上 下
47 / 78

47:遊ぶぞー!

しおりを挟む
 ダンテの休み4日目の朝。今日は、祥平もミミーナも休みの日である。
 祥平は、いつもより少し早くピエリーに起こしてもらうと、ピエリーと戯れてから、寝ているダンテの肩を掴んで、ゆさゆさと優しく揺さぶった。


「ダンテさーん。朝ですよー。ピクニックです。ピクニーック!」

「んぁー……おはよう。ショーヘイ。ピエリー」

「おはようございます。シャワーをお先にどうぞ」

「うん。弁当を作らなきゃね。釣り針と釣り糸を忘れないようにしないと」

「はい。ピエリーちゃんも、今日はいっぱい遊ぼうねー!」

「ぴるるるるっ!」


 ピエリーがご機嫌な声で鳴き、祥平の肩に乗って、すりすりと頬に顔を擦りつけてきた。朝から可愛いピエリーに癒やされつつ、ショーヘイは、ピエリーを撫でながら、ベッドから下りた。

 今日は、ダンテと一緒にピエリーに乗って、以前、行ったことがある森へピクニックに行く。今回は、魚釣りもする予定だ。また、あの美味しいニーバランカが食べられるかと思うと、楽しみでワクワクしてくる。

 祥平は、パタパタと庭へ向かい、手早くアルモンを多めに収穫して、家の裏の水道で洗った。
 台所で、朝食の下拵えをしていると、飛行服を着たダンテがやって来たので、交代して、シャワーを浴びに行く。ざっとシャワーを浴びて汗を流すと、身体を拭いて、飛行服を着た。少し伸びた髪は、ダンテに乾かしてもらう。

 パタパタと台所へ行けば、ダンテが手際よく朝食を作っていた。ダンテが、おねだりをするより先に、祥平の濡れた髪を乾かしてくれた。ダンテにお礼を言ってから、一緒に弁当を作り始める。魚を釣る予定なので、今回は、弁当は少なめに作る。薄いパンを焼き、ダンテのお土産の美味しいジャムを塗って、くるくると巻く。別の薄いパンには、ハルハルと甘辛い感じに焼いたホロホロ鳥を一緒に巻いた。水筒に、温かいラーリオ茶を淹れて、カップとアルモンと一緒にバスケットに入れたら、弁当の準備完了である。

 2人と一匹で、いつも通り朝食を食べると、一緒に後片付けをして、布団と洗濯物を干した。
 朝の家事が終わったら、早速、出発である。祥平は、ダンテに抱っこされて、大きくなったピエリーに着けた鞍に乗った。落下防止用のベルトを着けてもらうと、いざ出発進行である。

 ふわっと上空に高く飛び上がったピエリーが、どんどん前に進んでいく。空の上から見える景色が、新鮮で、とても美しい。あっという間に、森の中の泉に到着した。もうちょっと乗っていたい気もしたが、帰りにも乗せてもらうので、帰りの楽しみにしておく。

 バスケット等を泉の近くの木の下に置いて、ダンテと一緒に森の中に入ると、ダンテが、ふわっと浮き上がって、大きな木の上の方にある長めの枝をナタみたいな大きなナイフで切り落とした。地上に下りてきたダンテから、木の枝を受け取ると、ダンテがもう一度、ふわっと浮き上がって、別の枝を切り落とした。

 木の枝についている小さな枝や葉っぱを、ダンテがナイフで器用に切り落とし、やや太めの枝も、手頃な太さに手早く削った。釣り糸と釣り針をつければ、あっという間に釣り竿が完成した。

 ダンテと一緒に泉の所に戻ると、ダンテが、泉の側の大きめの石をひっくり返した。石の下には、うにょうにょ動く細長い虫がわんさかいた。ちょっと鳥肌が立つくらい、わんさかいる。
 ダンテが、釣り針にうにょうにょ動く虫をつけて、おっとりと笑って、祥平に釣り竿を手渡した。


