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59:ビビってる場合じゃねぇ

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 祥平は、ダンテのベッドに寝転がって、先日のデートの時に買った本を読んでいた。隣では、ダンテも本を読んでいる。

 今日は、祥平もミミーナも休みの日だ。ダンテの連休は明日までなので、今日は、たまには家でのんびりまったりしようということになった。婚約記念パーティーや結婚式の準備で、今すぐ出来ることは終わらせてある。朝の家事が終わったら、ダンテのベッドで、のんびりと読書を始めた。ちなみに、ダンテが読んでいるのは、男同士のセックスの仕方の本である。チラッと隣を見れば、俯せに寝転がったまま、ダンテが真剣な顔をして読んでいる。じんわり目元が赤く染まっているのが、ちょっと可愛い。

 祥平の枕の上で、気持ちよさそうな寝息を立てて、ピエリーが寝ている。読んでいる小説は面白いのだが、布団の中は温いし、祥平もちょっと眠くなってきた。昼食の支度まで、まだ少し時間がある。昼寝ならぬ朝寝をしても許される気がしてきた。

 祥平が大きな欠伸をしながら、読んでいた本をパタンと閉じると、同じタイミングで、ダンテが本を閉じた。ダンテの横顔を見れば、耳までじんわり赤くなっている。ダンテが、自分の枕に顔を埋めて、大きな溜め息を吐いた。


「読み終わりました?」

「……うん。ショーヘイ」

「なんです?」

「ちょっと試してみよう」

「えっ。今!?」

「うん。なんというか、勢いがある時にやらないと、絶対できない気がする」

「まぁ、ダンテさんですし? えー。じゃあ、シャワー浴びてきます」

「そのままでいいよ」

「俺が気になるんで、シャワー浴びてきます」

「あ、うん。じゃあ、その間に準備をしておくよ。あの箱は、ショーヘイの部屋?」

「はい」

「こっちに運んでおくね」

「お願いしまーす」


 祥平は、のろのろと起き上がり、ベッドから下りた。着替えを取りに、ダンテと一緒に階下の自分の部屋に行き、大きな箱を軽々と持ったダンテを、風呂場の前で見送った。脱衣場に入り、のろのろと服を脱ぎながら、祥平は、ドッドッドッドッと急速に高鳴り始めた胸を両手で押さえた。まさか、こんなに急にアナル開発を始めるとは、完全に予想外である。いや、確かに、アナル開発はダンテに丸投げする気満々だったのだが、初なチェリーボーイ・ダンテのことだから、もっとずっと先になると思い込んでいた。意外と思い切りがいいダンテに、ビックリである。

 身体を念入りに洗いながら、いよいよ未開拓のアナルを弄られるのかと思うと、ちょっと逃げ出したくなる。だって、ダンテのダンテは棍棒だし。あのサイズをアナルの中に入れられるようにするとか、ぶっちゃけ怖い。ダンテとセックスをしたいが、正直、ビビっている。

 祥平は、熱いシャワーを浴びながら、パァンと両手で自分の頬を叩いた。ビビっている場合ではない。折角、初なチェリーボーイ・ダンテがその気になったのだから、ここは喜ぶべきだ。アナルだって、もしかしたら気持ちがいいかもしれない。男の直腸内には前立腺なるやべぇところもあるらしい、ダンテのペニスの長さなら、結腸なるところまで届くかもしれない。どちらも、開発して慣れたら、ものすっごく気持ちがいいらしい。そういえば、男のアナルは、女のまんこよりも、数倍快感が強いと耳にしたことがあるようなないような。かなりうろ覚えなのだが、それが本当だと信じたい。浄化剤を使えば、いつか観たガチものスカトロアダルトビデオみたいな、えげつないことにはならないし、きっと大丈夫だ。
 ビビってません。ビビってませんよ? 

