーの疲れた顔を見れば、ダナーには必要なんじゃないかと思える。1人でも大変だったのに、子供が2人もいるし、別れた妻からかなりの財産を浪費されたみたいだし。ダナーを支えて、一緒に頑張ってくれる人がいた方がいいと思える。しかし、それは自分でなくていい。薄情なようだが、プルートはやっと開放されて、自由になったのだ。また『家族』に縛られる生活に戻るのは嫌だ。
プルートは再び小説を書き始めながら、ダナーに早くいい人が見つかればいいなぁと思った。
一人暮らしを始めて、そろそろ1年になる。ミーミとの暮らしも、『パパ活』も楽しくて、年明けから挑戦し始めた小説の執筆も難しいが楽しい。仕事も特に問題なく出来ているし、プルートは充実した日々を過ごしていた。
『パパ活』の遊び相手の1人だったダッドは無事に高等学校を卒業して、魔術研究所に就職した。『パパ活』も卒業ということで、ダッドとの最後の『パパ活』は色々とはっちゃけて、非常に楽しく、最後は笑顔でさよならをした。
今日は休日である。今日は『パパ活』の予定は入っておらず、仲良しの老夫婦と一緒にお茶会をする予定だ。プルートは朝早くからお茶会に持っていくパウンドケーキを焼いて、ミーミを連れて、家を出た。
老夫婦の家の玄関の呼び鈴を鳴らすと、笑顔のグラッドソンが出迎えてくれた。アルブーノとも挨拶をして、ミーミを2人の飼い猫ニャルコの近くに下ろしてやる。ミーミとニャルコは仲良しで、すぐにくっついて戯れて遊び始めた。
グラッドソンがパウンドケーキを切り分け、珈琲と共に運んできてくれた。グラッドソンにお礼を言って、珈琲を一口飲む。グラッドソンは珈琲を淹れるのがとても上手だ。グラッドソンに珈琲の淹れ方を習ったのだが、まだまだこの味には程遠い。
暫く猫の話や世間話をしていると、アルブーノが、唐突にプルートに端末を見せてきた。
端末には、どこかアルブーノに似ているような中年の男が映っていた。
「息子のダナーだ」
「へぇー。アルブーノさんに似てますね」
「今年で39になる。プルート。見合いする気はねぇか?」
「え……」
プルートはいきなりの話に驚いて、ピシッと固まった。困り顔をするプルートに、グラッドソンが説明をしてくれた。
「実は3ヶ月前に離婚したんだ。ダナーは服職人で、奥さんと上手くいかなくなって別れたんだよね」
「息子さんが2人いらっしゃいますよね」
「うん。上が14歳で、下が11歳。プルートの事情は知ってるから、結婚は嫌かなぁと思ったんだけど、僕達が知ってる人の中では、プルートが一番いいなぁって思って。あ!ちゃんと、うちの息子は家事とかバリバリするから!キレイ好きで掃除の鬼だし!」
「はぁ……いやでも……」
「……うちの息子は親の俺が言うのも何だが、お人好しってくらい優しい。子育ての手伝いは俺達でもできるが、息子に寄り添ってはやれないからよ。できたら、息子と一緒に寄り添って生きてくれる人がいてほしいのよ。まぁ、親心ってやつなんだが」
「んー。お気持ちは分からないでもないんですけど、女性と結婚されてらっしゃったのなら、女性の方がいいのでは?」
「いや。それがすっかり女性不信になってんだわ。なんか貯金を全部別の男に貢がれてたらしい」
「うわぁ……それはお気の毒……」
「会うだけ会っちゃもらえないかね」
プルートは少し困りながら悩んだ。老夫婦には、本当によくしてもらっている。もう結婚はしたくないが、そもそも相手の方がプルートのことを気に入らない可能性が高い訳だし、会うだけ会ってみるか。
プルートがそう言うと、アルブーノもグラッドソンも嬉しそうに笑った。
「今日の午後、うちに来るように連絡するわ。お互いラフな格好の方がいいだろ。孫達も呼んでいいか?」
「えぇ。それは勿論」
「プルート。それなら、こないだ作ってくれたクッキーの作り方を教えてくれないかな。あのジャムがのってるやつ。すごく美味しかったから、孫達にも食べさせたいんだ」
「いいですよ。材料はあります?」
「ジャムは苺しかないけど、それ以外はあるよ」
「あ、じゃあ、ブルーベリーとマーマレードをうちから持ってきますね。種類があった方が楽しいですし」
「ありがとう。助かるよ」
「いえいえ」
まさかの見合い話がきてしまったが、こんなハゲ1歩手前のおっさんを相手が気に入る訳がない。子供達だって嫌がるだろう。
プルートは断られる気満々で、楽観的に考え、一度自宅に帰り、ジャムを持って老夫婦の家に戻った。
グラッドソンと一緒にクッキーと昼食を作り、3人でのんびり昼食を楽しんでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
グラッドソン達の息子達が来るのには、少し早い時間だ。
グラッドソンとアルブーノが顔を見合わせ、アルブーノが椅子から立ち上がり、玄関へと向かった。
玄関の方から、アルブーノとアルブーノの息子一家がやって来た。
アルブーノの息子は、濃い茶髪に柔らかい胡桃色の瞳をしていて、中々に男前だったが、明らかに疲れた顔をしていた。上の子は父親似のようで、将来が楽しみな感じだが、なにやらぶすっとした顔をしている。下の子は母親似なのか、可愛らしい顔立ちをしていて、礼儀正しくプルートに『こんにちは』と挨拶をした後、グラッドソンに抱きつきにいった。
グラッドソンが下の子を抱きしめながら、ダナーを見上げた。
「ダナー。ちょっと早かったね」
「あぁ。悪い」
「お昼ご飯は?」
「食べてきた」