「じゃあ、釣りをしようか」

「はい。ダンテさん、めちゃくちゃ器用ですねー」

「そうかな? 竜騎士なら、誰でもできるよ」

「竜騎士すげー。魔獣を狩ったりもできるんですか?」

「うん。剣や槍も使えるけど、私は弓を使うことの方が多いなぁ。弓が一番好きだし、得意なんだよね。狩った魔獣を捌いたりもできるよ」

「ほぁー。すげー」

「さっ。ショーヘイ。いっぱい釣ろうね」

「はい! 多めに釣れたら、明日の昼飯に、ミミーナさんにもニーバランカを食べてもらいましょう。明日の昼くらいまでなら、保ちますよね?」

「帰ってすぐに魔導冷蔵庫に入れたら、多分大丈夫。一応、保冷用の氷も持ってきてるし」

「ドーラちゃんは、明日は勉強の日なので、ミミーナさんに美味しく食べてもらいましょう。ドーラちゃんには、また今度で」

「うん。じゃあ、競争する? どっちがいっぱい釣れるか。勝った方は、お菓子を奢ってもらえるってことで」

「いいですね! 楽しそう! 美味しいお菓子を奢ってもらいますとも」

「ははっ! じゃあ、お昼ご飯の時間まで、勝負ね」

「はい!」


 祥平は、ワクワクしながら、ダンテに習って、釣り糸を泉の中に向かって放った。ぽちゃんと餌付きの釣り針が泉の中に落ちると、魚が食いつくまで、じっと大人しく待つ。


「あ、かかった」

「うっそ! 早くないですか!?」

「んーー。よいしょっ。あ、これはアンダランだ。これも美味しいよー」

「おぉ。珍しく、顔がなんか可愛い。ちょっと栗鼠っぽい。愛嬌がある顔してますねー」

「これは、ミーミルの実を振って焼いた方が美味しいやつだね。とりあえず、持ってきた箱に入れとくよ」

「はい。こっちもかかれー。食いつけー。できれば、デカいやつー」

「ははっ! 頑張れー」


 ダンテが、持参してきたやや大きめの箱に泉の水を入れて、アンダランを入れた。うにょうにょ動く虫を釣り針につけたダンテが、慣れた様子で泉に向かって釣り竿を振り、餌付きの釣り針を泉の中に落とした。

 祥平は、釣り竿が引っ張られる感覚に、慌ててダンテに声をかけた。


「ダンテさん! なんか引っ張ってる! なんか引っ張ってる! どうすんの!? これ!?」

「はいはい。落ち着いてー。手伝うから、釣り竿を引きながら上げてごらん」

「うぉぉ……なんか、地味に重い?」

「大物がかかってるみたいだね。よっと」

「わぁ!? お、おぉ!? デカッ!! めちゃくちゃデカいニーバランカきたーー!!」

「わぁ! これは絶対に美味しいやつだね」

「よっしゃあ!」


 祥平は、嬉しくて、ダンテと笑顔でハイタッチした。一匹目が漸く釣れた。ちなみに、ダンテは既に三匹釣っている。
 祥平が釣り上げたタイミングで、ちょうど昼時になっていた。釣り勝負は、ダンテの勝ちである。ちょっと悔しいが、楽しかったのでよしとする。

 ダンテが、釣り上げたアンダランとニーバランカの鱗を手早くナイフで取り、腹を開いて、腸を取り出した。ずっと近くでゴロゴロしていたピエリーが、よさ気な枝を拾ってきてくれたので、それをダンテが手早く串に加工してくれた。魚に串を刺したら、火を起こして、早速魚を焼き始める。

 ミーミルの実を振って焼いたアンダランは、鮎みたいな味がした。しっとりほこほこの身は、上品な感じで、素直に美味い。2人と一匹で分けっこして食べた大きなニーバランカも、以前食べたものよりも美味しかった。軽めに作った弁当も美味しかったし、ピクニックって、本当に美味しくて楽しい。

 午後からは、暑くなってきたので、ダンテと一緒に、全裸で泉の中を泳ぎ始めた。祥平が、身体の力を抜いて、ひんやりとした泉にぷかぷか浮かんでいると、近くにやって来たダンテが、楽しそうにおっとり笑った。


「水が冷たくて気持ちいいね」

「はい。このまま寝れそー」

「流石に寝るのはちょっと。あ、ピエリー」

「ぴるるるるっ!」

「あはは! ピエリーちゃんも一緒に泳ぐ?」

「ぴるるっ!」

「よっしゃ。じゃあ、泳ぎますかー。ニーバランカ捕まえましょうよ。お土産用に」

「いいよ。晩ご飯は家で食べようか。早めに魔導冷蔵庫に入れた方がいいだろうから」

「はーい。夕方までが勝負ですね」

「ははっ。明日のお昼ご飯は、庭でニーバランカを焼こうか」

「何それ最高! 最低でも、1人一匹は捕らないと!」

「うん。じゃあ、泳ごう。ピエリーも協力よろしく」

「ぴるるっ!」


 祥平は、早速泉の中に潜った。水中はとても澄んでいて、目を開けても、痛くない。悠々と泳ぐ魚の影が、あちらこちらに見える。祥平は、ダンテとピエリーと一緒に、夕方になるまで、泳ぎながら魚捕りをして、楽しく遊んだ。

 翌日。出勤してきたミミーナに、頑張って捕まえたニーバランカを見せると、とても驚いていた。ダンテが庭で火を起こして、ニーバランカを焼いた。ニーバランカを食べたミミーナが、とても美味しいと大喜びしてくれたので、頑張った甲斐がある。

 祥平も美味しいニーバランカを頬張りながら、嬉しそうにおっとり笑っているダンテと、片手をパチンと打ち合わせた。

しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

処理中です...