 祥平は、シャワーをとめると、身体を拭いて、下着を穿かず、弄りやすいように、ワンピースみたいな寝間着を着た。隣のえっちなお姉さん実践編である。自分のアナルを弄られるのは、正直、羞恥心の限界を試されるような気がするが、それもきっと回数を重ねれば、慣れていくだろう。
 ダンテと身も心も愛し合いたい。愛して、愛されて、ずっと寄り添って生きていたい。その為にも、ここは頑張り時である。ビビっている場合ではない。

 男は度胸だ。祥平は、合戦に赴く武士のような気分で、二階のダンテの部屋へと向かった。敵はビビっている己のみ。この戦、負ける訳にはいかない。
 祥平は、ダンテの部屋の前で深呼吸をすると、思い切って、部屋のドアを開けた。

 部屋に入ると、ダンテがベッドの上で、真っ赤な顔で、正座をしていた。こちらには、正座という座り方は無いらしいのだが、たまに祥平がベッドでお喋りをしたりする時にやるので、ダンテも真似してやるようになった。ちなみに、祥平の国の最上級の謝罪だと言って、土下座も教えてある。やることは無いだろうが、単なる話の流れで教えた。ピエリーの姿が見当たらないので、多分、外してくれたのだろう。後で、しこたま撫でまくってやらねば。

 祥平は、ダンテに気づかれないように、大きく深呼吸した。大丈夫だ。隣のえっちなお姉さんやったくらいだし、アナル開発がなんぼのもんじゃい。ダンテは、手先は器用な方だし、優しいから、怪我をさせることは無いだろう。

 祥平は、ベッドに上がり、ダンテの正面に正座した。ダンテが真っ赤な顔で、情けなく凛々しい眉を下げた。


「あの、ショーヘイ」

「なんです?」

「……足が痺れて動けない」

「つんつんしてもいいですか?」

「やめてください」


 まさかのダンテの言葉に、祥平は、脱力した。ぶっちゃけ、ものすごーく緊張していたが、なんか緊張が一気にゆるんだ。どうやら、シャワーに時間をかけ過ぎたらしい。

 祥平は、正座をしているダンテの足を崩させると、ダンテの足をつんつんしたいのを我慢して、ダンテの足の痺れがとれるまで、ダンテに膝枕をしてやった。単純に慣れの問題だが、祥平は、この程度では、足が痺れない。恥ずかしそうなダンテの髪を優しく撫でつつ、少しの間、他愛もないお喋りをした。

 ダンテの足の痺れがとれると、ダンテが起き上がって、胡座をかいて座った。祥平も足を崩し、胡座をかいた。男は度胸だ。アナル開発どんとこい。ダンテと愛し合う為だ。ビビっている場合じゃない。

 祥平は、ダンテには向かって、両手を差し出した。ダンテが、大きくてゴツい硬い手で、祥平の手をやんわり握った。ダンテの手は、温かい。なんとなく、ほっとする。

 祥平は、手を繋いだまま、ずりずりと移動して、ダンテに近寄った。膝立ちになり、ダンテの足を跨いで、腰を下ろし、ダンテに抱っこされる状態になる。ダンテは、顔は面白いくらい真っ赤だが、瞳は挙動不審に泳いでなくて、じっと祥平を見つめていた。ちょっと落ち着かないが、なんとなく気分はいい。ダンテの目には、祥平しか映っていない。

 祥平が、ダンテの鼻に自分の鼻を擦りつけると、ダンテがぎこちなく祥平の下唇を優しく吸った。慣れていない感じが、逆にぐっとくる。祥平は、じわぁっとテンションが上がってきた。祥平も、ダンテの下唇を優しく吸って、誘うように、つーっとダンテの下唇に舌を這わせた。おずおずとダンテが舌を伸ばして、祥平の舌をチロッと舐めた。舌をゆっくりと絡ませて、お互いの唾液を混ざり合わせるように、ぬるりぬるりと舌を擦りつけ合う。じわじわ気持ちがいいし、興奮してきた。

 祥平は、はぁっと熱い息を吐いて、唇を触れ合わせたまま、囁いた。


「ダンテさん。俺のアナル、弄って。愛し合えるようにして」

「うん」


 ダンテが、くちゅっと祥平の唇を優しく吸った。祥平は、腹を括って、ダンテに言われるがままに、ダンテの上からどいて、シーツの上に四つん這いになった。

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