「そう。じゃあ僕達が食べ終わるまで、少し待っててよ。あ、この人がよく話してるプルートだよ。プルート。こっちは息子のダナー。上の子がスルトで、下の子がキルト」
プルートは椅子から立ち上がり、ダナー達と向かい合った。
「はじめまして。プルート・ガイナモーンです。ご両親には、いつもお世話になってます」
「……ダナー・ハルバードです。うちの両親と仲良くしてくれてるようで、ありがとうございます。ほら。スルト。キルト。挨拶」
「……スルトです。はじめまして。おじさん」
「キルトです」
「キルト君は一度会ったことがあるよね」
「うん。チョコレートくれたおじさん。あれ美味しかったです。ありがとうございました」
「いえいえ。お口に合ってよかったよ」
「おじいちゃん。おじいちゃん達が食べ終わるまで、ニャルコと遊んでていい?」
「いいよ」
「あれ?ちっこいにゃんこが増えてる」
「プルートの家の子さ。ミーミだよ。可愛いだろう」
「ふーん。おじさん。ミーミとも遊んでいいですか?」
「勿論いいよ」
「ありがとうございます」
スルトとキルトはミーミ達と遊びに行った。所在無さげなダナーだけが、プルート達の側にいる。グラッドソンがダナーに声をかけた。
「珈琲を淹れてくるから少し待ってなよ。椅子は折りたたみのを出してきて」
「いや、自分で淹れてくるから、父さん達は食べてろよ。食事中に来ちゃってごめん」
「まぁ気にするな」
ダナーが台所へと向かったので、プルートは椅子に座り、食事を再開した。
ダナーの疲れっぷりを見たら、なんだか以前の自分を思い出した。きっと毎日あんな顔をしていたのだろう。
仕事で疲れ、家事で疲れ、子育てで疲れ、離婚をしたのならば、離婚に関するあれこれでも疲れ……。なんともダナーが気の毒になってくる。だからといって、結婚はしたくないのだが。
珈琲を淹れてダナーが戻ってきた。大人の人数分淹れてきてくれたので、ちょうど食べ終わったプルートは、ありがたく食後の珈琲を楽しませてもらった。グラッドソンに習ったのだろう。ダナーが淹れてくれた珈琲は、グラッドソンの珈琲とそっくりで、とても美味しい。
プルートが素直にそう褒めると、ダナーが少し照れ臭そうに小さく笑った。
「父さん。親父。今日来たのは、見合いを断る為だ」
「何でだよ。プルートはすごくいい人なんだぞ」
「それは見たらなんとなく分かるよ。だけど、俺はもう結婚はしたくないんだ」
「しかしなぁ、1人じゃ大変だろうが」
「だからって再婚するのも変な話だろ。殆ど子育てを手伝ってほしいって言ってるようなものじゃないか」
「うっ……まぁ……」
「プルートさん」
「はい」
「すいません。多分、うちの両親が無理に頼んだんでしょう。申し訳ないんですが、見合いは無かったことにしてください」
「分かりました。僕も断られる気満々でしたから、気にしないでください。実は僕も去年の今頃離婚をしまして。今は独り身生活を満喫しているんですよ。僕ももう結婚はしたくないんです」
「あ、そうなんですか」
ダナーがどことなく、ほっとしたような顔をした。老夫婦には悪いが、プルートは本当に再婚する気がまるでないので、ダナーが先に断ってくれて助かった。
老夫婦はガッカリした顔をしていたが、『まぁ、本人同士の気持ちが一番大事だもんな』と納得していた。
それからは、普通に珈琲を楽しみ、子供達と一緒にミーミ達と遊んで、午前中に焼いたクッキーをお供にお茶を飲んでから、解散となった。
帰り際に、グラッドソンから謝られた。
「ごめんね。プルート。アルブーノがどうしてもプルートがいいって聞かなくてさ。まぁ、僕も反対しなかったんだけどね」
「いえ。そういう風に思ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
「ううん。遊ぶのもいいけど、君も誰かと寄り添えるといいなぁって。余計なお世話しちゃったね」
「……ありがとうございます。そうやって気遣ってもらえて、本当に嬉しいです」
「もし、気が変わったら言いなよ。これでも結構顔が広くてね。いい人紹介するよ」
「ははっ。その時はお願いしますね」
「うん。孫達と遊んでくれてありがとう。すごく楽しかったよ。またいつでもおいでよ」
「はい。次はお昼にいただいた鶏肉の煮物の作り方を教えてくださいよ」
「ははっ。勿論いいとも」
プルートはグラッドソンと笑顔で別れて、自宅に帰った。
遊び疲れておねむなミーミを籠のベッドに寝かせると、プルートは机の上にノートを置き、椅子に座ってペンを手に取った。
少しずつ書いていた小説が、あと少しでなんとか書き上がりそうなのだ。頭の中の物語を文章に書き起こしながら、ふと、プルートはペンを止めた。
今はミーミがいてくれて、『パパ活』をして遊んでくれる子達がいて、プルートの第二の人生を応援してくれるバレットがいる。
自分の人生に、寄り添って生きてくれる人は必要なのだろうか。
ダナーの疲れた顔を見れば、ダナーには必要なんじゃないかと思える。1人でも大変だったのに、子供が2人もいるし、別れた妻からかなりの財産を浪費されたみたいだし。ダナーを支えて、一緒に頑張ってくれる人がいた方がいいと思える。しかし、それは自分でなくていい。薄情なようだが、プルートはやっと開放されて、自由になったのだ。また『家族』に縛られる生活に戻るのは嫌だ。
プルートは再び小説を書き始めながら、ダナーに早くいい人が見つかればいいなぁと思った。
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